急登にはじまり急降に終わる 笠新道〜双六〜黒部源流〜裏銀座〜ブナ立
- GPS
- 80:00
- 距離
- 50.5km
- 登り
- 4,746m
- 下り
- 4,563m
コースタイム
- 山行
- 8:09
- 休憩
- 1:51
- 合計
- 10:00
- 山行
- 10:36
- 休憩
- 2:24
- 合計
- 13:00
- 山行
- 12:05
- 休憩
- 1:35
- 合計
- 13:40
天候 | 最終日以外、13時過ぎから夕立 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
※八王子 1231(あずさ21)1435 松本 1446-1517 新島々 1530-1608 沢渡 1620-1635 中の湯 1713-1725 平湯 になってしまった。 ・平湯 700-745 新穂高ロープウェー ひとつ手前のバス停の方がトイレも使える。登山届は左俣ゲ−トにある。 ・高瀬ダム〜七倉 ¥2400 たまたま3人でした。タクシー乗ると薬師の湯割引券もらえます。 ・七倉〜信濃大町 ¥1500 今年から季節運行(1日4往復)、先払い、大町温泉も止まります。土日はコミュニティバスが運休なので、大町温泉で降りた場合、駅まで本数少なくなります。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
五郎沢左俣 ひたすらゴーロ。水流中はぬめります。 祖父沢 おおむねゴーロ。上部で少し滝っぽい感じあり。 |
その他周辺情報 | 七倉山荘 ¥660で入浴 あまり広くないので混雑時は大町温泉まで行った方がいい。内湯が激熱だったのを忘れていた。 松本で久々に『どんぐり』に行ってきた。純粋においしい。コーヒーフロートのサイズが値段(¥500)を凌駕していました。 |
写真
感想
毎年この時期になると迷うことがある。18きっぷを購入するか否かということだ。使用期間内に何度山に行けるのか?これが大きな問題。昨年なんかは余してしまう感じだったので甲府にシャインマスカットパフェを食べに行くという、わけのわからない暴挙に出てしまった。各駅で山に行くということは、最低1日以上移動に費やすわけだから、それだけ休みを多く取らなくてはならない。今の部署は恒久的に人が足りておらず、周りの目もあるためなかなか休暇を切り出しづらい。夜行列車が復活してくれれば少しは解消するんだけど…1回でも夜行バスを使うと18きっぷはペイできない。自宅では車がないと困るといわれるため、長期山行には使用できないけれど、「なるべく安く行って欲しい(自分もそう思っているが)」と言われると、常に帰りは下道派の自分としては『車が一番安い』としか言いようがない。
いろんなしがらみを抱え、結果今山行は休暇1日取得、片道特急利用、バス使いまくりという金銭的には何とも中途半端なものとなった。18きっぷ足りないくらいの休みが欲しいと思いつつ山に出掛けたのでした。
前日、八王子からあずさに乗車、全指定席なので少し割高になった。荷物スペースもあって、携帯も充電できるとしても少し高いと思う。でも指定席料金はパチンコなら10分かからないでなくなると思えば払えてしまうのは不思議だ。松本に到着して時計を見ると、松電の出発まで4分となっている。えっ!乗り遅れる。そして今日の夕飯を駅で買うこともできない時間だった。一度出札して(SUICAだと継続して乗れない。何とかしてほしい。)新島々までの切符を購入し、走って電車に乗り込む。松電内はとても暑く、いま走った分も合わせて汗がすごい。新島々からは一度沢渡で下車して上高地行きに乗り換えなくてはならない。そもそも松本から平湯へ直通のいい時間帯のバス便があれば、こんな乗り継ぎはしないで済んだ。
話は前後しすぎるけれど、本日宿泊予定の平湯キャンプ場、受付が19時となっている。直通便はおよそ19:30着、受付には間に合わない。そして出発も7:00のバス、受付管理棟は7:30オープンとのこと。電話で事前にお話ししたところ『空いている場所に張っていただいて、記名した封筒に料金を入れて管理棟のポストに入れてくれればいいですよ』とおっしゃってくれました。700円、歩いて10分で温泉あり、食事もとれる。平湯温泉はなんていいところなんだと思わざるを得ない。ここまでよくして頂いたのだから、せめて受付時間内に入場しなくてはと思うのは人の心。そのためにはこの細かい乗り継ぎは仕方のないことなのだ。
沢渡からの乗り継ぎまではそれほど時間は空かないはずだったのだけれど、全然バスが来ない。自分が計画を間違えているのかと思ったくらいだ。結果、上高地行きも結構遅れて出発。あかんだな行きに乗り換えるためさらに中の湯で下車、バス停に移動して時刻表を見れば完全に間に合っておらず、残り2本とは滑り込みもいいところ。でも受付が開いている間に現着できることは変わりないのでいいとするか。
