東面二大尾根から行く白根三山 (大唐松尾根↑吊尾根↓)


- GPS
- 29:24
- 距離
- 47.2km
- 登り
- 4,326m
- 下り
- 3,900m
コースタイム
- 山行
- 7:50
- 休憩
- 1:37
- 合計
- 9:27
- 山行
- 6:53
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 8:06
- 山行
- 8:46
- 休憩
- 1:15
- 合計
- 10:01
天候 | 晴れ一時霧 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
詳しく書いていただいている皆様の記録を参考に…… 私のルートよりもっと良いルートがあるはず(似たり寄ったりかもしれませんが)。 核心は標高2700〜2800mの急登区間です。 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4747293.html https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3511578.html https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3355705.html |
その他周辺情報 | 奈良田の里温泉 9時〜18時、700円 つるつるで良い温泉 次回は是非白根館(16時まで)を十分楽しめる時間に下りたい…… |
写真
感想
■1日目 9/15(金)
□奈良田〜大門沢ゲート
甲府を3時発。奈良田には4時40分頃には着いていたのだが、今年は集落付近の駐車場が駐車禁止になっており、車でうろうろしてしまった。正規の駐車場を5時過ぎに発。確実に水を得られる3日目の北岳山荘までなんとか持つよう、水8Lを搭載した、23kg超のザックが肩と腰に食い込む。
バス停に向かっていた方が言うには、さっきまで犬を連れた農鳥の親父がいたらしい。腰を圧迫骨折して3ヶ月入院していたが、「来年は小屋に上がるよ!」とのことだそう。車でうろうろしていたときにいた、犬の散歩をしていた人か!もう普通に歩いていたな……。元気そうで良かった。
□大門沢ゲート〜大唐松山
大門沢のゲートを過ぎてすぐの右手、奈良一水槽の巡視路を登る。かなりの急登だが、ちゃんと九十九折りが切ってあって歩きやすい。やがて極太な放水管が設置してある尾根に乗り、しばらくそれを辿ると水槽と鉄塔がある。人工物はそこで終わりかと思っていたが、電線がさらにしばらく尾根上に伸びており、アンテナのついた小さな朽ちた小屋の謎の箱に繋がっていた。その後も尾根は緩急をつけて延々と登る。
コロナの後遺症が抜けていないのか、すぐに息が上がりスピードが出ないが、日程と物資には余裕を持っているので、休憩を挟みつつマイペースに歩いた。
雨池山が初めてのピークらしいピークになる。いよいよ電波が弱くなってきたので情報を仕入れた。午後は天気が崩れやすく、ところにより雷雨だそうだ。
この先のコル付近は平坦な笹原になっており、癒される。カラマツ林の中に古いワイヤーが転がっており、こんなところでまで林業をするのは大変だっただろうと昔を偲ぶ。
2320m圏ピークでも休憩。このあたりは甲府の街から見えているはずである。こちらからは木々に邪魔されて盆地は見えないが、電波が若干入ることからそのことを感じられた。昨晩3時間程しか寝ておらず、眠気を感じたため、ここで少し仮眠をとった。
2346mピークを過ぎると、標高差250mの急登になる。奈良一水槽巡視路の斜面と斜度は同じくらいだが、今度は九十九折りは付いていないし、若干の岩や薮もある。
どうにか大唐松山に辿り着いたのは13時19分、奈良田を出てから8時間もかかった。確かにカラマツがあって、大きい山だった。大唐松尾根の核心はここからだけど……。
□大唐松山〜幕営地
このあたりからは踏み跡が分かりづらく、やや濃い薮がある箇所もある。テン場を探しながら歩いてはいるものの、なかなか広い場所はない。登山道が膨れたような、なんとか1張りありそうなところを記録しながら進む。
ヤマレコで記録があった、2520m圏のピークの中ほどに差し掛かると、尾根南側に地滑り地形的な広い(とはいえなんとか2張程度)平坦地があった。ここだ!時刻は14時半、天気が崩れる可能性も考えたらちょうど良いだろう。電波も入る。仕事のメールが入っていたのでつい返信してしまった。良いんだか悪いんだか……。
