ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 528497
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

台風の来る前に 槍ヶ岳 北鎌尾根水俣乗越ルート

2014年10月10日(金) 〜 2014年10月12日(日)
 - 拍手
kuro_a その他1人
体力度
9
2〜3泊以上が適当
GPS
54:40
距離
48.2km
登り
2,933m
下り
2,923m
歩くペース
標準
1.11.2
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
7:35
休憩
1:18
合計
8:53
7:30
7:31
6
8:07
8:07
3
8:10
8:10
32
8:42
8:42
10
9:26
9:36
35
10:11
10:11
7
10:18
10:19
8
10:27
10:27
28
10:55
11:29
24
11:53
11:53
43
12:36
12:44
72
13:56
14:20
110
2日目
山行
9:42
休憩
2:57
合計
12:39
4:58
147
7:25
7:59
172
10:51
11:58
242
16:00
17:06
10
17:16
17:26
11
17:37
宿泊地
3日目
山行
8:59
休憩
0:24
合計
9:23
4:30
4:30
202
7:52
45
宿泊地
8:37
8:37
32
9:09
9:09
30
9:54
10:05
19
10:24
10:24
7
10:31
10:32
6
10:38
10:39
29
11:08
11:09
36
11:45
11:46
10
11:56
12:05
34
12:39
12:39
38
13:17
13:17
10
13:27
13:27
26
13:53
ゴール地点
天候 終始晴天
過去天気図(気象庁) 2014年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス タクシー
松本〜新島々:タクシー
新島々〜上高地BT:バス
コース状況/
危険箇所等
大曲〜水俣乗越:タフな急登
水俣乗越〜天井沢北鎌沢出会:最初は激下り。木の枝にすがって滑り落ちるように下ります。
北鎌沢出会〜北鎌のコル:激登り。どんだけ登るんだ!
北鎌のコル〜独標手前:樹林帯は比較的安全
独標〜槍ヶ岳山頂:どこもかしこも危険です。
※殺生ヒュッテからの下山時に、しばらくGPS電源入れ忘れのため、トラックがとんでいます
早朝、タクシーで新島々へ。朝6時の始発バスを待つ。マットとシュラフで夜明かし組もいらっしゃいます。
2014年10月10日 05:34撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 5:34
早朝、タクシーで新島々へ。朝6時の始発バスを待つ。マットとシュラフで夜明かし組もいらっしゃいます。
晴天ながら閑散とした河童橋
2014年10月10日 07:31撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/10 7:31
晴天ながら閑散とした河童橋
徳沢園テント場。きれいに色付いた木。なんて言う木なのだろう。二日後に通った時には殆ど全ての葉が落ちてしまっていました。
2014年10月10日 08:41撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 8:41
徳沢園テント場。きれいに色付いた木。なんて言う木なのだろう。二日後に通った時には殆ど全ての葉が落ちてしまっていました。
静かな横尾
2014年10月10日 09:33撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/10 9:33
静かな横尾
雲ひとつない空に紅葉が映えます。思わず立ち止まります。
2014年10月10日 10:44撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 10:44
雲ひとつない空に紅葉が映えます。思わず立ち止まります。
2014年10月10日 10:44撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/10 10:44
槍沢ロッジ。牛丼とカップヌードルで腹ごしらえ♪
2014年10月10日 11:09撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 11:09
槍沢ロッジ。牛丼とカップヌードルで腹ごしらえ♪
金色に染まったババ平
2014年10月10日 12:05撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 12:05
金色に染まったババ平
めっさ綺麗
2014年10月10日 12:09撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/10 12:09
めっさ綺麗
大曲から水俣乗越へ。強い日差しに炙られながら、急坂を上ります。
2014年10月10日 12:44撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/10 12:44
大曲から水俣乗越へ。強い日差しに炙られながら、急坂を上ります。
ようやく水俣乗越に到着。体力をかなり消耗。
2014年10月10日 14:10撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/10 14:10
ようやく水俣乗越に到着。体力をかなり消耗。
滑り落ちるように下ります。
2014年10月10日 14:19撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/10 14:19
滑り落ちるように下ります。
少し下り、左後方を見ると・・穂先が見えました。明日はあそこに立つぞ!
でも今から無茶苦茶下るんだよね
2014年10月10日 14:58撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/10 14:58
少し下り、左後方を見ると・・穂先が見えました。明日はあそこに立つぞ!
でも今から無茶苦茶下るんだよね
傾斜が緩んでも、ゴロゴロで大変。
2014年10月10日 14:59撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/10 14:59
傾斜が緩んでも、ゴロゴロで大変。
北鎌沢出会に到着。谷底は日が陰るのが早い。慌ててツエルトを設営。ん〜、上手く張れない。殆ど無風だから、よしとした。
2014年10月10日 16:46撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/10 16:46
北鎌沢出会に到着。谷底は日が陰るのが早い。慌ててツエルトを設営。ん〜、上手く張れない。殆ど無風だから、よしとした。
周囲に落ちている小枝を集めて、少しだけ・・・
ほっこりします
2014年10月10日 17:43撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/10 17:43
周囲に落ちている小枝を集めて、少しだけ・・・
ほっこりします
