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今回のシンポジウムでは、かながわ考古学財団の担当者が、河原口坊周遺跡の発掘の経緯、鉄斧その他の金属製品や土器・木製品などの出土の状況、相模川流域の弥生遺跡、鉄斧などの鉄製品の南関東全域における出土状況などを報告した後、文部省文化財課の禰宜氏による近畿・西日本における鉄器類の出土状況を論じ、次の専修大学の高久氏は、専門の朝鮮半島の考古遺物の出土状況から、この河原口坊中遺跡出土の板状鉄斧の大陸での類似例を検討、ただし、これほど錆のない完形の板状鉄斧は半島でも出ていないと驚くが、鉄斧の謎を解明するよう教え子にエールを送る。
基調報告をしたかながわ考古学財団の一人が大学の恩師の高久氏に連絡し、同教授がさっそく現物を見てびっくりしたという。禰宜氏の議論は、ヤマト王権が成立した大和盆地や近畿地方における鉄器類の出土が極めて低調であるという古くからの疑問に応えるような新発見が未だになく、こうした疑問にどう答えるのか、というのが主だった内容でだった。
ヤマト王権はそれまての社会とは全く異なる国家という新たな組織体を造るという特別な任務を持つもので奈良盆地周辺の人びとが造ったものと考える必要はないはず。むしろ国家を造るという強固な意思をもつ人びとが集まって造った人工都市と考えれば、何ら問題がないのだが――平安京を作ったのは、京都の住民ではないし、江戸を作ったのは徳川家康だ。そこの住民ではない。国家という人工物は自然集落が発展してできるものではないと思う。アマゾン開発のためにサンパウロからブラジリアに首都を移したブラジルの例もある。当時の倭国の有力者たちが、大陸半島情勢を調査し、話し合って、簡単に大陸の勢力に攻められないように、船で日本に来ても関門海峡を通り、瀬戸内海を航行して大阪湾に入ってもなお大和川などを遡らないと届かない地点に都を構えるというのは、防衛上は全くうなづける選択だし、未開の地が多いことはむしろ新しい都を開発するのに好都合だったろうーー。吉備や出雲？西北九州の人々が集まり、技術を出し合って都の建設をしたと考えれば、近畿の後進性は問題ないと言えよう。
