台風の来る前に 槍ヶ岳 北鎌尾根水俣乗越ルート
- GPS
- 54:40
- 距離
- 48.2km
- 登り
- 2,933m
- 下り
- 2,923m
コースタイム
- 山行
- 7:35
- 休憩
- 1:18
- 合計
- 8:53
- 山行
- 9:42
- 休憩
- 2:57
- 合計
- 12:39
- 山行
- 8:59
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 9:23
天候 | 終始晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
新島々〜上高地BT:バス |
コース状況/ 危険箇所等 |
大曲〜水俣乗越:タフな急登 水俣乗越〜天井沢北鎌沢出会:最初は激下り。木の枝にすがって滑り落ちるように下ります。 北鎌沢出会〜北鎌のコル:激登り。どんだけ登るんだ! 北鎌のコル〜独標手前:樹林帯は比較的安全 独標〜槍ヶ岳山頂:どこもかしこも危険です。 ※殺生ヒュッテからの下山時に、しばらくGPS電源入れ忘れのため、トラックがとんでいます |
写真
装備
個人装備 |
軽量化のためにツェルト
行き詰り脱出用に30mロープ
ATC
カラビナ
シュリンゲ数本
|
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備考 | 重いが冬用シュラフには助けられた |
感想
北鎌尾根に行ってきました。実は前回のレコの時も北鎌を狙っていたのですが、大雨によって予定変更していました。3年前に西穂〜奥穂を歩いて、次は北鎌と思いながら3年。なかなか機に恵まれなかった。
今回も、巨大台風が迫ってきて、出発当日ぎりぎりまで気象情報を見ながら悩み、これは動きが遅いと判断して飛び出して来た。幸いその通りで未だかって無い程の晴天が続き助かった。ついていました。
前日夜移動し、10日早朝5時半に新島々へ。バス停周辺には何組もシュラフにくるまった登山者がいらっしゃる。上高地直行夜行バスの便数をもっと増やしてくれないかなぁ。6時始発で上高地BTに着く。流石に平日で人が少ない。抜けるような青空の下、るんるんと歩き始めます。もう終盤だが紅葉がきれい。
初めてのコースだから少しでも余裕を持たせたくペースを上げるように心掛ける。徳沢園を横目に見ながら通過する。テントがちらほら。朱色に染まった木が美しい。槍沢ロッジに近付くにつれ樹林の彩りが鮮やかさを増す。急ぐ山行なのに時折立ち止まら無い訳に行かない。ロッジで牛丼とカップ麺をいただく。ババ平あたりが美しさのピークだったか。
やがて大曲だ。「さてと、行きますか」と独りつぶやく。ここから急坂を約500m一気に上る。装備の軽量化に努めたつもりだが、なかなか減らせていない。
前回はシュラフをやめてシュラフカバーのみにした。マットも切り詰めた銀マット(60cm)だけにした。衣類も切り詰めた。しかし雨のババ平で夜寒くて眠れない事態になった。あれから1ヶ月以上経ち、数日前には2800m超では降雪があったとのこと。しゃあないと、エアマットと冬用シュラフを持った。冬用アンダーウェアも持った。万が一用のロープ、下降器類は・・・、やはり持った。水は3L。結果、70Lが腹八部強。結構重い。(見たくないから計量はしない)
ひいひい、よちよち上っていると、健脚な方が颯爽と上がってきて「この道はしんどいですよねー」と風のように抜き去っていかれた。すごいなぁ。俺、こんなんで北鎌行っていいんかな、と弱気になる。しばらくすると下りて来る方が三々五々いらっしゃる。挨拶すると、今日はどこまで?と尋ねられる。ちょっくら北鎌をやっつけに行きますぜ、と言えない自分がいる。槍の方へ・・ともごもご話す。槍ヶ岳ですとか、XX小屋ですと言えば済むのだが、嘘は言いたくない。この日私と会話された方は、胡乱な言動の変なおっさんに気分を害されたに違いない。すみませんでした。お許しください。