朝5時にヘッデン点けて歩き始めました。すぐに明るくなった。今日も雲ひとつない。コルへ向けての激登りです。
2014年10月11日 05:49撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/11 5:49
朝5時にヘッデン点けて歩き始めました。すぐに明るくなった。今日も雲ひとつない。コルへ向けての激登りです。
ずーっとこの角度で突き上げて行きます
晴れはありがたいが、暑い・・
エネルギーがどんどん減って行く
2014年10月11日 06:45撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/11 6:45
ずーっとこの角度で突き上げて行きます
晴れはありがたいが、暑い・・
エネルギーがどんどん減って行く
あった、クライマーホイホイ進入防止×印
助かりますね
2014年10月11日 06:55撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/11 6:55
あった、クライマーホイホイ進入防止×印
助かりますね
やっと着いた
息が上がっています
2014年10月11日 07:50撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/11 7:50
やっと着いた
息が上がっています
水俣乗越を見やる
あそこから下って、また上ったのね
やっと北鎌尾根上に着いたのか・・
アプローチ長っ!ここまでで相当力を使い果たしました
2014年10月11日 09:02撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/11 9:02
水俣乗越を見やる
あそこから下って、また上ったのね
やっと北鎌尾根上に着いたのか・・
アプローチ長っ!ここまでで相当力を使い果たしました
コルから北方向
2014年10月11日 09:04撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/11 9:04
コルから北方向
硫黄尾根方向。雲ひとつなくあくまでもクリアな眺めでした。でもこの後、なかなか景色を愛でる余裕がありません。
2014年10月11日 09:17撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/11 9:17
硫黄尾根方向。雲ひとつなくあくまでもクリアな眺めでした。でもこの後、なかなか景色を愛でる余裕がありません。
やがて独標
2014年10月11日 09:29撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/11 9:29
やがて独標
お助けロープ。足元が相当崩れており、これが無いと通過する気がしない。
2014年10月11日 10:37撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/11 10:37
お助けロープ。足元が相当崩れており、これが無いと通過する気がしない。
トラバースは怖い
2014年10月11日 10:57撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
6
10/11 10:57
トラバースは怖い
例のコの字
2014年10月11日 10:58撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/11 10:58
例のコの字
大槍が見えました
んー、遠い!ギザギザがいっぱい
2014年10月11日 11:31撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/11 11:31
大槍が見えました
んー、遠い!ギザギザがいっぱい
独標に攀じ登りました
この景色は・・何物にも替えられない
2014年10月11日 11:35撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
9
10/11 11:35
独標に攀じ登りました
この景色は・・何物にも替えられない
これはどこを通るのさ
2014年10月11日 11:50撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/11 11:50
これはどこを通るのさ
2014年10月11日 12:07撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/11 12:07
2014年10月11日 12:15撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/11 12:15
触れたら切れそうな鋭い岩稜が、ずーっと続きます
山歩きで腕が筋肉痛になったのは初めてでした
2014年10月11日 12:20撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
4
10/11 12:20
触れたら切れそうな鋭い岩稜が、ずーっと続きます
山歩きで腕が筋肉痛になったのは初めてでした
でも美しい
基本岩稜を通します。その方が安全でした。
2014年10月11日 12:53撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
8
10/11 12:53
でも美しい
基本岩稜を通します。その方が安全でした。
でも、これは巻くしかないな
巻いた後の尾根筋への復帰がカギになったりします
2014年10月11日 13:24撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
10/11 13:24
でも、これは巻くしかないな
巻いた後の尾根筋への復帰がカギになったりします
ん? 大槍がさりげなくピースサイン出してる?
2014年10月11日 13:34撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
5
10/11 13:34
ん? 大槍がさりげなくピースサイン出してる?
P15越に
2014年10月11日 14:37撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
1
10/11 14:37
P15越に
根元に着きました
2014年10月11日 14:42撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
7
10/11 14:42
根元に着きました
もう少し、緊張感を維持しなければ
2014年10月11日 14:43撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
2
10/11 14:43
もう少し、緊張感を維持しなければ
着いた
ヘロヘロです
チムニーの写真をとる余裕がありませんでした
2014年10月11日 16:43撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
6
10/11 16:43
着いた
ヘロヘロです
チムニーの写真をとる余裕がありませんでした
殺生ヒュッテに、よろよろと下りました
2014年10月11日 17:17撮影 by  PENTAX WG-3 GPS, PENTAX RICOH IMAGING
3
10/11 17:17
殺生ヒュッテに、よろよろと下りました

