足をすくわれてしまうのであるから、ベテランも初心者もない。
流され揉みくちゃにされた挙句、圧雪に埋没されてしまう。
もしも、雪面上に体の一部分でも露出して止まれば幸運というほかはない。
冬山で怖いのは吹雪と雪崩だが、吹雪は最近の登山術と装備である程度克服出来るようになった。
だが、雪崩は依然として如何することも出来ない。
精々、ビーコンや雪崩紐を装着する事だが、それに頼っても生存に繋がるチャンスは少ない。
一般的には、事前に危険を察知し行動を差し控えるしか方法がない。
雪崩に関しては一応の常識というものがある。
・自分の失敗体験でもあるが、降雪中と新雪直後の沢は非常に危険である。
スキーで直登しにくい斜面(傾斜25度以上)に新雪15センチ以上がある場合は常に危険である。
・短時間に大量の降雪があった場合、例えば一夜にして1メートルもの新積雪があった場合は尾根筋でも危険である。
・平年の気温に比べて、著しく高くなっている時は危険である。
・陽気がポカポカ暖かい好天の日は危険である。
・積雪の上に雨が降った日は危険である。
・新積雪が流動性を帯びている場合は極めて危険である。
・こうした状況の環境に近づけば危険であるし、単独行では尚更のことである。
細かい注意点は他にもあるが、特に重要なことを纏めた。
雪崩に巻き込まれれば、助かるチャンスはベテランも素人も同じ確率だと思う。
昔のことだが岳会で、雪の流れに浮くように泳ぎ 停止寸前に顔前に手と腕で呼吸空間を作れ〜などと教えられたが、練習も不可能なことが巧くゆくとも思えない。
雪崩には只管 用心と覚悟 で臨むしかない。
用心とは、単独行を避け天候・環境と行動時刻を留意したスケジュール管理と、巻き込まれて埋没した場合の探知器機や雪崩紐の装着だろうか。
新雪の斜面でのワッフ音は雪崩の切迫前兆だが、それを聴いての回避行動が却って雪崩を誘発する事もあり、最善策への答は無い。
新雪の沢筋を登攀中にワッフ音を聴き、回避しようと左右の岩稜にトラバースを始めた途端に自分の足元から雪崩を発生させることも多い。
不安定な斜面を横に切断すると、そこが発生源になりやすく危ないのだ。
そんな時、運を天に任せる心境にもなるが、それが覚悟というものだろう。
覚悟があれば、冷静な判断も出来る。
昔、幽ノ沢出会い付近をトラヴァース中に、上からの雪崩に湯檜曾川側へ100メートル以上も吹き飛ばされた。
スキーを履いた両足脛が雪上に出た状態で止まり、這い出すことができたが顔面をスキーで打っていて、唇を切り上前歯3本に入れ歯をする羽目になった。
いざ吹飛ばされれば無我夢中で何かをする余裕など、ありはしない。
雪山には常に雪崩の危険があり、登山者には用心と覚悟あるのみである。
雪崩は、遭遇してしまえば不可抗力も同然だと思う。
だからこそ、用心と覚悟が肝心なのである。ainakaren
*注意喚起の願いから、雪崩テーマの類似した日記を過去複数回投稿しています〜
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