過去レコ 日高山脈主稜線縦走（日勝峠→楽古岳）
北海道
yamakichi
- GPS
- 344:00
- 距離
- 119km
- 登り
- 11,721m
- 下り
- 12,382m
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- 山行
- 9:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 9:00
- 山行
- 10:37
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:37
- 山行
- 10:05
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:05
- 山行
- 0:00
- 休憩
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- 合計
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- 山行
- 11:25
- 休憩
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- 11:25
- 山行
- 10:40
- 休憩
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- 合計
- 10:40
- 山行
- 9:05
- 休憩
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- 合計
- 9:05
- 山行
- 10:40
- 休憩
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- 合計
- 10:40
- 山行
- 10:40
- 休憩
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- 10:40
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 9:30
- 山行
- 10:25
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:25
- 山行
- 10:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:30
- 山行
- 9:55
- 休憩
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- 9:55
- 山行
- 10:20
- 休憩
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- 合計
- 10:20
- 山行
- 7:28
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:28
| アクセス | 入下山の送り迎えは山キチのッマさんにして頂きました。 |
|---|---|
| コース状況／ 危険箇所等 |
コースタイム:12日目、13日目、14日目の宿泊地の到着時間は記録忘れだったので、とりあえず15:00着としています。 写真はプリントなので後日。 |
| その他周辺情報 | あえるの湯で半月ぶりに入浴。 〒057-0171 北海道浦河郡浦河町西舎１４１−４０ TEL：0146-28-2111 |
写真
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感想
過去レコです、長文でごめんなさい。
プロローグ
1969年のゴールデンウィーク快晴の朝、エサオマントッタベツ岳から見た連なる山々が、まだ行ったこともなかったヒマラヤにでもいるような錯覚を覚え日高山脈に大きな魅力を感じた。
その後、数回の山行で楽古岳から芽室岳間の赤線繋ぎは20代のうちに終えたが、山にどっぷりと浸かって一気に歩いてみたいと思いだした。
