中央アルプス横断で10分の1!「TJAR」のごく一部を試走 原野駅〜木曽駒ケ岳〜空木岳〜駒ヶ根駅
- GPS
- 33:31
- 距離
- 44.6km
- 登り
- 3,455m
- 下り
- 3,630m
コースタイム
7:30原野駅7:41-9:00旧木曽駒高原スキー場-9:20福島Bコース登山口-10:12水場(4.5合目)-11:25避難小屋(7合目)-12:04水場(8合目)-13:20木曽駒ケ岳山頂-将棊頭山方面へミスコース-13:52頂上山荘テント場<宿泊>
【15日(土)】
6:20頂上山荘テント場-中岳まき道-6:48宝剣岳-9:00檜尾岳-10:15熊沢岳-11:25木曽殿山荘-12:30空木岳-14:11池山の水場-14:30旧林道終点-林道にミスコース-15:10空木岳登山口(スキー場駐車場)-15:19こまくさの湯・明治亭16:36-17:10駒ヶ根駅
天候 | 14日:曇り時々雨 15日:曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
帰り:電車(駒ヶ根から岡谷でスーパーあずさ号に乗り換え) |
コース状況/ 危険箇所等 |
●水場の状況 ・旧木曽駒高原スキー場の「木曽駒冷水」は水量豊富。 ・福島Bコース4.5合目(標高1910m)の水場は涸れている。 ・福島Bコース8合目(標高2490m)の水場は、8/17の時点では良好だったとのこと(避難小屋の黒板の情報)だが、取水口を確認できなかった。 ・木曽駒山頂山荘の水場(トイレ併設の洗面所)は、飲用可能(管理人の情報)。 ・木曽殿山荘の西にある「木曽義仲の力水」は涸れている(木曽殿山荘の情報)。 ・池山避難小屋下の水場は水量豊富。 ●その他 ・福島Bコース、4.5合目の水場前に崩落があるが、小規模で通行に支障なし。 ・木曽駒ケ岳頂上山荘テント場の料金は1人800円(トイレ・水場の使用料を含む)。 ・木曽駒ケ岳山頂山荘から空木岳まで約10kmの稜線歩き。風雨の影響を直接受けるので、体温の保持に注意。 ・駒ヶ根高原スキー場の登山口から700mほどの近くに入浴施設「こまくさの湯」。入浴料600円(タオル別)。玄関に50Lザックならなんとか入りそうなコインロッカー(200円)とザック置き場(無料だがむき出し)、脱衣所に小さなコインロッカー(100円リターン式)。 |
写真
感想
信越五岳トレイルランニングレースのエントリーに失敗して時間が空いたので、ハセツネCUPの試走をするか、行ったことのない山を開拓しようと思っていました。8月に剱岳を縦走した後、2012年のTJAR(トランスジャパンアルプスレース)の開催を知り、公式サイトから選手の動向を観戦するうち、一部でいいから同じコースを辿ってみたいと考えました。とはいえ、間違ってもハセツネCUPを11時間10分で完走できるようなエリートランナーではありません。では、415kmに及ぶ長大なコースの、どの部分を辿るか。中央アルプスなら、原野駅から木曽駒ケ岳・空木岳経由で駒ヶ根へ至る約40km。1泊であれば、無理のない行程を組めると判断しました。
場所は決まり、続いて装備を検討。今回は小屋泊にして軽量なトレイルランのスタイルで行こう・・・と思って調べていると、駒ケ岳山頂付近にテント場がある。駒ケ岳と中岳のコルにあって、テント場には風よけの石まで積まれているとか。であれば、ワンポールテントでも過ごせると判断して、テント泊にしました。
ほとんどの行程を設定タイムどおりに進行でき、テントも風に耐えてくれました。もっとも、風をさえぎる地形と石囲いに守られていて、風速は10mを超えないという条件です。これ以上厳しい環境でワンポールテントを張るのは慎むことにします。
そして、TJARに挑戦した選手の偉大さを体感しました。中央アルプスだけなら厳しい行程ではありませんが、本戦で選手は原野駅まで、北アルプスを経由して200km近く行動しています。中央アルプスを抜けた後は、さらに南アルプスを縦断して日本海まで抜けることを考えると、まったくもって、常人には無理。
