新穂高〜西穂山荘(丸山往復)〜上高地〜徳沢(横尾〜蝶槍往復)〜中の湯
- GPS
- 74:41
- 距離
- 41.7km
- 登り
- 2,023m
- 下り
- 2,723m
コースタイム
0835新穂高温泉駅〜0907西穂高口駅0920→1145西穂山荘1225→1230ワカン->アイゼン1245→1300丸山→1315 2530で引き返し→1350西穂山荘→1420上高地方面偵察→1435西穂山荘
2012/02/19(日):
0645西穂山荘→0705焼岳分岐→0842宝水→0845小休止0850→0950小休止1010→1100 1970小ピーク→1255上高地登山口1315→1450明神1510→1710徳沢園冬季小屋
2012/02/20(月):
0635徳沢園冬季小屋→0830横尾登山口→0920槍見台→0945小休止0955→1115 2255で小休止1125→1245 2625分岐→1310蝶槍△1320→1500横尾登山口→1645徳沢園冬季小屋
2012/02/21(火):
0815徳沢園冬季小屋→0930明神0940→1035河童橋→1120大正池→1145釜トンネル上高地側→1200釜トンネル中の湯側→1220中の湯バス停〜1230平湯BT
天候 | 2012/02/18(土) 曇(強風) 2012/02/19(日) 快晴 2012/02/20(月) 快晴 2012/02/21(火) 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
◇平湯バスターミナル駐車場 朝6:00頃到着。奥のトイレ前に数台の駐車車両があり並べて停め、 濃飛バス事務所に駐車可否を確認した。 2/15〜25に「平湯大滝結氷まつり」が開催されBTも会場として使用される。 特にこの期間の長期駐車の可否不明なため事前の問い合わせ推奨。 ◇平湯BT→新穂高温泉(濃飛バス) 始発7:00-7:42着 \870 ◇新穂高ロープウェイ 冬季始発は9:00。2/18は早発8:45。片道\1500+荷物\300。 ロープウェイ乗り場の建物オープンは8:45、それまで扉の前に並んで待つ。 観光ツアー団体が始発に乗ろうと8:10頃から続々と押し寄せる。 列は無視して猛ダッシュでチケット売り場に走るツアー添乗員に圧倒される。 ◇中の湯→平湯BT(アルピコバス) 12:20発-12:30着 \540 |
コース状況/ 危険箇所等 |
◇登山道状況 例年よりも積雪量は少なめ。2週間以内に降雨があり固い層の上に20cm超の軽めの積雪。 ・西穂高登山口→西穂山荘 新穂高ロープウェイ西穂高口の2Fに登山・下山ポスト有。 西穂山荘スタッフがつけた目印が狭い間隔でずっと続いており迷うことはない。 幅50cm程度の圧雪路の上に新雪が膝下程度に乗っており、圧雪路の位置が埋もれていて わかりにくいが、足応えでわかる。 自分は山荘までツボで上がった。自分以外はアイゼン、スノーシュー。 スノーシューのパーティはきれいな圧雪路トレースを壊しながら登っていた。 ・西穂山荘〜丸山方面 曇りの天候だが見通しはよい。山荘から5分ほど上がったところまでは腿まで潜る積雪で 午前中はトレースもなし。ここより上部は強風カリカリ斜面でアイゼン必須。 ブッシュが多く積雪は少ない模様。 ・西穂山荘→上高地 ※※※コース取りに失敗しているのでGPSログは参考にしないで下さい※※※ トレース無、ルートファインディングの下山。 上半分は30cmくらいの深さに固い層があり膝ラッセル。下半分はやや重い。ワカン。 一日中快晴で見通しがよく、蛍光オレンジ色の指導標が遠目に認識できるコンディション。 電話線(?)の細いケーブルが上高地に向かってずっと張ってあり、見えれば参考にできるが 近付きすぎると踏んで断線するので気をつける。 西穂山荘の方が冷静な情報とアドバイスを授けてくださる。 【失敗その1】 二万五千分の一の紙地図と二万五千分の一地図入りGPSで行動したが、玄文沢右上の小尾根・ピーク 周辺の登山道は近年付け替えられているらしく、尾根通しに行くのが正解。ここを読み違えて 沢に寄ってしまったため尾根直下を延々トラバースすることになり時間も消費した。 【失敗その2】 小尾根ピークから緩やかな尾根通しに南南西に下るのが正解だが、指導標に惑わされて 右手へ行き過ぎてしまう。修正後は樹林の薄い左手の沢方向へつい下ってしまい、途中で修正。 ・上高地〜明神〜徳沢(右岸・河原) 明神まで完全圧雪路でツボ。明神橋を200mほどすぎたところから河原に下りる。 河原はワカンorスノーシュー。 ・徳沢〜明神〜釜トンネル(左岸登山道) 明瞭な圧雪路でツボ。 ・徳沢〜横尾 河原をワカンで。 ・横尾〜蝶槍山頂 週末に数パーティが入っており明瞭なトレース有。山スキーのトレースもあった。 頂上までワカン。 ◇下山後の温泉 ひらゆの森 \500 |
