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伊那の飯田から三河の岡崎、尾張の名古屋を結ぶ飯田街道の果てしなき山路の最後の峠となる伊勢神峠もそういった峠の一つである。
そもそもこの街道は、塩の道とも、中馬さんの通る中馬の道とも称されるように、明治末に木曽谷に鉄道（中央線）が敷かれるまでは、物流の幹線ルートであった。
私は、以前この街道を山路の入口であるの足助の町から伊勢神峠を越えて稲武の町まで歩いたことがあった。その時、峠に立派な伊勢神宮遥拝所があるのに驚かされた。
調べてみると、伊勢神宮遥拝所は、文久4年（1864年）に稲橋村（現在の豊田市稲武町）の庄屋の古橋家の6代当主であった古橋源六郎暉皃（1813-1892）が建てた。
通常そのような地形の峠は、山深い集落で暮らす人々にとって異世界への夢やあこがれを強く感じさせる場所であったに違いないが、彼はそれに留まらなかった。ある時、この峠に立って、「天は、水郷には魚や塩、平野には穀物や野菜、山村にはたくさんの樹木を、それぞれ与えているのだ。」と確信したのだという。そして、長年にわたって植林、養蚕、茶の栽培など、土地に合った産業を新 たに興すのに全身全霊を傾けた。（参考資料１）
その活躍ぶりは、明治初期に品川弥二郎から日本の三大篤農家の一人として称えられたというから、今日に言う地域創生の傑出した実践家であったというわけである。
そのような彼が、伊勢神宮遥拝所を一体どのような思いで建てたのだろうか。彼は、本居宣長や平田篤胤の国学に傾倒し、文久3年（1863）に江戸に出て平田鐵胤（篤胤の養子）の門人となっているのだから、もとより敬神の気持ちが強かったに違いない。
ただ、天気の良い日には伊勢湾まで見渡せるという峠に立った私の目には、江戸から明治へと時代が大きく動く潮目の幕末期において、新たな時代、新たな世界の息吹の表象として神宮への祈りがあったのではないかと感じた。
最後に、最近とあるニュースで、古橋源六郎暉皃のご子孫の方が東京からUターンして「いま、イナカは一周回って面白い」の言葉を掲げ、稲武の活性化に取り組んでおられることを知って、心からエールを送りたいと思った。
写真�‘修琉棒�神宮遥拝所（再建されたもの）
写真�⇒敘匳蠅�らの展望及び展望解説板
（参考資料１）
「古橋源六郎暉皃 - 豊田市近代の産業とくらし発見館」
http://www.toyota-hakken.com/pdf/150718_exhi_info2.pdf
（参考資料２）
読売オンライン記事（2024.2.14）
https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/news/20240212-OYTNT50008/
（参考）
「中馬街道 〜足助から伊勢神峠越えて稲武〜」2021年4月9日
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3058622.html
興味深く読ませていただきました。
かつて高校時代に島崎藤村の夜明け前を読んで、木曽谷と伊那谷の往来が盛んであったこと・主人公が最後に地元で神官となり最後に気が狂ってしまったことが印象に残っています。
裏覚えだったので検索すると、平田派が全盛だったことを理解しました。
…
馬籠で本陣・問屋・庄屋を代々の家業としてきた家に生まれ、その家業を継いだ半蔵は、平田派の国学に傾倒して王政復古を願った。しかし、明治維新は彼が描いたものとは別のものとなっていく。絶望した半蔵はついに狂い、座敷牢に生涯を終えた。
『夜明け前』と平田国学
https://tsubouchitakahiko.com/?p=3885
…
さらに今改めて「青空文庫」で若干確認すると、興味深い時代背景なども理解できました。
高校時代の理解は覚えていませんが、第一部の方が中山道での皇女和宮の対応などにより具体的な印象があった気がします。
夜明け前・第二部下・島崎藤村
https://www.aozora.gr.jp/cards/000158/files/1507_14593.html
コメントありがとうございます。
私も藤村の「夜明け前」を読んだのは、高校３年生の夏です。当時、一応はいっぱしの受験生のつもりだったので、国語教師から夏休みの課題として読書感想文の提出が求められたのには、閉口した思い出があります。
実は、小説の主人公の青山半蔵と稲橋村の古橋源六郎暉皃と、激動の時代を精一杯生生き抜いた人間として様々な点で共通点のあることに、内心驚きを禁じえませんでした。
