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特に、テーマを設定して回ると楽しみが増える。定番の古道歩きや河岸歩き、古墳などの遺跡歩きはもちろんのこと、富士塚や月待塔、七福神巡りなどこれまでにも色々やってみた。
テーマ型の里歩きは、ヤマレコを見ても先行記録がないので、まずはコース設定のために調べる楽しみがあり、更に実際歩いて気づく楽しみ、記録をまとめる過程で新たに発見する楽しみと、一粒で三度おいしいキャラメルのようなものだ。
今熱が入っているテーマが、「お蚕さま」である。
童謡の「赤とんぼ」は、昭和世代には懐かしい歌であるが、その歌詞の２番は、「山の畑の 桑の実を小籠（こかご）に摘んだは まぼろしか」である。この美しい詩ができたのは、1921年（大正10年）。その頃、日本中どこに行っても開けた台地は、桑畑が続いていたのである。いわば、誰もが共感できる農村景観であったのだから、赤とんぼの歌も人口に膾炙したのもうなずける。
何しろ、当時の日本は、世界一の生糸の輸出大国であった。蚕糸業が最盛期 であった1930年代のデータでは、桑畑の面積は71万? （農地の25％）、養蚕農家は221万戸（農家の40％ ）に及んでいた。それが、2008年のデータで、桑畑はわずかに2000ha、戸数にして1000戸である。最近では、桑も、養蚕用というより桑茶や桑の実ジャムなどの特産品のためのものが目立つ。
先日、八王子から横浜を結ぶ「絹の道」の浜街道のうち、古道が残っているところを通って、神奈川県下で最も養蚕業が盛んであった相模原台地の旧大沢村や旧田名村地区を養蚕の面影を偲んで、まる一日かけて歩いてみた。養蚕の面影といっても、桑畑があるわけではない、昔からの街並みや新興住宅地を外れても郊外型の野菜畑が続いているのみである。実際訪ね得たところも、養蚕の豊穣を祈る蚕影社や養蚕農家の古民家、全盛期に活躍した共同の生糸品質向上の加工と販売の事業所の創業の地などであった。
帰宅して、改めて昔の地図で相模原台地の様子をチェックしようとして驚いた。若い頃慣れ親しんだ桑畑の地図記号が、2013年に廃止されていたのである。そういえば、新しい地図記号の誕生として、東日本大震災の後の2019年に「自然災害伝承碑」が制定されたことがニュースになっていたことを思い出したのだった。
何はともあれ、陸軍参謀本部陸地測量部が作成した迅速測図を基とした農業環境技術研究所による「歴史的農業環境閲覧システム」や「今昔マップ on the web」（埼玉大学教育学部谷謙二研究室）で、いかに相模原台地が桑畑の台地であったことを確認し、一層今回の里歩きに興趣を覚えたのだった。
写真�〜衞聾胸埖臈臧婉瓩虜�と昔（「今昔マップ on the web」より作成）
写真��廃止された地図記号「桑畑」
（参考）
「相模原の養蚕の面影 〜八王子絹の道から大島・田名〜」2023.2.12
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5175796.html
2013年には工場（歯車の記号、太陽にも見えたけど）の地図記号も廃止されたようですね。
今は航空測量なので地上測量時代とは違い、中小の工場などは把握できないためなんだとか。
コメントありがとうございます。
確かに、工場の地図記号も廃止されたようですね。大きなものは、名前が書かれているようです。
工場というと、つい煙突、ノコギリ屋根、かまぼこ屋根など連想ゲームになってしまいますが、ランドマークになるような大きな煙突は地図記号で表記されるとのこと。
ちなみに、京浜工場地帯を探してみたら大規模火力発電所や製鉄所に記載がありました。まあ、お風呂さんの煙突ではだめみたいですけどね。
町歩きしていて結構ランドマークになる変電所は、発電所の地図記号で表されていました。
以下の説明では三角点自体も現在の測量法では不要になっているようです。確かに三角点が無くなってしまうことは寂しい気もします。
一方今や地形図などはネット上で自分が引き出して印刷することになっているので記号なども緯度・経度上の画像タイルとして重ね合わせることになればと、興味深く感じました。
消えた工場、桑畑…地図記号の廃止・誕生の背景にある「社会の変化」
https://diamond.jp/articles/-/277031
以前老人ホームなどが地形図に記載されていることになっていることを初めて知りました。当時の2020年10月18日 23:30にヤマレコの日記として記載しました。
https://www.yamareco.com/modules/diary/238211-detail-222053
その後近郊の山を歩くと、改めてしばしば地形図上に記載されていることに気付きました。
地形図の位置付けとしては【大きな建物は目印になります】ということでしょうか。
https://www.chizu-seisaku.com/kigou/t-roujin-home/
コメントありがとうございます。
確かに、地図上で老人ホームの記号は目立つようになりました。