TJAR(Trans Japan Alps Race)は、富山湾から北・中央・南アルプスを経て駿河湾に至る415kmを徒歩で踏破する、日本一過酷な山岳耐久レース。期間は1週間で、2012年は8月12日(日)〜18日(土)に開催されました。平均して1日あたり60km移動しなければならないため、選手は睡眠時間を削って昼夜を問わず動き続けます。高い走力と山の知識・経験が求められ、厳しい選考会で認められた選手だけが、スタートラインに立つことを許されます。
本戦の様子は10月13日(土)に全国向けのNHKスペシャルで放送されるとのことで、楽しみにしています。
■行程の詳細
【14日(金)】
塩尻に前泊して、塩尻駅から原野駅までの始発6:53に乗車。7:30 原野駅に到着。向かう登山口は、旧木曽駒高原スキー場上にある福島Bコースの登山口。駅から8.5km、標高差500mの緩斜面をゆっくり走っていく。木曽駒高原ゴルフ場に突き当たって左に回りこみ、東へ向かって直進。スキー場の表示を追っていく。駅から1時間20分ほどで旧スキー場のセンターハウス前に到着。「木曽駒冷水」と掲げてある水場から、湧水が流れ続けていた。
センターハウスからさらに上がり、ゲレンデだった場所を横切ると、福島Bコース登山道の分岐。1.3kmの緩斜面を登り、幸ノ川を渡る。標高1600mのここからが本格的な山道。
7合目(標高2410m)の避難小屋は、想像以上にきれいでしっかりした造り。2階建てで、寝具はないがマットが敷いてある。黒板にはTJARの選手を応援するメッセージとそのお礼が残っていた。何人もの選手が休息をとっただろう避難小屋で、痕跡を見られて嬉しい。
朝、麓は晴れていたが、山頂付近は厚い雲に覆われていて、玉乃窪山荘で小雨が落ち始めた。13:20 木曽駒ケ岳山頂。濃い霧に囲まれ、展望なし。
山頂から南へ下れば山頂山荘・テント場だが、ここで将棊頭山方面へミスコースしてしまう。5分ほど下って方角を確認すると、東へ向いている。山頂から下りるときに方角を間違えやすいと承知しているはずなのに、下りる前に方角を確認しなかった。反省。霧ですぐ下の山荘が見えなかったが、なおさら方角には気を遣うべきだった。
タイムロスしながらも、13:52にテント場に到着。山荘は閉まっていて、「夕方に料金を回収に来る。トイレ・水道は使ってよい」旨が掲示してあったので、とりあえず設営。なるべく石囲いの高いところを選び、いつものピラミッド型のテント(LOCUS GEARのクフCTF3)を張る。なるべく風の影響を受けないように低く、地面との隙間がない高さに、石とペグで固定する。出発直前に確認した予報では、駒ケ岳では夜から風が強まり、午前0時から6時の間は風速9m、気温は2度まで下がるとのことだった。
小雨が降ったり止んだりを繰り返していたが、食事の用意をしようとしたところで、また降り始める。このとき、固形燃料のエスビットを湿らせてしまった。エスビットは乾燥していないと火花では着火できない(ストーブの上にエスビットを出しっぱなしにして一晩おくと、翌朝には結露で湿って点かなくなる)。試行錯誤しているうちに最小限しか持ってこなかった着火用のアルコールを使い果たす。ティンダーをほぐして火種に使うが、エスビットの上に乗せてティンダーを燃やしても意味がなく、エスビットを火種の上にかざして炙る必要があった。アドベンチャーメディカルキッツのスパークライトを使ったが、火花が頼りない。火を点けるのに相当な時間をかけてしまった。そして、食事を終えるころに雨があがって青空に。このときなら、点火に苦労しなくて済んだのだが・・・。
山荘の管理人が集金に来たので、山荘で支払いを済ませる。不安定な天気の間にのぞいた貴重な晴れ間なので、散歩に出かける(GPSはテントに置いていったので、ログには含まれない)。乗越浄土からロープウェイ駅を見て戻る。
夜、風が強くなる。低く張ったとはいえ床がないため、テントの裾が煽られる。トレッキングポールをつないだ支柱も、ピラミッドの頂点ごと大きく揺れた。支柱を握って押さえたりもしたが、そのうちに耐えられそうだと思って、耳栓をして眠る。
