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石製模造品とは、古墳の副葬品である鉄製武具（剣・刀子）や鉄斧など、当時まだ貴重だった金属製品や装身具を石でかたどったもの。しかも主として滑石という産地がまれな柔らかい石で作られたものが多い。群馬県ではその希少な石の産地があり、他地域と比べてその出土数が多く、私の自宅に近い東京の野毛大塚古墳出土の石製模造品（重要文化財）も群馬で生産された可能性もあるようだ。一見地味なテーマだが、古墳時代の人々の「カミ祭り」「信仰」「特殊な赤製品の生産と流通」という宗教思想史、手工業や流通などの大きなテーマの解明への入り口として重要なテーマらしい。石製模造品は三輪山の祭祀遺構や近畿の古墳出土品、近畿圏から始まり、関東では群馬が一大産地・出土例を形成しているようだ。石製品の形は、斧・鎌などの農工具、刀子、剣、矢じりなどの武器、有孔円板・勾玉・臼玉などの装身具や祭祀具などのを模したものが多いようだ。展示構成は１）古墳出土品 ２）居館と集落 ３）生産工程と関連遺跡 ４）石製模造品からわかること、となっており、かなりしっかりした調査研究のもとに構成されているだけでなく、立派な図録まで作成している。貴重だった金属の代用品として始まった石製品だが、医師の持つ霊力・パワーを人々は感じ取ったのだろうか？東博や世田谷区立郷土資料館で見た野毛大塚古墳出土品は特に質量ともに素晴らしかったことを思い出す。群馬県の首長らと特別な関係にあったのだろうか？またこうした石製模造品は峠や交差点などの交通の要所、海上交通の要所、田んぼの周辺、巨石祭祀場などからも発見され、安全や豊かさを願う人々の祈りの場を記している。また精巧な作りの模造品が次第に粗雑な形になり、５世紀後半には終わりを告げるようだ。金属器の普及によるものか、人々の心の在り方の変化なのか知りたいところだ。
この展示は残念ながら撮影は不可で、図録を購入し、かみつけの里から午後の講演の場所、渋川にある埋蔵文化財事業団に向かう途中、前橋市惣社歴史資料館に立ち寄り、大屋敷遺跡出土の石製模造品などを見て撮影する（写真２）。総社町は古墳後期の立派な巨石による横穴式石室の古墳が多くあるので著名であり、数年前、まだ考古駆け出し時代に、個人で来たか、群馬県立博物館友の会の見学会だったか忘れたが、一度着たことがある。
最後に埋文事業団で「金井東浦遺跡の火山灰上の足跡」に関する講演を聞いて、火山災害の現場に残された痕跡から当時の人々の様子を探る面白い機会だった。古墳時代、榛名山二ツ岳の火山爆発が数度にわたる水蒸気爆発で、火山性の泥の雨が降ったという火山学者の研究があり、どろどろの火山灰の上を人々がゆっくりと移動して逃げたであろう、そして、その後の火砕流でなくなった首長一族などの状況をほうふつとさせるものだった。またこの時代やそれ以前の履物に関しても考えさせられる講演で、草履や下駄、革製の靴など、埴輪から見える履物や古墳出土品、弥生時代の田下駄など、裸足の人と履物をはいている人がいることがわかる。考えてみれば氷河時代や雪と氷の世界に生きる人々が裸足であったとは考えられず、動物の皮で履物・防寒具を作ったことは間違いなさそうで、履物は人類の歴史とともに古いのかもしれない、などいろいろ考えさせられた。また事業団の展示室には、金井東裏遺跡の模型が多数あり、人骨出土地点周辺の足跡なども再現されている（写真３）。痛い足を我慢して何とか前橋に戻り、チャリを返却して帰宅の途に就く。しかし慌ててスマホナビをハンドルに設置するマウントを回収し忘れ、駐輪場に連絡を取って来年回収することとなってしまったーー。
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