ちゃちゃっと設営して中に入る。眠かったのでマットを敷いて横になり3時間記憶をなくし、すっかり暗くなってから夕食を食べた。
電波が入る山の夜は長い。明日の予習、天気チェック、記録作成などを眠くなるまでして、21時頃就寝。何度かパラっと雨が降った。明日薮は濡れているだろう。雷が光っていたので調べると八ヶ岳や富士市のあたりでは雷雨だったようだ。明日もこの辺りは降らないと良い。
■2日目 9/16(土)
□幕営地〜核心
3時起床。外気温12℃、テント内15℃。空を見上げると星が見えた。早起きしてもこの薮ではヘッデン行動をする気にはならず、しっかり明るくなった5時20分行動開始。
心配していた薮の濡れは全くなく、すぐに雨具を脱いだ。樹林の隙間から雲海に浮かぶ富士山と、北岳間ノ岳のモルゲンが美しい。北岳から東には吊尾根が、文字通り吊ったように、高く長く伸びている。あの標高ならハイマツが薄いんだろうなあ。
そんな平和な感想を持つことを許さないかのように、薮が牙を剥く。2580mピークの東の
2540m圏ピークの岩峰にはまり、20分を費やした。地図に現れる小さいピークをすべて越えた標高2560m付近から、薮が一段と濃くなり、ハイマツを引っ張って体を持ち上げるようなところが出てくる。標高2610〜20m付近は岩峰になっていて、南から巻いた。ルートを悩み、行ったり来たりしたが、結局しばらくトラバースして、ガレたルンゼの手前で登り返した。
尾根が南に曲がってしばらくすると急にハイマツが低くなり、すぐに崩壊縁に出る。2630mの等高線のあたりだ。よくオアシスと言われているが、確かにそうだと思う。ここからコルまでもかなりの薮で、30分弱かかった。
ここのコルはダケカンバの中の草付きで、個人的には吹きさらしの2633手前よりは、こっちの方がオアシスだと思う。整地したら緩斜面の中に1張くらいはできるのではないか。ここから先、標高約2700mで尾根を乗り越すまでは、急斜面ではあるが、草付きの中を登っていける。
□核心〜大唐松尾根起点
問題はここから先だ。崩壊縁の方が薮が薄く登りやすいと聞いていたため、トラバース気味に薮のない場所を選んで歩き、標高2750mで崩壊縁に出た。ここは写真を見たことがある。目の前はとても悪いザレだが、あたりの薮はとても登れそうにない。少し先に行ってみようと緊張しながらザレザレのルンゼと尾根を1つ越えると、その先はさらに悪く果てしない崩壊地だった。
もう一度ザレたルンゼを戻り、登れそうにないと思っていた薮にとりついてみる。斜面は45°ほど、部分的には1m程度のギャップもある。目の前にこちら向きに生えたハイマツやらコメツガシラビソやらシャクナゲやらを、左右に分けて束ねて引っ張り、地面や幹にフリクションを効かせ、真っ直ぐにならないまま体を無理やり持ち上げる。1分に1mも登れない。標高2770mを超えたあたりでようやく落ち着いたが、標高差20mに40分かかった。
標高2800mを超えると斜度も小さく、薮も腰程度になり、幕営適地さえある。核心を越えたことに安堵した。二重山陵のようになっている沢の部分は薮が薄いが、いずれ必要になる登り返しが大変なので、サボらず尾根を通して歩いた方が良い。
標高2890mで南の沢に下り、ハイマツの間を歩く。奥の大きな岩を目指して歩き、10mほどの薮を突破すると、また薮がなくなり登山道が見える。最短で抜けようとするとハイマツがうざったそうだったので、迂回してゴーロの中を歩き、標高2990mで登山道に合流した。長く辛い尾根だった……。達成感が半端ない。まだ白根三山は一つも踏んでいないのに。
□大唐松尾根起点〜農鳥小屋
ここから先は早い。農鳥岳、西農鳥岳と、一応写真を撮るだけ撮り、標高差250mを転げ落ちて14時前に農鳥小屋についた。
水の状況が悪かったら熊ノ平小屋に行こうと思っていたが、そんな心配は無用だった。うわさの天水は200Lくらいのタンク2つに9割ほど溜まっており、どちらも数匹の虫と枯葉が入っていただけで、避けて汲むことができた。結局持ってきた8Lのうち、ここまでで消費したのは5.5Lだった。カルキ入りの安心な水を行動分に優先し、残りの必要分を煮沸してペットボトルに詰め、朝晩の調理に使う分を余分に汲んだ。
農鳥小屋は主人がドラム缶の上ではなく奈良田にいても健在で、登山者が行き交い、テントが斜面の段々を彩っていた。トイレも例のアレのままである。昨晩の非正規のテン場よりも、ここで用を足す方が罪悪感が強いのは私だけだろうか……。
小屋の近くにテントを張ると、ゆっくり記録を書いたり、山や夕焼けを眺めたり、ご飯を食べたりと、夏山のテン場を楽しんだ。