【15日(土)】
朝、相変わらず強い風が吹いているが、テントは飛ばされずにいた。4時ごろライトを点けて外を覗いてみると、濃霧に光が反射して隣のテントも見えない。気温は・・・と思って温度計機能付きの時計を見ると、表示が完全に消えている。電池を交換してから2週間も経ってないのに・・・? 撤退も考えながら温かい寝袋で二度寝。5時ごろ、体を寝袋に入れたまま、火を使わない食事をとる。クラッカーと、ミューズリーにプロテインを牛乳代わりにしたもの。牛乳を使わないミューズリーは・・・不味い。テント内で支度を整えて、テントを畳むために、この日初めて外に出る。固定のために置いた石、ペグは一つもずれていなかった。風はやや強いが、深夜より弱まっている。霧がかかっているが、見通しはきく。あとは、岩場を通過するのに、岩が濡れているかどうか。
6:20 テント場を出発。気温は確認できないが、指先がしびれる寒さ。最初はダウンジャケットにレインジャケットを重ねた状態で出発、体が温まったら脱いでいくことにする。まずは中岳の巻き道。短い岩場があり、ここの状態で宝剣岳を通過するか判断する。岩は乾いていて、グリップする。問題なさそう。宝剣岳を前にダウンジャケットを脱ぐ。
6:48 宝剣岳通過。霧で下がよく見えないが、確かに落ちたら死にそうな岩場。ただ、鎖やステップが整備されていて、丸印のマークを辿っていけば問題ない。風もだいぶ弱まっていて、危険を感じる場面はなかった。
まっすぐ南に伸びる稜線を辿っていく。ほとんど走れるところはないが、できるだけ速く脚を動かし続ける。
7:20 一時雲が切れて日が差し込み、西の雲海にブロッケン現象を観測できた。この稜線の地形なら条件が整いやすいとは思っていたが、実際に見られて嬉しい。
9:00 檜尾岳通過。テント場と空木岳との中間地点。東の尾根にかまぼこ型の避難小屋が見える。1.3km先(標高2650m)に岩場あり。一見して行き止まり?と思ってよく見ると、岩の上にステップが2本打ち込まれている。風が落ち着いたので、レインジャケットを脱いで半そでになる。
10:15 熊沢岳通過。西側の広い尾根が美しい。
11:25 木曽殿山荘到着。スタッフの食事時間にお邪魔してしまい、恐縮だった。軽食の提供はしていないとのことだったので、ペットボトルのお茶を購入(400円)。トイレを利用し(200円)、空木岳との標高差370mに取り掛かる。
12:30 空木岳到着。下から見上げるとピークに見える場所を3回は通過した。山頂はやはり雲に囲まれていたが、駒ヶ根方面は見渡せた。下山開始。標高900mの空木岳登山口(スキー場駐車場)まで、約10km、標高差2000m。山頂直下の駒峰ヒュッテではカップラーメンに惹かれたが、行動食に不足はなかったので、休憩せず通過。避難小屋のある空木平カールのルートではなく、尾根沿いを進む。それまでの岩稜と比べて、傾斜が緩やかで、圧倒的に歩き(走り)やすい。空木平カールへの分岐に着くころには、森林限界を下回って樹林帯に入り、路面は土と木の根に変わる。急斜面には鎖や階段が整備されている。
14:11 池山の水場に到着。冷たい水をいただく。ここから先は手持ちの地形図の範囲外に入るため、山と高原地図に切り替える。タカウチ場の東、野生動物観察棟の分岐点から先は、山と高原地図では折り返しながら下りていくルートが掲載されている。これに従って遠回りしてしまったが、地形図では、旧林道終点を経てスキー場近くまで尾根を直進するルートが掲載されていた。
14:30 旧林道終点通過。以前は登山者の駐車場として利用されていたが、林道の崩落で通行止めになったため、ただの広場になっている。ここで、東の登山道へ進むところを、南の林道へミスコースしてしまう。最大の原因は、「林道を通る」との思い込み。地図を見て等高線とルートの関係を考えれば車道ではないことは明らかだし、間違った分岐に入っても方角を確認すれば間違いに気づけたはず。地図の本来進むはずだったルートの形だけを見て、たまたま林道のカーブの形が似ていたので、安心してしまった。迷っているときほどコンパスを見ない。結局、2kmほど遠回りしてしまった。目的地に合流するから問題にはならないが、判断ミスの仕方が痛い。
