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山中では周囲の自然音に耳を澄ます習慣が身に付いているから音楽を聴くことはないのだが、風雪の静かな単独夜営では、切実に音楽が聴きたいと思う事があった。
街に在って「冬の旅」を聴くと荒涼たる原野を想うのだが、現実の冬の原野で求める歌は厳しく張詰めたドイツ歌曲より、心に優しく温かいフランス歌曲が聴きたいという思いがあった。
例えばフォーレの「優しき歌」「夢のあとに」のような〜。
「優しき歌」に対して、自然界には不似合いだが極めて魅力的な「妖しき歌」がある。
ジャズボーカルは元々夜の巷が似合いだが、この随一の「妖しき歌」とはジャズトランペッター、チェット・ベーカーのボーカルである。
およそ荒涼たる原野のイメージとは縁遠い、巷の喧騒と紫煙の中の孤独感漂う歌なのだ。
歌声は冷静で淡々としていて、しかも甘い色気がある。
気だるい風情だが、退屈さは微塵もない。
中性的だが、オカマっぽくない。
一説によると、その気のある人にはオカマっぽく聴こえるとのことだが、私に真偽の程は解らない。
しかし、「妖しき歌」と言うに相応しい相矛盾した特質を備えたボーカルではある。
それは唯一、後年のボサノバ歌手、ジョアン・ジルベルトに似ているが他に例がない。
このアルバム、「CHET BAKER SINGS」が録音された1954年から1956年頃のチェット・ベーカーには、不思議に妖しい魅力があった。
ボーカルは不可思議な中性的感覚の甘美とロマンチシズムに満ち、その上そこはかない哀愁が漂う。
トランペットのスイングは、軽やかでリリシズムに溢れている。
その歌と喇叭の見事な対比〜、その絶妙な組合わせが素晴らしい魅力となっている。
このアルバムの白眉は「アイ・フォール・イン・ラブ・トゥー・イージリー」だろうか。
そこに彼の特質の凡てがあり、歌も喇叭も一抹の寂しさを漂わせ憂愁の美を飾っている。
「妖しき歌」〜、山の中では聴きたいと思ったことが一度もない。ainakaren
*My ideal
あまりお気に入りのジャズミュージシャンではありませんが、チェット・ベイカーのCDは1枚持っています。ジャズは勉強しながら聴いてます。
wakaさん、こんばんは。
コメント深謝です。
wakaさんはジャズファンでしたね。
数多い彼のアルバムから一枚だけ最高作を選べば、やはりこれでしょうか。
晩年の作品は残念ながら〜。ren
ainakarenさん 初めてお便りします。
いつも大変為になるかつウイットに富んだ日記を拝読させて戴き感謝申し上げます。
私もJazzが好きで、当時はドJazzを聞いていて
CHET BAKER SINGSはもちろん西海岸のPasific Jazz
レーベルなんぞは全く関心無くいましたが、
年を取る毎にCHET BAKERもなかなかいいね〜になり
所有するレコード・CDともいつの間にか棚一杯になりました。
その中でもainakarenさんとは逆で、晩年もののItalyのピアニストであるエンリコ・ピエラヌンツィとの強力カルテット物が、初期の「妖しき歌 CHET BAKER SINGS」の妖しさに枯れ具合がMIXされサイコーで最期にもうひと花咲かせたかと思っています。
山もJAZZもやはり個性が必要で、一生に一度の煌めきを探しに双方ともこれからもず〜っと探っていこうと思っています。
ainakarenさん日記の沢山の煌めきを毎度楽しみにしていますのでこれからも宜しくお願いいたします。
by kazz
kazzさん、こんばんは。
コメント深謝です。
ジャズお好きでしたか。
私はビバップからモード前期くらいまでのジャズが好きでよく聴いております。
48年頃から64年頃まででしょうか。
ピエラヌンツィとの演奏は確か80年頃で、後期モードジャズがムードジャズに変質していた時代ですね。
現在のジャズは又昔帰りしていますが〜。
自前の前歯を失った喇叭の音も声も艶を失い、容貌は老いて満身創痍の凄みがありますね。
それを好しとするファンも多いようですね。
やっぱり私は若い頃聴き慣れたジャズに惹かれてしまいます。
こちらでははじめまして。
本日こちらに新規登録いたしました。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
チェット・ベイカーは学生時代によく聴いたミュージシャン。
このアルバム中「I fall in love too easily」が白眉であることには完全同意です。
むしろ、この演奏に共感してくださる方々がもっと増えて欲しいほどです。
“簡単に恋に落ちてしまう”
青春期の私はこの曲に共鳴したものでした。
悲愴感が漂うことなく、あくまで軽く仕上げているところに惹かれたとも言えます。
それこそがJAZZの良さでもありますね。
「But not for me」の軽みも捨て難く感じております。
izackkarenさん、こんばんは。
コメント深謝です。
白眉の曲、それらしく女の声で「あたしって〜、惚れっぽいの〜」の台詞を想像しながらニヤリと聴いてます。
中性的声で女の歌も巧いけど、オカマっぽくないのがいいですね。
何度聴いても飽きることがありません。ren
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