写真
感想
厳冬期に西穂山荘〜上高地ルートを降り、徳沢から蝶ヶ岳登頂、が昨年からの目標であった。
好天と有休取得のタイミングをつかめないまま2月も半ば。週末から週明けにかけて連日好天の天気予報に、
よし、実行タイミングは今だ!と決め、準備開始。そして行ってきた。
濃飛バス運転士、西穂山荘スタッフの方々、徳沢園冬季小屋の管理人、先行トレース、多くの人に助けられ、
好天にも恵まれて、素晴らしく思い出に残る山行となった。
以下個人日記(超長文)
【2/18/2012(1日目):自宅→平湯BT→新穂高温泉→西穂山荘(丸山往復)】
チェーン規制の入った高速道路を松本ICで降りる。早朝の国道も完全積雪路。いちばん寒い時間帯に積雪路を走る緊張感に見舞われる。後方からヘッドライトが近付くとタイミングを見て脇に寄り、どんどん前に行ってもらう。少しずつ夜が明ける。安房トンネルを越えて右折、少し進むと左手に平湯バスターミナルらしき広場。6:00。奥にトイレの建物があり、その前に3〜4台の乗用車。並びに駐車する。
「ここに火曜日まで停めてもよいか」「どの場所に停めるべきか」を確認したいが誰に訊けばよいかもわからない。ターミナルの建物は早朝で人気もない。猛烈な勢いで除雪作業中の方には話しかけるタイミングがない。濃飛バスの運転士が歩いていたので呼び止める。ここが平湯ターミナルでいいんですよね?「そうです」新穂高へのバスはここから発車しますか?「そうです」バス運転士に駐車を訊ねるのはちょっと違うのかな、と思い会話はそこまで。タクシーが一台停まっていて、運転手に駐車のことを訊ねるが「わからないな〜」と。どこへ行く予定か訊かれたので、西穂山荘まで上がって、可能なら上高地に降りたいと言うと「やめとけ、やめとけ!誰も入ってないし遭難するよ!」と云われる。そうか・・・・バス始発は7:00とのことで、少し早いが新穂高で朝食にすればよいかと思い始発に乗る。乗客は自分のみ。一番前の座席に座り景色を眺めていると、バス運転士から声がかかる。「お客さん山に行かれるんですか?」山をやってみたいが始めるのが難しそう、とか、山をはじめたきっかけは?とか、どんなところが魅力ですか?とか、以前新穂高温泉に無料の風呂があった頃、下山後に風呂に入った登山者を満載するとバス車内が物凄い臭気に満たされていた、どうして風呂に入ったほうが臭うんですかね?とか、旅館街の細い雪道をハイテクニックで運転しながら色々な話をされる若い運転士。何だかタクシー運転手みたいに会話のはずむ人だな、若いのにサービス精神旺盛なんだなー。Oさんとネームプレートにあった。
「バスターミナルに4日間車をとめる予定なんですが大丈夫でしょうか?」と訊いてみる。「え!それはマズいかも」と。平湯大滝結氷まつりの開催中でバスターミナルも会場として使うとのこと。「今から番号言いますから電話してきいてみてください」と言われ、教わった番号へかけると「はい、濃飛バス平湯です」。火曜日まで停めるが大丈夫だろうかと言うと、「うん〜まぁ〜大丈夫でしょう」と。「どの車?」と訊ねられたので色と形を伝える。ダメだったら一旦戻り、遅れたぶん今日は西穂山荘まででいいわ、と思っていたがよかった。O運転士に駐車OKを伝えお礼を言う。そうこうしているうちに終点の新穂高温泉に7:45到着。話ができて楽しかった、駐車問い合わせの機会をつくってくださって本当に助かった、ありがとうございました、と伝えてバスを降りる。バスは数分の待機ののち、高山行きとなって来た道を引き返していった。
新穂高ロープウェイ新穂高温泉駅の建物へ近付く。入口扉に「扉オープンは8:45」とあり施錠されたまま。えぇーあと1時間ちかくあるじゃない。仕方がないので、階段手前にある売店・足湯の屋根の下へ行く。気温マイナス10度C超。やや強風下の降雪でじっとしていると凍える。足踏みしながらパンをほうばりテルモスの紅茶を飲む。そのうちに売店の方がやってきて雪かきをはじめたので階段のほうへよける。雪かきが終わった場所を指し、「こっちへ入ってていいよ」と声をかけてもらう。やさしいなぁ。ありがとうございます。
8:10頃に観光客10人ほどの団体到着。入口扉のほうへ並びはじめたので、扉の前へ置いた自分のザックのほうへ向かう。団体の添乗員から「先頭の方ですか」と訊かれたのでそうだと答える。列に並ぶときは前へ詰めないと損と思う中年女性の典型よろしく団体客に至近距離で囲まれる。ザックにストックを取り付けているのであんまり寄ってほしくないんだけど・・・観光の団体はその後も続々と増え、先頭の団体の添乗員は「昨日夜に各旅館に電話して出発時刻を確認しておいたんですよ。だから我々は一番だったんです」と客に話している。観光も命がけなんだなあ。ロープウェイ1本逃すと後に支障が出るほどのスケジュールで観光して楽しいんだろうか?
