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昨日、ある図書館で新聞各紙を見ると、その報道が出ていた。面白かったのは、朝日新聞と産経新聞が一面と社会面で報道し、他紙のほとんどは一面掲載でなく社会面であった。
朝日一面は「「ガザ反戦米大学で拡大ー占拠に警官突入、政権痛手」写真入りの一面報道だ。国際面では「米大学占拠、学生の抗議のうねりーイスラエル軍の武器製造企業への投資中止要求」「逮捕見て声を上げないとー」「中東政策に影響の可能性もー」などと解説している。この国際面全面で関連記事を取り上げ、学生抗議は半分以上を割いている。それだけ重要な抗議活動との姿勢だ。
一方産経新聞は一面写真入りで報道しているものの、警官隊突入、逮捕者が出ていること、コロンビア大学学長が排除命令を出し警官隊を入れ大勢の逮捕者が出たことなどを報道、イスラエルに武器を売る米企業への投資中止要求は出ているが、記事のないようなやや貧弱。米国大統領報道官カービー氏談話として大学施設占拠は間違ったやり方とバイデン大統領の考えを伝えたが、朝日報道ではコロンビア大学100人以上が逮捕され、同大学のシャフィック学長が米下院公聴会で反ユダヤ主義の蔓延と非難し、異例の事態に異例の対応をしたと警官隊導入を正当化した。しかしこうした大学当局や政府対応は逆効果で火に油を注ぐ結果になっていると新聞報道、大勢の参加する大学生へのインタビューのほか、テキサス大学オースティン校のスティーブン・ミンツ教授談話―大学側に勝ち目はない――などと紹介している。
遅ればせながら報道を始めた日本のマスコミだが、こうした激しい大学キャンパスでの抗議活動はおそらくベトナム反戦以来ではないかと思われる。
こうした学生らの行動の背景にあるのが、'civil disobedience'の考え方だ。
ベトナム反戦や反原発闘争などで 日本でもこの「不服従」が伝えられた時期があったが、あまり理解されずに終わっている。私がアメリカとの間をよく行き来していた1980年代後半から90年代にかけて、米国の市民団体関係者と話をしているとき、当時の市民活動家や学生の間で「明日、不服従行動に出かける」というと。その意味は「明日逮捕されてくる」だった！！
当時グリーンピースやその他の団体が米国やカナダの森林伐採反対運動などの抗議行動で気に体を縛り付けたり、その他の街頭行動で景観に逮捕されるような行動をわざと起こし、その逮捕者の規模を大きくすることでマスコミに事態を取り上げさせ、社会に影響を与えることを狙う行動だ。刑法や司法に対する考え方が大きく違う日本では「逮捕」は恐れられるが、全く考え方の異なるアメリカでは「逮捕」は「名誉」と考える活動家や学生が少なくない、とその時学んだ。
この概念は「森の生活」などで知られる米国の思想家、ヘンリー・デイヴィッド・ソローが米国の対メキシコ戦争に反対して書かれた「civil disobedience-市民的不服従」というエッセイによるものだ。
アマゾン米国版のCivil Disobedience ハードカバー – 1849/4/4
英語版 Henry David Thoreau (著)
4.5 5つ星のうち4.5 927個の評価
Disgusted by slavery and the Mexican War, Thoreau gave lectures on, "The Rights and Duties of the Individual in relation to Government," which became the basis for this 1849 essay Civil Disobedience originally titled, "Resistance to Civil Government."
Cited by both Mohandas Gandhi and Martin Luther King, Jr. as influential in their drive to create positive change through nonviolent means, Thoreau's essay is just as applicable today as people search for their own role in making society better.
なおoxford dictionaryのcivil disobedienceの項目では
'the act by a group of people of refusing to obey laws or pay taxes, as a peaceful way of expressing their disapproval of those laws or taxes and in order to persuade the government to change them:
Gandhi and Martin Luther King both led campaigns of civil disobedience to try to persuade the authorities to change their policies.'
と出ていた。
アマゾンの日本語翻訳では
「ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
ダヴィッド・ソロー、通称ヘンリー・ダヴィッド・ソローとして知られていた、アメリカの小説家、詩人、哲学者、自然学者である。彼は1817年7月12日マサチューセッツ州コンコードで生まれ、4人兄弟の第3子であった。ソローは普通の家庭で育ち、1833年から1837年の間、ハーバード大学に通った。
大学を卒業した後、ソローはコンコードの公立学校で教師を務め始めたが、教育制度に失望し、2週間で辞めた。その後は書き物に専念し、1845年に最も有名な作品『ウォルデン、または、森林での生活』を出版した。この作品は、ウォルデン湖畔に自分で築いた小屋に暮らした経験を記録したものである。
ソローは、個人主義、自己頼み、自然との深い関係を強調した超驚異主義運動に大きく影響を受けた。彼も反奴隷制運動に関与し、不正な法律に抗議するための手段として市民不服従を強く主張した。
ソローの他の有名な作品には、「市民不服従」がある。このエッセイでは、個人が不正な法律に抵抗する義務があると主張している。そして、兄弟であるジョン・ソローと共に書いた旅行記「コンコード川とメリマック川を一週間」もある。
ソローの健康は1850年代から悪化し、1862年5月6日に44歳で肺結核で死去した。彼の生涯は短かったが、影響力は巨大であり、アメリカ文学と哲学の最も重要な人物の1人と見なされている。
フレデリック・デルトゥール（仏語の作家、霊性指導者）が書いた伝記と序文：
「『ウォルデン』を読んで得られる利益のいくつかには、より内なる平和感、自然との深い繋がり、そして簡単なことへの理解がある。ソローの簡素主義と距離感を取り入れることで、リーダーは自分を阻むものを放り出し、より充実した、意義ある人生を送ることができる。
『ウォルデン』は、簡素な生活、環境保護、霊性への呼びかけである。日常生活における自然の重要性を理解し、その繋がりを通してより深い意味や内なる平和を得るための読み物として、重要である。
「市民不服従」は、行動への機会への革命的な呼びかけである。現状を拒み、我々の権利、自治権、尊厳を取り戻すための呼びかけである。不当な法律を拒み、よりよい世界を作り出すためのマニフェストである。この本は、現状に反抗し、よりよい未来を作り出すために歩む道への招待状である。そして、この本は、その道を歩む方法を教えてくれるだろう。」
と出ている。このエッセイは米国市民の権利、民主主義思想の現代的な出発点でもあり、ガンジーは英国で法律家となり南アフリカに赴任する途中の鉄道の中で、このソローのエッセイを読み、アフリカで人種差別反対運動を起こしてインドでの抵抗運動に発展した。キング牧師もこの思想を受け継ぎ、不服従運動を展開した。そしてグリーン・ピースなどの環境保護団体その他の米国や世界中の市民団体もこの思想や行動の歴史に学んでいる。ベトナム反戦にもこの思想は生きていた。日本ではあまりこれらの背景が理解されず、ソローのエッセイも読まれず、知られていないのは残念だ。
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