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��足柄狩川火砕流堆積層
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今回の懇話会は博物館外来研究員で神奈川地学会の中村俊文氏。鹿児島大で地学を学び、学校の教師の傍ら地質研究を行ってきたそうだ。
今日の話は同氏が近年調査をした県道751号線（はこね金太郎ライン）沿いの黒白林道を横切る沢上流部で、足柄層堆積時の火砕岩、それを不整合に覆う箱根火山起源の火砕岩、さらに不整合の火山礫層、ローム層、宝永火山起源の噴出物などの露頭が標高480m〜600m、長さ最大170m、最大幅20m、高度差訳120mにわたり、全面露頭として露出する場所。約１80万年前から現在までの地層を見ることができるそうだ。
ここは20年ほど前に当時駆け出しのマウンテンバイクで明神林道を走った時に多分通過した場所だろう。明神林道などがはこね金太郎ラインの原型だそうだ。当時スマホは持たず、ガーミン社のGPS器をMTBのハンドルに据え付けて、事前に地図を機器に打ち込んで準備をして走ったものだ。登山もヤマレコを知らず、同じ方法で道標のない道を歩いていた。
ここで発見された大規模な露頭は全体で大きく二種類の火砕岩が見られ、標高480m〜530m付近の安山岩質岩石と530m〜590m付近の火砕岩上部層＝玄武岩質岩石であるが、地層の走向、傾斜も異なり。両者の間にはローム層が詰まり（いわゆる関東ロームとは異なる）、不整合。
標高500m付近は「足柄黒白１」と考える黒雲母を含む白色軽石層。
標高530m付近は粗粒軽石を含む足柄狩川flow1（火砕流堆積物）
標高533m付近に初期箱根火山から噴出堆積した火山灰層、黄色透明の橄欖石を含む。
標高535m付近には大型炭化木を含む火砕サージ堆積物
標高540m〜560m付近の火砕岩上部層は固結度が高く、火山礫中には橄欖岩が見られ、雨天時には滝ができる
標高560m〜590mは令和元年東日本台風の大雨で発生した土石流の原因となった広大な黒白断層面る。横ずれ正断層で走向・傾斜はN６８E40E（条線レイク38度R）
黒白断層の上盤側はすでに消失しているという。その後断層面の上に新
規堆積物（火山礫層・岩崖堆積物・ローム層）が堆積して地表面を形成している。平均安息角35度を超える最大傾斜角49度の黒白断層面の上に新規堆積物が直接堆積したとは考えられず、安息角以下の時点で堆積し、その後に大規模傾動が起きて、言ざおのような状態になったようだ。その前の伊豆火山群列の衝突を含め180万年間に実に様々で複雑な台地の変動、堆積があり、その様子が標高ごと＝時間軸事に見られるという特異な場所となっているようだ。細かい専門的なことはわからないが、かつて歩いた矢倉岳＾地蔵堂周辺やMTBで走った林道の近くにこのような面白い地学的に興味深い場所があるとは、とちょっぴり感動した。
なお、文中に出てくる「ローム」だが、いわゆる関東ロームではなく、もっと古い時代に堆積したもので、しかもローム層は必ずしも「火山灰層」ではない。1995年だったか火山学者の早川氏がロームは火山灰ではなく風塵であるという説を発表し、現在ではこの説が受け入れられているようだ。このなかには火山灰もあるが、黄砂やその他の様々なチリが含まれ、何もなくとも年々積もっていくのだった。60年近く前にある峠付近に愛犬を葬った時（これは本当は違法行為）、そのあとで何回か訪れたが、年々埋まっていくことが認められたことを思い出す。