8:30をまわった頃に扉オープン。係員に左手の階段に誘導されるが右手の階段を猛ダッシュする添乗員に追い越される。まあ第一便に乗れればいいので多少の前後はいいんだけど、何なんだ?あぁはやくこの下界の空気から逃れたい・・・・乗り込んだ第1ロープウェイは早発の8:45に出発し、2階建ての第2ロープウェイも順調に高度を上げる。周囲の山々はガスの中で見えない。西穂高口駅に到着9:20。トイレを済ませ、建物2Fの登山ポストに行き記入する。予定コースとして、西穂山荘から上高地と新穂高方面の線に「どちらか」と記入してポストに投げ込み、屋外へ出る。曇っているけどそんなに見通しは悪くない。
雪の回廊をとおって登山口へ。膝下程度のラッセルのようだ。とりあえずツボ足でいけそうと判断、出発。最初は緩やかなアップダウンを繰り返す。新雪のこんもり積もった登山道には竹にリボンの付いた目印が結構な頻度で続いていて、よく見ると圧雪路の位置がわかる。ときどき外してしまって腰までもぐるが、足元を探ると安定した圧雪路がすぐに見つかる。第一便には自分以外に登山客は居なかったのか、いつまでも追いつかれない。静かな朝の登山道を、軽い雪を膝で押し分けつつ登る。暫く行くと緩やかなアップダウンは終わり、登りがはじまる。圧雪路を外さなければツボ足でも十分登れる。そのうち後方で人の気配がしたので振り向いてみるとスノーシューを履いた4人組があらわれる。脇へ一歩避け、先に行ってもらう。3分も歩くとスノーシューパーティが止まっているので先に行く。もう少し脇へ寄って避けてほしい。だんだん登りがきつくなり、ツボ足ではかなり蹴り込まないと滑るようになる。アイゼンの単独者が来たので先に行ってもらう。スノーシューにも追いつかれたので追い越してもらう。雪の積もった木立のあいだから、山の稜線らしきものが見えてくる。あともうひとのぼりだな。結構な登りをツボ足に苦戦しつつ進むと突然目の前に西穂山荘があらわれる。
ドデカイ雪だるまの正面をとおって西穂山荘内へ。時間もはやく小屋内に人はまばら。受付に行き、予約と氏名を告げる。「明日のご予定は」と言われ、上高地に降りるかロープウェイで戻るかどちらか、と答える。上高地に降りた人は最近は居ないといわれる。沢に迷い込んでビバークした例、道に迷ってテント泊したパーティ、積雪量が多すぎて腰ラッセルで進めず山中一泊した例などきかされる。事前に見てきた西穂山荘HPにも上高地コースは難しいとあったし、実際一般的に難しいとされるのは理解できるし、では自分はというとまず体力が人並み以下だし、経験豊富とはいえないし、何よりも一番自分でもマズいと思っているのが一度も通ったことがないという点。体力増進やスキルアップの努力は勿論継続すべきだが、積雪期に行きたいところにはまず夏に行っておく、は難しいことではない。これらのマイナス点がわかっていて、でもトレースがあればもしかしたら・・・と考えていた。「あくまで最終的にはお客様の判断です」と山荘の方。そのとおり。情報はありがたく頂くが、判断の責任は100%自分だ。う〜ん、う〜〜〜ん、と悩む自分に、西穂山荘の方が「実際に少し偵察してこられたらいかがですか」と提案してくださる。ちょっと行ってみて、腰ラッセルで全然前に進まない状況を体感すれば、完全に諦めもつくだろう。よし、そうしよう!
昼食をかきこみ、まず丸山・独標方面に出発。午前中に行ってこられた方の情報では、かなり強風とのこと。明日上高地に降りない場合は独標まで行くつもりにしていたので、無理せず行けるところまでにしよう。目出帽を被りワカンを履いて出発。丸山方面の最初の登りのところは吹き溜まりのようになっている。5分ほどワカンで上がり、吹き溜まりを抜けたところでアイゼンに履き換える。ピッケルを構え、再出発。厳冬期に強風下の稜線を独りで歩くのは初めて。たちまち睫毛に氷がつく。目出帽ってあったかいんだな。この風がもっと酷くなったら講習で習った耐風姿勢を取ってみよう。初めての経験がすべて物珍しく、天気は悪いのに妙に楽しい。とりあえず丸山まで来たが、見通しはきくものの強風極寒の中独標へ向かう人影はない。まあせっかくだからもうちょっと行ってみるかと進んでみるが、ますます風は強まり、さすがに寒さに耐えられなくなってきたので、引き返すことにする。
来た道を戻りあっという間に西穂山荘。ピッケル・アイゼンをストック・ワカンに換え、小屋から右手の方向へ偵察。樹林のあいだを右に抜けると上高地・焼岳の蛍光色の指導標が目に入る。左へ目をやると、曇天下でもつぎの指導標が遠目に見える。膝下あたりに固い層があり、なだらかなところでもこれ以上は埋まらない。そして膝下の雪は非常に軽い。ワカンのおかげで、飛び跳ねるように駆け下りることができる。これ以上降りると登り返しが面倒になりそうなところまでで引き返しとする。あっという間に小屋に戻る。
偵察の結果、空荷だったという点を差し引いても、上高地方面は”苦しい腰ラッセル”ではなく”楽しい膝ラッセル”であった。諦めるための偵察が、さらに悩みを深めてしまった。どうしよう・・・・・