平湯に到着しキャンプ場にチェックイン、名前を伝えると了解してくれていたことがうれしかった。早速幕営し、入山してはいないがやはりここは風呂だろとばかりに、平湯の森へ…って雨が。管理棟の屋根で雨宿りしていると、管理人さんが傘を貸してくれた。もう感動でしかないですね。それでも平湯の森に着くまでにズボンはびちゃびちゃになるほどの降り、明日以降が気になりつつも露天風呂に浸かってしまえば、ただの温泉を楽しむおやじとなっていたのだった。温泉地の泊りっていいなぁ。
/26
昨日借用した傘を管理棟ポストの所に返却し、バス停に向かう。7時のバスには数人乗っている感じ、こちらは時間通りロープウェー駅に到着した。今のところいい天気、笠新道を使うのは20年以上ぶり?洪水で道が流されて仮の道になっていたころに登って以来だ。あの時は若かった…勢いというものがあればとりあえずこなせる時代、もはや膝も崩壊しつつあり50を過ぎた体ではごまかしながら登るしかない。登山口で給水、水場があるから少なくていいかななんて思っていたけれど、とりあえず4リットル給水し出発。まさかこれが天場で功を奏するとは思いもしなかった。
しばらくは樹林帯で大汗かいてはいるものの結構涼しい。特に何が変わるわけでもない景色の中をひたすら上る。平日にかかわらず結構人が下ってくる。1800mくらいからがきつく、笹原のトラバースになるところは結構暑い。高度計おおむね2000m地点あたりがちょっと風穴っぽくなって涼しく、ここで休憩する。このころから曇り範囲が増え、出発してすぐに雨が降り始めた。そこまで降っているわけではないためそのまま杓子平まで進み休憩。ここの景色を楽しみに登ってきたのだがまるでガス、そして本格的に降ってきてしまった。少し休憩して雨の中とぼとぼと稜線に向けて出発、稜線に着くと雨は止み、神岡側のルート分岐で大休憩する。打込谷はきれいに見えており、ほんの少しの希望を抱いて笠の天場へ向かった。笠は小倉谷や打込谷から登っていたけれどこの部分の稜線を歩くのはとても久しぶりで、何が驚いたって笠Pの存在感がすごい。こんなでかかったかなぁ?
最後の登りを終えてテント場に到着、すぐに幕営し小屋に使用料支払いと水を買いに向かう。驚いたことに天場は雪渓がないため水が枯れ、小屋も渇水なので天場利用者は1リットルしか購入できないというものだった。重かったけれど多めに水を上げてきて正解だった。明日は時間がタイトなため、ちょうど視界も良くなったのでピークに向かう。ここのピークの晴れ勝率は結構いいんだけれど、今回は負けかな?すぐに天場に戻り夕飯の支度をしていると、穂高にかかる積乱雲に西方面からの夕日が当たって、いい具合に焼けてきた。素晴らしい景色が見られると、こんな天気でも登ってきてよかったと報われる瞬間だ。明日はどんな天気かな?
/27
撤収時ガスっていたと思っていたらそれはテント場周辺だけで、明るくなると大展望が広がっていた。今回楽しみにしていた場所に秩父平がある。笠の稜線はカール地形が複数あり、上からそのきれいな緑の絨毯を見下ろしながら歩くのも気分良い。時折笠を振り返りみるが本当にりっぱ、山脈の端にあるのがもったいないと思う。思ったより花が咲いてはいなかった秩父平で休憩、誰もおらず贅沢空間である。大ノマ乗越まで以前の記憶は全くなかったのだけれど、驚いたのがお花畑が非常に良い区間だったことだ。荷物が軽くて時間の制約なかったら、きっとシャッター押す手が止まらなかったかな。
大ノマ乗越からの登り返しを終えて弓折Pを往復してくるが、この先は自分が北アでも結構嫌いな区間となる。いつ通ってもただひたすら暑い。地面からの蒸し返し、風の少なさ、ほんと暑い。自分だけか?そんな葛藤を抱え、我慢して歩き双六小屋に到着。結構雲も出てきて中道経由にしようか、P経由にしようか迷うところだ。昨年も通ったけれど涼しさ重視でP経由で行くことにした。本日野球場からの遠望は今一つ。曇ってきたせいか雷鳥も多く出現、個体によって7羽くらいのヒナを連れているのもいれば、1,2羽のものもいる。きっと周辺の環境で変わるんだろうけれど自然は厳しいもんだ。三俣蓮華に着くといよいよ雲が怪しくなってくる。ここで富山から来た女性二人とたまたま知り合い、彼女たちは本日三俣、明日以降水晶〜雲の平〜高天原から薬師沢小屋という全部盛り込みルート、自分も明日は源流経由雲〜水晶〜裏銀だったのでもう一回会えるかもねなんてことを言ってその場を分かれた。
出発してすぐポツポツきたが、まぁ昨日もこんな感じだったしと思っていると…五郎乗越へ着く前に激しい夕立にやられる。雷もすごくルート途中で待機せざるを得ないグループもいた。足回りを持っていた沢装備に変えてもいいんじゃないかくらいの状況、小屋の発電機の音が聞こえてきたので小屋まで行くことにする。また、あの軒先であまやどりだ。
