屋久島の森に眠る人々の記憶―歴博映画の会

2016年02月21日 19:16博物館、展示会、美術館など全体に公開

これまで20年以上屋久島に通って屋久島の自然と暮しの変化を記録してきた歴博の民俗学者、柴崎茂光氏の製作した記録映画「屋久島の森に眠る人々の記憶」の上映と関係者による報告や参考映画上映などのイベントに出かけた。新宿の安田生命ホールなので便利な場所だ。今回のポイントは①屋久島の森林開発の歴史と森林軌道その他の遺構を産業遺産としてどう残すのか、世界遺産で観光客・登山客の増大する中で島民の文化や視点を含めて屋久島の自然、くらしとその歴史的な変遷をどう考えるか、問題適した作品だ。この学術記録映画とともに住民によって復活した「岳参り」の記録映画の他、関係者によるそれぞれの報告があり、なかなか見どころの多いイベントだった。特に屋久島の開発の歴史的な変遷の中で、島民の記憶の中からも消えつつある森林軌道や林業集落・分校など森林開発全盛期の様々な遺構を再発見していくプロセスは面白い。近代的な林業開発が始まり、各集落が道路で結ばれるまでは、隣の集落に行くこともできず、各集落が多かれ少なかれ孤立していた時代が長く続き、屋久島と言っても集落によって言葉が異なるケースも少なくなかったようだ。道路が通じ、車社会となり、TVが普及し、コンピュータ。スマホ時代となって、急速に変わってきた屋久島だが、屋久島固有の文化をどう守り、発展させることができるのか、課題は山積みだ。世界遺産という外部の考え方が今や学校その他島民のこれまでの文化とは別の枠組みで観光客とともに進みつつある今日、教育長も当該の人、島外文化に包囲される中で屋久島文化をどう考えるのか、考えさせられる点が多かった。映画では屋久島の杉天然林開発は江戸時代薩摩藩から始まったように言われたが、私の理解では秀吉の聚楽第建設に屋久杉が使われたのが最初と記憶している。登山ブームの背景には奥地林開発で林道が縦横に建設されたことでアクセスがよくなって、マイカー登山ブームになったことなどもあり、開発と登山・観光―自然保護との関係ー住民の暮らしと文化などとの関係が問われねばならないだろうーー。

2016-02-09 2月6日（土）サントリー美術館

2016-02-25 東博考古展示リニューアルー初の

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