奥穂高岳(岳沢-天狗のコル-ジャンダルム-奥穂山頂-涸沢)
- GPS
- 16:45
- 距離
- 25.7km
- 登り
- 1,921m
- 下り
- 1,928m
コースタイム
- 山行
- 8:37
- 休憩
- 1:47
- 合計
- 10:24
- 山行
- 5:00
- 休憩
- 1:09
- 合計
- 6:09
天候 | 一日目:晴れ、二日目:ガスのち雨時々土砂降り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
天狗沢上部には急傾斜の雪渓がある。26日の時点では、雪渓をどこかで登る必要があるため、アイゼン、ピッケルが必要。雪が固いため、ツボ足では歯が立たない。天狗のコル直下から続く雪渓は、下部のガレ場で水が流れているため、雪渓の底面がブリッジ状になっていることは間違いなく、上に乗るのが憚られる状態。自分は、向かって右側、畳岩から続いているスラブ上の岩場を登って回避したが、スラブの段差が胸の高さほどもある箇所があり、これを登るのも十分にスリリング。登るならともかく下りは余計に困難だと思われるので、雪渓が消失するまで、天狗沢を西穂-奥穂縦走路のエスケープルートとしてはあてにしない方が良さそうである。天狗のコルから奥穂山頂までの稜線は、良く知られている通りの難ルートである。雪はない。ペンキ印は比較的充実しているので晴天時に大きくルートを見失うことはないが、一瞬の油断が重大事故につながる状況が多数連なる。なるほど、ここが一般の登山路とは別扱いになっていることも納得がいくものだ。岩場のホールドは非常に充実していて有り余るほど存在するが、ひとたび雨にでも見舞われれば、スリップの危険性が高くなる。ガスに巻かれても、強風に煽られても、雷雲に囲まれても、進むも退くも厳しい状況となることは想像に難くない。私のような力量では、天候が少しでも悪くなる恐れのある時は、立ち入るべきではないルートだと思った。 |
写真
感想
普段は、悲しいかな週休一日なので、日帰り登山ばかりだった。ところが、たまたま土曜に休みが取れることになり、貴重な二連休を生かすべく、行く先を思案する。思いついた先は…決して日帰りだなどと無茶な事を考えてはいけない、西穂〜奥穂の稜線とした。西穂発だと日数的にもう一日必要なので、岳沢、天狗のコル経由で行くことにした。
一日目、上高地のバスターミナルに午前5:30に到着。既に大勢の登山者でごった返しており、夏山シーズンの到来を感じさせる。河童橋までは人が多いが、河童橋を渡って梓川の右岸に行くと、途端に静けさを取り戻す。岳沢登山路も静かで落ち着いた山行ができる。6月中旬に訪れた時はところどころ雪が残っていたが、今は雪は完全に消え、高山植物たちが可憐な姿を見せる。
岳沢小屋から先は、大半の登山者が重太郎新道に向かう中、一人だけひっそりと天狗沢に向かう。天狗沢はほとんど人が入っている気配がなく、上高地の喧騒とはまるで無縁の世界。実際この日も、途中から折り返して下って来たと思われるお二人の方と、自分よりも後から来て、雪渓のところで折り返していった二人組を除いて、天狗沢で登山者に遭遇することはなかった。このようにひと気の乏しい天狗沢だが、ペンキ印やトレースもはっきりしており、ルートを見失う心配はない。登って行くと、人一人分の幅のトレースの両サイドに高山植物が咲き誇る素晴らしい場所。時折、花の香りが辺りに立ち込める。トレッキングで訪れるなら、むしろこういう場所が良いと思う。しかし、そのまま歩を進めると、次第に登山路が急になっていき、次第にがれ場になる。石の大きさがいやらしく、細か過ぎず、かと言って、安定しているほどのサイズでもないため、踏んだり掴んだりすると動いてしまう。こういう浮石の多い斜面を登って行く。登り続けると、右手に雪渓が現れるが、夏道上に雪はない。天狗のコルがなんとか見通せるくらいのところまで登ると、いよいよ雪渓に完全に行く手を阻まれる。雪が硬く、斜度もあり、ツボ足では登れそうになかったので、アイゼンを装着する。このまま雪渓上を登りきって天狗のコルまで到達することもできるが、雪渓を横から見た感じ、大きくシュルンドが口を開けており、雪渓の厚みも乏しいので踏み抜くのが怖い。また、雪渓の下部のガレ場では、流水があり、雪渓がブリッジ状になっている恐れが高い。仕方なく、雪渓を百メートル登って最短でショートカットし、雪渓の右側にある畳岩から伸びて来ているスラブの岩場を登ることにする。スラブは一段一段それなりに高さがあるし、登った先がツルッとした一枚岩だったりするとホールドがなくて先に進めない。少しスリリング。結局、天狗のコルの少し奥穂側で稜線に出た。このルート、西穂〜奥穂間の縦走時のエスケープルートとされているが、少なくとも中途半端な雪渓が消えるまでは、とても下りたいと思えるルートではないように感じた。