雨量、雷がすごい!この状況で五郎沢に入っていいのか迷うくらいだ。明日以降の計画を考えると絶対に進んでおきたいところだ。待つこと30分くらいで雨が上がり、雲が切れていく。五郎Pは結構早くから見えているので右俣はそれほど降っていないのだろう。急いで装備替えをして出発、少し遠慮気味に一旦五郎に向かいつつ、入れそうな枝沢から五郎沢に入渓した。増水は5センチ程度、影響なし。黒部川源流は難しいところはなく悪く言えば単調である。でも多分毎年入渓したとしても飽きが来ない魅力がある。なぜのか?きっと平坦な高山帯にきれいな流れがあって、景観のバランスが素晴らしいことがあるのだと自分は思っている。
沢の傾斜が出てくると大きな岩のいわゆるゴーロ下りとなる。五郎の由来だ。左岸の崩れが目立つけれど問題なし。二俣に着くとやはり右は水がほとんど増えていなかった。このころから食料調達開始するも、腕が悪いのか、幕場に着かなくてはという焦りなのか釣れる魚がみな小さい。魚に心を読まれているようだったので、あきらめて本流出合の台地を目指す。なんだか煙っぽいものが漂っている感じだったけれど、大地についてみれば自分だけ。ところが砂の平坦な人気の物件、薪がほとんどない。濡れた薪を無理やり探して集め何とか火を付けることに成功したものの、ザックカバーって何?というくらいビショビショになったザック内装備を乾かすまでには至らなかった。久々に持ってきた缶酎ハイと何とかキープした1匹の刺身で、少しの贅沢ができたのは幸いだった。
/28
今日は烏帽子まで、少し遠いが夕方遅くには何とかなると思って5時半に出発。本流に増水はなく天気も上々、祖父沢に入り次回以降の新規幕場を探しながら進む。本流出合付近には結構ある的な文献もあるけれど、まるでそんなところは見当たらない。岩のヌルが結構強く、注意して歩く。古文書的な嘘つきニッチ地図では雲の天場まで2時間の記載、涼しいのがいい。傾斜が緩くなり水路状になるとハイマツがかぶってくるので草付に上がり、歩きやすそうな所を詰めてゆくと、ハイマツを抜けたところに突然テントが現れた。水場のパイプまで上がって装備替えしたけれど、はっきりした滝もないこの沢に2時間半かかってしまった。
1時間も休憩してしまったので再び4リットル給水し先を急ぐ。去年も思ったけれどあのショートカットは再起しないんだろうか。プールから上がった後のごとく足におもりがついたような感じ、遠回りさせやがってと思ったものの小屋の分岐から水晶岳を見たことで、まぁ許してやろうという気持ちになった。でかい祖父岳を登り岩苔乗越に向かう最中、ルートのハイマツの中から飛び出してきた顔が、なんと昨日三俣蓮華で出会った二人組。祖父岳側に少し戻った乗越風の所でしばし歓談、とても楽しい。彼女たちは自分に水場よりも潤いを与えてくれたのは言うまでもありません。
後ろ髪をひかれながら彼女たちの無事を祈りつつお別れをして先を急ぐ。元気の素がなくなってしまうと再び牛歩戦術に戻ってしまう。結構水晶小屋まで遠いんだよなぁなんて思いつつ歩いていたけれど、この火星のような(行ったことないけど)稜線のお花畑が素晴らしかった。水晶小屋から見る裏銀は長いなぁという感じでしかなかった。雲が多いなぁ程度だったけれど、この先すぐに天気が豹変する。
東沢乗越に下っている最中雨が降ってきたので、ちょうどひさし風になった岩の下でカッパ着装していると雷も鳴り始めた。視界良好なので小降りを見極め前進、登り返しで振り返れば水晶方面は大雨が降っている。どんなに急いでも勝てはしないので黙々と歩こうと思っていると、急に雷の音が大きくなり始め雨も強く…さらに雷の音が異常なくらい大きくなったのでハイマツに隠れた。そしてヒョウまで降り始めた。最悪だ…これは積乱雲本体に入ったと実感した直後、空を切り裂くような雷鳴、そしてなぜか空が光らない。本体の中はこんな感じなのか?など色々な思考が頭をめぐる。3mほど先に小さいが、かがめば大人一人入れそうな岩の張り出しを発見!この移動で雷にやられるかもしれないし…まさにイチバチ。勇気を振り絞って移動、一安心となった。でもここに2時間以上腰かけた状況になるとは思わず、寒くて持って行った上着はすべて着込んだ。
こんな状況でも歩いている人がいるのが信じられなかったけれど、何を根拠に移動してるんだろう?音聞いて屈んだって絶対電気の方が早いって。待っている間、すごい音がしてきっと近所に落ちたなということがあった。(下山時に会った人がその時たまたま話した人で、自分の退避している岩山に稲光が落ちたと言っていた。)東沢乗越に向かっても長い稲光が斜めに走り、まるで龍のようだったと言っても過言ではない。人間なんて自然の中ではちっぽけなもんで、遊ばせてもらってるんだから謙虚にしなくちゃならないんだよと思わされる瞬間だ。音が遠くなり、ある程度雲がなくなったのを確認して行動を開始した。彼女たちは大丈夫だったろうか?その他皆さんも無事だったのでしょうか?