装備

個人装備
軽量化のためにツェルト 行き詰り脱出用に30mロープ ATC カラビナ シュリンゲ数本
備考 重いが冬用シュラフには助けられた

感想

北鎌尾根に行ってきました。実は前回のレコの時も北鎌を狙っていたのですが、大雨によって予定変更していました。3年前に西穂〜奥穂を歩いて、次は北鎌と思いながら3年。なかなか機に恵まれなかった。
今回も、巨大台風が迫ってきて、出発当日ぎりぎりまで気象情報を見ながら悩み、これは動きが遅いと判断して飛び出して来た。幸いその通りで未だかって無い程の晴天が続き助かった。ついていました。

前日夜移動し、10日早朝5時半に新島々へ。バス停周辺には何組もシュラフにくるまった登山者がいらっしゃる。上高地直行夜行バスの便数をもっと増やしてくれないかなぁ。6時始発で上高地BTに着く。流石に平日で人が少ない。抜けるような青空の下、るんるんと歩き始めます。もう終盤だが紅葉がきれい。

初めてのコースだから少しでも余裕を持たせたくペースを上げるように心掛ける。徳沢園を横目に見ながら通過する。テントがちらほら。朱色に染まった木が美しい。槍沢ロッジに近付くにつれ樹林の彩りが鮮やかさを増す。急ぐ山行なのに時折立ち止まら無い訳に行かない。ロッジで牛丼とカップ麺をいただく。ババ平あたりが美しさのピークだったか。

やがて大曲だ。「さてと、行きますか」と独りつぶやく。ここから急坂を約500m一気に上る。装備の軽量化に努めたつもりだが、なかなか減らせていない。
前回はシュラフをやめてシュラフカバーのみにした。マットも切り詰めた銀マット(60cm)だけにした。衣類も切り詰めた。しかし雨のババ平で夜寒くて眠れない事態になった。あれから1ヶ月以上経ち、数日前には2800m超では降雪があったとのこと。しゃあないと、エアマットと冬用シュラフを持った。冬用アンダーウェアも持った。万が一用のロープ、下降器類は・・・、やはり持った。水は3L。結果、70Lが腹八部強。結構重い。(見たくないから計量はしない)

ひいひい、よちよち上っていると、健脚な方が颯爽と上がってきて「この道はしんどいですよねー」と風のように抜き去っていかれた。すごいなぁ。俺、こんなんで北鎌行っていいんかな、と弱気になる。しばらくすると下りて来る方が三々五々いらっしゃる。挨拶すると、今日はどこまで?と尋ねられる。ちょっくら北鎌をやっつけに行きますぜ、と言えない自分がいる。槍の方へ・・ともごもご話す。槍ヶ岳ですとか、XX小屋ですと言えば済むのだが、嘘は言いたくない。この日私と会話された方は、胡乱な言動の変なおっさんに気分を害されたに違いない。すみませんでした。お許しください。