汗だくになって水俣乗越に到着。天井沢を覗き込む。どんな急坂やねん!。遭難者の情報求む看板がおそろしい。最初の100mくらいは、頼り無い潅木の枝にすがって滑り落ち気味に下る。知らない人が見たら滑落者と思われるかも。やがて草地に入り二足歩行に戻れるが、ザレザレと崩れるので油断がならない。ゴーロ帯に入る所では気をつけないと滑落のおそれもある。でっかい岩が連続する川原を延々歩く。乗越を超えて疲労している足腰に利いてくる。でも、谷底のため日が陰るのが早い。早く早くとあせりながら歩く。GPSとにらめっこして北鎌沢出会に到着。先に来ていらっしゃった男性二人連れにご挨拶。翌日含めてこのルートに入っていたのは、以上の3名のようでした。迷惑にならないよう少し離れてツエルトを張る。
急速に夕暮れが迫ってきて、気温が急降下してくるのでやや焦る。何だかしわしわで上手く張れない。ま、いいか、今日は風も殆ど無いでしょう。ツエルトに潜り込み、さらにシュラフに潜り込む、さらにシュラフカバーにもぞもぞ入る。暖かい♪厚いシュラフ持ってきて良かったぁ。きつい峠超えを思い出しながら平和な眠りについた。
夜中に目が覚めると外が明るい。え、と外に出たら満月が煌々と沢を照らしている。用を足しに行くがヘッデンはいらない。深呼吸してみる。しみじみするなぁ。底冷えがする。ハードシェルを着込み(カッパじゃなくてこれにした。どんだけ寒さにおびえてるのか。)、ウィスキーをすする。明日の山行への不安とこの自然の中に居られる幸せが混ざる。相当贅沢かも。
4時に起きて撤収を始める。食欲が無くゼリー状の携帯食だけを流し込み、5時よりヘッデン点けて遡上開始。すぐに明るくなってきた。二俣に分かれてもまだ水流がある。さらにしばらく登り予備の水を取った。
時折、岩の上に獣の糞がある。何と言うか目立つ場所なのだ。思わずケルンを積みたくなる場所でしょうか。岩を乗り越えて次に手をつきたくなる場所なんだよね。何度か思わず「危ないやんか」とつぶやく局面があった。
やがて、昨夜先着されていたお二人が追いついて来られたので、先に行っていただく。軽やかに上って行くのが羨ましい。陽が昇るにつれ暑くなりだす。着衣を減らし、じわじわ昇る。あまり上は見ない。時折下方に眼をやり着実なゲインを糧にする。背後水平方向を見渡すと水俣乗越からの下降路が見える。大曲から約500m昇り、谷底へ630mくらい降り、今、600m以上を昇り返しているのだ。今回の核心はある意味このアプローチだったように思う。
やがてコルに着いた。他のパーティが来るかと様子を見るが、気配は無い。少し寂しい。
一息入れて朝食を摂りたいが、まったく食欲が無い。お握りを食べようとしても喉を通る気がしない。諦めて歩き続けた。
樹林帯を独標へ向かう。木の根等で土質が安定しており比較的安全だ。やがて森林限界を超える頃、独標が目前に迫る。ここからライン取りが重要になりだした。
独標基部に着いた。先行の2人組パーティは直登コースをロープ確保しながら上がっていかれた。後ろを伺うが、やはり私しかいない。寂しいなぁ。私は、お助けロープをありがたく利用し巻いた。逆コの字を過ぎてすぐ昇り易そうな斜面があったので稜線復帰を決めた。ぐいぐい昇る。しかしここで初めて気が付いたのだが、トラバースからの復帰は危険だ。トラバースが危険なのは当然だが、そこからの斜面遡上はよほどラインを見ないと危ない。土質、岩質がゆるいのだ。しばらく調子良く昇っていたら、グズグズの斜面に入り込んでいた。あら、と思い、前後左右を伺う。左足をサイドステップしたら一抱えある岩がすねをこすって崩れ落ちていった。下を見ると、はるか崖下に落ちていく。そのガランガランという音がいつまでも続いたように感じた。深呼吸しガムを噛む。「危ないやんか」とつぶやく。