ひとまず部屋へチェックイン、4人部屋に1人。乾燥室に濡れ物を干し、荷物を整理し、食堂へ降りてワンカップ購入、行動食の柿ピーと休憩。日帰りか泊まりか、大小団体客が席を埋め、にぎやかな雰囲気に囲まれる。ほのかにボンヤリした頭で地形図を眺めながら、悩む。悩む。悩み疲れたので部屋に戻ると団体から逃避してきた中年女性2名が同室に。適当に挨拶して布団に潜り、徹夜運転の疲れであっという間に眠りにつく。気がつくともう夕食前。食堂は満席に近い。ごはんとトン汁を手に案内された席につく。西穂山荘のごはんは、彩りよく種類も豊富で、繊細で手の込んだ料理だと思う。某有名小屋のようなおしゃれさ・派手さは多くないものの、あたたかい心づくしが感じられる。特に誰と話すこともなく食事を終えて図書室からマンガを借りて部屋へ戻る。布団に仰向けでゴルゴ13を読みながら、明日どうするか悩む。団体は食後の食堂で2次会と称して騒いでいる。天気予報の時間になったのでテレビを見にいく。予報どおり、明日から好天が続くようだ。部屋に戻ってゴルゴ。
頭の中を整理すると、
・明日は徳沢まで行く予定。新穂高経由で降りるなら11時台のロープウェイに乗りたい。
朝食後に素早く行動しても独標まで行けるかどうか。
・団体は明日は丸山方面らしい。あれと一緒に行動するのはちょっと・・・
・上高地方面を冷静に検証。
マイナス材料は上記のとおり 1.体力スキルに自信なし 2.夏道経験なし
プラス材料は 1.好条件が揃っている(テントシュラフなく荷物軽い、好天、積雪少) 2.山スキーで読図降りの経験有 3.ビバーク可
特に1.は、そう滅多に揃うものでなく、快晴の西穂独標を目指すよりもずっと希少価値が高い。
総合的に考えると、時間切れビバークが現実的に可能ならば、上高地ルートに行けるのではないか。
団体が引き上げて静かになった食堂へ下り、西穂山荘の方を再度質問攻め。指導標はそのままずっとはついていないし、向きや雪のつき方で見えないこともある、電話線が通っているが踏むとまずいので近づかないで欲しい、とのこと。自分の持っていた二万五千分の一地図を見せると「この登山道はちょっと古いんじゃないかな。今は尾根通しでついていますよ」と。地図上でのポイント箇所を複数教えていただく。ツェルト、コンロ、3日分の食料はあって雪洞ビバークは不可能でない装備はあると説明し、無理せず日が落ちそうになったらすぐに穴を掘ること、連絡手段が得られれば必ず西穂山荘へ無事を伝える(特にそうしろと言われてはいないが)、と伝え、明日上高地ルートを降りることを決意する。
決めたらあとは出来得る限りの準備をする。GPSの電池は新しいものと取り替える。ワカンのひもをチェックする。ライターの予備を2個購入。あとはぐっすり寝るだけ。ゴルゴも読み終わったし、ビバークを具体的に想像しながらスッキリ就寝。
【2/19/2012(2日目):西穂山荘→上高地→徳沢】
腕時計の目覚ましセット時刻5:20よりも前に目が覚める。5:00か。布団の中でまどろんでいると同室の団体中年女性の携帯がけたたましい音楽を奏でる。ああ、目覚ましをセットしてたのか。5分後、また同じ曲が流れる。5分後、また同じ曲が流れる。・・・・・。起きてるのに何故止めない?煩い迷惑だとその場で言えばよかった。朝から不愉快だ。とりあえず5:20起床。オーバーパンツを履くだけの服装にして、テルモスを出し、残りの荷物は全部まとめて小屋外の荷物棚に持っていく。団体と行動が被らないよう先行するため。小屋の正面の黒々とした山の稜線が赤色を背景に浮かび上がる。空はまだ宇宙の色で新月と星が輝いている。小屋に入り6:00朝食。ご飯のすすむおかず類で、もちろんおかわり。ご飯の最中にテルモスのお湯をもらう\300/500cc。食事を終え身支度して小屋の外へ出ようとすると昨日散々相談にのっていただいた西穂山荘のスタッフの方がおられたので、お礼を述べ最後のご挨拶をした。客観的な情報を与えてくださるが、上から目線や決め付けに基づく助言などは一切なく、「最終的に決めるのはお客様」のスタンスを貫いてくださった。結果的に自分が遭難することになれば一番迷惑を被るのは西穂山荘の方のはずだが、あえてそこには触れず自分が主体的に決意したかたちを取らせていただいた。どれだけ感謝してもし尽くせない。
白みはじめた空の下、上高地へ向けて出発。最初は昨日自分のつけたトレースをたどる。顔を出したばかりの朝日が木々や雪面、山肌を真横から射し、雪は薄い黄色に彩られる。静寂と雪と朝日が全方位を包む。右方向には真っ白な焼岳〜乗鞍へ至る峰々が朝日に輝き、逆光に沈む霞沢岳と上高地の谷はコントラストを添える。こんなにも美しく神々しい時空に身を置くことができ、この瞬間のために今まで生きてきたのだと素直に思う。
少し進むごとにGPSで現在地を確認し、コンパスで行くべき方向へ目をやると、蛍光オレンジ色の指導標が視界に入る。焼岳分岐まで来たら南南西へ延びる尾根を右手に、左手の沢を左岸ぎみに南南東へ進む。沢の入り口は疎林で、歓声を上げつつ山スキー感覚で駆け下りる。だんだん地形が緩やかになり沢筋も不明瞭となり、コンパスで方角を慎重に見極めながら高度を落とす。緩斜面が終わる頃から木々のあいだに上高地の谷の方向にぴょこんと突き出す尾根筋がチラチラと見えていたので、あそこを目指すんだろうなと思う。GPS上の登山道表示も紙地図の登山道も右手へ進んでいる。たまたま指導標が右方向へ2連続していたので、ここは右かなと寄ってしまう。尾根筋がはっきり見えるところまできて、右に寄りすぎたことに気づき左へトラバースする。この時点ですでにGPS上の登山道からは外れている。指導標が見えない。尾根筋を目指すと思いながらGPSの示す登山道から外れていることに一抹の不安を感じてしまう(山荘の方の地図が古いという指摘は覚えていたが)。