しかし、利尻山の六つの稜線（東稜、南稜、東北稜、仙法師稜、西稜、北稜）と二つの壁（東壁、西壁）の単独登攀や芦別岳夫婦岩、崕山の壁にルートを開いたり、海外の山（7か国）へ行ったりと他にも楽しみたい山行があった。いつも頭の片隅にはあったが、時だけが過ぎて行った。
1999年ゴールデンウィーク、16日間の休暇が取れた。行ける所まで行って見ようと楽古岳から入山、残雪が少なく重荷を背負ってのブッシュ漕ぎで苦戦、右膝に水が溜まってしまい、10日目コイカクシュサツナイ岳から下山した。まだ6日分もの食料を背負っての下山は情けなかった。
この山行を振り返るたびにやり遂げたい思いは募って行き、休暇を職場の上司に申し出る勇気もわいた。やりたいという気持ちが大きいと説得する力が増すものなのか？度々の長期休暇の申し出も快く認めて頂けた。
日数は会社を休める最大18日間でノンデポ・ノンサポートでの計画とした。
すでに50代となり「次は無いぞ！」と思うと「何が何でも完走する」との強い気持ちも芽生えて出発の時を迎えた。
4月21日（1日目）山キチのッマさんに見送られ入山
山キチのッマさんに送ってもらい日勝トンネル日高側入り口から「それじゃ頑張って」と穏やかな声に見送られ出発。
出発して間もなく冷たい風が吹きつけてきた、快適な日常から厳しい世界へと放り出されたように感じ、「始めてしまったな〜」と思った。
スノーシューを履き、両手にストック、荷物（出発時32〜33�圈砲琉貮堯�8�圈砲鯊泙貌�れ曳きずって行った。この作戦は快調だったので、尾根に出た所で更に4�圓凌�料を袋に詰め込んだ。背負っている荷物の体への負荷が軽減され、膝に不安を抱える自分にはこの作戦は当たりだった。
ペケレベツ岳で先着していたスキーとスノーボードの3名に会った。「荷物が多いけれど山に泊まるの？どこまで行くの？」と尋ねてきた。「楽古岳まで行こうと思っています」と云ったがピンと来ていない様子だった。
出発が遅かった分、遅くまで歩いて幌内山分岐を過ぎた先で、C1とした。冷たい風は吹いていたが視界が良く気持ちのよい1日を終えた。
4月22日（2日目）ヒグマの足跡にビビる
星空の朝を迎えた。
C1から標高差300m弱下って標高差400m強を、朝一のパワーで登ってパンケヌーシ岳へ着くと、これから歩く日高の山なみが広がっていた。
芽室岳の頂上から徳舜瞥山に登っている友人や山キチのッマさんと電話がつながり、みんなから温かい励ましをもらった。
ルベシベ山分岐を目指して進んでいると、十勝側から登って来て日高側の這松帯へと尾根を越えて行った親子連れのヒグマの足跡があった。立ち止まり足跡の先の這松帯に動くものがいないか？ビビりながら目を凝らした。足跡に近づいてみると、今日のものではなさそうなので一安心した。
ルベシベ山分岐に近づくにつれ吹雪模様となりホワイトアウトの中、ルベシベ山分岐でC2とした。
4月23日（3日目）強風の1967峰越え
朝には視界がきくようになった。
ピパイロ岳分岐への登りは雪付きの良い右斜面にルートをとった。登るに従い雪面が固さを増したが、スノーシュの爪がいい働きをしてくれていたが、下を見ると「滑落はできないぞ！」とピッケルを持つ手に力が入た。
分岐まで登ったら一休みしようと思っていたが、戸蔦別川から吹き上げてくる風が強く酷い地吹雪で休憩はできなかった。
雪煙舞う中、日高山脈第3位の高峰1967峰に立ったが、楽古岳を目指す縦走の途中では一つの通過点ピークにしか思えなかった。ここの下りでは夏道が出ていて岩場の所では曳いている袋の扱いが面倒だった。
標高点1904まで進んでC3。風当たりの弱い所にテントを張ろうとするがよい所が無かった。ならば雪面を掘り込んで防風壁のブロックを積まなければならないが、雪が固く疲労した体に鞭打つような労力を求められた。
今日は水筒の水が凍るくらい寒かった。水筒に湯を入れ湯たんぽにして寝袋に潜り込んだ。
4月24日（4日目）停滞
朝、寝袋の両脇に圧迫感を感じて起きると、テントの2/3は雪に埋められ押し潰されていた。雪かきに出ると雪煙が渦巻く世界だった。
迷うことなく停滞を決めた。夕方から風も弱まってきた。
4月25日（5日目）いい眺めだ！
2時半に起きたら満天の星空だった。出発する頃には十勝側は雲海で主稜線も雲が流れていた。北戸蔦別岳まで来ると風も穏やかになり良い天気になった。