水晶・雲ノ平方面はかなり前から晴れており槍も顔を出している。水晶稜線にはよく見ると、先ほど降ったヒョウが初雪のごとく積もっているのが確認できる。東沢と裏銀周辺のみに雲が残っている状況。寒くて固まった体をほぐすかの如く歩き始め、野口五郎の頂上は18時となってしまった。野口五郎小屋を通過したとき警備隊の人に呼び止められ、これから烏帽子に向かうのでテント代は明朝払う旨を電話で伝えてくれと言われ、烏帽子小屋に連絡する。ヘッデン使えばゆっくり行けばどうにかなるとも言っていた。立場があるので仕方ないかもしれない。丁寧な語り口でも、事故を誘発させることを助長させるような指導はどうなのかと思ってしまった。結果、緊張感も切れ足も重く正直烏帽子まで行きたくない。申し訳ないが途中で幕営させてもらった。
/29
今日も朝はド快晴、三ツ岳を下りコマクサ群生地を越え、小屋前にザックデポし烏帽子岳の往復に向かう。この稜線は割と通っているが烏帽子Pは久しぶりだ。この庭園チックなところがいい。ニセ烏帽子側から見るととても男前だ。同じ雰囲気なら燕岳よりもいいと思う。頂上は貸し切り、時間があるときにここでゆっくりしたいものだ。薬師・立山が素晴らしく、中腹の樹林の感じも最高だ。四十八池は次回にお預けで下山開始する。久々のブナ立、やっぱりすごかったけれど、登ってくる人の数が多いのに驚かされた。何回登り待ちしたか?バス便復活と東京から直通夜行バスもできたことが影響してるんだろう。中間で警備隊の人に出会ったので聞いてみると、理由はわからないが今日は多く駐車場も満杯、タクシーも大行列だったそうだ。
汗だくになって笠新道よりも急な下りを濁沢に着くと、白浜に来たんじゃないかくらい真っ白な河原がきれいだ。丸木橋は設置されていて、なくても平気なイメージがあったけれど、土手の高さがルートに復帰できないくらいの高さになっている。昔、こんなんじゃなかった気がするんだけど…流れる水も常に洗堀されているようで白く濁っている。不動沢のつり橋を渡ってから日陰で休憩、相乗りできる人が来ないか待っていると2人来たので先行してトンネルを抜けた。ダム上でタクシーと接触、3人なら一人800円と言われ当然のように二人を誘い、了解を得て七倉にたどり着いた。このうちの一人が先日の雷の時に会った人で、16時半には野口小屋にいたらしい。博打だ。大町温泉で風呂にはバスまで時間があるので久々に七倉山荘で入浴したが、お客がひっきりなしに入ってくるためずっと混雑した状態で落ち着かなかった。もう一人一緒に乗ってきた方は女性で、女性風呂は全然そんなことなかったらしい。バスの時間まで3人で談笑し、女性は新宿直通、男性は大町温泉、私は大町駅から各駅の旅とそれぞれ帰宅の途に就いたのでした。松本の『どんぐり』に行けて自分は満足です。
山で関係してくださった皆様、どうもありがとうございました。
帰宅後、どうしようもない膝痛に苛まれているのは言うまでもありません。
そして1週間後、コロナにも罹患し、その休み最中にこの紀行文を作っています。
皆さん体、ご自愛ください。
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