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写真２）刀装具類
写真３）迷子札
春、各自治体が前年度の遺跡発掘調査の報告展示や発表会を開催するシーズンで、今日は厚木市でも同様の報告会があり迷ったが、厚木の方は縄文時代遺跡の発掘に関する展示をすでにみているので東京都の報告会の方に行くことにした。特に武蔵台遺跡は1979年の最初の発掘から40年近くの間10回の発掘調査が行われ、都内最古=3万5千年前の石器類が出土したことで知られる。その歴史的な遺跡をH27年7月からH㉘年8月までの間に再調査した。
武蔵台遺跡に関する日本旧石器学会の解説では
１）位置： 武蔵台遺跡は、東京都府中市武蔵台二丁目に所在し、現在の都立多摩総合医療センターの敷地に相当する。武蔵野台地上に位置し平坦であるが、すぐ南に高低差約12mの国分寺崖線がある。眼下が見下ろせる見晴らしの良い高台である。
JR中央線西国分寺駅から徒歩20分。もしくは、多摩総合医療センター行きバスに乗って終点すぐである。現地に遺跡を偲ぶものはないが、すぐ近くには武蔵国分寺跡、武蔵国分尼寺跡があり、史跡公園として整備されている。
また、西側に隣接する府中市武蔵国分寺跡関連遺跡、国分寺市多摩蘭坂遺跡と一体のものと考えられ、合わせると約90,000�屬傍擇崑腟�模な遺跡である。
２） 経緯
都立多摩総合医療センターの前身、都立府中病院の建設にあたって、1979年に事前調査を行なったのが最初の発掘調査である。1981〜1982年の第2次調査は、都内最古級の石器が出土したことで話題になった。その後、発掘調査は断続的に約10回行なわれ、2003年から2007年にかけて東京都埋蔵文化財センターによって調査がなされたのが最後である。
旧石器時代の石器は、約27,000点が出土した。また、武蔵国分寺跡関連遺跡、多摩蘭坂遺跡を合わせると、約40,000点に達しており、南関東地方で最大級である。
3）石器群の特徴
第一は、その圧倒的な出土量である。旧石器人が約35,000年前から20,000年前まで断続的に石器を遺した累積的な行為の結果と言えよう。その中で最も多いのが、「�港悄Ν諺慍蕊�段階」と言われる石器群である。合計で約23,000点の石器が出土した。近くの多摩川で採取したチャートやホルンフェルスと、伊豆・箱根で採取した黒曜石を使用しており、南関東地方を東西に行き来して生活していたことがわかる。
第二は、�樵慇亟鏃欧箸いΑ�南関東地方の最古と考えられている石器群である。石器の組成として局部磨製石斧を有するが、それ以外には定型的な石器がほとんどない 。合計で約4,500点の石器が出土しており、こちらは同時期の石器群で、全国最大級である。日本列島にはじめて渡来した旧石器人を考える上で、重要な遺跡である。
今回の都埋文センターの発掘調査報告
今回は府中療育センターの改築工事に伴う発掘でH27年3月〜28年8月にかけて行われた。その結果、
１）地表面から5m掘り下げたXｂ層を中心に約3万5千年前と考えられる石器と礫1300点が出土、東西60m、南北20mの広範囲にわたって分布、S56〜57年（第二次）調査、H. 2~3 年（第６次）調査時の遺物と一連のものと考えられる。
２）石材はチャートが多く、信州産と推定される黒曜石および、房総南部の嶺岡山地の珪質頁岩が見られた。
３）石器は狩猟具と推定される基部加工尖頭形石器、局部磨製石器（木材伐採加工用）、台形様石器、削器、石錐などがあり、また剥片を剥離した石核、敲き石、台石など石器製作に使用したと思われるものも出ている。
４）赤色顔料の原材（鉄石英）とそれを加工する石器が出土、用途は民族事例からは、日焼け止め、虫よけ、身体装飾の可能性がある。
５）礫群ー２m四方の範囲に砂岩・チャート・閃緑岩など、拳大の多くは扁平な礫がまとまって検出された。食s量生産の場、石器製作原料保管、石器埋納など様々な見解が出されている。
６）その他の出土品として、立川ローム第�検���層（２９０００〜２万年前）の石器集中部と焼けた礫群、縄文集落跡と石器・土器、奈良平安時代の竪穴住居・hっ縦柱建物跡などからなる集落跡が確認された。
