朝、咲いたときは白無垢の花嫁のように清楚な純白の花である。
一日花の酔芙蓉は、昼過ぎまでは純白のままの清楚な姿であるが、午後から夕方にかけて次第に花弁に朱色がのり始め、時と共に次第に色濃くなり陽の沈む頃には妖艶な紅色の熟女の様相を呈する。
そして一夜の艶熟を見せて翌朝には暗赤色に萎み、花は命を終える。
高橋 治の小説「風の盆恋歌」には、随所随所に象徴的に酔芙蓉の花が登場する。
熟年になってふと燃え上がる人妻の死に至る破滅の恋を象徴しているのである。
物語は下世話に言うダブル不倫が主題で、渡辺淳一の「失楽園」と同じである。
流行作家の渡辺が流麗な文体と、巧みな構成で書き進めているのに比べ、高橋の文体は朴訥で荒く、構成にも難がある。
しかし「風の盆恋歌」は美しい八尾の風の盆の情景描写が、幻想的雰囲気に満ちた筆致で美しく描かれており、倫理的清潔感が高く、こちらを高く評価したい。
さて、ここで文芸評論をしようと云うのではない。
酔芙蓉について語りたいだけなのだ。
庭の片隅に一株でいいから酔芙蓉が欲しくて、2年続けて挿し木を試みるも、巧く着かない。
芙蓉には独特な挿し木の方法が良いとされるが、それでも駄目であった。
何故、酔芙蓉が欲しいのか?。
〜この爺の酒の相手をしてもらいたいのである。
庭の西日の当る縁側から酔芙蓉を眺めながら昼酒を飲み始め、花の紅潮に合わせる様に自身も頬を紅潮させてゆく。
悠久の時に流される如く、花の色に誘われ杯を重ねる。
此れぞ当に至福の時ではないか。
酒はキンキンに冷やした諏訪の地酒、真澄の”あらばしり”などが理想的だが、これは寒仕込みの冬酒で季節が合わない。
辛口の夏酒なら何がよいだろう。
いろいろ想像するのも楽しい。
何よりも美しい花が我が宴に侍り、杯が進むほどに次第に頬を紅潮させ夜を迎えるなど、当に魅惑の宵ではないか〜! 相仲 廉
*すいふよう「酔芙蓉」アオイ科の落葉低木。
東アジア暖地の原産で古く中国から渡来したといわれる。
もっぱら観賞用として庭園や花壇によく栽培され、夏から初秋のころにその艶麗な花のかんばせを目にして驚くことが少なくない。
花は単弁と重弁があり、遠目には同じアオイ科のムクゲと紛らわしいが、樹形や葉の形が全く違うので誤ることはない。
朝開き一日で花は萎むが、白い花が昼を過ぎると花弁一面にほんのりと紅色が加わり、夕刻には色濃い紅色に色付き、とりわけうたびとの詩心をかき立てる。<季・秋>・・花の大歳時記・・
酔芙蓉 短き命 刻みけり 松岡六花女
*(写真は正午に撮影した、珍しい単弁の酔芙蓉である。
紅色の小花は前日に命を終えて萎んだ花である)ainakaren
*関連日記「午後の酔芙蓉」 https://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-24353
こんにちは,ainakarenさん。
酔芙蓉・・・綺麗な花ですね
朝は真っ白なのに夕方にはピンクに変わるなんて・・・
この目で見てみたいです
どんな花なのか調べていたら,山形にある会社に“酔芙蓉 真紅 大吟醸”
というお酒があるのを見つけました。
http://www.mitobesake.com/products.html
飲んだことはありませんが,きっと酔芙蓉の花のようになるのでしょうか
kayo-piさん・こんにちは。
コメント深謝です。
酔芙蓉は比較的にポピュラーな花ですから、どこかでご覧になったことがあると思います。
午前中に咲いている花が皆白いのに萎んで蕾になったような、花が紅いので異様な感じを受けます。
花が酒に酔うように紅色に染まってゆくので、酔芙蓉と名づけられたのでしょうね。
大吟醸「酔芙蓉」の情報有難う御座います。
酒好きの私としては興味津々です。
同じ大吟醸でも清純な純白より、熟女の真紅のほうが、高価とは面白いですね。
もののよく解った人が命名したのでしょう。ainakaren
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