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写真��境塚遺跡出土井戸跡の井戸側板
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2020年秋の新潟県埋蔵文化財センターの企画展は「越後争乱ノコト―発掘された白河荘」で、関連講演会が数回あり、気が付いた時には既に4回が終了、5回目がようやく予約できたので出かけてみた。
第五回の講演は明治大学の高橋一樹氏による「白河荘をめぐる中世のヒトとモノ」
高橋氏は新潟県出身で新潟大学で文献史学・中世史を学び、国立歴博やいくつかの大学を経て現在明治大学文学部に所属している。
中世の荘園領主や地頭らの文書などから見える歴史と近年の考古学的な発掘調査の成果をいかに結びつけることができるか、急速に増加する発掘成果と出土遺物とこれまでの文書や絵図などの書かれた史料との突合せが大きな課題となっている。
今回はその一端を垣間見ることができた。
１．白河荘の成立： 最初にまず、中世荘園の性格付けに関して、かつて私有地（中央貴族や寺社などによる）と考えられた時代もあるが、それは間違いで現在では律令制が崩れて貴族、中央役人たちの給料を王権が支払うことのいできなくなった時代に政府の代わりに徴税し、貴族のサラリーを国家が支払う代わりに荘園制度がその代わりの役割を果たした国家・政府公認の土地制度、ということになるらしい。
越後白河荘に関しては、領主側の「九条家文書」や「玉葉」（九条兼実の日記）などに白河荘の譲渡等に関する記述があるという。
白河荘は摂関家の中世荘園として設立され、現地支配には城氏の庶流が関与していたという。こうした経緯は阿賀野川右岸の11ｃ後半〜１２世紀の大坪遺跡や会津坂下の陣ケ峯城跡、菅名荘などの城氏の嫡流らとの関係を示す遺跡からも裏打ちされる。
2．荘園支配と担い手：領主の九条家は近臣の公家を預かりどころに任命―現地の誰かに実際の経営支配を依頼したと思われる。こうした領主層は現地を見ることもなかったようだ。
15世紀には山浦条などの経営を越後守護上杉氏に依頼―被官の千坂対馬入道が段銭で請負う。
地頭支配の展開：この地を支配していた城氏が敗北し、鎌倉幕府により伊豆国大見郷の大見氏（平姓）が地頭となり現地支配、白河荘を上条と下条に分け、
下条惣領を大見左衛門尉時実
上条惣領を大見肥後四郎左衛門尉行定らが現地支配した。
14世紀に白河荘の上級領主権獲得に基づく他氏の介入があり、鎌倉時代末に地頭大見氏支配は重大な挑戦を受けることになった。
３．白河荘を行き交う人とモノ
嘉暦2年（1327年）8月24日越後国白河荘検注名寄帳（安田文書）に大見資家の花押が紙の継目裏に（作成者の証拠）−当時の荘園関連地名やかかわった人々の名前など
境塚遺跡の井戸出土木簡―闘茶札
製材の印、、瓷器系土器（笹神窯）の押し印
曲げ物や鍛冶関連遺物―地頭に編成された職人の存在形態の推定
境塚遺跡・山口野中遺跡など13世紀後半から規格道路施設・機能別空間は�帰�居館エリア・流通エリア・町場エリアからなる当時の空間の面的復元など今後の課題は多い。
白河庄検注名寄帳にかたはた（潟端）の耕地に関する記述がある―境塚遺跡出土井戸材から、当時の製剤技術や木材流通を推定
地頭大見氏による笹神丘陵の「殺生禁断」エリアの設定は仏教イデオロギーをまとう山野資源の独占的確保が狙いか？
各遺跡出土の舶来陶磁器など、列島規模の物資流通の一端を知る→「北国下り遺足帳に見える醍醐寺僧侶の移動ルートなどから沼垂−乙宝寺―池之端―金蔵坊―安田など、潟と河川を南北につなぐルートが存在した。
伊勢外宮文書などから見る阿賀野川右岸における富の集積と列島規模の金融システムへの組み込み、伊勢外宮の所領にも関与した地頭の大見氏の関与ーーなどなど、今後の課題は大きい、という。
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