栂海新道


コースタイム
8月5日(月)白鳥小屋手前 6:30―14:30 栂海山荘
8月6日(火)栂海山荘 5:00―14:30 朝日小屋テン場
8月7日(水)朝日小屋テン場 5:00―14:30白馬頂上宿舎テン場
8月8日(木)白馬頂上宿舎テン場 6:00―14:30 唐松山荘テン場
8月9日(金)唐松山荘テン場 6:00―16:30 キレット小屋
8月10日(土)キレット小屋 6:30―13:00 種池山荘テン場
8月11日(日)種池山荘テン場 5:30―7:15 扇沢
天候 | 8月4日ー7日晴8日ー9日霧・晴10日曇・晴11日晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
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写真
感想
かのウオルター・ウエストンは親不知海岸を日本アルプスの基点と唱えました。ウィキペディアによれば、海抜0mの親不知海岸を北端とし、南端の針の木峠まで走る長大な山脈を後立山連峰と定義しています。去年も親不知から扇沢まで7泊8日で縦走を計画したものの天候が悪く、途中の白馬岳から白馬鑓温泉にエスケープしました。今年は梅雨明けの好天を狙って、そのリベンジを敢行しました。
夜行バスで早朝に直江津に着き、北陸本線で右に日本海を望みながら、親不知までコーラと柿ピーのご機嫌な1時間の電車の旅です。親不知駅から登山口までは、大型トラックがビュンビュン行き交う国道8号線を1時間程歩きます。途中カーブしたトンネルでは、歩道がない白線だけの側路帯を、見えない対向車に怯えながら進みます。今回の山旅の核心部、不帰の剣以上の難所かもしれません。親不知観光ホテル前の栂海新道登山口標識の階段を登って大縦走が始まります。
今回も単独縦走の醍醐味、多くの素晴らしい出会いがありました。二日目の宿、栂海山荘の先住者は単独の大阪から来たK林さん一人で、昨日に親不知からの入山です。明日以降は朝日岳から白馬岳まで私と同じ行程で、清水岳経由で、欅平に下りトロッコ列車に乗って帰るとのこと。私が神戸に居た頃よく利用した”北国”は今は無く、サンダーバードで糸魚川の道の駅でビバーグしたそうです。彼は夏によく単独で北海道の沢に行くそうですが、北海道は金が掛かると苦笑していました。
三日目黒岩山を過ぎ、黒岩平を歩いていると、後から単独の青年に声を掛けられます。千葉出身で佐野在住のS田さんです。なんでも昨日は散々な目にあったとぼやいていました。親不知から栂海山荘に向かう途中で対向者が自分の携帯はSバンクで繋がらないから貸してくれと言われるままに貸したそうです。なんでも沢の水を飲んだら口が痺れたとのことで消防とのやり取りに1時間ほど費やしたため、バッテリーは無くなるわ、残りの水はあげるわ、栂海山荘の手前で雷を伴った夕立に合い、ずぶ濡れになりながら露営を余儀なくされたとのこと。山にSバンクを持ってくるなんて、しかも他人の携帯を借りるとは、この人は何を考えているんだろう。山では携帯で命が助かった事例もあるほど今では重要な通信手段だと思う。この人は他の登山者の大事な命綱を奪ってしまったことになる。こんな人には山で会いたくない。目の前に異常事態を訴えている登山者がいれば見過ごす訳にはいかないから。黒岩平で一通り事の顛末を聞きながら休憩の後、アヤメ平を過ぎ、蓮華温泉への分岐点、吹上のコルからはいよいよ朝日岳への最後の登りが始まります。朝日岳では互いの証拠写真を撮りあい朝日小屋へ下ります。彼は今日はテントを乾かしたいので、小屋泊にするとか。Sバンクの登山者は前日に朝日小屋に泊まったらしく、消防から朝日小屋にも問い合わせが有ったようです。S田さんの携帯のバッテリーが無くなった事を知った小屋のスタッフは、快く充電してくれました。明日は白馬でテントを張り、明後日、大雪渓を猿倉に下山するそうです。彼はお酒が好きなようで、日本酒を4合持ってきたものの、バテで途中で捨てたとか。彼には顆粒がスティック状にパックされたアミノバイタルを1本頂き、翌日最後の白馬へ登る前に飲んでみましたが、効いたかどうか効果の程は更なる検証が必要なようです。