斜面に眼を凝らし少しでもしっかりしていそうなホールド、スタンスを探し。最初は撫でて、次は叩いて、ゆっくり移動する。もの凄く集中していた。長い時間が過ぎたように思えるが実際は数分だったのだろう。安定した岩場に辿り着きすぐに独標頂上に立てた。
それ以降にも、巻きからの復帰で嫌な登りが一回あった。基本的に稜線通しが安全だと感じた。ただの素人の推測ですが、稜線って風雪に砥がれていて比較的岩質が安定しているように思う。また何よりも見晴らしが効き、たとえ行き詰まっても次の手が検討できた。(あくまでも素人の推測です)
大槍が、見たことの無い角度で、見たことの無い威圧感と美しさでそびえている。結構、遠い。数え切れないギザギザが頂上まで刻まれている。腹に力を込め歩き出した。
P15を超えると穂先の根元。携帯をONにすると電波が入る。今朝、上高地入りして通常ルートで登っている隊長からのメールが着信。「山頂に着いたよ。どこにおるの?」。
飯が喉を通らず電池切れ状態。チョコレートを無理やり噛み砕き水で流し込む。キックバックが来る前に昇り切りましょう、と最後の工程に突入。上のチムニー、うわ、垂直やんか。ここで落ちたら、たわけだ(名古屋弁)、と最後の力を振り絞って身体を引き上げた。顔を上げると笑っている隊長が手を振っていた。頂上では数名の登山者の方々に拍手をいただき、嬉しかったです。
念願の北鎌尾根に登ることが出来て幸せでした。今の私のスキルではこれが上限かなと感じました。これから、初めて行かれる方がお読みでしたら、決して安易に考えずにトライしてください。このルートは危ないです。
■ふりかえり
<反省事項>
・トラバースから安易な見切りでの斜面遡上で危機に陥った(他の方々の情報を重視して、遡上点を倣うべきだった)
・落石させた(誰もいなかったからよかったが、これは駄目)
・シャリバテした(ばてても喉を通りやすい食料を持つべき&体力強化が必要)もう58になっちまったけど、まだやるぞ
<難所の認識>
・水俣乗越からの下降:要注意、くれぐれも慎重に
・白ザレ(P14?13?):正面のクラック沿いに登ったが、かなり崩壊が進んでおり怖かった
・その直後の白いサラサラの昇り斜面:足元が砂山のように容易に崩れる。緊張した。そーっと、バランスに気を付けて歩いた。
・頂上直下 上のチムニー:垂直。技術的にはそれほどでもないが、高さがあるので落ちたらアウト
よく聞くルート名ですが、詳細は知りませんでした。
まずは北鎌沢出合前後の下りと登りは何なんですか!ルートの一部とは思えません。
私ならここでアウトです!
そのあとの危険ルート!頂上で手を振る隊長さんの笑顔がすごすぎて恐ろしい・・・!
達成感バリバリでしょうね!お疲れ様でした!
日頃の不摂生がたたり、体力限界ギリギリでした。でも、最高に充実してました♪
kiyo-miさん達が普段行っているバリルートも相当危ないですから、気を付けてね
初めましてmasaike55と申します。
スゴイですね!息を呑みながら記録文を拝読しました。自分のスキルではどうかなと感じるレベルのルートがたまらないんですよね。アドレナリンがブツブツとわき上がってくるのを感じながら登る興奮。
ちっぽけな感傷に振り回されてる自分に「どうや、来てみんかい!」と挑まれて山に受け入れて貰った感動!
北アの難所で北鎌はまだ登っていませんのでレコを参考にさせて頂いてぜひ挑戦したいと思いました。
お疲れ様でした。
masaike55さん
コメントありがとうございます
危険は伴いますが、絶景の岩稜が延々と続き、素晴らしいルートでした
私のレコはルート解説としては不向きですが、ネットには沢山有用な
先達の記録がありますので、読みあさってください
可愛いニャンコですね、ヒロシ君ですか
いつか山でお会いできるといいですね
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