今年も6月15日から伊那市の戸台口から北沢峠まで南アルプス林道バスが運行されるという。令和４年は、バス運行期間中に50,735人が利用した。今年は、もっと多くの登山者たちに利用されることだろう。近年のヤマレコの山行記録を見てもわかるが、この林道バスのおかげで甲斐駒ヶ岳や仙丈ケ岳が日帰りで登山できるようになった。
このバスの運行が開始されたのは、南アルプススーパー林道が紆余曲折を経て完成した1980年（昭和55年）からだ。私が大学時代に戸台から北沢峠を経て鳳凰三山の地蔵岳に抜けた昭和47年当時は、環境保護の観点からこの林道建設は中断されていた。
先日、古い段ボールの資料を整理していたら、南アルプススーパー林道の開通時の新聞記事が出てきた。昭和55年（1980）6月11日付け毎日新聞夕刊の「ゆうかん トピックス」に書かれた「南ア・スーパー林道を歩く 重症の山 うめき聞こえた」という社会部記者原剛さんのルポルタージュ記事である。
昭和43年と昭和47年の春に伊那側の戸台口から北沢峠まで歩いた私にとって、スーパー林道開通を告げる記事は大きなインパクトを与えたのだろう。
何しろ、芦安村(現南アルプス市)と長野県長谷村(現伊那市)を結ぶ総延長約56.98kmの南アルプススーパー林道は、大規模開発か環境保護か多くの議論を巻き起こしながら、着工以来途中5年にも及ぶ工事中断をはさんで13年目に完成したのだった。
開発事業は、森林開発、治山、過疎地の振興を目的としながらも大規模な山岳観光道路としての活用の目論見が交差するものだった。
原記者は、歩いた後の疑問として以下の3点を指摘している。
�＿召亡超�アセスメントが行われていたら、大断層帯（フォッサマグナ）の脆弱な地質上にある南アルプスの山中にこんな道路はまず計画されなかったであろう。
��急峻でもろい亜高山体での森林伐採、人工造林は技術的、経済的に問題はないのか。
��治水事業といっても、現状では大半が伐採と道路工事が招いた地崩れの後始末ではないのか。
記事は、「南アルプススーパー林道は、何のため、だれのためにつくられた道なのか」林道建設推進者も環境保護の建設反対者も事実をもってこの問いに答える責務があると締めくくられている。
百聞は一見に如かず。今年の夏こそ、実際の目で「南アルプススーパー林道」の姿を見てみたいと思った。
（参考）
「甲斐駒ヶ岳 〜早春の早川尾根をたどりオベリスクへ〜」ヤマレコ日記掲載
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-185767
コメントありがとうございます。
今年も、北沢峠と広河原を結ぶ南アルプス市営バスは災害復旧のために「運行休止」だそうです。
私の記憶では、2019年10月の台風19号の被害で通行止めになって以来、運行休止が続いているのでないでしょうか。
コメントありがとうございます。
私は、リニア新幹線のトンネルと地震災害時の危険性との関係性については、門外漢でよくわかりません。
大規模地震の災害は、多くの人々の運命に暗い影を落とすことは確かですから、怖さを感じますね。
最近、富士山噴火・南海トラフなどについてはいつ起きてもおかしくないという人もいます。
昭和五年の北伊豆地震では、掘削中の東海道線のトンネルが2mずれて、工事がストップしました。日中戦争中だったので工事は中止となり、北伊豆地震の震源となった丹那断層は、その後の調査で活動周期が約700年と判明し、当分の間地震は発生しないものと判定され、東海道新幹線の新丹那トンネルも丹那断層を横切る形で建設されたそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B9%E9%82%A3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
日本はどこでも地震あるし注意のしようがないですね。
岩盤を垂直に切通したところを行くと地震が来ないことを祈って早く通過したい気分になります。
コメントありがとうございます。
同感です。
私も、色々な山に林道を使ってアプローチすることがありますが、時には車の離合がむつかし急峻な場所がある場合もあり、台風など悪天候の後は計画実行を延ばすなど気を配っています。
まして、地震となると予測できませんので、大規模地震に遭遇したら林道走行中に限らず最悪のケースに見舞われるに違いありません。いつか、槍ヶ岳の北鎌尾根登攀中の登山者が地震で崩落した岩で山岳事故にあったことが思い出されます。
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