尾根に近づくと地形の全容がかえってつかみにくく、尾根起点がよくわからなくなり、またもや右寄りに進んでしまう。気がついたときはすでに左上に明瞭な尾根が続き、尾根直下の厳しい傾斜をトラバースしていた。尾根上まで距離はないが傾斜がきつすぎて直登は不可能に見え、仕方なくトラバースを続ける。右下に見える平らな、おそらく沢の源頭と思われる位置まで降りてしまうとそのまま玄文沢へ入ってしまいそうなので、何とか高度を落とさないよう必死に前進を続ける。尾根直下は傾斜が強く、木も多く生えているので足元が雪で埋まりきっておらず穴に足の付け根まで突っ込むこともしばしば。次の一歩を出すときも、周囲の雪を崩し何度も何度も踏みつけ、しかし落とし穴があるかもしれないのでそろそろと着地し慎重に体重移動させるので、前進に物凄く時間がかかる。かすかに空腹を感じたのですぐに止まって小休止。シャリバテしてからでは遅いことを正月山行で実感したので、今日はマメな栄養補給をこころがける。とにかく尾根の先にある1970mピークを絶対に踏むと決め、そこから※※※なことや○×△な事もあったが何とか切り抜け、2時間の格闘ののち、やっとこさ到着。
地形図では南南西に緩やかな尾根が延びておりここをはずさないように300mほど下ればよい。久しぶりに指導標が目に入る。電話線も見えた。一定の傾斜の斜面が続いており林が濃く地形がつかみにくいので尾根筋がよくわからない。まあとりあえず指導標に従えばいいと思って辿るが妙に右に寄っている。指導標を見失うのを嫌がりそのまま従うが、どうもGPSで見ると右に外しているような気がして、尾根上と思われるところまでトラバースする。少しずつ尾根筋が明瞭になり、ここを素直に降りればよいと理解はしているが、雪の着きが悪くブッシュだらけでつい左の降りやすそうなほうへ進む。沢筋であることは地形図でわかっていたが、疎林で軽快な雪質に、また山スキーのごとくヒャッホーと下ってしまう。ふとわれに返り、右にトラバース。このあたりまで標高を落とすと、膝下の固い層は氷に近いようで、ワカンの歯が噛まないことも。ズリッと滑ってそのまま10mほど仰向けに、予定しない尻セード。斜度が緩むまえになんとか登山道上に復帰する。ほとんど平らな地形となり、意外と夏道の位置がわからず指導標もマーキングもなくコンパスを頼りに進む。そろそろ道路的なものが見えてもよさそうなのに林が延々と続く。まだか・・・まだか・・・・と痺れを切らしたころに、遠くに門構えのようなものが見える。ひょっとして登山口?だんだん近づくと道路らしきものも見えてくる。やったぁ〜〜〜!!!!思わず出る叫びとガッツポーズ。門構えをくぐって表へまわると「西穂高岳登山道」の看板。やった!やった!とうとうたどりついた!時計を見ると12:50。実に6時間の下山であった。
とりあえずザックを下ろし、携帯の電波オンしてみる。みるみるうちにバリ3。冬季山中で。さすが上高地。西穂山荘へ電話。数コールののちに西穂山荘スタッフIさんが電話口に。無事到着といただいた情報が物凄く役に立ったこと、あまりよろしくないトレースなので、もしも今後上高地に降りる人がいたらトレースは追わないようにアドバイスしといてください、と伝える。
若干の(ミスコースの)反省を伴う達成感と満足感とともに大休止し、一路徳沢へ向け出発。日曜日の午後いちばんは釜トンネルへ下山する人が多いみたいで、圧雪路をスノーシューで歩く団体と続々離合する。とにかくさっさと徳沢へ移動したいので、河童橋にも寄らず右岸道路をツボ足で歩きつづける。上高地から明神を経て徳沢へ至る道筋は、当たり前だが高度を上げており平地感覚で歩くと意外に息切れがする。ようやく明神池が見え、明神橋に到着。ここでまた小休止しワカンを履く。そのまま右岸道路を200mほど進むとトレースは梓川のほうへそれていき、そのまま河原へ降りる。河原は積雪量は少ないが風も強く、トレースはすぐに埋まってしまうようだ。時々深みにはまり、なかなかスムースに進むこともできない。こんなに徳沢って遠かったっけ・・・・日はどんどん傾き、後方から照らされて雪面に映る自分の影がどんどん長くなっていく。ケショウヤナギの老木が目に入り、徳沢が近づいたことを知る。どのへんで河原から上がるんだったっけな?どうも自分は右左折するとわかっているとき実際よりも手前で曲がってしまうせっかちな習性があり、堤防上の木の枝にピンクのマークがあるのを発見し近づいてみる。どうみてもここから徳沢へ至る道はなさそうで河原から上がるのが早すぎたことに気付く。ふと昨年のログをGPSに残していることを思い出し、表示させると、河原からの上陸地点はまだはるか先だった。あぁ〜またせっかちにやってしまった。しょうがないので、林の中を強引に抜けて徳沢〜横尾の道へ出る。そのまま徳沢へ向かう。徳沢園に近付くと、犬と散歩中の管理人さんが見える。大きく手を振る。一年ぶりに、また来ました。