ところで、貴兄が日記で触れている自然災害伝承碑についてですが、丹沢の山の麓で関東大震災の慰霊碑などに出会ったことがあります。
また、横浜市で最も市民らに親しまれている山下公園は、震災復興記念で作られた公園のひとつで、震災で崩壊した建物の瓦礫などを埋めて作った公園です。園内の片隅にインド水塔というエキゾチックなインド式水飲場（注：今は使われていない）がありますが、これは、関東大震災で被災した在留インド人が横浜市から受けた援助に感謝して、当時の横浜インド商組合から横浜市に寄贈されたものだそうです。
桑畑に関連して、かつて東村山・空堀川沿いに主に遊歩道を自転車散歩したことを思い出した。たわわな桑の実に驚いたことがあった。
検索してみると今でもあるようだ。
ツーリングの途中、空堀川の土手に桑の木が並び、先日から実が赤黒く実って来た。早速袋に取って帰ってジャム作りを楽しんだ。
2022/5/21 16:14
https://lineblog.me/dragon73/archives/3082167.html
また桑を以下のように利用している方もいるようだが、農業なども多様化している一環として今後も続いてくれたらと思った。
新しくて懐かしい「桑の実」を知っていますか？
2017.06.20
エリスンでは、耕作放棄地を開墾・整備して、かつて上田地域に広がっていた桑畑を甦らせる活動をしています。現在、６つの農場約１２ヘクタールの面積に桑の木約２，０００本を栽培しています。６次産業化に取り組んでいて、収穫した実と葉はすべてジャムやくわ茶などに加工し、販売しています。
https://oishii.iijan.or.jp/products/post-2452
コメントありがとうございます。
私も、信州で桑の実ジャムをお土産に買って帰ったことがあります。
桑の葉の利用についてですが、今回歩いた相模原でも、商工会議所女性会が地産地消プロジェクトの一環で「さがみはら産粉末桑茶『とうとるん』」を加工、販売しているとのことです。
日本の農業景観に桑畑が少しでも残るといいですね。
（参考）「食事のお供に桑茶はいか（相模原女性会）
https://joseikai.jcci.or.jp/activity/2013/0928.html
先日以下の記事に接して感じた次第です。
1922（大正11）年には、日本の輸出総額の48.9%を生糸・絹織物が占め、「日本で養蚕が最もさかんだった昭和の初め、日本の農家の約四十パーセントに当たる二百二十一万戸で蚕を飼って」（『蚕──絹糸を吐く虫と日本人』畑中章宏/晶文社）いました。
https://intojapanwaraku.com/culture/188756/
コメントありがとうございます。
話を少し整理したいと思います。
養蚕業は「養蚕農家が桑を栽培し、蚕を育て、繭を生産する一連の営み」をいい、「繭を絹にするために製糸工場で繭から生糸に加工し、生糸をさらに加工して絹織物などの繊維にする」のは繊維産業ということになります。
大昔には、養蚕農家自身が座繰りで糸を紡いでいたのですが、明治以降は富岡製糸工場に代表される器械製糸が主流になりました。いわゆる軽工業の範疇に移行したというわけです。
長い間日本が生糸輸出世界一の国であったということは、別の表現に置き換えると、日本には生糸を高付加価値にする産業が未発達で、生糸のままアメリカなどの絹織物業へ原料を提供することにとどまったからだともいえるのでないでしょうか。
養蚕は、蚕の飼育や桑の育成の管理がむつかしく、綿花のように大規模プランテーションといった生産形態にはなじまなかったので、現金収入を得る手段として水田に向かない扇状地や河岸段丘の台地にある小規模農家に向いていたのでしょう。
日露戦争後の経済発達史については、門外漢です。
以下の文献も、参考になるのでないかと思います。
「データベース『えひめの記憶』第一節 日清・日露戦後経営期の経済概観」
https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/45/view/5726
なるほど、生産者・加工業者などの連携があったのですね！以前から所沢に群馬銀行・足利銀行の支店の店舗が不思議に思っていました。子供の頃付近に織物事務所という建物があったことも関連して何やら納得感が出てきました。
ところで、以下に日本の蚕の改良が記載されていました。
【1910年代、温度計や湿度計などの西洋の発明品と科学的方法を用いて「日本の科学者は、長い伝統を持つ養蚕業とメンデルの遺伝学による品種改良を組み合わせ、生産性の高いハイブリッド蚕を開発しました。その繭は、特に機械製糸に非常に優れていたため、この新しいタイプの蚕が日本中を席巻したのです。】
戦後【ナイロンが婦人用メリヤス市場の100％を制覇したことは、合成繊維産業のはじまりに過ぎません。】となったそうです。
最近改めて歴史の面白さが実感できたいるところです。
ありがとうございました。
https://energy-democracy.jp/3943
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