日高の山なみは勿論のこと十勝連峰、芦別岳や夕張岳も綺麗に見え、いい眺めだった。
今回は日高山脈の主稜線縦走が目的で、寄り道となる日高山脈の最高峰幌尻岳に登らないが、複雑な気持ちでパスした。
戸蔦別岳を下る頃には、新雪が今日の日差しで融けアイゼンに団子状になって付着、アイゼンを脱いだ。
曳きずっている袋が下りでは転がって引綱に撚りがかかってしまい、その撚りを戻すのが大変だった。曳き綱にスイベルを着けていなかったのは失敗だった。
10時半ころには曇って来て雪もちらつきだし、神威岳に着いた時には降雪も激しくなり山々も見えなくなった。
神威岳・エサオマントッタベツ岳間の標高点1563の北500m付近でC5とした。
4月26日（6日目）シマリスに挨拶
降っていた雪も止み快晴の朝を迎えた。
新雪のラッセルに息を弾ませてエサオマントッタベツ岳の頂上に立つと、楽古岳が遥か彼方に見えた。
その頂に立っている自分を想像すると、感激に泣き出しそうな姿があった。山登りってそんな瞬間を味わいたくて、一歩また一歩と歩みを進めているんだな〜と思った。
ナメワッカ分岐付近で雪庇側の小さな雪穴から、シマリスが顔を出して目が合った。足音を感じ外の様子を見に来たようだ。入山日以降、人に会っていなくて人恋しくなっていた時だけに「元気か？」って話しかけてしまった。首を持ち上げキョトンとした目が可愛かった。
春別岳では吹雪となり、1917m峰の登りでは限られた視界の中にニセピークが何度も表れ、そのたびにガッカリして疲労感が増した。
もう幕営しなければならない時間はとうに過ぎているが、この強い風を避けられる所が無く、1917m峰から下って行くと九の沢カール側に漸く風を避けられる所があった。頑張りすぎてテントを張る雪面の整地がつらかった。
4月27日（7日目）疲れている
3時に起きると満天に美しい星空が広がっていた。
雪煙が舞う中、アイゼンのツアッケが良く効く、足首が痛くなってきたころに日高山脈第二位の高峰カムイエクウチカウシ山に着いた。第一位の幌尻岳は登っていないので、今回の縦走では最高地点になる。頂上の東側に風の当たらない所を見つけ一息付けた。
カムイエクウチカウシ山への登りは快調だったが、下るにしたがってガス欠でエンストするような感じでパワーが切れ体調が悪化、休み休み歩みを進めた。
これ以上頑張ったら倒れちゃうなと思い始めたころ、這松を切り開き整地したテント場があった。倒れ込むようにリュックサックにもたれ、しばらく休んでからテントを張った。
今日は強い風が吹いたり、雲が湧いたり、陽が差したり、雪がパラついたり、体調の変化と忙しい日だった。
4月28日（8日目）高価なチタンアイゼンが破損
満天に星空が広がり、テントにも霜が付いていない、入山以来一番良い天気の朝を迎えた。一晩寝て疲れも随分取れていた。
1823m峰に立つとコイカクシュサツナイ岳へと這松のでた尾根が続いていて苦戦しそうに見えたが、それなりの踏み跡ががあって思っていたよりは歩きやすかった。
コイカクシュサツナイ岳への登り手前で、「キーン」という金属音がした。数歩歩いて左足に違和感を覚えて見ると、アイゼンの前半分が無くなっていた。戻りながら探すが容易には見つからず、リュックサックをおろして這松の根元を四つん這いになり掻き分けて探した。必死だった、数往復して見つけた時の喜びは大きかった。ジョイント部が折損していた。
アイゼンの折損が堅雪の急斜面でなくてよかった、そのような場所だったら命を落とすところだった。
アイゼンは山行中背負っていることが多く、軽量化が必要なこの縦走のために、思い切って購入した高価な（ 50,000円）国内メーカーのチタン製アイゼンだ。一生ものだと思っていただけにガッカリしたが、アイゼン無しでは縦走できない！ガッカリしている場合ではなかった、何とかせねば。曳いていた袋を背負い、引綱のロープで応急修理をした。
コイカクシュサツナイ岳の登りは雪は無いが北面のため踏み跡は凍っていた。修理箇所が緩み何度も締めなおした。
登高中アイゼンのことで頭が一杯になる。針金があればと思った時、コイカクシュサツナイ岳の夏尾根頭の棒杭に標識用の赤布を固定する針金が巻き付いているのを思い出した。