まとめ：現在の理解で１０〜２０万年前にアフリカで誕生し、約４万年前に列島に到達したホモサピエンスが列島内を狩猟採集生活をしながら移動し、３万５千年前ころ、この武蔵台の地にこうした生活痕跡を残した。狩猟採集生活に必要な多様な道具を製作。保持し、また石材産地などに関する深い知識を持ち、計画的に行動し、かつ象徴的な思考と行動能力を備える現代人と変わらぬホモサピエンスであった。
武蔵台遺跡は４万年前の旧石器時代から現代まで、連綿と人々が生活を続けた痕跡を持つと都内屈指の重要遺跡の一つであり、今後の整理作業を通じて、それぞれの時代の道具、技術、集落構成、性格などの詳細を明らかにしていきたい、と結んでいる。今後の継続的な調査研究に注目したい。
また終了後、発表者（同センター調査員の織田識好氏）に遺跡の現状などを尋ねると、遺跡はとの総合医療センターに下にほぼ埋まっており、壊されて失われた区域も多く、現状では保存の予定は立たないという。重要な遺跡だけに残念なことだ。
その他の報告：今回は２０１６年度の発掘調査２９カ所（継続含め）のうち武蔵台を含め４カ所が報告された（＋誌上報告２カ所の計６カ所）。
報告２は、主として古墳古代（一部縄文）の集落遺跡である八王子市中田遺跡、
報告３は、縄文前中期から中世までの複合遺跡である日野市平山遺跡で、主として古墳時代の古墳と集落について説明があった。
報告４は市谷本村町遺跡で、旧石器時代から近代にいたるまでの複合遺跡だが、この場所は旧尾張藩上屋敷の所在した場所で、今回の発掘報告はこの江戸時代以降の報告だった。特に強調されたのは、奥女中らが暮らした「長局」とその付属施設で、石組溝、、地下室、厠などが発見されている。石組溝は軒下や廊下の下に造られた排水施設で、地下室の穴蔵は火災対策用の収蔵庫だったのではないかと推定している。穴蔵の周囲には石垣を組んだものも見つかっている。また敷地内からは火災の痕跡も見つかっている。
新しい展示：２０１６年度は「多摩の丘陵人」という旧石器から中世までの多摩丘陵の姿を発掘遺物の展示で紹介するものだったが、今回は「台場を掘る」という幕末の遺構に焦点を当てている。
発表会の後、今日は特別な日なので展示室にセンターの調査員、スタッフが大勢出ていて、様々なことを教えていただいた。まず、埋文センターととの埋蔵文化財の基本的な問題として、東京都で埋蔵文化財を展示公開する場所が、戸の施設としては江戸東京博物館だけなので、江戸時代以外の出土品などを展示する場所が（センターの小スペース以外）ないこと、全国的なレベルでは東博や各自治体の資料館などがあるば、これは東京都民にとって大きな問題だ。全国屈指の遺跡の質と量を誇る東京都に展示スペースがない――これは現状では財政上困難としても、将来的に何とかしなくてはならない問題だと痛感した。
さて、今回の企画展はいくつか目玉があるが、いずれも普段はめったにお目にかかれないものだ。胴木や枕木など、土木工事で使われた様々な木材、建材が発見されたが、中でも最大のものは遺跡の底から出てきた巨大な修羅。石垣の材料である巨大な石（一つ２７０�圈畩�錦くらい）を運ぶために使用された修羅の一部らしい。数メートルもある巨大な修羅は、発掘当時大きすぎるので切断して運ばれ、保存処理されたらしい。切断箇所が見える形で展示され、枕木や胴木も展示されている。
次なる希少品は、例えば刀飾の数々。中でも目貫と呼ばれる刀装具の金銀細工はすごい。また江戸時代のペット事情を示す出土品（犬、猫の他、瓶など）、迷子札や日常生活上の様々な遺物も見る価値は十分だ。例えば展示されているおろし金は非常に薄く巧みにつくられ、現代技術でもこれだけの製品を作るのは困難だと解説院。
大勢の職員が展示室におられたので、ついつい様々な分野に質問が及んだ。弥生時代の穀物生産を示す資料の現状、縄文時代の畑作（焼畑など）の可能性、クロボク土と縄文人との関係（野焼き、山焼き、焼き畑など）などなど、ついつい長居してしまった。
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