11月26日（日）古市古墳群と国府遺跡めぐり

昨日の弥生文化博物館の展示と講演に続き、今日は近つ飛鳥博物館の展示と講演のために、7時前、宿泊地の西田辺から天王寺経由で、近鉄長野線に乗る。時間があるので午前中は古市古墳群などをめぐることに。7時半ころまず古市で下車し、ロッカーに荷物を預け、レンタサイクルが9時からなので、土師ノ里駅に戻り、まず国府遺跡まである予定。しかし駅を出てまず鍋塚古墳が目の前にあり、その墳丘に登って撮影してからこう遺跡に向かうために交差点を渡ると駅駐輪場があり、レンタサイクルが目に入り、訪ねてみると今でも借りられるというーー。いったん国府遺跡まで歩いて往復してから借りようかとも考えたが、遺跡の数が多いために、今回は自転車で極力多くの遺跡を回ってみようと思いなおし、借りることにした。古墳巡り用に電動サイクルとなっており（普通のママチャリもある）、一日500円、別のステーションに返却の場合（乗捨てという）、＋500円。まず駅からすぐ見える大きな市野山（允恭天皇陵）古墳の周囲をめぐり、8時過ぎ続いて国府遺跡を目指す。遺跡手前で志貴県主神社の石碑が目に留まった。「国府」遺跡というくらいなので、この付近には古代の国府があったらしい。藤井寺市観光サイトによれば
「国府遺跡は、旧石器時代から中世に至る集落遺跡です。大正6年に日本で初めての本格的な発掘調査が実施されて以来、縄文時代から弥生時代の人骨が計90体検出されています。また、飛鳥時代には衣縫廃寺（いぬいはいじ）が創建され、塔心礎（とうしんそ）は現在でも史跡内に残っており、国の史跡に指定されています。その名からも連想されるように奈良・平安時代には河内国府が設置され、河内国の政治的中心地であったと考えられています。」
とある。私個人は瀬戸内技法と関連する「国府型ナイフ形石器」が出土した旧石器時代の遺跡と思っていたが、その旧石器時代の遺跡から多数の人骨の出た縄文・弥生時代や河内国国府と推定される古代・中世の集落遺跡など長期にわたる人々の歴史が刻まれた遺跡だった。著名な遺跡のちに立つことができて感激し、これから津堂城山古墳を目指す。国府遺跡のすぐ近くに「国府八幡神社」があり、その裏手に「宮の南古墳」がある。巨大古墳はすべて天皇陵墓私邸で中に入れないが、ここは指定外なので中に入れるー削られて墳丘はよくわからないが、允恭天皇陵の倍塚らしい。津堂城山に向かう途中、思い直してすぐ目の前に見える「仲姫命陵古墳」に立ち寄る。大きすぎてどこから近づくことができるかわからないので適当にはして接近、ぐるっと回って解説看板のある所に出て、引き返して長尾街道に戻り、西名阪自動車道、藤井寺市役所を通過して、津堂城山に出る。なにか市民がお祭りをしているらしかったが、あまり時間がないので話を聞くことなく、ひとまず古墳の解説板のところまでぐるっと回り、神社のある場所から中に入る。ここは天皇陵に治定されていないので、墳丘を登ることができる。古市古墳群で最古で4世紀後半と考えられ、二重の堀や石葺きの外側堤、造出しの他、水鳥や家形など多数の形象埴輪が出土、宮内庁の陵墓参考地にも指定されているようだ。墳丘の最上部の樹木の生えている中に作があり、そこだけが入れないようになっていた。大阪府や藤井寺市により一部の発掘調査は行われて、古市古墳群の研究に多くの資料を提供している。ガイダンス館には、円筒埴輪や衝立型埴輪などごく一部の埴輪の現物があり、また陶芸家が復元した水鳥埴輪やその他の出土遺物の写真、主体部、長持ち型石棺の図面や明治時代の坪井正五郎による調査の写真などが展示されている。世紀には１０時開館だが、今日はイベントがあるためか、関係者がやってきて開けてあったので、これ幸いと中を見学できた。さらに雄略陵古墳（丹比高鷲原陵＝たじひのたかわしのはらのみささぎ＝宮内庁治定）まで足を延ばす。直径76mの円墳で堀の中に浮かぶ島のようだ。石碑からさらにぐるっと回ると宮内庁の看板のある施設があった。ここで9時半を過ぎたので急いで藤井寺市の考古展示のある生涯学習センターに向かう。途中「葛井寺」があり、7世紀代の有力者の葛井氏の氏寺で、乾漆像「千手観音座像」は国宝に指定される優品らしく、来年はじめの東博の特別展で展示されるとお知らせが出ていた。すぐそばに延喜式の式内社「辛国神社」があり、渡来氏族と深くかかわる神社らしい。葛井氏の配下にあった渡来氏族なのかなーー？？