「あった！」これほど嬉しく針金を見たことは無かった。杭から丁寧に針金を外した。近くに折れたスプーンの柄が落ちていた、何かに使えそうだ。これで何とかなりそうだ。
ヤオロの窓まで進んで幕営。
テントを設営後、アイゼンの修理作業もう片方のジョイント部にも割れを見つけ両方を修理しなければならなかった。ジョイント部にスプーンの柄を添え木して、直ぐそばの岩場で石で叩きながら形を整え針金を強固に巻き付けつけた。もう片方は持参のチタンスプーンの柄を何度も折り曲げて折り添え木として同様に修理できた。針金を得たことはラッキーだった、これで何とかなりそうだ。
4月29日（9日目）荷物を全部背負う
今日から荷物を全部背負うことにした、これで 曳いている袋が引っかかるなどの面倒が無くなった。
ヤオロの窓からの硬い雪の急斜面にアイゼンが気持ち良く効いてくれ、これなら大丈夫、縦走を続けられる。
コイカクシュサツナイ岳からの1839峰は人気ルートだが、足跡や人影も見なかった。
這松に押し戻されながらも1599峰に着くとポカポカ陽気でのんびりできた。ここまで4回励ましのメールをもらってい元気づけられていた友人にメールをした。
晴れてはいるが午後になると強い風が吹き出した中、ルベツネ山に着いた。頂上南面の一段下に雪の無い快適なテント場があった。
風が強くテントの中に大きな石を入れ設営した。一人だとテントの張り綱を強く張っても底を持ち上げられる時がある。石にパートナーになってもらい、自分と石との間で炊事した。
4月30日（10日目）干しものを広げてノンビリ
昨日の風の無くなり快晴の朝を迎えた。
快晴無風のペテガリ岳に立つと十勝平野と日高南部は雲海の中で、やや霞んではいるが楽古岳が雲海に浮かんでいた。ゴールの山が見えると力が湧いてくる。
東尾根分岐（1573P）から南下すると瘦せ尾根になる。ここを始めて歩いた時は怖い所だと思った。成長したのか？鈍くなったのか？今は余裕を持って歩けた。
雪が腐りだしコルからはスノーシューに履き替えた。
中ノ岳頂上への最後の登りは急斜面では腐った雪にスノーシューが滑って、ツボ足になると埋まって辛い登りになった。
三角点の傍は雪もなく整地されていたので中ノ岳山頂泊まりとした。
風もなく干しものをしながらのんびりとできた。
5月1日（11日目）足跡に力をもらった
今朝はガスって視界が悪い。
岩稜を過ぎコルへの尾根は広く、限られた視界では下る方向が判らず、読図して磁石を使っての計器歩行で下った。
ニシュオマナイ岳からの下りも同様で、うまく下って行けた時は嬉しかった。
神威岳手前のコルから標高差390m、今回の縦走中でも大きな登りだ。「サー行くぞ」と声を出し自分を励ます。登りだすと天気が良くなってきた。
神威岳夏尾根分岐まで登って来ると、昨日のものだろうか？深く埋まりながらも辛抱強く登った跡があった。凄い人だな〜と感心するとともに、久しぶりの足跡から力をもらって、神威岳の山頂に立った。
神威岳とソエマツ岳の中間にある靴幅山（1468m峰は当時名前は無かったが、いつの間にか名前が付けられている）の手前は靴幅リッジと呼ばれ痩せ尾根で有名な所です。もう10日以上も縦走を続けているとそれほど悪く感じなかった、感覚が麻痺してしまったのだろうか？注意せねばと思った。
靴幅山を下ってコル手前でC11とした。
5月2日（12日目）入山日以来はじめて人に会った
今日は朝から良い天気だった。
ソエマツ岳の肩に出ると頂上に一瞬動くものが見えた。熊か？立ち止まって叫んでみたが動くものは現れなかった。少し登って行くと人影が見えた。入山以来11日ぶりに人に会えると思ったらワクワクしてきた。
ソエマツ岳の頂上で休んでいたのは、男性3人、女性1人のパーティーだった。明るい方たちの楽しそうな様子に、パーティー登山が羨ましかった。疲れはあるものの、人と会ったことで元気が出た。
ピリカヌプリを越え幌別岳まで進むことができた。このピークに泊まるのは2回目で前回と同じ所にテントを張った。
5月3日（13日目）下血
いつもの様に出発準備、便に驚いた。コールタールとチョコレートを混ぜ合わせたような便だった。医学知識に疎い自分にも下血と判った。