汗だくになって水俣乗越に到着。天井沢を覗き込む。どんな急坂やねん!。遭難者の情報求む看板がおそろしい。最初の100mくらいは、頼り無い潅木の枝にすがって滑り落ち気味に下る。知らない人が見たら滑落者と思われるかも。やがて草地に入り二足歩行に戻れるが、ザレザレと崩れるので油断がならない。ゴーロ帯に入る所では気をつけないと滑落のおそれもある。でっかい岩が連続する川原を延々歩く。乗越を超えて疲労している足腰に利いてくる。でも、谷底のため日が陰るのが早い。早く早くとあせりながら歩く。GPSとにらめっこして北鎌沢出会に到着。先に来ていらっしゃった男性二人連れにご挨拶。翌日含めてこのルートに入っていたのは、以上の3名のようでした。迷惑にならないよう少し離れてツエルトを張る。
急速に夕暮れが迫ってきて、気温が急降下してくるのでやや焦る。何だかしわしわで上手く張れない。ま、いいか、今日は風も殆ど無いでしょう。ツエルトに潜り込み、さらにシュラフに潜り込む、さらにシュラフカバーにもぞもぞ入る。暖かい♪厚いシュラフ持ってきて良かったぁ。きつい峠超えを思い出しながら平和な眠りについた。

夜中に目が覚めると外が明るい。え、と外に出たら満月が煌々と沢を照らしている。用を足しに行くがヘッデンはいらない。深呼吸してみる。しみじみするなぁ。底冷えがする。ハードシェルを着込み(カッパじゃなくてこれにした。どんだけ寒さにおびえてるのか。)、ウィスキーをすする。明日の山行への不安とこの自然の中に居られる幸せが混ざる。相当贅沢かも。

4時に起きて撤収を始める。食欲が無くゼリー状の携帯食だけを流し込み、5時よりヘッデン点けて遡上開始。すぐに明るくなってきた。二俣に分かれてもまだ水流がある。さらにしばらく登り予備の水を取った。

時折、岩の上に獣の糞がある。何と言うか目立つ場所なのだ。思わずケルンを積みたくなる場所でしょうか。岩を乗り越えて次に手をつきたくなる場所なんだよね。何度か思わず「危ないやんか」とつぶやく局面があった。

やがて、昨夜先着されていたお二人が追いついて来られたので、先に行っていただく。軽やかに上って行くのが羨ましい。陽が昇るにつれ暑くなりだす。着衣を減らし、じわじわ昇る。あまり上は見ない。時折下方に眼をやり着実なゲインを糧にする。背後水平方向を見渡すと水俣乗越からの下降路が見える。大曲から約500m昇り、谷底へ630mくらい降り、今、600m以上を昇り返しているのだ。今回の核心はある意味このアプローチだったように思う。

やがてコルに着いた。他のパーティが来るかと様子を見るが、気配は無い。少し寂しい。
一息入れて朝食を摂りたいが、まったく食欲が無い。お握りを食べようとしても喉を通る気がしない。諦めて歩き続けた。

樹林帯を独標へ向かう。木の根等で土質が安定しており比較的安全だ。やがて森林限界を超える頃、独標が目前に迫る。ここからライン取りが重要になりだした。

独標基部に着いた。先行の2人組パーティは直登コースをロープ確保しながら上がっていかれた。後ろを伺うが、やはり私しかいない。寂しいなぁ。私は、お助けロープをありがたく利用し巻いた。逆コの字を過ぎてすぐ昇り易そうな斜面があったので稜線復帰を決めた。ぐいぐい昇る。しかしここで初めて気が付いたのだが、トラバースからの復帰は危険だ。トラバースが危険なのは当然だが、そこからの斜面遡上はよほどラインを見ないと危ない。土質、岩質がゆるいのだ。しばらく調子良く昇っていたら、グズグズの斜面に入り込んでいた。あら、と思い、前後左右を伺う。左足をサイドステップしたら一抱えある岩がすねをこすって崩れ落ちていった。下を見ると、はるか崖下に落ちていく。そのガランガランという音がいつまでも続いたように感じた。深呼吸しガムを噛む。「危ないやんか」とつぶやく。
斜面に眼を凝らし少しでもしっかりしていそうなホールド、スタンスを探し。最初は撫でて、次は叩いて、ゆっくり移動する。もの凄く集中していた。長い時間が過ぎたように思えるが実際は数分だったのだろう。安定した岩場に辿り着きすぐに独標頂上に立てた。

