さきたま史跡の博物館、行田市教育委員会、埼玉考古学会主催の特別史跡埼玉古墳群シンポジウム「６世紀の東国氏と埼玉二子山古墳―最新成果から描く継体朝前後の東日本」というシンポジウムが行田市の教育文化センターで開催されるので出かけてみた。吹上駅から４キロ弱にあるセンターだが、アクセスをどうするか悩む。バスでは９時前のバスに乗れば、開始時間１０時の３０府に城前に到着し、受付に間に合いそうだ。帰りの時間もチェックする。それだと帰りが遅くなりそうなので、シェアサイクルを検討する。吹上駅前、行田駅前観光案内所、鴻巣駅前などにシェアサイクルやレンタサイクルがあるにはあるが、行田駅前は９時半に営業開始で遅く、また営業終了も４時半で間に合わずダメ、吹上駅前は自転車があればよいのだが、アプリで何度見ても１台も開いておらず、多分何か問題ありそう。吹上で借りられれば近いので、帰りもスムースだが――鴻巣駅は開いていそうだが、１５�劼睥イ譴討い襪里如�公s￥の須恵器を８時半前に出発すれば９時半前に会場につきそうだが、開始前につかれていてはどうかな？「帰りも吹上駅に返せれば問題ないが、返せない状況ならまた１５�劼眩�らねばならず、リスクが大きすぎるーー結局多分バスで行くしかなさそうと考えながら高崎線で吹上駅に到着、バスの時間までまだ１５分くらいあるので、さっそく自転車ポートをチェックーしかし南口なのに北口に出てしまい、すでにバス停前は行列がーー急いで南口に移動し、ポートを探すーチャリ一台あるが、アプリはゼロと言っている。電動ではなくアプリでそのチャリを使えるかどうか試すが、やはり使用できないと出てくる。あきらめて、反対側のバス停に急ぐ。既に長蛇の列となり、最後尾につく。まだまだ人はやってくる――多くの人は同じシンポジウムに向かうようだ。バスは６−７分あまりで最寄りの停留所につくが、そこからは７００m近く離れている。会場に到着すると、すでに受付ははじまり、会場はヒトで一杯になった。不便な場所でもこれだけ人が入るのだから、行田市民や埼玉県民にとって、この特別史跡がいかに大切なものとなっているかがわかる。稲荷山古墳出土の金錯名鉄剣は国宝になっており、史跡全体も国宝と同等の扱いになる特別史跡となっている。シンポ冒頭のコーディネーターの明大の若狭徹氏もいうように、日本国内に国宝は千以上あるが、特別史跡は三内丸山遺跡や姫路城など３６しかない。埼玉県民、行田市民の誇りなのだろう。
今回のシンポジウムは二子山古墳の近年史跡整備のための発掘調査が行われ、昨年その報告書が刊行され、さきたま古墳群の主要な古墳の築造順序が確定するなどの成果を上げたことを記念して開催されることとなったようだ。
当日のプログラムは、以下の通り
09：00 開場
10：00〜10：05 開会挨拶 栗岡 眞理子（埼玉県立さきたま史跡の博物館長）
10：05〜10：15 【開催趣旨】若狭 徹氏（明治大学文学部教授）
10：15〜10：55 【講演� 曄嶌覿霧妬�群の中の二子山古墳−最新の調査成果から−」 ナワビ 矢麻（埼玉県教育局文化 資源課主任）
10：55〜11：35 【講演�◆曄崑膕κ� 今城塚古墳の実像−最新の整理成果をもとに−」 今西 康宏氏（高槻市立埋蔵文化財センター学芸員）
11：35〜12：15 【講演��】「断夫山古墳、尾張連氏とその周辺」
早野 浩二氏（愛知県埋蔵文化財センター調査研究専門員）
13：15〜13：55 【講演�ぁ曄嶌覿牝鷸匯蓋妬�の墳丘とその意義」 城倉 正祥氏（早稲田大学文学学術院教授）
13：55〜14：35 【講演�ァ曄孱鏡さ�前半の倭王権と東国豪族」
河内 春人氏（関東学院大学経済学部准教授）
14：35〜15：15 【講演�Α曄峺妬�からみた継体朝期の東国像」 若狭 徹氏（明治大学文学部教授）
15：35〜16：55 総合討議「６世紀の東国史と埼玉二子山古墳」
コーディネータ：若狭 徹氏 パネリスト：講演者全員、藤野一之氏
16：55〜17：00 閉会挨拶（行田市教育委員会）
最初に若狭氏の趣旨説明があり、以下順番に講演が始まる。
最初のスピーカー、NAWABI, Ahmad Yama / ナワビ アハマッド矢麻さんは、早大で考古学を学び、シルクロード考古学者として中央アジアやアフリカなどで調査研究を行い、埼玉県に就職してさきたま史跡の博物館で現在仕事をしているようだ。風貌は中央アジア風、二子山古墳の最新発掘調査にあったり、その成果を解説した。これまで不確定だった西側くびれ部、中堤張り出し部などトレンチ調査で様々なことが明らかになった。中堤のカタチは現状とは違い、内側に湾曲していること、前方部は二段、後円部は３段築成、土層の中の白色粘土層は従来火山灰層とされたが、今回の調査で水成層と判明し、榛名火山灰層HrFAは盛土の下から発見され、また出土する円筒埴輪の研究から築造年代が６世紀前半になり、稲荷山古墳→丸墓山古墳→二子山古墳→鉄砲山古墳の順になることが確定した。これらは大きな成果で、さらに後述の早稲田大学による地下レーダー探査で後円部にある横穴式石室の存在が明らかになるなど、この古墳群の解明に大きな足跡を残した発掘調査となったことを説明した。
次にこの６世紀前葉と同時期の大王墓である継体大王の墓とされる大阪高鋤の今城塚古墳に関して、その最新発掘調査成果を高槻市の今西康宏氏が講演、１９７７年以降に始まる長い発掘調査により、墳丘携帯、石室、石棺、副葬品、土器、円筒埴輪、人物埴輪・器材埴輪などの形象埴輪などに関してこれまで解明されたことを説明し、それに基づく淀川・琵琶湖水系ーさらには日本海、尾張―東国などの継体大王支援集団との関係を示唆する様々な出土品などについて考察した。特に今城塚は群馬の保渡田古墳群と並び、埴輪群像で名高く、円筒埴輪や様々な形象埴輪に関する興味深い考察を述べられた。
三番手は継体大王を支えた一人尾張連の墓と推定される墳長１５０mの巨大古墳、６世紀前半では東日本の七輿山と並び最大クラスの古墳を造営した大豪族とその社会について愛知県埋蔵文化財センターの早野浩二氏が講演、断夫山古墳とそれをとりまく尾張、伊勢湾周辺の古墳群と豪族たちの姿を最新調査を交えて講演した。
昼食休憩に入り、近くのイタ飯屋に向かう。予約していなかったのでどうかと心配だったが幸い、同じ講演に来ていた千葉の方と相席でなんとかランチにありつくことができた。この方は若いころから考古資料を集め、資料館がたつほど購入を含め膨大なコレクションを持つが資料館を作るのはお金がかかりすぎるのであきらめたそうだ。ただ６０近くになって明治大学に学士入学し、考古学を本格的に学びなおしたというから、なかなかの情熱家だ。今日のコーディネーターの若狭氏が大学に着任したときからお世話になったそうだ。
午後の講演は早稲田の城倉教授で、古墳の地下レーダー探査で有名だ。もともとは東アジアの城郭調査の専門家で、最近は地下レーダー調査技術を駆使して様々な遺跡・古墳の調査をしている。非破壊技術を駆使して、今回も古墳の精密調査、地図作成、横穴式石室の発見など大きな成果をあげられた。講演ではその調査の成果の報告と共に、これまで古墳の比較は平面図を通して行われたが、今後は立体形状の研究比較を行う必要があるとされた。
次に文献史学から唯一登場した河内春人氏が、文献史料から見る継体大王に至る天皇系統に関する興味深い考察、仁徳系統が断絶して継体の登場のストーリーが虚構の可能性、隅田八幡宮人物画像鏡の銘文の考察から、継体は初めからヤマトの忍坂にいて大和政権に参画していた可能性があること、多くの豪族との婚姻関係の考察から、北陸から東海ー関東にかけての東日本豪族連合ともいうべきパワーを背景に百済などとの外交交渉にも参画したこと、さきたまの稲荷山鉄剣銘文の考察から、この時期の首長の系譜関係は親子ではなく首長の系統の系譜である可能性が高いことなど、またそうした旧来の王統や首長系統から大兄制のような血縁形象に移行することが継体の後に発生することなど、刺激的な考察を述べていた。
最後にコーディネーターで二子山古墳発掘調査を指導された若狭氏が二子山、今城塚と同時期の群馬の七輿山古墳の近年の調査を踏まえ、継体大王時代の前後に起こった大王家による地方豪族の支配体制に対する介入，屯倉の創設などに触れ、ヤマト王権創成期からの豪族連合型王権から王権による集権へと至る過程、新羅系渡来人集団による新技術導入と地域開発、さらに上毛野、下毛野を拠点とする王権の東北進出のプロセスなどについて、武蔵国造の乱と群馬、埼玉の首長との関係などを縦横に論じた。
講演が終了し、休憩をはさんで総合討論の冒頭で紙上参加された駒澤大学の藤野氏が二子山古墳の土器などから見るこの時期の葬送儀礼について手短に解説し、その後、稲荷山鉄剣のオワケという人物についてや継体大王と百済武寧王の関係をつなぐ北陸の王との関係、渡来人、屯倉、上野三碑と緑野のミヤケなどの考察など、興味深い論点が出てきたが、夕食登板のため帰りの時間が気になり、４時半過ぎに一足早く神父時有無を後にして少し早めのバスで吹上に戻り、帰宅の途に就いた。
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１１月１８日（土）「埼玉二子山古墳と継体大王」特別史跡シンポジウム
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