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写真②鉄鏃など
写真③地方では珍しく畿内的な柵形埴輪、鶏形埴輪など
平成初めに世田谷区が新たに発掘調査を行った野毛大塚古墳の出土品が平成28年（2018年）に重要文化財に指定され（併せて明治30年に東博の後藤守一らが発掘し、東博に収蔵されている石棺副葬品も重文に指定された。東博のものはその時展示されたものを見た記憶があるが、郷土資料館でも指定時には企画展示を行った。それから5年間にわたり、出土品の保存処理を行い、その終了を記念して今回郷土資料館で改めて野毛大塚古墳出土品展を行ったもの。リニューアルオープンした8月から始まり、講演会などもあったようだが、うっかりフォローし忘れ、講演会は参加できなかった。そこでギャラリートークに参加し、図録も入手してこの間の野毛大塚に関する最新情報を得ようとしたもの。
展示の前期は埴輪などを多く並べていたが、後期は武具、武器等の金属製品をメインにしている。
野毛大塚古墳は5世紀初めころの帆立貝式古墳で、全長83m、馬蹄形の周濠を巡らせており、5世紀の百舌鳥古市古墳群と共通する出土品が出ていて注目された。まず、大量の武具、武器や甲冑が副葬され、関東では最も早い時期のものらしい。甲冑は三角板革綴衝角付冑など、三角の板が小さめで古いタイプ、鉄鏃様々なタイプのものが出ており、種類の多さが際立ち、関東でも最も早くこうした副葬品をもつ古墳だった。鏃のタイプも古めで、5世紀の初めの頃の段階のものが多く出ているようだ。一方鏡は内行花文鏡という後漢後期の鏡でおそらくそれを象ったものを日本で鋳造したものかもしれないという。
また埴輪を見ると、畿内タイプの横ハケが採用され、畿内周辺に多い柵を持つ柵形埴輪など、ヤマト王権が、この南関東の地域首長を重視したことがうかがわれる出土品が並べられている。武器や武具の多くは畿内で生産されたものだが、埴輪は胎土は多摩川流域のものらしく、群馬や畿内の埴輪工人が協力して地元で作成したものではないかという。当時はまだ野焼きの段階だった。また石製模造品も東博で見たものとは少し異なるように見えた。滑石製で一部、金属製品の錆がついて赤茶けている。質はやや粗雑なものがみられるようだが、群馬などの製品化？
いずれにせよ、5世紀に入り、多摩川下流の前期古墳の首長勢力が弱まり、新興勢力として野毛大塚の首長が現れ、5世紀の畿内の大王は新興主張をバックアップして、新たな列島の秩序を形成しようとしたその一環として、野毛大塚とその首長の存在を考えることができそうだ。
参考（世田谷区のHP）：東京都指定史跡 野毛大塚古墳
最終更新日 令和5年9月22日 ページ番号 128557
野毛大塚古墳 航空写真
野毛大塚古墳（整備後）
都指定史跡
昭和27年11月3日 旧跡指定
昭和50年2月6日 史跡に種別変更
(所在)東京都世田谷区野毛1丁目25番 玉川野毛町公園内
(時代)古墳時代中期（約1,600年前）
(交通)大井町線等々力駅下車 徒歩10分
野毛大塚古墳は、国分寺崖線上の高台、上野毛から尾山台にかけて広がる野毛古墳群のなかで最大規模の古墳です。平成元〜4年に行われた発掘調査によって、古墳の形は帆立貝形古墳（全長82メートル、後円部直径67メートル、高さ11メートル）で、 同種の古墳としては最大級の規模を誇っています。
野毛大塚古墳主体部
野毛大塚古墳主体部全景（合成写真）
また、周囲には馬蹄形（ばていけい）の濠（ほり）がめぐり、これを含めた全長は104メートルになることがわかっています。
なお、古墳の表面は葺石（ふきいし）で覆われています。
出土品は国重要文化財に指定されています
後円部の頂上には遺体を埋葬する施設である主体部（しゅたいぶ）が50年ほどの間に4か所設けられています。中央の第1主体部からは関東地方最古の鉄製甲冑（かっちゅう）や石製品など、多種多量の副葬品（ふくそうひん）が出土しています。
これらの副葬品から、5世紀初めころ（約1,600年前）に造られた古墳と考えられ、畿内王権と深く結びついた南武蔵地域の大首長墓と考えられ、当時の政治・社会の展開を考える上で重要です。
出土品については、
国重要文化財 東京都野毛大塚古墳出土品
のページをご覧ください。
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