明日14:42のバスに間に合えば、奈良田で温泉に入れる。休憩込みCT比8割として、4時発を目指すこととした。
■3日目 9/17(土)
□農鳥小屋〜吊尾根起点
2時半起床。外気温9℃、テント内13℃。あたりのテントからもゴソゴソと音がする。朝食を済ませて外に出ると、既に農鳥岳にも間ノ岳にも灯りが動いていた。
昨日も違和感があったが、腸腰筋が痛む。膝を持ち上げる動きに使う筋肉なので、確実に薮こぎのせいだと思う。あまりペースを上げず、休憩をとりすぎないように気をつけることにした。
間ノ岳で日の出を迎えようと暗いうちに農鳥小屋を発ったが、このこともありペースは上がらず、山頂の少し手前で日の出となった。
山頂では多くの人が東の空を見てはしゃいでいたが、ペースが遅く、まだ休憩が必要なさそうなので、そのまま三峰岳へ向かった。地形図からなだらかな岩陵かと思いきや、意外と手を使った登下降もある。
コルに荷物を置いて登り、さほど広くない三峰岳の山頂に立つ。写真撮影や立ち話をしていると、オコジョが顔を見せてくれた。
西から見ても間ノ岳は大きい。同じ道を辿って戻り、北岳に向かう。
それにしても贅沢な景色だ。仙丈と甲斐駒をバックに真正面に北岳。遠くには八ヶ岳、奥秩父、中央・北アルプス。振り返ると雲海に富士山が浮かび、間ノ岳の巨大な図体の後ろに塩見、そして農鳥とあの大唐松尾根が見える。私がこの景色に受ける感慨の深さは、この登山道の上にいる登山者の中でも上位にいるだろう。何度も振り返り、徐々に変わっていく景色を写真に撮りながら進む。
そんな様子で歩いているのでペースは上がらない。北岳山頂も、写真撮影と立ち話だけして、休憩はせずに後にしてしまった。
□吊尾根起点〜あるき沢橋、奈良田
少し引き返した分岐からいよいよ吊尾根に入る。今回の山行の目的、白根三山東面の二大尾根の2つ目だ。縦走路から外れると途端に道が悪くなった。八本歯のコルを過ぎるといよいよ道は険しくなり、膝までのハイマツ漕ぎも出てくる。薮は大唐松尾根に比べたら無いに等しいが、下りだとややルートが不明瞭なことがあり、数回間違えて引き返した。
晩夏の吊尾根に人の気配はなく、北岳バットレスから「ビレイ解除!」と叫ぶ声が聞こえるのみである。人で賑わう縦走路より、こっちの方が心地よい。
ボーコン沢ノ頭まで、地図にない小ピークを越える。日が高くなってきて暑いが、バットレスと白根三山、鳳凰三山の眺めが素晴らしい。
砂払を過ぎた先からは樹林帯になる。ここからは道迷いの心配はない。標高を下げるにつれ、ダケカンバ、コメツガシラビソと変わる景色を楽しみながら下る。
城峰でバスの時間を計算すると、狙ったバスに間に合わせるにはもう少し急がないといけないようだった。心配していた腸腰筋や膝はここまで問題なく、ここから急いで仮に故障しても最終のバスまではかなり余裕がある。この標高まで来てしまえば普通の綺麗な良い森で、特段ここでないと見られないものもないため、いつも通りダーッと下ることにした。都合の良いことに、城峰の先の急傾斜以外は、なだらかでちょうど走りやすい。
余裕が出来たので池山小屋でひと休憩。樹林帯の中にぽっかり広がる明るい草原の雰囲気が大変良い。
しばらく進んだところで尾根と別れ、あるき沢橋へ落ちる小尾根に入る。地形図通りの急坂で、滑りやすいところもありいやらしい。ステップのできる冬の方がまだ登りやすいかもしれない。
標高差700mをダーッと下る。一時傾斜が緩くなるところは踏み跡がやや分かりづらいが、よく見るとテープがあるので迷いはしない。
結局バスの20分以上前にあるき沢橋まで下りきった。急いでいてあまり食べていなかった行動食を食べて腹ごしらえをしながら、バスに揺られて奈良田まで戻り、ゆっくり奈良田温泉を楽しんだ。
一般登山道歩いてるレコだとその他大勢に埋没してしまいますがバリエーションルートは大衆受けこそしないものの細く長く見てもらえてレコあげた甲斐があったなと思います。
potassium39さんのこの丁寧なレコもきっと今後大唐松尾根をやろうとしてる人の一助になるのでは。
往路復路とも長大な尾根、お疲れさまでした。
コメントありがとうございます。
tomhigさんのレコは要所の写真が多くてとても参考になりました。
そう言っていただけて嬉しいです。詳しく書くのは趣味なのでそうしていますが、標高2750mから先のルーファイをはじめ、未熟な点が多々あり恥ずかしくもあります。tomhigさんのようにバリ慣れできるよう、精進していきます。
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