15:10 空木岳登山口(スキー場駐車場)到着。駒ヶ根駅まで走るつもりだが、ひとまず、近くにある「こまくさの湯」で汗を流し、着替えることにする。向かいにある「明治亭」でソースカツ丼を食べて出ると、16:36。駒ヶ根駅から岡谷方面に向かう次の電車が17:25発。切符を買う時間も考えて、17:15には着きたい。距離は4.7km。空身なら余裕だが、7kgの重量を背負い、胃の中にもいっぱい詰め込んだ状態で40分を切る、か・・・。まあ、行くしかない。駅までは下りだから、何とかなる。そう思って走り出すと、案の定腹が痛くなる。ソースカツ丼に罪はないが、吐き気がこみ上げてくる。明らかに、今回の行程の中で最も苦しい。こんなところまでTJARを再現しなくていい、と思いながら走る。
17:10 駒ヶ根駅に到着。何とか耐え抜いた・・・。
■装備品
装備品の重量は、ベースウェイト4.4kg、水・食料・燃料を含むパックウェイト7.4kg。前回の剱岳縦走から、一部の装備を変更した。
・タイベック素材の自作シュラフカバーとアドベンチャーメディカルキッツのヒートシートエマージェンシービビィを追加
今回利用した駒ケ岳山頂山荘のテント場の標高は2870mと、8月に利用した雷鳥平キャンプ場(2300m)より500m以上も高い。より寒くなることを予想して、エマージェンシービビィを追加(首元でカットして、110g→87g)。これだけでは結露で内側が濡れることは分かっていたので、寝袋を守るためにタイベックシートでシュラフカバーを自作。1cm幅の発泡ブチルゴムの両面テープで貼り合わせ、143g。モンベルのU.L.スーパー スパイラルダウンハガー#5に被せて、670gの寝具にした。結露はエマージェンシービビィとタイベックシュラフカバーの間に留まって、寝袋は濡れなかったので、意図通りの結果になった。予報では山頂の最低気温2度だったが、ダウンジャケット・ダウンパンツも着込んで寝たところ、寒さはまったく感じなかった。
ただ、モンベルのU.L.スーパー スパイラルダウンハガー #3(本体600g、快適睡眠温度域0℃〜)一つあれば事足りたうえに軽かった・・・などと考えるのはやめておこう。
・靴をinov-8のマッドロック290に変更
剱岳の縦走で履き潰したmontrailのバッドロックに代わって起用。側面が補強してあり、岩にこすっても安心。トレイルランニング用シューズとしては、アルプス向き? 大きなブロックのソールパターンで、グリップも効き、意図的にソールの突起を引っ掛けて岩場を登れる。バッドロックよりも幅が狭いので、0.25cm大きいサイズを選んだところ、ちょうど良かった。
・三脚を追加
JOBYのゴリラポッドマイクロ250(25g)が便利。薄い板状の三脚で、カメラに装着したままでもかさ張らない。連結部分のボールジョイントで、岩に置いた後、角度を調節できる。
■反省点
・ミスコース
木曽駒ケ岳山頂から南へ下りるところ東へ下りてしまった。また、空木岳登山道、旧林道終点から東の登山道へ進むところを、南の林道へ入ってしまった。目に付いた道に入ってしまう傾向があるらしい。分岐点を通るという意識と、方角の確認を怠らないこと。
・着火用具
軽量化に固執せず、安定した着火用具を持つべき。アドベンチャーメディカルキッツのスパークライトは7gと軽量のファイアスターターだが、火花が頼りない。使い捨てライターの要領でダイヤル式のフリントを回すのだが、指が痛くなる。EXOTACのナノストライカーの方が使いやすい。
プライヤーも持つべき。前回までのプライヤーツールに替えてハサミを持っていったが、14gのエスビット(ミリタリー)を火にかざすためには使えなかった(割るか、4gのエスビットならつまめそう)。
・飲食
腹いっぱい食べたら走るな、走るなら腹いっぱい食べるな。
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