![]() |
主として業務用の製品を扱うが、登山用のピッケルとバイルも造っている。
確かに登攀も、遊びではあるが高所作業には違いない。
昨年、その会社の小型ハンマーバイルを手にする機会を得て、そのバランス好く体に馴染むこと、小さいのに気が利いて何かと便利なことに思わず共感してしまった。
もう使用することなど決してないのに我を忘れ、一瞬欲しいとさえ思った。
Mizo社の「ロカ」という小型ハンマーバイルである。
https://mizo.co.jp/hammer/
大昔(1960年頃)は、ピッケルとアイスバイルは木製シャフトの時代である。
ピッケルは安価な国産品があったが、アイスバイルは高価な輸入品しかなく、当時それを持つ人も見たことがなかった。
急な氷雪壁にはアイスバイルの代わりに、安価な小振りのピッケルのシャフトを短く切り詰めて間に合わせるのが普通であった。
当時、トップ、ホープ、エバニューの各社が手ごろな価格のピッケルを製造しており、その木製シャフトを切り詰めて石突を付け直した。
岳会の山仲間には町工場の機械工が数人いて、改造を引き受けてくれていた。
短く切り詰めたピッケルは冬の急な氷雪壁に使うだけでなく、夏の沢登りにも携行して便利に使った。
草付きの通過、残雪渓のトラバース、泥壁の登りなどでの安定感が確実に増大する。
ロックハンマーを兼用させるためブレード部を切断加工してハンマーの頭を取付ける者もいたが、強度不足による破損事例が多かった。
それに柔らかい泥壁ではピックでは頼りなく、ブレードを使ったほうがより安定に登れた。
ピッケルシャフトが長かった時代、シャフトの短いピッケルは非常に目立った。
当時、この短いピッケルを「沢バイル」とは呼ばなかったし、「沢バイル」という言葉自体も無かったように思う。
ある夏の日、丹沢の沢を数本稼いでの帰途、ザックに縛り付けた短いピッケルを見咎めた一般道の登山者が聞こえよがしに『夏の丹沢にピッケル持って来る馬鹿が居る〜』と云うのを聴いたことがあった。
当時は、沢でのバイル使用が一般的ではなかったのだろう。
岳会を離れて独り歩きになってからも、向かうルートに因ってはこの短いピッケルを携行し重宝に使った。
夏の沢筋の急な雪渓のトラバースなどは、手ぶらだと雪面に手指を差し込んだりしても不安定だが、バイル一つで確実に安定する。
Mizoの「ロカ」は極めて小型で短く軽いのにバランスがよく、短い石突もある。
それにロックハンマーにも使える。
本来、カタログ標記の分類が示す通りハンマーが主目的の製品なのである。
それ故ピック(ハーケン抜取兼用)が、体重を預ける登りをする人には短く恐いだろうが、バランスクライミングしか経験の無い自分がバランス確保用に使うには丁度手頃に思える。
通常のロックハンマーには石突がないが、「ロカ」はハンマーとして使う握り方のままで、その石突がバランスの安定を助けるし、それが何となく安心に思えるのだ。
ピッケルのシャフトを切断しただけで石突を付けない者も居たが、それを借りて使ってみると少し頼りなく、不安感が増した記憶がある。
既に私が「沢バイル」を使うことも購入することも決してないのだが、「ロカ」を使っている人に使用感を聞いてみたい思いがある。
もう長いこと沢歩きもしていないし、体力も技量も消え失せてしまったが、身のこなしやバランス感覚は脳内記憶として残存し、握り締めた山道具を体感的に評価する事ができるのではとの儚い望みがある。
果して、それは悲しい錯覚なのかも知れないのだが〜。ainakaren
文章が上手くてびっくりしました。
chichi1968さん、こんばんは。
コメント深謝です。
恐縮です〜
お恥ずかしい限りです。
あいなかさん
リンク先のミゾーの道具、飾らないデザインでいいですね。アイスバイルはミゾー北辰を使っています。沢バイルでは、20年ほど前に買ったものですがグリベルのGRIVEL "BLACK THIRD"というのです。軽量バイルの先駆けのようなものでした。ミゾーのリンクでは、上から4番目のミニバイルに近い形です。泥壁、雪渓での差し込みには、このくらいピックが無いと厳しい時が多くて。でもグリベルのは、氷登っていて一回付け根がぽっきり折れましたので二代目です。そのころはこういう小型バイル、他には売っていなかったような気がします。沢登りは日本だけですから、今もミゾー以外ではあまりないのでしょうかね。それほど研究熱心ではないのでよくわかりません。こんどグリベルが折れたら、ミゾーにします。
yoneyamaさん、こんばんは。
コメント深謝です。
ミゾーの道具をお使いでしたか。
現物は「ロカ」しか知りませんし、ミゾー自体をそれまで知りませんでした。
昔の登りは足だけに加重して手はバランス維持でしたから、その観点で今でも道具を見てしまいます。
「ロカ」はハンマーですが、バランス維持用としてなら草付きや雪渓、泥壁で使えるような気がしています。
ピックが短いですから、突き刺して全体重をかける現代の登りには無理がありますでしょうね。
リンク画面からピッケルに画面を移すと、お使いの「北辰」が出ていました。
やはり現代のピッケルらしい形状ですね。
腕力で登るには、長いピックが必要なのですね。
私の未経験のアクロバット登攀の領域です。
お一人での気楽な沢歩きに「ロカ」をお使いの機会がありましたら、お話をお聞かせ下さい。相仲
ainakarenさん、こんばんは。
本当ですね結構魅力的な道具がありますね。
私も浦島太郎の復活ですが、それの根拠になったのがジムにあった筋肉博士の本なんですが、80歳オーバーのおじいさんがアッチョーと若者より高くジャンプしていたイラストがありました。筋肉は100歳過ぎでもいくつになっても鍛えられるそうです。
昔の感覚が残っていらっしゃるのですから徐々に復活というのもあるのではないでしょうか?
