岩稜の東赤石山　～岩石の知識あらば、なお楽しからずやの巻～

2021年01月05日 15:26短歌でつづる四国の山全体に公開

岩稜の東赤石山　～岩石の知識あらば、なお楽しからずやの巻～

「岩稜は乳白色につつまれて松虫草の色さやかなり」

　東赤石山は、赤茶けた橄欖（かんらん）岩のアルペン的景観が魅力の山である。地質についてはからきし門外漢の私は全く知らなかったが、この山域は世界的にも有名な研究フィールドなのだそうだ。その特徴的な岩質から、標高1706mながら岩稜にクロベやゴヨウマツなどの針葉樹が生え、オトメシャジンなど150種にのぼる多種多様な高山性植物がみられるという。
　その東赤石山には、8月下旬に新居浜市と土居町の境の関ノ戸峠近くの登山道入り口から河又（こうまた）を経て更に五良津（いらづ）林道の終点まで行き、クロムや耐火煉瓦の材料のダナイトを採掘した赤石鉱山のなごりの跡をたどりながら赤石越に至るルートを登った。このルートは、今では度重なる水害で林道が荒れ果ててほとんど使われていないようだ。
　私が登った日も、赤石越まで登山者に会うことはなかった。登山口から自然林の中をしばらく上っていくと支尾根に乗り、道標があった。登山道は総じて木の根や岩で滑りやすく快適とは言えない。途中に氷穴があった。赤石鉱山が明治43年（1910年）から昭和61年（1986年）まで操業していた当時は、使われたこともあるという。しばらく歩いていくと山ノ神と呼ばれるところに出る。そこには小さな祠があった。祠は、閉山後それほどの年月も経ていないので、比較的新しくしっかりしている。
　このあたりを過ぎると赤茶けた橄欖岩が目立ってきた。赤石越に着けば、展望も大いに開けるはずだが、あいにくガスが発生してきてしまった。
　山頂に着いたのは、朝の出発が遅かったこともあって午後の3時を回っていた。しばし岩稜歩きを楽しむ。岩陰のシラヒゲソウやタカネマツムシソウの群落に心癒された。しかし、下りの時間のこともある。結局八巻山の頂まで行かないまま、引き返す。
　東赤石の山域には、別子山の瀬場から11月に登ったことがあった。ただこの時は、春に同じ別子山の中七番の山中で滑落事故を起こして以来の久しぶりの山登りだったこともあって、赤石山荘から石室越に行き、前赤石山を巻いて物住頭近くまで行っただけで、八巻山も東赤石山の頂も踏まずじまいだった。
　思えば、東赤石山の地質の特性を十分理解していたら、もっと深く山を楽しむことができただろうと、いまさらながら惜しまれる。
　　　　　　　　　（2003年8月23日川又から。2004年11月3日瀬場からの登山記録）

（参考資料①）
ヤマレコ　山ノート　bergheilさん　「日本の山々の地質；第一部　四国山地、1－4.赤石山系」
　https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=2693

（参考資料②）
「赤太郎が沈み込み帯マントルにいた頃の話（金沢大学）」（水上知行）
http://earth.s.kanazawa-.ac.jp/~mizukami/tmiz/theme/trip1.html

（参考）
ヤマレコ日記「我が家で滑落疑似体験　～カタクリの山での悲劇を思い出したの巻～」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-204521

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