四日目の朝、朝日小屋から朝日岳の巻き道を歩いていると、単独の身軽な恰好の青年が背後からやって来ます。今日は蓮華温泉に下るとか。先月は白馬岳に滞在し、先週は清水岳へ下ったがお花畑が見事だったとか。清水岳の登山道は長く登山者は少ないマイナーな場所です。その辺のことを話すと「僕、営林署のアルバイトでグリーンパトロールをやっているんです。二人ペアで登山道に緑のロープを張る仕事です。4年間勤めていた銀行を辞めて、今は専門学校に通っています。植物調査会社に就職出来るんです。」「営林署にも就職できるかも知れないですね?」「いや営林署には勤めません。植物調査会社に就職したいんです。それで今は植物の勉強をしているんです。今27ですが30までには身を固めるつもりです。日当7.500円で山小屋はタダです。最高齢は56才の方がおります。」27才とは思えないしっかりした人生設計を持っている好青年です。「銀行を辞めるなんて、私が親だったら大反対しただろうな、でも一度きりの人生。後で後悔しないように、思い通りにやるべきだ。君の選択は間違っていない。」などと無責任なことを言って別れました。
三国境へ向かう途中で、大阪の単独に追い越されてからは、14時30分に白馬岳頂上宿舎のテン場に着くまで、追いつくことは出来ませんでした。佐野の単独はさらに遅れること2時間で到着です。今日で皆とはお別れということで、お互いの名を告げ、当ての無い山での再会を約束して、それぞれのテントに潜り込みました。
六日目、五龍山荘のベンチで持参の粉末コーラで500mLのペットボトルを作り、一気に飲み干します。これでも足りず、小屋の売店で350mLの缶コーラと柿ピーで一人乾杯です。山で飲むコーラは最高、生きてて良かった!。五龍岳の山頂の少し手前の登山道で、五龍岳に向かう後姿を撮って欲しいと、単独のヤマガールに声を掛けられます。彼女はブログをやっているそうで、進行方向を意識して写真を撮るそうです。山頂ではさらに注文が多く飛び跳ねているポーズやら、バレエダンサーが片足で立ち両手を広げるポーズ等を他の登山者に撮ってもらっていました。
背景も剣や遠くの槍を入れるなど念の入れようです。彼女はK祥寺在住で、都内の山岳会は単独禁止のところが多いそうで、いつも単独だとか。「川崎労山なら単独は禁止していないから、今度HPを見てね」と営業してしまいました。
キレット小屋には14時30分に到着しました。ここにはテン場がありません。この山旅で唯一の小屋泊です。ここは電話が無く、携帯も通じません。テントでは食欲が無く、いつも無理やり喉に押し込むような食事ですが、小屋では味噌汁とご飯をお替りするほど実に美味しくいただきます。疲労から来る食欲減退はどちらも同じ筈なのに不思議な物ですね。雰囲気でこうも違うのですね。それとも小屋の決して豪華なメニューではなくても山食とは一味違うということでしょうか。
鹿島槍南峰を過ぎると、霧で陰湿な岩稜帯から明るく開けたハイ松帯に変わり、ルンルンの登山道に一変します。さらに冷池山荘までの見事なお花畑に癒され、爺が岳を越えてからはジグザグの登山道の先に種池山荘の赤い屋根が見えるハイジの世界が広がります。種池山荘のテン場に着くと、30張ほどの小さいテン場は既に半分程が埋まっています。隣の先住者のラジオから耳慣れた声が流れます。土曜の昼に必ず聞いている”久米宏、ラジオなんですけど”です。早速テントを設営し、イヤホンに聞き入るも、いつもと同様いつしか寝入ってしまいます。種池山荘は夕と朝の2食を¥3000でテント泊にも提供しています。食料はまだ大分残っていますが、迷わず申し込みます。ここでも夕食も朝食もしっかりお替りしました。
最終日、柏原新道を一気に下り、扇沢発7時55分のバスで大町温泉郷で途中下車、お決まりの薬師の湯で汗を流し、松本駅の売店で岩魚弁当、コーラ2本、柿ピーを買い込んで、がらがらのスーパーあずさに乗り込みました。
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