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2012年09月08日 09:32回想の山々全体に公開

BLUES IN〜BLUES OUTの狭間 1

 音楽好きの自分だが、未だに山中で音楽を聴くことがない。
自然の中では自然音に耳を澄ますことが習慣になってしまっているのだ。
岳会メンバー時代の1950年代後半にはウォークマンやアイポッドのような音楽器機は兎も角、ラジカセさえ存在せず、携帯電話などの情報機器は夢のような話であったのだ。
それでも音楽が恋しくて、初めのうちはキャンプで寛いでいる時には音楽を聴きたいと切実に思ったし、音楽好きの新人達は皆そう思ったに違いない。

会には真空管式の携帯ラジオが有ったが、音楽を聴くなど以ての外〜、気象担当が夜間、真剣な顔で気象通報を聴いて天気図に記入していた。
電源には、真空管のヒーターを加熱する低圧のA電池とプレートに供給する高圧のB電池が必要で、何れも極短時間で消耗した。
聴かせて貰えたのは夜のニュース・天気予報位であった。

情報機器も音楽機器も無いから、仲間の会話と周囲の自然音に耳を澄ます習慣が身についてくる。
キャンプでは夜話会が盛んで、普段も何かと会話が多かった。
すると会話と周囲の音に敏感になるから、それに対応した態度や反応が身のこなし方の様に体に染み付いてしまう。
一年もすれば、対人関係や自然現象に敏感且つ適切に対応するリズム感と思考パターンがほぼ完成する。
既にその時には登攀と歩行時のバランスと手足の独特の動きと姿勢、周囲状況の把握とそれに敏感に対応できる体勢が身についている。
これは相撲部屋に入門した外人力士が短期間に日本語に堪能になり、身のこなしから思考パターンまで日本人同様になるのと同じだ。
そしてこの岳部岳会人特有のリズム感と独特の身のこなしは思考パターンと共に、会を離れても年月を経ても容易に消えるものではない。

1980年代前半の頃、体力技量落ちの中年男の独り歩きを心配した山の神の勧めで、某ハイキング誌が主催するハイキングクラブに一年間入会在籍した。
初めての山に案内してもらえることが楽しみに思えて入会し、十数回日帰りと小屋泊まり一、二泊の山行に参加したが、20名以上の多人数パーティでの歩行と休息といったリズム感、昼飯の摂取習慣とその時間、雨具の装着と着衣の濡れた時の着替えと、それに要する時間と場所、それを見ているだけの時間の虚しさに独りだけ浮いてしまう。
老若男女巾広い年齢層の人達だが、身のこなしとリズム、天候急変時とそのアフターケアーに対する思考パターンは自分のそれと違いすぎていた。
時間を気にしながらも何とか和気藹々と過ごしたが、周囲の人達には自分がストイックな変人に見えるのではと気に病み、一年分の前払会費切れを機に退会して単独行に戻ってしまった。
その間、パーティの皆さんとリーダーに目に見えない迷惑を掛けてしまっていたのではと思っている。

結局、岳部、岳会を離れると山仲間が居なくなり、単独行になってしまうのである。
そうした離れ駒同士が一緒にパーティを組んでも、同じ会からなら兎も角、巧くいくとは限らない様だし、その実例も見聞きしている。

一方、この数十年間の登山用具装備の進化は素晴らしいものだし、日常生活の進化だってもっと素晴らしい。
それに習って、登山の方法と態度も習慣と思考パターンも、進化して当然だと思う。
携帯電話やGPSなどは夢のようだし、登攀用具も素晴らしい進化を遂げている。
山の自然環境の開発が進み、登山道の整備、テン場の整備と指定がなされトイレの数も卦違いに多い。
山小屋も多くなり設備も素晴らしくなった。
駐車場が出来たので、車で山まで行ける事も進化の一端で素晴らしいことだ。
これらの事情から登山者の登山態度と習慣が進化するのは当然のことで、それこそ素晴らしい事だと思っている。

昔、テン場は自然発生的に生じ、付近にトイレなど無かったから、自然環境の中で適切に処理するのが通常だった。
自分はそれが習慣として身についてしまっていて抜けていないから、今でも抵抗感は無い。
だが現在はマナー的にも衛生的にも、厳格にトイレを使う方が進化しているに決まっている。

自分の汗で濡れた下着はどうするのか。
当然のように自分の体温で乾かしていた。
汗臭いのは当然のことで、そうするのが習慣だったのだ。
豪雨に下着まで濡れて寒気の酷い時には、キャンプで非常用に所持した乾いた下着に着替え、濡れた下着を再利用のためテントの内外に洗濯せずにそのまま干して乾かすのだ。
予備の下着は元々非常用として携帯しているから使わずに済めば、そのまま持って帰ることが多かった。
山に入っている間、歯磨きをした経験が未だにない。
下着の件も歯磨き無しも皆習慣か、少なくも慣例としてそうしていたのである。
臭いが酷くても命に別状がなかったのが理由だろうが、今にして見れば不衛生の極みであると思うこともある。
 