もともと胃弱で胸焼けすることも多かった。この山行中も胸焼けすることが多く、胃腸薬はすでに飲みつくしていた。
腹の痛みもなく、体調が悪いという訳でもないのが判らない所だった。
トヨニ岳南峰を下って行くとSa山岳会・Y田さんの4人パーティーに会った。メガネの奥の優しい目は今も変わっていなかった。「もう少しだ！」と激励された。心配を掛けてしまうし、「すぐに降りろ」と言われそうで、下血のことは言えなかった。
良かった天気も野塚岳に近づくにつれ悪くなってきた。野塚岳ではガスと風が酷かった。
野塚平で函館の大パーティーと会った。そのパーティーと相前後して進み、テント場を決めた彼らよりも少し先に進んでテントを張った。
雑炊を少しとブドウ糖を湯に溶かして飲んで、すぐに寝袋に入ったが下血のことが頭から離れず、なかなか寝付けなかった。
5月4日（14日目）後悔
今朝も下痢上の血便、昨日よりも症状は悪いが腹痛は無かった。
体調の事もあり今日中にこの縦走を終わらせようと気持ちを奮い立たせて、ガスと風の中を出発した。
オムシャヌプリの頂上で休んでいると虹が出た、立ち上がるとブロッケンが見れた。
オムシャヌプリ東峰を過ぎ雪庇の端側をスノーシューで歩いている時、左斜め前方に転倒十勝側斜面に転落した。反射的に体が反応してストッピング体制が取れピックをを打ち込みことができ滑落を停めることができた。こんなことは初めてだった。腹のことが気懸かりで足元への注意を怠っていた。
十勝岳の登りになって一気にペースダウン、どれほど休んだだろうか？力尽きた自分を励ます時間が続いた。
十勝岳頂上に近づくにつれガスが消え、頂上からはこの縦走のゴール、楽古山荘が見えていた。
ここへの登りの無様さから今日の下山は難しいと思えた。妻に電話がつながり迎えの時間は再度電話することにして、現状を驚かない程度に伝えた。
楽古岳に向かって下って行くが、力が入らずフラフラ状態「夢の実現に向かって歩いているのか？、死に向かって歩いているのか？これ以上歩いたら死んじゃうぞ！」と思った。
これ以上下ったら電話が繋がらなくなる心配があることから、コル手前で行動を止め、待機している妻へ明日正午頃に楽古山荘への迎えを頼んだ。
リュックサックにもたれ大休止、意を決してテントを張り、横になっていたら急に腹がグルグルと痛くなってもよおした。靴も履かずにテントから飛び出し、下着をおろすと同時に大量の下血があった。痛みは消えたが、雪に滲み込んでいくそれを見て動揺した。幸い痛みは無いので、死ぬことは無いだろうと気持ちを落ち着けた。
縦走の完走に拘らず、昨日野塚トンネル十勝側出入り口へ下山すべきだった。昨日、会ったパーティーに胃腸薬を譲ってほしかったが、ノンデポ・ノンサポートへの拘りから言い出せなかったことなどを後悔した。
水分だけは取らなければと白湯とブドウ糖を溶かした湯を、時間をかけ何倍も飲んだ。
5月5日（15日目）心配を掛けていた
幸いに夜間には何も起こらなかった。十分とはいえないまでも寝ることはできた。
ブドウ糖を湯に溶かして飲み、出発。何とか歩けそうだ。
力なくゆっくりだが足を前に出し続け、信じられないくらいの時間はかかったが、楽古岳の頂上に辿り着くことができた。雲が湧き辿って来た山脈は残念ながら見えなかった。
調子が良ければ天にも昇る気持ちで大喜びできただろうが、疲労が大きくホッとした気持ちになれただけだった。
日高山脈の主稜線縦走をノンデポ・ノンサポートで歩きたいと思っている、私をそれとなくけしかけてくれ見守ってくれている、K日さん報告したくて電話をしたが呼び出し音で終わった。
楽古岳から下り始めて間もなく、K日さんから電話が入った、「食料はあるか？」と気遣ってくれた。優しさにあふれた声を聞いて、ここまで来れて良かったな〜とこみ上げてくるものがあった。
楽古山荘が見えた時は無事下山できたことにホッとした。山荘に入り大の字になって寝転び目を閉じると、日勝峠を出発した日からの事が、早送りで思い出された。
僅か経って妻が来た「大丈夫かい？」の言葉、心配を掛けていた。
温泉に寄り半月ぶりに入浴、体重計に乗ると7��瘦せていた。
エピローグ
下山の翌日、病院に行くと、問診のあと肛門に指を差し込まれ、即入院となった。
