秋海棠に蜘蛛の糸

　酷暑の続く中、庭では秋海棠の群落が訪れる秋を待ちきれず、花を盛りと咲き誇っている。
大陸からの帰化植物であるが、これほど茶花として相応しい花も少ないだろう。
楚々とした和風の佇まいは、凛として実に美しい。
毎年、同じ場所に群生し、種を採取してこちらの希望するところに蒔いてみても、気に入らない場所には決して定着しない気難しさも、この花の個性である。
乾燥を嫌い、湿潤な地を好むのに、水はけの良さを要求する。
半日陰を好み、短時間の陽射しを必要とし、それに固執する。
花に似合う見やすい場所にと思うのだが、人の意に容易に添うことはない。
ベランダの物干場の下がお気に入りなのか、一段と見事な群落を形成している。
だが、秋海棠は群落を観賞する花ではない。
一本を備前焼の花瓶などに活けて和室に据えてこそ、その美しさを最大に発揮する。
やはり茶花である。

この庭の秋海棠の祖先は、１５年前の奥鬼怒湿原への山旅の帰途、鬼怒川渓谷で採取した種が源である。
独特な三角形の生八橋を連想させる様な５，６個の種苞の付いた、たった一本が源なのである。
花に似合い、しかも見易い所に蒔いた積りだったが、風で飛んだのか思わぬ場所に生えてきた。
毎年の種を希望地に蒔いてきたが、思うに任せず今では諦めている。

群落の片隅に不自然に曲がり、風揺れの不自然な葉に気付いた。
よく見ると、ベランダの支柱とこの葉の間に大きな女郎蜘蛛が巣を張つて、その支え糸に引かれているのである。
秋海棠の凛とした気難しさも、女郎蜘蛛には通用しないらしい。

　　蜘蛛の巣に　袖引かれ居り　秋海棠

　　　　　　ainakaren

＊しゅうかいどう「秋海棠」シュウカイドウ科の多年草。
中国南部の原産。
観賞用に栽培し、しばしば野生化。
地下に塊茎がある。
茎は肉質・多汁。節は紅色。高さ約６０センチメートル。
９月ごろ、淡紅色の単性花を開く。<季・秋>・・広辞苑・・

　　病床に　秋海棠を　描きけり

　　　　　　正岡　子規

コメント

kenpapa

風流人なんですねぇ。
こんばんは。

一昨日の酔芙蓉と言い、今日の秋海棠と言い・・・・繊細な観察眼に恐れ入りました。

そして・・・この句です。

失礼ですが、renさんってすごい風流人なんですねぇ。

浅学非才の身としては羨ましい限りです。

ainaka ren

秋海棠に蜘蛛の糸・コメント深謝！
kenpapaさん・こんばんは。
いやぁ〜またまた、お恥ずかしい！
私は浅薄雑学の徒、アナログ情緒人間ですよ！
何にでも興味を持つのに難しくなると、それ以上深入りしないんです。
結局のところ山もそうでした。
そのため命だけは無駄に永らえていますがね。
アナログ思考ですからパソコンに弱く、未だに巧く使えません。
解説書も難しいところは飛ばしてしまいます。
草花は単に好きなだけで学問的なことは何も知らないのです。
褒めていただくと、やけに嬉しいのもアナログ情緒人間の証拠です。
有難う御座いました。廉

yamabito

「和室に据えてこそ」なんですね！
　ainakaren さん　今晩は

>備前焼の花瓶などに活けて和室に据えてこそ、その美しさを最大に発揮する。
　庭先などで良くみかけますが，野暮な身にはその愉しみかたも知らずで，お恥ずかしい限りです。
　これからも，花の愉しみ方についてのご教授をよろしくお願いします。

ainaka ren

秋海棠に蜘蛛の糸・コメント深謝！2
yamabitoさん・ご来訪深謝です。
恐縮です。
秋海棠はベコニアと同種族の花だそうですが、バタ臭い洋花の感じが無く和風ですね。
ベコニアが情熱的な南欧の感じなのに秋海棠は楚々とした和風です。
１本だけを葉をつけて花瓶に生けると、和室に合いますのでお茶席に使われることが多いですね。

写真はキャノンIXY digitalの小型デジカメで写しましたが巧く行きません。
近いところにピントが合いにくくボケ気味です。
花マークでも小さな花は巧く写りません。
貴、日記の写真は小さな花が綺麗に写っていますが、どのように撮影なさっておられますか。
三脚はお使いですか。
花の写し方コツをご教授頂ければ幸いです。ainakaren

yamabito

小型デジカメで写してます
　ainakaren さん　今晩は

　無粋なもので，お茶もたしなまず，茶花の愉しみかたが分からずにおりましたが，勉強になりました。
　「手に取るなやはり野に置け蓮華草」と，自然にあるものを自然の中で見ることを楽しみにしており，毎年，同じ山へ同じ花に会いに出かけております。その為でしょうか，秋海棠に限りませんが，たまに庭を逃げ出した花を野山で見ても，あまり興味を覚えませんでしたが，ainakaren さんのお陰で，多少違う見方が出来るかも知れません。

　ところで，日記の写真は，安物のデジカメです。
　ainakaren さんと同じキャノンで Power Shot G11 です。
　ainakaren さんの機種にあるかどうかは分かりませんが，G11はマニュアルフォーカス機能とバリアングル液晶（液晶画面の角度を変えられる）が装備されています。
　花は，殆どマニュアルフォーカスを利用しています。また，バリアングル液晶ですので，花の近くにカメラを置いても屈んだりせずに撮影でき，重宝しています。
　山行中は，１つでも多くの花を写真に収めたいので，いちいち三脚をセットしている時間がありません。殆ど手持ちです。このため，日記のものも，三脚を利用するともっと綺麗に撮れるとは思いますが，撮影練習と位置づけし，山行と同じ撮り方としています。

ainaka ren

花の山旅は楽しいですね。
yamabitoさん・有難う御座いました。
G−１１でしたか。
よく知っています。
マニアックな撮影が可能で、画質のいいカメラですね。
私のはIXY digital 1000です。
液晶は固定、オートフォーカスのみで花マークの（近）と山マークの（遠）、それ以外の（中）の３段階です。
花マークでも小さな花は近づくとピンボケです。
液晶が固定なので地面に腹ばいになったりして写しています。
どうやら花の撮影に向かないカメラのようですね。
すぐ買い替えるわけにも行きませんので、なにか工夫してみたいと思います。
草花の日記に写真が無いのは寂しいですからね。
いろいろご教授有難う御座いました。ainakaren