ここからは、縦走路を北に向かう。ところどころ一般登山道ではないことを感じさせる危険箇所もあるが、通常の稜線歩きと変わらない難易度の箇所も多い。マークは、白いマーク、黄色いマークが割合しっかりとついており、少なくともジャンダルムまではルートに不安はないと思う。ただし、間隔はそこまで細かくはない箇所もあるので、ガスっていれば、わかりづらいだろう。天狗の頭を超えたと思ったら、すぐにジャンダルムの取り付きがやってくる印象。ジャンダルムの登りは、ルートを示す印を途中で見失うが、落石等を起こさなければ、飛騨側からならどこからでも割合簡単に登れそう。ジャンダルムの頂上では、しばし絶景を楽しむ。槍が見事にガスの通り道になっており、一瞬しか姿を見せなかった。ここからは、ロバの耳や馬の背といったこれから進むべき難所が見渡せるが、遠目に見ると、本当にこんなところを登れるのか?といった感じ。
ジャンダルムを下って、ジャンダルムを信州側にトラバースすると、そこから先が行程中の核心部。ところが、この辺りに限って印の見づらい箇所が多く登り間違え下り間違えにつながりやすい。通常の登山道だと、正しいルートを外れると、難易度が極端に上がり、すぐに間違いに気がつくことができる。ところが、このルートの場合、正しいコースであっても、コールを外れていても、いずれにしてもある程度の難易度があるため、間違ったルートを進んだ時の違和感が少ない。ジャンダルムの頂上からロバの耳を見ると、こんなところ、登れるのか?と思うが、実際に現地に行けばそれほど難しくはない。ホールド自体はたくさんあるので、岩が濡れていなければさほど問題はない。ただ、ところどころに浮石があるので、落とさないように気をつけたい。ジャンダルムの頂上で、このルートを幾度となく縦走したとおっしゃるベテランの方にお会いすることができ、また行先も同じであったので、会話を弾ませながらも先行して頂いた。やはりルートを目前で明示してもらえる、というのは大変に心強かった。最後の難所は、馬の背。ジャンダルム側からの通過だと登りなので、思ったほどは怖くない。しかし、下から見た姿は異様なもので、こんなところを登って通過するなど、にわかには信じがたいほどだ。信州側、飛騨側、あちらこちらを使って通過してしまったが、飛騨側を使っていて進みづらいなと思うと、信州側はそうでもないというケースが多かった。馬の背を越えれば、後は眼前の奥穂のピークを目指すのみ。幸運にも天候が安定していたので、たっぷりと山頂の眺めを楽しんだ後、穂高岳山荘に向かった。さすがに、あの縦走路を通った後だと、奥穂山頂から穂高岳山荘までは一般ルートで安心感がある。一日目は、天狗沢も縦走路もバリエーションに富んでおり、退屈する瞬間のない、充実した山行を楽しむことができた。
二日目は、穂高岳山荘から上高地に下る。前日の予報通り、朝から天気が優れない。当初は涸沢岳、北穂と経由して、上高地に下山するつもりだったが、飛騨側から風速15mはあるであろう強風が吹き付けており、ガスも出ているため、稜線歩きを諦める。穂高岳山荘から、一目散に涸沢へと下る。山荘から下り始めて直ぐに、雪渓上を歩行するが、雪が緩んでいる上に、手すり代わりの固定ロープがあるため、ツボ足で問題なく下れる。ザイテン上は、一切雪はない。ザイテンを下り終わってからは、雪渓上の歩行が数か所ある。ツボ足で特に問題ないが、歩きに不安のある人は軽アイゼンがあると安心できるだろう。涸沢ではほとんど休まずに下る。時折強い雨が降るため、雨具を着装した。本谷橋のあたりで雨が完全に上がっていたので雨具を脱ぐが、その後、横尾の手前で土砂降りに降られる。急いで横尾山荘の軒下に入り、雨支度を整える。ここから明神まではほぼ土砂降りであった。横尾から先の遊歩道は、平らにできている分、水たまりができやすく、歩きづらかった。明神を過ぎたあたりから雨が小降りになり、上高地ではやんでくれた。最後に記念撮影やお土産の購入をして、帰路についた。
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