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2022年04月29日 17:53昭和の山旅考全体に公開

昭和の山エッセン  〜ランチ編〜

 高校時代の山岳部の夏合宿「後立山連峰テント縦走」(昭和41年)のように7泊8日の長旅となると、お昼の食事は、荷物の重量や気候といった制約や行動食としての側面が強く出て、とかく単調なものになりがちである。しかし、この時の食糧計画を振り返ってみると、なかなか工夫がみられて面白い。
 これは、「昭和の山エッセン  〜朝食編〜」(2022年04月14日日記搭載)の続編といったところだ。

 想像に難くないが、入山初日のお昼は、ちょっと豪華である。フランスパンにハムとチーズ、キュウリ、マヨネーズ、ジャム、それに粉末ジュースが付いた。「フランスパン」は、昭和39年(1964年)の東京オリンピック頃から市販されるようになったと言われているが、我が家のような一般家庭では普段の生活で食べたことがなかった。エッセン長はなかなかのシティーボーイだったのである。
 二日目からは、主食はビスケットとクラッカーである。エッセン長によれば、「ココナッツサブレ(1965年発売)といった高級品を除けばビスケット類は皆、地元の菓子問屋のB級品だった」という。一方、クラッカーは、昭和37年(1962年)に放送が開始された人気テレビ番組『てなもんや三度笠』のコマーシャルの「あたり前田のクラッカー」のフレーズとともに一躍認知度を上げたおしゃれな食べ物だった。我が家でも、時々日曜日のお昼などに、ハムやゆで卵、キュウリとともに食べた。ただ、いずれも、ぼそぼそしてあまり食べやすいものではなかった。それを補うのが、春日井製菓のフルーツソーダなどの粉末ジュースであった。
 副菜は、ハム、チーズ、キュウリと毎日代り映えせず、味付けはマヨネーズや塩であった。変わったところでは、干しだら、梅干しなどがあったが、塩分補給も兼ねていたのだろう。珍しいメニューとしては7日目のクジラの大和煮の缶詰があった。肉類が不足してくる合宿後半向けの秘密兵器だったに違いない。
 キュウリは、サランラップに包むと1週間は持つと部誌に記載がある。ちなみに、サランラップが日本で発売になったのは、昭和35年(1960年)9月。当時は高価なもので、一般家庭で使うことはあまりなかったから、これまた、かなり先進的である。
 大学生になってからは、クラッカーは特に食べにくく壊れやすいという欠点もあったので、次第に携行することはなくなり、ビスケットやクッキーが中心になった。
 特にお気に入りのものをいくつか挙げてみると、まずは昭和43年(1968年)発売のキンビスの「アスパラガスビスケット」。巾着型のパッケージは、今も健在で、今でも結構山に持っていく。黒ゴマに塩味と味はシンプルだったが、適度に歯ごたえがあり、山頂などで景色を見ながらぼりぼりと音を立てながら無心に食べていると、いつの間にか結構な量が食べられ、一番腹持ちがいいように感じられてくるから不思議だった。
 次に郷愁を誘うのが、東鳩の「オールレーズン」。レーズンがギッシリ詰まっていて食べやすさは、一番である。これは、昭和47年(1972年)発売と他のものに比べてやや発売時期は遅目だが、発売と同時ぐらいに友人がこれはうまいと推してきた。パッケージは最初から縦長のもので、レーズンたっぷりの中身が見えて一層おいしく感じられた。
 日清製菓の「バターココナッツ」も忘れがたい。大学一年の1969年6月の白山単独行に持って行った。こちらは、昭和41年(1966年)の発売で、当時はココナツ風味の味はまだまだ珍しかった。    
 定番の森永製菓のビスケット類では、「ムーンナイトクッキー」を愛用した。青色を基調としたパッケージがお気に入り。これは、昭和35年(1960年)に発売開始の商品で、当時は横長のパッケージだった。ちょっと甘めで、サックとしていた。ただ、それだけにお昼用には少し物足りなさがあった。
 こうして挙げてくると、いずれもロングテール商品で、今でも店頭で見かけると懐かしさで手が出てしまうのだった。

 ついでに、夏合宿のサブエッセンやおやつについても触れておこう。
 サブエッセンと呼んでいたのは、一種の行動食である。夏合宿では、飴が毎日一人当たり8個配給があった。それに、ビスケット・クラッカー・おこし・せんべいのいずれかと、レーズンかチョコ又はピーナツがつくのが基本だった。
 おやつというのは、テントサイトに着いてからのもので、夕食のつなぎということもあれば、夕食後にということもあった。内容的には、ココアや紅茶、ミルク、ジュースといった飲み物とビスケット、レーズン、水ようかんといった類のものである。
 羊羹といえば、結構重量があっておやつとしては敬遠すべきものだったのだが、大好きでよく山に持って行ったものだ。いつの山行だったかもうすっかり忘れてしまったが、夜テントで一棹丸々食べてしまったことがあった。そのことだけは忘れないのだから、おかしなものだ。山の消耗は、かくも激しいのである。


(参考)
「昭和の山エッセン  〜朝食編〜」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-266945

(参考)昭和41年(1966年)の高校山岳部の北ア夏合宿の記録
「後立山連峰テント大縦走 〜昔の高校山岳部は半端じゃないの巻〜」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-201342
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