　10時前にようやく生涯学習センター（アイシュラホール）に到着し、國府型ナイフ形石器に関連する旧石器時代の様々な石器に始まり、京大所蔵の縄文のけつ状耳飾り、土器やその他の縄文装身具、続いて弥生時代の土器や石器、国府遺跡出土の弥生時代の銅の矢じり、抉り入り片刃石斧、古墳時代の土師器や須恵器などが展示されている。古墳時代の展示は津堂城山古墳を中心に、水鳥型埴輪などの形象埴輪や土師ノ里8号墳出土の鉄製品などが展示されていた。また遣唐使として、中国でなくなった「井真成」の墓碑の特別展があり、石製墓碑が故郷に戻ってきたということらしい。また大量の鉄製武具・葺きが出土した野中古墳の出土品のごく一部が展示され、発掘した大阪大学に出土品は所蔵されているようだ。このように藤井寺市地震が発掘したのは小さな古墳など限られているが、関連出土品を精いっぱい展示し、あとは写真ゃ図面解説などで補っている。10時半前に生涯学習センターを出る。この建物は「アイシュラホール」と名付けられ、巨大な「シュラ」の形をしている。シュラとは巨石や丸太を運ぶための道具で、藤井寺市の三塚古墳の集合から大小二つのシュラが発見されて話題になった。発掘した大阪府は建設準備中の風土記の丘（近つ飛鳥）に展示することを決定し、返還を要請する藤井寺市の市民は反発したが、最終的に小さいほうのシュラが市立図書館で大阪府の貸与という形で展示されているようだ。図書館は10時開館で今回は行く暇がなかった。シュラは前回近つ飛鳥に行ったときにみているはずだが、今回は見る余裕がなかった。岡ミサンザイ古墳（仲哀天皇陵）に立ち寄り、最後に誉田山古墳（応仁陵）に向かう道すがら、展示にあった野中古墳と近つ飛鳥でかつて見て感動したアリ山古墳に立ち寄る（いずれも墓山古墳と応仁陵の培塚）。野中古墳は比較的大きく、野中神社が建てられており、武具や農具だけでなく、大量の渇石製模造品なども出ている。アリ山古墳は出土品は有名だが、現在古墳はかなり荒れ果てて、資材置き場の裏に置き去りにされ、薮化している感じ。応仁陵（誉田山古墳）の手前にある応神天皇を祭神とする誉田八幡宮に入ると、七五三の行事で巫女さんが舞を舞っていた。八幡宮からは応仁陵に向かって参道があり、参道の先には「放生橋」があり、橋の前に作が設けられてそれ以上は進めない。橋の向こうにさらに塀と柵が見える。今回の古市古墳群巡りはこれで終了、しかしその後急に自転車が不調でペダルが回らなくなり、何とか這う這うの体で古市駅まで移動し、駐輪場のレンタサイクル受付に返却した。なぜ急にペダルが回らなくなったのか原因はわからない。予定より時間がかかってしまったので、急いで喜志駅まで移動し、タクシーで近つ飛鳥に。
写真1（国府遺跡）
写真2（津堂城山古墳の水鳥型埴輪＝生涯学習センター）
写真3（誉田山古墳＝応仁陵）

コメント

k-yamane

RE: 11月26日（日）古市古墳群と国府遺跡めぐり
hirokok510さん、こんばんわ。
大阪へようこそ。古墳巡りや天皇陵巡りをしていると
関西在住のアドバンテージを感じます。
子供の頃は感じなかった古市古墳群の多様さも、
今になって興味がふつふつと。
放生橋も昔は普通に通れていたらしいです。
このあたり狭い道が多いので電動アシスト自転車で
回るのがもっともよいですね。お疲れ様でした。

hirokok510

RE: 11月26日（日）古市古墳群と国府遺跡めぐり
k-yamane様、ありがとうございます。狭い範囲に密集しているので、歩いてみたかったのですが、午後から博物館に用事があったので、チャリで回ることになりました。関東でも天皇陵こそありませんが、古墳はどこでもあります。東京や神奈川の大都市圏の古墳の多くは消滅していますが、それでも海老名や三浦半島などに前期古墳もあり、千葉には出現期をはじめ多くの古墳があり、群馬県には１万に上る古墳があるため、古墳県を標ぼうしています。ヤマト王権と各地の有力者との関係を解明する手掛かりがあるというわけです。それでもわからないことだらけであることには変わりありませんがーー