ようやく徳沢に到着。早々に冬季小屋へ入り宿泊手続き。今日は自分以外に2名の宿泊者。荷物を手早く片付け、あたたかい薪ストーブを前にまずはビール。しみわたる。今日の晩御飯はα米ビビンパ(韓国製)とワカメスープ。管理人さんが徳沢園特製の凍り野沢菜を出してくださり、ワンカップと楽しみながらビビンパの出来上がりを待つ。ビビンパは夏の縦走でも使ってみたが蒸し熱い場所ではあまり美味しく感じなかった。今回は寒い中ストーブにあたりながらの甘辛キムチ味がビールと合い、なかなか美味しい。腹も膨れ心地よい疲労感とワンカップの中、管理人さんから蝶ヶ岳情報を教えていただく。週末に横尾から蝶ヶ岳をピストンしたパーティが複数あり、トレースはばっちり残っているはず、とのこと。自分としては今日の西穂上高地で体力気力ともに使い果たした感があったので、明日は散歩程度でもういいわ、とアルコール頭でぼんやりと考えていたが、管理人さん曰く、明日も引き続き好天の予報、トレースがあるんだから、明日は絶対に蝶へ行くべき、と強く勧められる。昨年の長塀尾根途中敗退の過去があるだけに、管理人さんも親身に考えてくださっているようだ。ちなみに槍ヶ岳が拝めるという槍見台というのはどのへんですかと訊ねると、横尾の登山口からせいぜい200mほど登ったあたりとのこと。じゃあ槍見台までピストンでもいいか・・・・と弱気発言を繰り返す自分。とりあえず5:30起床6:30出発として早々に就寝。
【2/20/2012(3日目):徳沢→横尾→蝶槍→横尾→徳沢】
朝5:10起床。普段起きる時間に目が覚める。外はまだ暗い。すでに発電機は回っているようだ。薪ストーブ部屋へ降りていくと、2名のお客さんが朝ごはんの支度をはじめていた。おはようございます。自分も準備。α米赤飯2食分を作って1食を食べ残りを行動食に、味噌汁。テルモスに紅茶を詰めながら食後のコーヒーでひといき。この薄暗く静かな薪ストーブ部屋は落ち着くなー。しかし朝からマッタリする余裕もなく、さっさと片づけて出発準備。空はすっかり明るくなり、小屋の管理人さんに見送られワカンを履いて出発。
林道を横尾に向けて歩き、突き当りを直進して河原に出る。ここから横尾方面は初めて足を踏み入れる自分にとっては未知の世界だ。河原歩きの左手には至近距離に明神〜前穂がそびえていて、頭の部分だけ朝日が照らして薄橙色に輝いている。薄暗くキンとした空気の中、河原の雪の上を黙々と歩く。風もなく自分の呼吸音だけが響く。それなりの速度で歩いているつもりだが、つま先がだんだん冷えてくる。外気温は恐らくマイナス10度は超えているだろう。歩けど歩けど明神〜前穂は左手にどこまでもついてくる。大き目のつり橋が遠目に映る。横尾の橋かな?近付いてくると右手に建物が見えてきた。横尾だ。随分遠かったなー。もっと短時間で来る予定だったのに、少し心が萎える。避難小屋にも周辺にも人影はないが、トレースは蝶の登山道のほうにも橋を渡るほうにも沢山ついていて、冬山の週末のひとときの賑わいを想像させる。登山口に直行。徳沢園の管理人さんが言っていたとおり、登山口から山頂に向けて多くのトレースが残っている。
蝶ヶ岳の稜線に向けて出発。取り付きあたりはツボ足で登る人も多いのか、結構な傾斜でトレースが残っている。昨日の午後緩んだ足跡もそのまま凍っていて、ワカンではけっこう苦しい。アイゼンを持ってきたほうが正解だったかな・・・などと若干後ろ向きな気持ちで薄暗い林の中を登っていく。スキーのトレースもあり、こんなところまでスキーを担いてくる人がいることに驚く。少しずつトレースの傾斜も緩くなり、少し開けた場所でひといきついてふと振り返る。穂高〜槍の雪と岩肌の稜線、まさに槍のような尖った槍ヶ岳が濃い青色の空に突き刺さっている。おぉーーっ!槍見台の標識。がぜんやる気が湧いてきた。
ワカンで登るトレースが残っている。雰囲気的に、昨日夕方蝶ヶ岳の避難小屋に向けて出発したか、今朝はやく横尾を出発した単独者だろうか。この先行ワカントレースが非常に美しく素晴らしい足跡で、足の向きも歩幅も無理なく一定のリズムがずーーーーーーーっと続く。去年参加した冬山講習で「パーティの先頭は歩幅は小さく一定に」と習ったがまさにそのとおり、教科書にでも載せたいくらいの足跡で、実際その足跡に自分のワカンを合わせて登高するとまったく息切れせず高度を稼ぐことができる。どんな人がこの跡を残して上に行ったんだろう・・・さまざまな想像が頭を駆け巡る。素敵なトレースがありがたく、このワカン跡を辿れば必ず稜線にたどり着くことができるよ、と励まされているような気がして、妙に嬉しくなって日の射す明るい樹林帯を楽しく登る。絶対に稜線まで行ってやろう。昨夜あんなに弱気だったのがウソのようだ。
一定の傾斜の見通しのきかない斜面がずっと続く。時々小休止を取る。雪面に腰を下ろすと木々のあいだから穂高の山並みが透けてみえて、その眺めも徐々に高度を増している。上空を仰ぐと真っ青な空。たまに鳥の声。あぁ幸せだな〜。スキーのトレースもどこまでも続いている。ここを滑り降りたら気持ちいいだろうな。やがて樹林の隙間から稜線らしきものが見えた。おぉっ、もしかして蝶ヶ岳の稜線かな?少し歩くと樹林帯が切れ、突然山頂稜線が目前に広がる。森林限界の境目がずいぶんはっきりしているんだな〜。木がほとんど生えておらず雪もあまりついていない。夏のザレ道の階段に沿って登るともうすぐに稜線到着。やったーっ!!ところでこの後どうするか考えていなかった。蝶ヶ岳山頂まではアップダウンで結構な距離がある。引き換えし時刻を13:30と決めていたので、蝶ヶ岳山頂往復は時間的に無理だろう。かといって長塀尾根を下るのはリスキーなのでやめておいたほうがよいと判断。地図をよく見ると、稜線の先に小さなピークがある。標高だけ書いてあって山頂名はない。よしここに行ってみよう!
