８月２７日記録映画「いのちを楽しむ」

2013年08月27日 16:00映画全体に公開

昨夜の益永スミコ氏の記録映画「死んでいる暇はない」の上映会で紹介された同じ監督の最新作である「いのちを楽しむ」を渋谷のシネマ・イメージ・フォーラムに見に出かけた。追加上映ではあるが、監督も言っていたように、観客は４－５人で少ない。映画館は立派なもので、作品もがん患者と家族、友人の支援者「癌と闘うな」の医師らとのきわめて濃密な時間を映し出している力作だ。
　この映画の主人公である渡辺容子さんと映画スタッフが出会ったのは、２００９年夏、容子さんが起こしたある教育関係の訴訟に関する裁判の不当判決に対する市民行動の場。その翌年６月に朝日新聞紙上で「余命１年、二冊の重み」と題した連載記事。その記事におどろいて、容子さんの余命期間を記録することを容子さんが快諾し、撮影に入った。容子さんは２００９年にインターネット新聞に「がんと闘わない生き方」を連載し、そのあと「乳がん―後悔しない資料」を出版した。容子さんの発信はがん治療に限らず、教育、平和、環境など多岐にわたった。

その後、主治医の慶応大学病院の近藤誠医師（患者よ、がんと闘うな」の著者）および、地域医療に携わった豊島区の開業医の網野医師を主治医として、その後４年にわたるがんとの付き合いが始まる。がんと闘わないといっても，全くなにもしないというわけでなく、抗がん剤を打ったり、大きな無理な手術をするのでなく、最初はホルモン剤を投与して、がんの進行を遅らせ、余命１年が大幅に伸びた。その年の９月、友人のがん患者の大田清子さん、１０月に大腸がんだった母がなくなり、お母さんに関しては主治医の手術や抗がん剤治療を容子さんは拒否していた。容子さんはその後、療養を兼ねて、かつてうつ病治療で滞在した小笠原に滞在、翌年東日本大震災で引き起こされた原発事故への抗議行動に参加、それらの疲れからか、秋には腫瘍マーカーの値が上昇、１２月には痛みを緩和する放射線治療を始める。２０１２年に入り、骨への転移が進み、放射線もモルヒネも効かなくなってきた。神経ブロック治療も病院で断られ、３月には網野医師の訪問治療が始まり、痛みに苦しんで「今日死にたい」という言葉が最後のブログ更新となった。３月２０日に亡くなる前にコンサートを開く偲ぶ会開催が決まり、また容子さんの生地、福島県川俣村に散骨した。同村は事故の影響で放射線が強く、人が住めない状態になっている。その年の７月には径書房から最後の本「乳がんですと言われてあわてて切ってはいけない」が出版された。

　この映画を見て、いかに癌と付き合って生きるべきか、深く考えさせられた。「集団検診」「早期発見、早期治療」はほとんど意味がないこと、がんと闘わず（抗がん剤や大きな手術は避ける）、じっくりがんとの付き合い方を考えながら、生き抜いていく方法を考えねばと思わされた。がん治療の主人公は医師ではなく患者であることを胸に刻むんべきなのであったーー

2013-08-27 「死んでる暇はない」益永スミコ

2013-08-27 ８月２７日（火）「ゆんたく高江

お気に入りした人

人

拍手で応援

拍手した人

拍手

訪問者数：548人