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写真��縄文草創期の隆起線文土器と石器（小島田八日市遺跡）
写真�Ｈ婀�の土偶（大道遺跡）
前橋市の粕川歴史民俗資料館で開催されている「前橋市史第１巻以降」という４０年前の市史の先史・古代編刊行以降の発掘調査の成果を各時代ごとにいくつかのトピックで展示して、関連講演をつけているもの。今回は前回の旧石器時代に続き、縄文時代編。展示は草創期から晩期まで並んでいるが、講演は早期の石器の動きをテーマに、大工原豊氏が講演。近年国学院大学の谷口先生を中心に出土人骨の人類学者や古人骨DNA研究者らが大きな調査プロイジェクトを立ち上げ、大工原氏もその中で石器分析を担当しており、その話から始まった。居家以岩陰遺跡からは黒曜石石器も出ており、今日はその黒曜石の移動をキーワードに、縄文早期の人と石器の移動、物流を読み解く話。大工原氏が特に石鏃の専門家として丹念に石鏃の地域差、時期差を追いかけ、黒曜石の移動ルートを推定、和田峠・星ヶ塔産黒曜石の石鏃などが居家以岩陰遺跡などの群馬県側に移動し、さらに赤城南麓ルートを通り、栃木県の三毳山周辺の遺跡に到達している。この黒曜石移動には八ヶ岳産黒曜石は見つからず、この集団は群馬から狩猟をしながら移動し、和田峠などで比較的短期間滞在して黒曜石も入手して群馬に戻るという移動生活をしていた。異なる地形、環境におけるよい狩猟場を巡って移動しつつその先で黒曜石を手に入れて、狩猟しながら戻るという「埋め込み戦略」と呼ばれる旧石器的生業パターンを持ったという。三毳山〜渡良瀬川流域には群馬の赤城南麓のグループとは異なる石鏃文化を持つ集団が存在していたという。一方、南関東では信州産黒曜石と神津島産、伊豆箱根産を含む黒曜石の二種類を入手しており、船で神津島を往復する人々をその移動ルートの中に持っていたようだ（神津島産に似た黒曜石が伊豆のどこかにあるという大工原氏の師の國學院の大御所もおられたようだがーー）。しかしこうした黒曜石の移動では信州産ルートは信州から群馬栃木、埼玉を越えて南関東にも移動しているが、神津島・伊豆箱根産は埼玉あたりに境界があり、その先には移動しないという。信州産はそれだけブランド品で、質の劣る南関東のものは埼玉あたりを限界にそれ以上広がらないようだ。
また石鏃研究の中から、とても実用品とは思えないものも散見され、石鏃を使った祭祀が行われてたのではないかという興味深い話もあった。群馬から信州、さらに栃木と人々は数百キロを移動する旧石器的な移動生活を縄文時代に入っても行うグループがあったが、土偶は縄文早期、前期には出ないことが多いという。土偶はいち早く定住生活に入った東京湾岸の遺跡で出始め、定住生活の拡大と共に広がるという。とりわけ縄文文化が成熟した後晩期には多く、土偶と定住生活の関係は深いという。大工原氏の経験では、こうした定住地の遺跡では墓域が設定され、発掘調査で夜テントなどで生活すると、人魂を見る機会があるという。移動が少なくなって生活の中で時間の余裕ができると、様々な精神文化が出現し、死後の魂などを考え始めて土偶が生まれると大工原氏は言う。そのほか多岐にわたるテーマで黒曜石石器を飼ったったが、とても興味深い講演だった。
