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毎年秋、定例のように単独縦走の山旅の終わりの夜を過ごす一軒宿には、電気も電話もありません。
郵便で予約し、宿泊の承諾も郵便という山奥の一軒宿です。
年老いた母親と中年の息子が二人で切り盛りする、とても小さな温泉宿です。
薄暗い玄関から奥に声をかけると、顔なじみの息子が出て来ました。
「まずは風呂に入って〜、その間に夕食の支度するから〜、風呂、暗いけどすぐランプ点けに行くから〜」
薄暗い岩場の長い階段を降りて湯に浸かると、硫黄の匂いが鼻につき周囲は湯気に曇っています。
今夜の泊まり客は自分一人だけのようです。
暗い岩風呂に浸かり目を凝らして周囲を眺めていると、階段の上にぼんやりと灯が見え、誰かが岩風呂に降りてきます。
母親の老婆が昨年と同じように手にランプを提げて降りて来て、階段下のランプに灯を移してくれました。
老婆は腰は曲がっていても、働き者で泊り客達の人気者なのです。
「婆ちゃん、いつもありがとね〜」
老婆は無言のまま戻って行きました。
ほの暗いランプの光の中で湯に浸かりながらぼんやりと今日歩いたルートを想いかえしていると、暫らくして再び階段上に灯が見え今度は息子が降りてきます。
「あれっ、お客さん、ランプ点けてくれたんだ〜」
「ううん、さっき婆ちゃんが点けてくれたよ〜」
息子は一瞬キョトンとしていましたが、笑いながら「お客さん、冗談は言いっこなしだよ〜、婆ちゃんは去年の暮れに亡くなったよ〜」
「〜!!!・・・」





*ランプ夜話・第2話 http://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-18798
すごく、ミステリアスで最後まで読んでしまいました。
なんか、そんな思い出の残るところ素敵ですね。
あえて、場所はききませんが、いいですね。
nonkeyさん、こんばんは。
50年ほど前、先輩が話してくれた怪談を思い出して書いてみました。
場所は東北の鄙びた山の縦走路の終点の宿でのことです。
第二話、ご期待下さい。ainakaren
renさん、おはようございます。
さすがです。
私は那須の奧辺りを想像しましたが・・・東北でしたか。
次作にも期待しちゃいます。
kenpapaさん、おはようございます。
宮城と岩手の県境内陸部の山が舞台、と聞いていました。
私の知らない山域です。
合宿の夜は、先輩達が代わる代わる百物語を語り、新人を恐がらせて喜ぶのが常でした。
私も新人に語ったものです。
懐かしい想い出です。
中年になって、常連の居酒屋仲間内で私は猥談と怪談で知られていたこともありました。
居酒屋はもうありませんが、これもまた懐かしいです。ainakaren
こんにちは。
この手の話はあちこちで聞きますよね。
それにしても、そのものズバリの幽霊なのですね。
私自身の経験でも2つあります。いずれも、若いときに山小屋での体験ですが、その時はあまり不自然を感じなかったのですが、あとで思い出すとつじつまが合わず、背筋が寒くなる話です。その山小屋にはもう一人では泊まりたくありません。
そのうちに、機会があればご披露しますよ。
pamir88さん、こんばんは。
不可解な話は数多くありますよね。
それを幽霊とは断じませんが、人間には解明できない現象が沢山あります。
貴兄のご体験も是非ご披露下さい。
楽しみにしています。
私にも奥秩父の無人小屋に単独で泊まったときに、血の凍るような体験があります。
それ以来、単独で無人小屋に泊まることは止めました。
単独のときは、営業小屋泊かツェルト泊です。
心霊現象はどのようなメカニズムで起こるのか、興味深いですね。ainakaren
本文の字句を訂正、簡潔にし読みやすくしました。
高島野十郎「蠟燭」
心温まるような、背筋が凍るような、不思議な話ですね〜。
第二話も楽しみにしています。
chanqさん、こんにちは。
第2話はランプが主役でウクレレが共演です。
そしてもう一つ重要な登場者があります。
場所は麦草峠に近い白駒の池の畔にある青苔荘によく似た立地と建物の、他の場所の別な山小屋、とだけ申し上げておきます。
第1話も昔からよく聞く話ですが、第2話も知る人ぞ知る話です。
脚色を構想中です。
暫時お待ち下さい。ainakaren
怖かったでした。分からないから怖いと感じるのでしょうか?
科学的に説明できない事柄を人は否定するのが多い。
霊的な事もそのような感じがします。
私の友人の友人(全くもって他人ですね)が霊的現象を目でみる事が出来る人でして、TVでしかそういう人
を見た事がなかったのですが、実際に彼に会ったら
ちょっとビビりました。ホントにこういう能力が
ある人がいるんだなぁと。。。
ttnakayanさん、こんにちは。
コメント深謝です。
質問箱の回答の補足を兼ねて、コメント・レス致します。
そうですね。
人は誰でも、突然心霊現象の様な不可解な事態に遭遇すると、恐怖を感じる様です。
肝っ玉は、想定される事態に限って、太くなるのです。
ですから、心霊現象を日常的に体験している人に、恐怖感は無いと思われます。
何事も理論や技術を学ぶより、実体験を積む事が大切です。
特に登山は習うより慣れが重要です。
心霊現象は不可解だし、科学的学問的に解明されていません。
しかし、未解明未体験を理由に、その存在を否定しないことが大切です。
心霊現象には、信じようが信じまいが遭遇する時には遭遇するのです。
大自然には、例えば宇宙のように未解明なまま存在する事象が幾らでも有ります。
登山は、大自然の未解明な事柄、不思議や不安、冒険や恐怖、そして危険や困難、ときには不便さえも我が身に受け止め体験する事で、一層の楽しさや達成感、そして感動が生まれます。
そのとき、大自然への畏敬の念が深かまるのです。ainakaren
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