埋文事業団ではまず、昨年出られなかった二回分の講座の資料を受け取り、展示室の企画展等を見る。企画展ー「奈良三彩に見る古代の上野」では、一昨年発掘された東吾妻町四戸遺跡出土の奈良三彩短径壺のほぼ完形に近いものを中心に、冬至基調で関東ではあまりたくさんでない奈良三彩や唐三彩の陶器や陶器片等を見る。平安時代初期には中国の青磁をまねた緑釉に変わっていったらしいが、奈良時代では山王廃寺や上野国分寺跡などの寺院遺跡やお墓の副葬品、骨臓器、祭祀などに使われたようだ。沖ノ島の祭祀遺跡からも出ているという。企画展とは別に常設コーナーでは今回の講座のテーマである上白井西伊熊遺跡の瀬戸内技法の石器製作関連の出土品が展示されており、講演の後、講師で学芸員の関口氏により、展示品の石器製作過程の接合を示した資料の解説もあった。通常の石刃技法では縦の剥離で直線的な石刃を作るが、瀬戸内技法では横の剥離で打面調整をして翼状剥片という曲線を持つ剥片から局面を持つ石刃を作成することがわかる展示だった。なるほどーーそうやって作るのかーーすごく熟練を要するこの石器製作を行った人々はやはり西日本のどこからかやってきたのだろうか?石器は5千点も出土したが接合状態から大きな母岩が五個から多くて10個くらいで、おそらく短期的な滞在(数日から1週間)の間に石器づくりを行ったのではないかという。石器づくりの技術が西日本のそれとあまり変わらない制度なので、技術だけが伝播したのではなさそうだという。グループで移動してどこからか関東まで来たのか――その背景は不明なことが多いらしい。瀬戸内技法による國府方ナイフは関東でも見つかっているがこうした石器製作址はここが初めてらしい。
写真1)埋文センター近くから見る榛名山
写真2)東吾妻町出土の奈良三彩短径壺
写真3)上白井西伊熊遺跡出土の瀬戸内技法を示す石器接合資料資料2は打面調整された翼状剥片を見ることができる(左端の両側が調整されている)
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