私もまさかここまで筋肉が復活してくるとは思ってもいませんでした。最初はウォーキングそしてジョギングでした。次に筋トレという感じでした。ainakarenさんも是非挑戦してみてください。
ともあれ、バイルやチタン製のピッケルなど魅力的です。他とは違う感じがしているので興味深いです。
murrenさん、こんばんは。
コメント深謝です。
確かに道具の進化は素晴らしいですね。
ハンマーなど軽く小振りになるとハーケンの打ち込みが心配になりますが、今時はあまりハーケンも打たないようでカムとかチョックとか新しい支点道具があるようですね。
筋トレですか〜
私には最早手遅れでしょうか〜
こんばんは!
ミゾーの製品は職人気質を感じるので大好きです。
手作りなんですよね〜
溝渕氏は沢屋、山屋でもあるのです。
時には、かなり冒険なんじゃないかと思うような作品も作ったりして
私の山の親分は溝渕氏と懇意らしく、ヘッドがハンマーでピック部分がブレードという沢用バイルを注文したのですが、こういうのまで市販してしまいました
これだとハーケン抜きには使えません
ヘッドはトイレの穴掘りと泥壁くらいです
でも作っちゃう
私の沢用バイルはシャルレ製なのですが、これはこれでとても愛しているのですが、いつか二代目を買うことになったら(なんて、もうトシなのでそれはないな〜
沢ではヘッドまで全てステンレス製のミニバイルを使っている人が多いのですが、このくらい長さがないと泥壁、草付、雪渓などではちょっと怖いです。
これだとボルト打ちなんかはいつまでたっても
穴開きませんけど
宝くじが当たったら、チタンのアイスアックスとかピッケルとか絶対に買いたいです!
bunacoさん、こんばんは。
コメント深謝です。
ミゾーの設計者は山屋の沢屋さんですか〜。
それが「ロカ」が私に与える肌触り感なのですね。
実にしっくり来るのです。
私が引退した1961年頃はバランスクライミングが基本でしたから差し込んだピックに体重を掛ける登り方はありませんでした。
3点支持で体重は足に掛けて登りました。
それに慣れていると、ピックの短い「ロカ」でもバランス安定の3点目として充分に機能するような気がするのです。
シャベル状バイルのお話、柔らかい土壁ではピックが効きませんからブレート状、さらにシャベル状の差込部が欲しくなるというお話なのですね。
体験から理解できます。
リンク先にお話の道具も出ていますね。
私は引退後は一人で歩いていましたので、その時の状況の身に合った道具に惹かれます。
ザイルパーティで登る人は、それなりの選択がありましょうね。
シャベル状のバイルでは確かにハーケン回収出来ませんね。
でも、そんなの造る山道具屋さん、一人くらいは居て欲しいですね。ren
初めまして^^
なるほそぉ〜
MIZOって国産だったんですかぁ~、知らなかった・・・おフランスっぽいなって、思っていました^^;
ちょっと高いので躊躇しています。
沢用にはとりあえず普通のハンマーに石突みたいなもの付けて使う予定です。
アイスバイルは欲しいので「きら星」候補にします。
ainakarenさんは先鋭的な道具を使っていたんですね、すごいです☆
to-fu-さん、こんばんは。
コメント深謝です。
ミゾーは国産だったのですね。
しかも貴重な山道具屋さんですね。
昔風のバランスクライミングでしたら今頃の細長いハンマーならば、石突を付けてバランス安定に効果がありますね。
大昔のハンマーは四角柱の先端が四角錐になったゴロッとした形状でバイルのような使い方は不可能でした。
重いのでハーケンなど直ぐ打ち込めましたけどね。
私、先鋭的な道具など何一つ知りませんし、使ったことなど全くありません。
大昔の木製シャフトのピッケルを半分くらいの長さにちょん切って夏の沢でも使っていただけですよ。ren
はじめまして。
30年以上も前のことです。初めて入会した山岳会の先輩がミゾーの製作者です。氷瀑トレーニングに連れて行ってもらった時、その先輩は自作のバイルを使っていました。それを見て、世の中には凄い人がいるんだなと感心しました。その後はあまり一緒に登ることはなく、自分も転居だので疎遠になってしまいました。今度彼のピッケルを購入しようと思っています。