積雪少なくハイマツが頭を出すあいだを進む。おだやかなピークのいちばん高い位置に三角点の標石。山頂に到着だ!自分はピークハント志向は薄いと思っていたが、やはり頂上到達は達成感があっていいなぁ。蝶ヶ岳方面を振り返るとたおやかな白い稜線がのびている。左へ視線を移すと遥か下方に街並み。安曇野あたりだろうか?街並みのさらに奥には浅間山。さらに視線を左へまわすと、常念岳がすぐ目の前に聳え、その左には穂高〜槍の険しい岩稜。これまでずっと見上げていた山々が今、自分とほとんど同じ高さに在る。真っ青な空と白い峰々のど真ん中で、凄い!凄い!と叫んでいた。何が凄いのか?山が。此処に来られたことが。三角点にカメラを置き必死の自分撮影して、暫く頂上を満喫。ここまで来て本当によかった!徳沢園管理人さんに強く背中を押してもらわなければ途中で引き返していただろう。感謝の一言に尽きる。
満ち足りた気分で蝶槍三角点をあとにする。横尾分岐まであっという間。ここで引き換えし予定時刻となり、計画どおり下山とする。分岐から森林限界まではすぐで、樹林帯に突入すると山頂稜線とはサヨナラだ。日陰で大休止をとる。さてここまで美しい先行トレースそのままに足跡をつけてきた。誰も上がってこないので美しいまま残っている。素敵なトレースを崩すのは少々心苦しいが、ワカンを履いている以上、駆け降りるしかない!感覚的にはスキーでスケーティングをしながら前進する感じで、脚を前方へ送り出しながら滑り降りる。履いてるのがスキー板じゃないのがちょっと残念だけど、でも山スキーで滑り降りてるみたいだよ!ヒャッホー楽しい〜〜!!!激しく動作しすぎたせいか、GPSのmicroSDカードが接触不良になっていたらしく下山ログが記録されていなかった^^;あっという間に登山口へ。
今朝到着時は前穂に朝日を遮られ寒々としていた横尾の谷は、午後になって青空の下に日も射し、明るい空気に包まれている。自分の心も楽しさ・嬉しさ・達成感で晴れ晴れ。ありがとう、横尾谷と蝶槍。横尾をあとにする。名残惜しくて時々振り返ると、徳沢方面からまっすぐに射す日差しを受けてケショウヤナギが真っ赤に燃えている。また来れるといいな・・・足取りも軽く徳沢へ向けて河原を歩く。
徳沢園冬季小屋に到着。今夜の泊まり客の単独男性が管理人さんと話し込んでいるようだ。戻りました〜、と声をかけ小屋内へ。管理人さんが出迎えてくれたので、いや〜ホント強くお薦めしてもらってよかったですよ、もう最高でした!ありがとうございました、と伝える。「常念に手が届きそうだったでしょ」といわれ、そうそう!と盛り上がる。部屋へ上がり荷物を整理して食糧を持って薪ストーブ部屋へ。とりあえずビール。薄暗い部屋でパチパチと音を立てる薪ストーブをまえに、今日までの行程を思い出し余韻に浸る。山はいいよな〜・・・。今晩のメインはα米タイカレー。輸入食材店でみつけて初めて買ってみた。「水を入れすぎないよう注意してください」と注意書きがあり規定量だけ湯を入れたがかなり雑炊のようなシャブシャブ感。しかしもともとタイカレーはシャブシャブしているし、疲れた身体には汁っ気のあるほうが嬉しい。何よりも味自体が本格派で大変美味しい。レンゲが同梱されていて食べやすい。下界に戻ったら買いだめしておこう。そのうちに単独男性も来て炊事をはじめ、暫くして管理人さんからカブの酢漬けの差し入れ。ワンカップと合う!単独男性から手土産の芋焼酎が振る舞われる。東海地方で自営業を営んでおられ、徳沢園冬季小屋にはかれこれ10年ちかく毎年通っておられるそうだ。ご自身はアルコールに弱く殆ど呑んでおられないのに、芋焼酎をいただいている管理人さんや自分よりも遥かにハイテンションで、「やっぱり2ストだよ!」と叫びながら両手でピストン動作を表現される単独男性とともに3人でバイク談義に大盛り上がりとなった。自分も若干記憶が途切れるほどに酔っていたらしく、冬の山小屋では恒例の”フリースを煙突で焦がす”をやってしまい、焦げ臭いにおいとともに部屋に引き揚げた。
【2/21/2012(4日目):徳沢→上高地→釜トンネル→平湯BT→自宅】
いよいよ最終日。6:30起床。今日もピーカンだ。1Fへ降りると管理人さんがおられたので、酔っ払ってフリース焦がしちゃいましたよ〜というと「顔から突っ込まなくてよかったですね」と返される。いやほんとに。単独男性は連泊で今日は長塀尾根経由で蝶ヶ岳日帰りピストンの予定だそうだ。管理人さんによれば、昨日2人組が長塀尾根を降りてきたのでトレースはあるでしょう、とのこと。お天気も最高だし、気を付けて楽しんできてくださいね、と送り出す。自分も手早く朝食を済ませて出発準備。いろいろありがとうございましたと管理人さんにお礼を伝え、徳沢園冬季小屋をあとにする。広々した、雪に覆われた徳沢の林にはあたたかい日差しが降り注ぎ、静寂のなかにキツツキ(アカゲラ?)のドラミングが響く。少しずつ春が近づいているんだろうな。
上高地までは林道歩きにする。週末に大勢の入山者があったのか、トレースはばっちりついている。黙々と歩く。いつもの高巻きへやってきた。渡し板はがっしりしたものに取り換えられていた。これなら凍っていても安心して渡れるだろう。高巻きから徳沢を振り返る。山がV字に河原を挟み、雪の河原には所々にケショウヤナギの赤い島。V字の谷は上空から青い空がかぶさる。また来よう。明神へ向けて歩く。トボトボと歩き続けると明神館が目に入る。分岐のベンチで小休止。