ただ、暉皃は、明治維新後５年程地元の役所に出仕して得た経験や知見を生かしながら、６０歳で帰郷後は地域の殖産振興に余生をささげ、７９歳の天寿を全うしました。
激動期の生きざまに様々な思いが去来します。
僕が島崎藤村を読んだのはいつだか忘れましたが、高校2年ぐらいのことでしょうか？
破戒なども読んだ記憶にあるので、併せて読んだことかと思います。
学校で読書感想文などは書かされた記憶はありませんが、小学校時代？に学校で映画館に行き、感想文を求められた記憶があります。どうせ皆んなが同じような感想を持つだろうに、そんなことをしても面白くないだろうと感じました。
最近ビブリオバトルをテレビで見たことがあります。このような仕組みで個人個人が自分が受け取ったことを客観的に整理していく仕組みは面白いと感じました。最近近くの図書館で中学生のビブリオバトルを公開で行うとの話題に興味を感じたことを覚えています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビブリオバトル
「古橋源六郎暉皃」については、初めて知ったので、以下の動画で確認しました。
https://youtu.be/O1IleUueZME?si=Gcs7h-5sDJS9rYQS
彼の功績を受け継ぐ組織もあるのですね！
一般財団法人古橋会
https://furuhashikai.com/foundation/
個人的には「小説の主人公・青山半蔵」の方に興味が惹かれます。
印象を深化させていない状況ですが、当時伊那谷と木曽谷では伊那谷の方がさまざまな新しい情報に直面する一方、木曽谷は文化の深化させてしまった気がします。明治11年（1878年）に「巡幸中の明治天皇に憂国の歌を書いた扇を投げて不敬罪に問われる」など、明治10年の西南戦争後の状況とかけ離れています。
この間、以下の論説に初めて接して、改めて当時の状況を興味深く感じました。
平田国学の幕末維新・宮地正人
http://meijiseitoku.org/pdf/f55-6.pdf
色々考えさせられる今日この頃です。
情報ありがとうございました。
再度コメントありがとうございます。
情報提供のあった「平田国学の幕末維新・宮地正人」チェックしてみましたが、シンポジウムでの基調講演で、私にはなかなか読み切れませんが、大変興味深いものでした。
そういえば、伊那谷と中山道の妻籠宿を結ぶ大平街道を車で通ったことがありましたが、この街道は江戸時代中期（宝暦4年）に飯田藩によって拓かれたもので、伊那谷と木曽谷を結ぶ人・モノのルートとして明治期まで使われたようです。「夜明け前」の時代には、なおさら重要なルートであったでしょう。
なお、蛇足ながら、我が国語教師のために弁護しておきますが、感想文といっても原稿用紙５枚や１０枚は要求していたと思う。今から思えば、受験に媚びることなく、高校卒業までに、一度は「近代」と「封建から近代へと胎動する苦しみ」の意味を自立して考えさせたいとの教師としての意地と願いがあったのだと思います。
もっとも、その願いに反して、小説の最後の解説文をかなり写す生徒にとどまってしまいました。教育方法とは、むつかしいものですね。
「原稿用紙５枚や１０枚の要求」とはすごいですね。内容はともかく努力に対する配慮も当時の時代背景かもしれないと感じました。アマゾンの感想などでそんなに長いと読まれないと感じるのは最近の風潮でしょうか？
国語教育として感激した読み物は以下の「奇跡の教室」でした。
https://www.amazon.co.jp/-/en/%E4%BC%8A%E8%97%A4-%E6%B0%8F%E8%B2%B4/dp/4094087737/ref=sr_1_1?adgrpid=52281422574&dib=eyJ2IjoiMSJ9.GQaRxndVFyycJvvFZ0aSRjyTDfg_gc6Oe7wtopjCxU6zrE0sIwIDS4ZDEyIiKK5uN_Sppn5lxR3arUA5RRvgZDT8rQDqxu5-I71SD1zN0rZsvVHM_ife5APXAa3X6XDtDfuY8VZyu4e7NPaAC9860fWmzRfP47VteXfhTo7lsgrM-GtO-THY77SjLi-1cYd2QEUzbU4Qb8dn9i69HzftMFdMvrBRMipTK0xz4thGqms.19qQ61ryayXTTYrZ_Og62FNLk-o8mBdrCGLXJJYI6vg&dib_tag=se&hvadid=679055276120&hvdev=c&hvlocphy=1009241&hvnetw=g&hvqmt=e&hvrand=14430851652313667834&hvtargid=kwd-396814512157&hydadcr=16035_13711624&jp-ad-ap=0&keywords=%E5%A5%87%E8%B7%A1%E3%81%AE%E6%95%99%E5%AE%A4&qid=1710242987&s=books&sr=1-1