ankotaさん、こんにちは。
コメント深謝です。
皆さんのコメントにより私が偶然握り締めた山道具が山好き、沢好きの方が自ら製作していることを知りました。
手に馴染み体に馴染む心地好い肌触りの理由は、それだったのですね。
「ロカ」だけしか触ったことがありませんが、他の道具にも触ってみたくなりました。
だが、もう使うことがないのが寂しいかぎりです。
お目当てのピッケルを購入なさったら、是非その使用感を日記レビューに投稿してください。
楽しみにしています。相仲
ainakarenさん、ふたたび失礼します。
あんまりくどく申し上げると失礼と思っていましたが、今の時代は年齢的なバリエーションがそれこそ多様性を見せています。三浦雄一郎氏が良い例です。
ぜひともミゾーのバイルで復活してみてください。ご自分が考える以上に復活までの時間は短いものです。
魅力的なミゾーの道具を使うことを考えただけでもワクワク感があります。
これ以上は申しません。ぜひ挑戦を!
murrenさん、こんばんは。
再度のアドバイスを頂き、深謝です。
一昨年から体調を崩し、通院療養しながら何とか月一度の里山歩きが可能なレベルを維持しています。
今後、療養が功を奏して回復しましたら、お薦めの筋トレも考えてみようと思います。
只、ハードな登攀は若者達だけの特権です。
ですから体調が回復したとしても年齢的に精々「易しい沢歩き」程度でしょうか。
当に「ロカ」を沢バイルとして利用するのは、そんなときにこそ最適ですね。
回復できたら、その時には購入したいと思います。
ご親切なアドバイス有難う御座いました。相仲
その節は、有り難うございました。
その時は、アイナカレンさん?カレンさん(勝手に女性のイメージ)かな、と思ってプロフィールを拝見させていただいていました。
次回、甲子温泉、南沢へ連れて行かれる事になり、今までの3沢はハイキング道ありのエスケープ可能な練習ルートで、これからが本番とのこと。
ルートを調べると、10滝直登後、最後は急登の泥スラブ(滑ったら、下まで止まらず)と、沢バイルがあると良いと、記載有。
沢バイル?とは、早速調査、勉強していたら、カレンさん?の記事に、ぶち当たりました❗
「あーっ」、世界は広いようで、狭いな、と思った次第です。
前置き長く、かつ、カレンさん、呼ばわりして、失礼しました。
私の師匠(確か、先日80の誕生日、私の親より年上)もこの前使っていたのは、ミゾーの沢バイルだったかも。
リードで登って、気軽に確保支点を作っていたので、「いいなー」と思って見ていました。
心配していたこのスラブの話をした所、そこは危ないので左に巻いて、ヤブ漕ぎするとのことでした。
レンさんの、沢バイルの日記を読ませていただき、ナルホド、と思った次第です。
ロカ、沢バイルの候補の1つにします。
他の日記も面白そうで楽しみです。
とりとめの無い文で恐縮ですが、とりあえず、コメント入れさせていただきました。
コメント深謝です。
ハハハ
ネット上に同じユーザーネームが数名居ますが、皆さん女性ですね。
岳会の時は岩登りばかりでしたが、退会して単独行になってから沢登りが多くなりました。
それまで急斜面の雪渓に使って来たシャフトを半分以下に短くしたピッケルを、夏山の沢登りに使うようになりました。
帰途、真夏の丹沢大倉尾根を下っていると、いつも「真夏の丹沢にピッケル持ってくる馬鹿がいる」と揶揄されたものです。
反論しても通じないだろうと黙ってましたけどね。
この日記を読んで頂き嬉しいのですが、沢バイルを選択なさるなら、寄せて頂いたベテラン諸氏のコメントもよく読んで、ご参考の上ご検討ください。
私は古いバランスクライムですからピックの短いロカで充分ですが、現代のクライムは腕力勝負ですから、ピックの長いハンマーバイルが良いのでは〜と思います。
貴兄の安全登山を、お祈りします。ren
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する