昨日まで15日間、日高山脈を歩いて真っ黒に雪焼けした男は、診察室から車椅子に乗せられ病室へと運ばれた。
「これで死の危険は無くなりました」との医師の言葉は重かった。
胃カメラ検査の結果、2�僂�1�僂琉瀋掾腓�あったということで、胃に孔が開かなかったのが幸いだった。
夢の実現のためなら、わが身に迫りくる死さえも受け入れようとする馬鹿者だった。
二十代から持ち続けた夢を実現することはできたが、反省点の多い山行となってしまった。
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pagdoggy さん
日高主稜線縦走の壮絶な記録をじっくり拝読させていただきました。私も１０分の一以下の距離ですが日高主稜線の魅力に引き込まれて歩いておりますので手に汗を握りながら想像しました。誰に誇るわけでもなく、ただただ自分自身の目標としてやり遂げることの満足感は何物にも代えがたいものだったのではないでしょうか。yamakichiさんが全身全霊をかけて臨んだ山行に大拍手です。現在はリハビリをしながらの山歩きかと思いますが、いつまでも元気にレコをあげていただきたいと願っています。
20数年も前の記録を読んでいただき ありがとうございます。
＜誰に誇るわけでもなく、ただただ自分自身の目標としてやり遂げることの満足感は何物にも代えがたいものだったのではないでしょうか。＞
のはずだったのですが、下血してそれどころではなかったのが残念でした。
でも、時がたち老いた今、大好きな日高山脈にどっぶり浸かって過ごした日々を振り返れる自分を幸せ者に思います。
＜現在はリハビリをしながらの山歩きかと思いますが、いつまでも元気にレコをあげていただきたいと願っています。＞
ポジティブさんをはじめ皆さんのレコに後押しをされながら、これからも山行を続けていきたいと思います。応援ありがとうございます。
コメントありがとうございました。
自分の気力体力の乏しさを改めて実感するとともに、コメントすることすら憚れる思いでした。
しかし、敬愛する笹柱myu殿がご覧になれば、この偉業に必ずやコメントされるだろうと思いなおし、継子としてコメントさせていただきます。
なんと50代、スマホで手軽にルートをなぞれる今とは違う中での壮大なる縦走。
65歳でひとくぎりつけようかと思っていた自分を恥じております。
これからもすてきな過去レコのアップを熱望しております。
ありがとうございます。。
熱心に山登りを楽しまれているdaniyamaさんから、この様なコメントを頂いて恥ずかしくなっています。
＜敬愛する笹柱myu殿がご覧になれば、この偉業に必ずやコメントされるだろうと思いなおし、継子としてコメントさせていただきます。＞
myu様には、【過去レコ40年前】乙部岳〜雄鉾岳 縦走のレコに温かみのあるコメントを頂いていました。お会いしてお礼を言いたかったのですが、それがかなわなくなったことがとても残念です。
＜これからもすてきな過去レコのアップを熱望しております。＞
ありがとうございます。
書き残してきた思い出をヤマレコにアップすることで回想でき、その時間を楽しんでいます。
私もdaniyamaさんのすてきなレコからたくさんの元気を頂いています。
どこかの山でお会いできればと願っています。
コメントありがとうございました。
25年も前の記録とは思えないくらい、まるで昨日のことのように心情が伝わってくる記録、心を突き動かされながら読ませて頂きました。
日高山脈縦走は、望んでも出来る人はごく僅かの偉業と言っても言い過ぎではない山行だと思います。
yamakichiさんの今の楽しい山行のベースには、こんな経験があるからこそなのだとも感じました。
素晴らしい記録を公開頂きありがとうございます
私もtacasicaさんの記録を拝見して、行ってみたいな〜と参考にさせて頂いています。
日高山脈縦走は記録を目にする機会は少ないですが、魅力ある山々なのでそれなりにいるのではないかと思っています。
見て頂けるだけで嬉しいことなのに、コメントまで頂きありがとうございます。
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