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写真��東大総合学術博物館の宮田氏による土器残存物の脂肪酸分析
写真⓷佐々木由香氏による食物以外の植物利用に関する研究（キハダ・ニワトコ・ミズキを煮炊きしてから薬効成分を回収）
土器圧痕などから、新たな先史時代像を描こうとする新しい考古学、学際的研究プロジェクトの報告会を聴講、多くの研究者や市民が集い、オンラインでも、中継された。冒頭、チームリーダーの熊大の小畑教授により、研究プロジェクトの趣旨説明があり、福岡などで埋蔵文化財行政、発掘に携わった経験などから、現在文化財行政が直面する様々な問題点を指摘、とりわけ人口減少、公共事業の減少、考古学関連研究者、雇用者の縮小の中で、過去のバブル期などの遺産として残された大量の遺物の保管継承、活用は、各自治体にとって頭の痛い大きな問題となっていること、縮小したと言っても、尚膨大な発掘調査は続き、遺物は増え続けている。
小畑氏は、この問題の一つの解決策として、過去に蓄積された膨大な資料から新たにそれらを新たな資料として圧痕などの再発掘、研究に生かすことを提唱している。これは大きな新しい時宜にかなった視点だろう。
小畑氏は長年にわたるご自身や全国各地の研究者による研究から、様々な土器発掘調査の、技法を発掘し、これまでの蓄積を生かしていく考古学の新たな方法を提唱し、説得力があった。さらに氏が提唱する狩猟栽培民としての縄文人が穀物栽培こそなかったが氏らが発見したコクゾウムシなどの食物害虫や、ゴキブリなどの家屋害虫に見られるようなその後の人類史が直面したヒトと害虫、感染症などの諸問題の始まりだったと、述べ今後の人類の将来像にも関連する課題としての考えていくことを提唱し、氏の視野の広さを感じさせた。
土器圧痕研究に始まる調査の利点と大変な点は土器の悉皆調査にも似た市民をも巻き込む大量の出土土器、土器片から、圧痕を探しだし、また、さらに見えない土器の中や裏側の痕跡をCTスキャンや軟X線解析で種実や繊維片、その他の混入物を探しだし、科学的手法で解析する方法を説明し、さらにゴキブリの糞、蛾の幼虫や糞など、昆虫や微生物の痕跡から当時の家屋の状態や生活の仕方を研究する手法に言及、この分野の可能性を示唆した。
各論に入り、土器の圧痕と、土器編年における実年代の関係の検討(小林謙一)、縄文晩期と、弥生早期の間のイネ圧痕、炭化物などに見られるイネの渡来時期の問題(水田はなかったがイネ、コメそのものはそれ以前から渡来していた可能性があること)、佐々木由香氏による食物以外の植物利用の痕跡の研究ーとりわけキハダ、ニワトコなどの種実、果実の痕跡が土器などに残されていることの新たな解釈、科学研究から、かつて言われた酒づくりでなく、薬効成分を取り出すことを縄文人は早くも察知していた可能性を示唆した。自身で実験を繰り返し、これらの果実、植物を煮詰めるとどのような成分に変化するのかを確かめてガスクロなどで分析し、現代薬学でも認められるようなせき止めなどの様々な薬効成分を確認してきた。非常に興味深い。また千葉県立博物館の黒住氏は、土器その他の貝塚以外から出る微小貝などから、製塩などの当時の人々の活動の復元の可能性に言及、また、土器と繊維などの混和材の意味について世界各地の土器生産技術とのかんけいを論じる研究者の発表もあった。今後のこの分野の可能性を感じさせる発表会だった。
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