当時、自家用車で山に行く人は極めて限られている、と言うより皆無に等しかったから、酷い臭いのまま公共の交通機関を利用していたのである。
麓のバスの中は皆が臭いのでお互いに我慢していたが、列車内や特に都会の電車内では自分の周囲から人が遠ざかるのを見ることが多かった。
当時の登山は家族や友人に心配を掛けるだけに留まらず、見ず知らずの人にも迷惑を掛けていたのである。
登山をより安全且つ快適にする進化は好ましい事であると思うし、昔も現在のように環境と装備が進化していれば、登山習慣や態度も進化していて当然だったろうと思う。

各種山用食材の進化と素晴らしさを身を持って体験すると、当時の山仲間に食べさせたらどんなに驚き、喜んだだろうとふと思ってしまう。
朝飯も晩飯も酷かったから、美味しい現代のフリーズドライ食品を喜んだに違いないと思うのだ。
昼飯に時間を取る習慣がなく、行動しながら摂取するのが常であったから尚更の事だと思う。
GPSを持って行って見せたらさぞ驚いたことだろうとも思う。
タイムマシンがあれば仲間が好きだった音楽をアイポッドで聴いてもらえるのだが〜。

今日の日記は音楽をテーマにするつもりで話が横道に逸れてしまった。
日記が長文になると、誤って消してしまうトラブルを起しやすくなる。
パソコン操作に未熟な自分が原因なのだが過去に2回以上経験しているし、起すと当分の間日記を書く気力を喪失するから、このあたりで中断する。
さて、日記のカテゴリーは何処に分類するのか。
音楽に直接関係するのはタイトルだけになってしまったが、取り敢ず未分類として掲載し考えて決めたいと思う。(つづく)ainakaren

*写真左 アート・ペッパー「モダン・アート」アルバム ジャケット
*写真右 前穂北尾根稜線直下から見下ろす奥又白谷(1958年8月)

*この日記の(つづき)
http://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-40065
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コメント

RE: BLUES IN〜BLUES OUTの狭間
やることとすることが同じですね、
男女を問わずトイレなどは少し離れて用を足していましたよ、
今から見ると不衛生この上なかっと思います、

私の場合は山岳会に入った時は、道具なども何もなく、
ズック靴でしたので、チーフに聞いて靴から揃えましたので、

少ない小遣いでしたから1年目は個人装備を揃えるのと、
訓練と簡単な沢だけで終わったような気がします、

同期の人などとは初めから差がついていましたね、
2012/9/8 21:56
BLUES IN〜BLUES OUTの狭間
naiden46さん、こんばんは。

当時の岳会の合宿訓練は、苦行のようなやり方が有りましたね。
辛いとは感じても嫌だとは思わなかったですね。
最近の登山者は皆さんは素敵な山登りをしていますよ。
快適、安全に確実に進化しています。
登山者にも色々な人が居ますが、そのことは昔も同じでしたね。
進化した快適で安全な登山がいいですよ。
わざわざ苦行のような登山をする必要はありませんが、習慣は容易には消えませんね。ren
2012/9/8 22:32
RE: BLUES IN〜BLUES OUTの狭間
ainakaren さま

思わずコメしてしまいます。
帰りの公共交通機関で、周囲に悪臭を放つ引け目
山も含まれますが長期幕営の後もそうでした。
首都圏ではいつごろか忘れましたが、休みの日でも電車は混み合って。。。

そんな電車に1週間も幕営した後の集団が電車に大きな汚れたキスリング持って乗ってくる図は、、、
今では考えられないかもしれません。



写真2の靴、、、、紐飛ばしてますねぇ〜


・・・よーく見るとDリングは一つで二番目からフック、そのフックが、、、かなり使い込んでいらっしゃいますね。
2012/9/9 14:49
BLUES IN〜BLUES OUTの狭間2
77ms1ksbさん、おひさしぶりです。
お元気そうで、何よりジャマイカ

列車、電車の中、気が引けますよねぇ〜
電車男なので近頃はオドオドと小さくなって乗っていますよ。
昔、昭和33年頃は農家の担ぎ屋の小母さんが沢山乗っていて、沢庵やらお弁当の臭いが社内に充満していましたので、こちらも遠慮なく乗れましたが、最近は屁をするのもためらってしまいますね。

写真の靴は相棒の右足です。D環の上の内側のフックが一つ取れているので、あの紐掛けなんですね。
彼は50センチ左下の短いバンド状のステップに立っています。
足が写ってしまった失敗写真ですが、今見ると懐かしくていいですね。ainakaren
2012/9/9 15:55
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