最初に12月11日で終了となる「平安の秘仏」近江の国=滋賀県甲賀にある櫟野寺の仏像の特別展を見る。ここは撮影できない。写真は東博のHPにあったもの。寺の名にあるように琵琶湖と伊勢湾の間にある甲賀の里にあり、かつては櫟(いちい)の森があったらしい。伝教大師最澄が比叡山の根本中堂建立の溶剤を求めて甲賀の山中を歩いた時に、櫟の大木を見て、その中に観音様を見たことが、この像の起源らしい。この十一面観音は、そうした伝承よりも後年、10世紀の作のようで、巨大な頭部から胴部までは一木造だが、伝承のようなイチイではなく、ヒノキの大木が使われているようだ。何度か解体修理がなされているが、作者や製作年代が書かれた物が出てくれば、重文から国宝に格上げになるだろう。之より後の時代になると一木造から寄木造など、作り方が違ってくるようだ。端正で肉付きの良い顔立ちが印象的。また頭部の十一面の中では後川の中心にある「大笑面」が音声ガイドのいとうせいこう・みうらじゅんコンビで話題になっており、裏側や横からのぞき込むが、残念ながら今回は光背が邪魔でよく見えない。なお現存の光背は後世の作らしい。今回、私にとって最も印象的だったのは、なた彫の仏像で、作品番号11番の観音菩薩立像や20番の吉祥天立像に強く惹かれた。一見未完成に見える名た後の残る仏像だが、まるで生きている木の中から仏像が生まれ落ちたかのような生き生きとした作品だ。のちの時代の円空にも通じるものがあるような気がする。また吉祥天立像は小顔で表情と言い何とも言えないたたずまいで一目ぼれという感じ。櫟野寺では本堂と宝物殿の改修で平成28年6月より30年9月末まで見学ができなくなる。そのために改修中に今回の東博での第展示会が実現したという。20体の重要文化財の仏像が丈六仏の高さ3m以上の仏像までがすべて展示される素晴らしい展示会で、間もなく終了する直前に見ることができて幸せだった。
写真1)鉈彫・観音菩薩立像
写真2)丈六仏・十一面観音座像
写真3)鉈彫・
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