両店の品揃えの特徴や品質については、噂話で聞いて大略は知っている。
だが、昭和時代の老爺はデカトロンと言えば真っ先にデカトロン管を、カンダハーと言えばカンダハー締具を連想して懐かしい想いでに耽ってしまう。
デカトロン管(計数放電管)は、昭和30年頃に使われた計算機の部品で表示桁数に応じた本数が使われていた。
加減算の場合、入力の手間より算盤の方が速かったので経理担当は使わなかったが、算盤苦手の技術担当がファシットのギア式手動計算機と併用で使っていた。
入力時間を除いた計算速度は、勿論 算盤より速かったのだろうと思う。
当時、英国ではデカトロン管数百本とリレー数百個を使った管球式計算機が稼働していて、その重量と容積は2トン以上でバス1台分程もあったが、計算機としては世界最高性能との噂だった。
昭和34年頃になるとトランジスターとダイオード、放電式数字表示管(ニキシー管)を使った卓上計算機が商品化され、デカトロン管は急速に廃れた。
トランジスター式卓上計算機は、大卒初任給1万5千円位(日給にあらず月給)の時代に35万円位したが、性能は現在の百円ストア商品と同等であった。
カンダハー締具は、昭和時代のスキービンディングの型式名である。
それまで革紐で靴をスキーに縛りつけたラグリーメン締具に代わり、スプリングワイヤーとテコ金具でスキー着脱を簡単にした締具だった。
踵が上げられるように調整可能なので、山スキーに適していた。
私もゲレンデスキーではラグリーメン締具を使っていたが、山スキーにはカンダハー締具を使った。
やがて爪先金具にセーフティ機能が導入されるとラグリーメン締具はロータリー式に進化し、転倒時に爪先を左右に逃して骨折を防止するように改良された。
スキー板は足に付いたままだから、流す心配がなかった。
カンダハー締具も同じように改良されたが、転倒時にスキー板が足から離れてしまうので流れ止め紐が併用された。
それが短いと危険の意見もあり、スキートレーサーの名称で、雪崩紐を兼用するような長尺の紐が繰り出される道具が商品化された。
平成時代になってプラスティック靴やそれに相応しいビンディングが開発されると、カンダハー締具はゲレンデから姿を消し、今ではマニアックな山スキー愛好家が皮製重登山靴でスキーを履くのに使用するのみと聞いている。
画像は、昨年亡くなった昔の登攀相棒と私が一緒の写真である。
二人共、当時流行のチロリアン帽に山シャツ姿だ。
昭和33年夏 前穂高での撮影で、他に二人だけで写った岳会時代の写真は手元に残っていない。
満州国ハルビン育ちで寒冷に強く、沢登りは素足に草鞋で水中を歩いていた。
互いに中年の頃だが、彼の車に乗せてもらうと何時もカセットテープのドボルザークの新世界か、喜太郎のシルクロードが聴こえていた。
大陸への郷愁が、あったのかも知れない。
今聴けば懐かしく、そして寂しい限りである。ainakaren
*関連日記「長い赤色の紐(雪崩紐)」https://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-28098
今日はカミさんのブーツを見に神田のICIスキー本館(?)まで行ったのでカンダハーの前を通りかかりましたが、時間もなく買う訳でもないので素通りしてしまいました。
アルペン用の板でも1970頃まではカンダハービンディングでしたね・・・1980頃はステップインになっていたのは覚えていますが、過渡期は良く知りません。
アルペン用のブーツとビンディングも今年から新しい規格に切り替わりつつあるようで、古いビンディング用にはブーツソールを従来のものに付け替える必要があるようです。
コメント深謝です。
そうですね。
80年ごろには殆どステップイン式に変わってましたが、年配のスキーヤーにはカンダハー締め具も残っていましたね。
皮製スキー靴の寿命が長かったこともあるのでしょうか。
同じ理由で年配の上級者にロータリーラグリーメンの人も見かけました。
流石に平成になると殆どなくなりましたね。
プラスティック靴を、一度も履いたことがありません。ren
デカトロン管はよく分からなかったのですが、「カンダハー」には懐かしい響きが。学生ワンゲル時代に山スキーで使っていました。それまでスキーは滑り降りるものと思っていたのに、スキー板にシールを貼って登るのだ、と言われびっくり仰天。でも誰も滑っていない雪の上をキスリング背負ってヨタヨタでしたけど滑るのは楽しかったです。
今のBCなんかはプラスチックの靴にビンディングも別物なんでしょうね。もう山スキーをする事はありませんが懐かしい思い出が蘇りました。ありがとうございます。
コメント深謝です。
そうですね〜カンダハーの発音には、懐かしい昭和の響きがありますね。
デカトロン管は確かロダンという銘柄で国産されていて、趣味の工作で購入したことがあります。
ロダンは岡谷電気とかいう会社の商標でした。
そういえば、昭和のラジオにはマジックアイという緑色の発光管が付いてましたよね。
同調すると閉じるヤツ〜懐かしいなぁ〜ren
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