明神〜上高地も引き続き明瞭なトレースがあったので左岸を行く。野鳥がそこかしこで囀っている。ゆるやかなアップダウンを黙々と歩くと、やがて小梨平。多くの足跡や整地跡があり、週末はここも賑わったんだろうな。徐々に人間の気配が漂ってくる。いよいよ下界に近づいてきたか。河童橋が見えてきた。そこかしこに人間がいる。大声で遠距離会話する中高年男性群。あぁ、ここは下界だ・・・・。ワカンを脱ぎ、速攻で通り過ぎる。続々と入山者と離合する。日帰りで上高地観光に来たのかな?バスターミナルを過ぎるとカチカチの車道となる。中の湯バス停から平湯BTへ向かうバスはお昼前後は毎時20分発で、急げば12:20に乗れそうなので先を急ぐ。ひたすら早足で歩き続け、大正池。水面は氷結しているようだ。昨年目を楽しませてくれたマガモたちはどうしてるかな・・・などと考えつつ、右手の木の真ん中あたりに茶色いカタマリが視界の隅に入る。ヤドリギかな?よく見ると木の枝よりも細かいフサフサした塊のようだ。これはもしや。表にまわると真っ赤な顔のお猿さんだった。カメラを向けてもまったく動じない。先を急ぐ。意外とアップダウンがあり、標高も下がり太陽が頭上から照らし、熱い。バスに間に合うかどうかギリギリな感じで、やがて釜トンネルが見えたときはほっとした。トンネルの前で振り返る。さようなら、上高地。また来年もきっと。
釜トンネル内は所々オレンジ色の照明が点いていて足元はぼんやり見えるが、照明に近づくと瞳孔が狭くなり、照明を越えると狭まった瞳孔で暗闇がかえって見づらく、四輪運転手にはやさしく歩行者には不便な照明だった。ガシガシ歩き12時釜トン中の湯側に到着。はぁ〜余裕で間に合った。ゲート脇をとおって上高地から出る。時間通りに来たアルピコバスに乗車、安房トンネルを越えて平湯BT到着。
ついに戻ってきた。出発時は雪に覆われていた平湯BTはすっかり雪も溶けアスファルトが見えている。自分の車に近付いてみると、対角2か所にコーンが立ててある。新穂高に向かうバスの中から駐車問い合わせの電話をしたさい、車の色と形を伝えていたので、目印としてわざわざ立ててくださっていたようだ。濃飛バス関係者はみんな、なんて親切なんだろうか、嬉しいなあ。バスターミナルの窓口へ行き、今日まで駐車すると電話で申し上げた者ですが、無事戻りましたので車を出します、コーン立てていただいてどうもありがとうございました、と窓口の方へ伝える。平湯の森で温泉に浸かって平湯BTに戻り、下山記念に飛騨牛ステーキカレーを食べ、土産をあれこれ購入して帰路についた。
濃飛バス平湯BTの関係者の方、O運転士、西穂山荘スタッフの皆様、徳沢園冬季小屋管理人さん、横尾から蝶ヶ岳稜線へワカントレースをつけてくださった方、そして山、ありがとう!
◆考察◆
◇積雪期のコース取り(@樹林帯)は夏道に沿うべきか
古い地図で行動してしまった大失敗はともかく、最新地図を持っていたとしても
「原則、夏道を辿る」努力をすべきかどうか。
地形図から想定するコース取りと夏道指導標が異なっているとき、どちらを優先するか。
この点でかなり右往左往したような気がする。
例えば斜面とトラバース気味に進むコース取りは、既に登山道として整備してあれば
無雪期はそう問題なく通過できるが、積雪期は危険を伴うのでできるだけ尾根を通った
ほうがよい(樹林帯では)と思わせられる経験は今回で2度目である。
現時点での自分なりの回答は
「無雪期に夏道を歩いておいて、地形と林相、登山道状況を掴んでおく。
積雪期は夏道情報から適宜判断。必ずしも夏道に沿う必要はない。」
バリエーションルートや積雪期のみ入山可能な場所では経験的な判断が必要
(判断できる経験が必要)。
◇GPSのナビゲーション機能は有効か?
GARMIN eTrex Vista Hcxに二万五千分の一地図を入れて使用している。
電池消耗を抑えるために、常時North Up(コンパスoff)で、自分の現在地を知る目的
にほぼ特化した使い方をしている。ウェイポイントもほとんど入力していない。
今回の西穂山荘→上高地ルートで乗りたい尾根に乗り損なって往生したが、
たとえば尾根起点あたりにウェイポイントを入力しておいて、ナビ機能を使えば
尾根にうまく誘導されたのだろうか?
ebi0813さん、
ソロでバイタリティあふれる山行、いつも尊敬の念を禁じえません。
昨年は届かなかった蝶ヶ岳、今回はすんなり(?)登頂できて良かったですね。
毎度のことですが、初めての人にも親切な記事はとても参考になります。写真のコメントも楽しい。
今回もお気に入りに即登録させて頂きます。
以下もう少し詳しくお教え下さい。
・蝶ヶ岳狙うには横尾から行くのと徳沢から行くのでは前者のほうが容易でしょうか?
・徳沢園冬季小屋の情報詳しく教えていただけるとありがたいです。無人でシュラフ要ですよね?
2012.2.23 tak11552
蝶槍には行きましたが蝶ヶ岳には行ってないんです 時間がなくて。
でも蝶槍山頂からは常念が手が届きそうなほど目の前に見えて、大満足しています
横尾vs徳沢
・先行トレースがあるかどうか、がいちばんの支配的要素かと思います
・両方ともトレースがあるなら、横尾のほうが登りが短距離なのでラクかもしれませんが、稜線から蝶ヶ岳への移動があります
・横尾から上がって蝶で一泊、徳沢に降りる、というパターンが多いようです
徳沢園冬季小屋
・上高地内で冬季唯一の常時有人小屋です
・布団あります
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