https://www.yamareco.com/modules/diary/2802-detail-324300
その後、ついついこの日記での夜明け前の話題を思い出し、当時AI があれば宿題などに対してどのような対応が考えられるかと思ってみました。その過程で以下をAIに質問してみました。
AI先生は、回答を求めて相談する相手としては有効かと感じました。
回答は最終的には自分で探し出し対応するものでしょうが、その過程での活用手段の一つとして考えることもできるでしょう。
今回は話題が拡がり、楽しい機会を持つことができました。ありがとうございます。
【AIへの質問】
学校から島崎藤村の夜明け前の感想文の提出を求められています。どのような観点から作成したらいいのでしょうか？
【AI からの回答】
こんにちは！お手伝いできて嬉しいです。島崎藤村の『夜明け前』は、明治時代の文学作品であり、自然や人間の内面の葛藤、愛情といったテーマを探求しています。感想文を書く際には、以下の観点を考慮すると良いでしょう。
1. テーマとメッセージ: 作品が伝えたいテーマやメッセージは何だと思いますか？自然や人間関係に焦点を当てているので、作者がどのような意図で書いたのかを考えましょう。
2. 文体と表現: 『夜明け前』の文体や表現方法に注目しましょう。藤村の独特な叙情性や美しい描写は、作品の魅力の一つです。
3. 登場人物の描写: 登場人物の感情や人間性に焦点を当てることも重要です。主人公やその他のキャラクターたちは、どのような変化や成長を遂げたのでしょうか？
4. 自然描写: 自然は作品の中で非常に重要な役割を果たしています。自然の描写について感じたことや、それが作品全体に与える印象について考えてみましょう。
5. 個人的な感想: 最後に、作品に対する個人的な感想を述べることも良いでしょう。自分自身の経験や感情と作品を結びつけ、その作品が心に与えた影響について述べてみてください。
これらの観点に沿って感想文を書くと、より深い理解と洞察を得ることができるでしょう。どんな具体的な点でもお伝えいただければ、それに合わせたアドバイスをさせていただきます！
なるほど。AIは「自然や人間の内面の葛藤、愛情」がテーマと分析しているのですね。
AIが「自然」というのは、小説冒頭の「木曾路はすべて山の中である。」との一文がいかにインパクトがあるか、その証左ですね。
藤村は、馬籠を「山の中とは言いながら、広い空は恵那山のふもとの方にひらけて、美濃の平野を望むことのできるような位置にもある。」と描いていますが、確かに馬籠を中津川に向かって歩いていくと、だんだんと明るい気分になったことを思い出します。
…
東濃・南信地域は昭和恐慌の時期まで日本を代表する養蚕・製糸業地域でした。地域の養蚕製糸に関わる商人たちが横浜開港を見逃すわけがありません。中津川の間半兵衛、その姉婿であり中津川で医者兼漢学塾教師の馬島靖庵も、かき集められるだけの生糸横浜に持っていき、一八五九年の第一回目の居留地外国商人との取引きでは大もうけし、その帰りに江戸の気吹舎に直接顔を出し、入門の手続きをするのです。その彼等は横浜で始めて世界資本主義と接触し、そのまっただ中で掛け引きし、運良く大きな利害をあげることができたのです。しかし自分たちが商人として私的利益を得ることが日本にとっての国益となるのかどうか、しかも彼等の入門した一八五九年九~十月、朝幕関係は幕府の「無勅許開港路線」をめぐって大分裂の時期に突入してしまったのです。更に居留地外国商人達は、治外法権によって、日本の法律が全く機能しない侭、彼等は預った生糸商品を勝手に売り払っても、その金を渡さず、しかも神奈川奉行所はこの訴えに全くの及び腰というていたらくです。そして間半兵衛達が一八六〇年再度の巨利を狙って横浜に出た年は、洋銀相場の暴落と居留地商人の不法行為によって大損を出してしまいました。
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