それ以降にも、巻きからの復帰で嫌な登りが一回あった。基本的に稜線通しが安全だと感じた。ただの素人の推測ですが、稜線って風雪に砥がれていて比較的岩質が安定しているように思う。また何よりも見晴らしが効き、たとえ行き詰まっても次の手が検討できた。(あくまでも素人の推測です)

大槍が、見たことの無い角度で、見たことの無い威圧感と美しさでそびえている。結構、遠い。数え切れないギザギザが頂上まで刻まれている。腹に力を込め歩き出した。

P15を超えると穂先の根元。携帯をONにすると電波が入る。今朝、上高地入りして通常ルートで登っている隊長からのメールが着信。「山頂に着いたよ。どこにおるの?」。

飯が喉を通らず電池切れ状態。チョコレートを無理やり噛み砕き水で流し込む。キックバックが来る前に昇り切りましょう、と最後の工程に突入。上のチムニー、うわ、垂直やんか。ここで落ちたら、たわけだ(名古屋弁)、と最後の力を振り絞って身体を引き上げた。顔を上げると笑っている隊長が手を振っていた。頂上では数名の登山者の方々に拍手をいただき、嬉しかったです。

念願の北鎌尾根に登ることが出来て幸せでした。今の私のスキルではこれが上限かなと感じました。これから、初めて行かれる方がお読みでしたら、決して安易に考えずにトライしてください。このルートは危ないです。

■ふりかえり
<反省事項>
・トラバースから安易な見切りでの斜面遡上で危機に陥った(他の方々の情報を重視して、遡上点を倣うべきだった)
・落石させた(誰もいなかったからよかったが、これは駄目)
・シャリバテした(ばてても喉を通りやすい食料を持つべき&体力強化が必要)もう58になっちまったけど、まだやるぞ
<難所の認識>
・水俣乗越からの下降:要注意、くれぐれも慎重に
・白ザレ(P14?13?):正面のクラック沿いに登ったが、かなり崩壊が進んでおり怖かった
・その直後の白いサラサラの昇り斜面:足元が砂山のように容易に崩れる。緊張した。そーっと、バランスに気を付けて歩いた。
・頂上直下 上のチムニー:垂直。技術的にはそれほどでもないが、高さがあるので落ちたらアウト


お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:1344人

コメント

唖然!
よく聞くルート名ですが、詳細は知りませんでした。
まずは北鎌沢出合前後の下りと登りは何なんですか!ルートの一部とは思えません。
私ならここでアウトです!
そのあとの危険ルート!頂上で手を振る隊長さんの笑顔がすごすぎて恐ろしい・・・!
達成感バリバリでしょうね!お疲れ様でした!
2014/10/13 16:14
Re: 唖然!
日頃の不摂生がたたり、体力限界ギリギリでした。でも、最高に充実してました♪
kiyo-miさん達が普段行っているバリルートも相当危ないですから、気を付けてね
2014/10/13 16:24
憧れのキタカマ
初めましてmasaike55と申します。

スゴイですね!息を呑みながら記録文を拝読しました。自分のスキルではどうかなと感じるレベルのルートがたまらないんですよね。アドレナリンがブツブツとわき上がってくるのを感じながら登る興奮。

ちっぽけな感傷に振り回されてる自分に「どうや、来てみんかい!」と挑まれて山に受け入れて貰った感動!

北アの難所で北鎌はまだ登っていませんのでレコを参考にさせて頂いてぜひ挑戦したいと思いました。

お疲れ様でした。
2014/12/10 16:47
Re: 憧れのキタカマ
masaike55さん
コメントありがとうございます
危険は伴いますが、絶景の岩稜が延々と続き、素晴らしいルートでした
私のレコはルート解説としては不向きですが、ネットには沢山有用な
先達の記録がありますので、読みあさってください

可愛いニャンコですね、ヒロシ君ですか
いつか山でお会いできるといいですね
2014/12/17 20:51
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [3日]
槍ヶ岳北鎌尾根/上高地・水俣乗越ルート
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス、 タクシー
技術レベル
5/5
体力レベル
5/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
上高地から横尾経由槍ヶ岳ピストン!
利用交通機関: 車・バイク
技術レベル
2/5
体力レベル
4/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [5日]
技術レベル
3/5
体力レベル
5/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
新穂高〜上高地
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス
技術レベル
3/5
体力レベル
5/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら