|
|
|
写真2）古代の金津の製鉄遺跡（企画展は写真撮影不可なので、古代の製鉄完形の展示写真を２，３に掲載）
写真3）奈良・平安時代の官営製鉄遺跡推定図
新潟の史跡古津八幡山 弥生の丘展示館で開催されている邪馬台国の時代５「柏崎・上越・頸城の世界」の展示解説があるので、出かけてみた。越後湯沢あたりの山は積雪量が増えているように見えたが、新潟や新津あたりではさほど増えてはいない様子。しかし新潟駅では吹雪というほどではないが、雪が降っていた。今回は信越線の矢代田駅で下車し、バスで古津八幡山（美術館植物園前バス停下車）にでる。展示館の前は相変わらず積雪があり、除雪された踏み跡のような道を進んで展示館に入る。
今回の展示は2015年度の「邪馬台国時代１―北陸と会津を結んだ古津八幡山―東北南部の世界」に始まり、「2．縄文のある弥生土器―阿賀北の時代」。2016年「３．古津八幡山のころの信濃川右岸の世界」「４．胴・信濃川左岸の世界ー六地山遺跡里帰り展」につづく五回目に当たる。私はたぶん2の「阿賀北」あたりから見はじめ、以後この展示の続きを見るためにこの展示館に通っている。新潟に通うのは、新潟の山を愛していたからーー飯豊連峰・妙高山・角田山周辺・守門岳・粟ヶ岳・八十里越え・宝蔵山・白山・金城山・八海山・越後駒・巻機山・御神楽山・御前ヶ遊窟ーー懐かしい山々、一部は自転車でも走った。足を痛めてから遺跡歩きを主とするようになり、遭難しかけた御前ヶ遊窟の近くを流れる柴倉川が流れ込む阿賀（野）川を介した新潟と会津の交流の歴史に興味を持ち、古津八幡山の展示を手始めに、県の埋蔵文化財センターやや新潟市文化財センターにも通った。北陸や畿内、中部高地との関係や日本海交流、北海道などの続縄文・擦文文化社会との交流などなどと会津を通した東北社会との交流ーー。阿賀野川や信濃川などの各水系と港・水運、砂丘列や潟湖、新潟平野などの低湿地の地形の変化など、旧石器時代以来、気の遠くなるような長い歴史の中でーとりわけこの邪馬台国時代にこの「越」の地域はどのように生き抜いてきたのかーー思いを巡らせる。
展示の入り口には、当時、北部九州を中心として交流していた伽耶地域の金海会峴里＝フェヒョンリ貝塚(金海貝塚)で発見された近江系の土器に注目した。北部九州のものが大半だが近江系土器の存在は当時伽耶諸国は北部九州地域のみならず、近江を通して日本海側の地域との交流もあったことを示唆していると展示は主張している。また北部九州の弥生後期前半の下大隈式土器が柏崎市の開運橋遺跡からほぼ完形で出土し、島根県の隠岐諸沖合の沖合からも引き上げられており、この時代に伽耶地域と北部九州―隠岐諸島ー柏崎あたりまでは会場を船が行き来していたことを想像させる。柏崎平野を流れる別山川流域は湿潤な沖積地が広がり、弥生時代の遺跡が多数見つかっている。弥生時代中期に別山川左岸の下谷地遺跡、萱場遺跡、海岸砂丘上の小丸遺跡などは、早くから稲作を開始した小松式土器を持つ八日市地方遺跡などの北陸の集団が柏崎にやってきて水田を開いたと考えられている。中期には北陸系のみでなく、中部高地や会津の土器も出土するが、後期になると北陸系に一本化する。
柏崎平野の遺跡
１）下谷地遺跡（柏崎市吉井）は柏崎の弥生中期後半の典型的な集落遺跡で、国指定史跡となり、出土品は県指定を受けている。出土土器の9割は小松式土器で、中部地方の栗林式土器は1割に満たない。ほとんどが外来系土器という珍しい土器構成がこの時代のこの地域の特徴らしい。お墓は四隅が途切れる方形周溝墓と土坑墓で居住区との境がないのが特徴。様々な石器が出土し、この時期はまだ鉄器化は進んでいなかったようだ。鉄器が出現するのは弥生後期・上越市裏山遺跡や古津八幡山遺跡などだ。また緑色凝灰岩製の管玉づくりが盛んにおこなわれていた。
２）萱場遺跡（柏崎市吉井）：下谷地遺跡の200m東側の沖積地の微高地にあり、周溝墓や環濠のみぞと思われる遺構や石鏃類の他、碧玉製管玉の未成品などが出土。
３）小丸山遺跡：柏崎刈谷原発建設時に発見され、下谷地関の北西3.5�劼旅喇雄週崗紊砲△襦Ｆ貶源�代から古代までの遺跡が検出された。弥生中期後半の土器は9割が小松式、1割弱が栗林式で、下谷地遺跡の同時代と同じ構成。玉造関連遺物も出ている。
４）西谷遺跡・刈羽貝塚（刈羽郡刈羽村）：別山川左岸の手崎丘陵周辺に立地し、1990・91年の前谷地川改修工事で発見され、1952年、八幡一郎により発掘調査された刈羽貝塚と同じ遺跡とみなされている。環濠など丘陵上に集落があり、すそ野の低地からは水路や水田跡が検出されている。弥生時代後期から古墳時代早期まで北陸系の土器が主体。丸木舟の一部や田下駄、杓子なども出ている。玉造関連遺物や鉄器一つが出土。
４）開運橋遺跡（柏崎市橋場町）：越後線西中通駅より1�辧∋�石川河口から2�匸緡�の川岸にあり、開運橋の付け替え工事中に川底から弥生時代後期の土器や平安時代の須恵器などが出土、弥生後期の土器は北部九州の下大隈式土器。
高田平野・妙香山ろくの遺跡
弥生時代の鉄器が最も多く出土する地域。裏山遺跡で方形鋤鍬先６、鉄鏃3,ヤリガンナ１など11点
下馬場遺跡：鉄鏃1、針状鉄製品１、など6点
上ノ平・矢代山遺跡：刀子１、不明破片４、土坑部副葬品２など
１）裏山遺跡（上越市岩木：上信越道上越ジャンクション建設時に発見され、高田平野西側丘陵上にあり、弥生時代後期の高地性大型環濠集落が検出された。最高地点92m、比高70m、遺跡保護運動がおこったが最終的に破壊されて消滅した。丘陵頂部北側から集落と土坑、斜面から環濠の溝が検出され、鉄製品や磨製石斧、環状石斧、石鏃や砥石の他、玉作関連遺物が出ている。土器は北陸の法仏式後半が多く、信州系、近江敬も出ている。鉄器は上記の通り。
２）下馬場遺跡（上越市下馬場）：同じ高田平野西側丘陵上に立地し、北陸新幹線上越妙高駅から2.3�卍�南西にある。1997年、上信越道路建設時に発見された高地性集落遺跡で、竪穴住居址、土坑が多数検出され、法仏式土器や続縄文土器も出土し、東北。北海道と交流があったと考えられる。玉作関連出土品や鉄製品があり、続縄文人は鉄を求めて南下してきたと考えられる。
3）国史跡 斐太遺跡（妙高市宮内他）：越後トキめき鉄道北新井駅から2�卆召猟禝嵶誉菽蕊瑤卜�地する高地性集落、標高60〜145m、低地との比高差40m以上、5つの居住区に分かれ、南北800mほどの東日本最大の高地性集落。確認された以降は竪穴住居跡、環濠、土坑、溝など。住居址は130以上、埋没以降も含めると200以上になると考えられている。発掘で全容が判明している住居を見ると隅丸方形で柱穴は4つ、2つ、柱穴の見られないものなど様々らしい。矢代山B地区の二基の土坑からは鉄鏃が1点ずつ、そのほかの土坑からは土器や鉄器、石製品、ヒスイ製勾玉未成品などが出ている。土器は北陸系の法仏式、月影式のほか、中部高地の箱清水式、東海系も出ている。近くにある釜蓋遺跡の空白期が斐太遺跡の繁栄期なので、両者をセットとして消長を考えるようだ。鉄製品の出土数は少ないものの、鉄製品と関係する砥石や軽石が出土することから、ある程度鉄器化が進行していたと推定しているようだ。
矢代山墳丘墓群：斐太遺跡の墓域とされている。矢代B地区西側の尾根部に立地、2003〜2005年の調査で墳丘墓の候補地は20か所以上。最高所のA2号墳丘墓は墳丘は削平されていたが、平面台形状で、南北18〜20m.、東西14〜17mくらい。、C6号墳丘墓の墳頂には4基の墓壙があり、近くの尾根には住居址が検出され、一帯は高地性集落と墓域が隣接していた。出土する土器から、時期は弥生後期後半から終末期とみられ、集落と同時期。A2号墳は同時期の墳丘墓としては県内最大規模の台状墓。
国史跡 吹上遺跡（上越市大字稲荷字吹上）：北陸新幹線上越妙高駅から南西1.5�辧∪津沈鄒霈�地の先端部の河岸段丘上に立地。地方道 上越新井線の建設前に発見され、弥生中期から古墳時代前期の多くの遺構が出土し、その調査と詳細な研究から出土品は基準資料となり、2015年に県指定文化財となった。
土器構成は中期中葉で北陸系8割、長野系2割弱、中期後半は長野系7割と逆転するが、後期になるとほぼすべて北陸系となる。中期中葉に北陸集団が農耕技術を携えて移住し、玉作なども行うが、中期後葉には長野系集団がやってきて玉作は衰退するが、大型方形周溝墓が築かれる。石包丁、大型蛤刃石斧、銅鐸形の土製品や石製品、銅矛形土製品などが出ている。後期になると北陸系集団の墓域へと変化している。
国史跡 釜蓋遺跡
上越妙高駅より0.4�卆召寮津沈鄒霈�地末端の沖積地上にある。弥生時代後期から古墳時代初頭の大規模環濠集落と判明。環濠空白期が斐太遺跡の環濠建設期と同時期であることから、吹上・釜蓋遺跡（環濠構築以前）−斐太遺跡ー釜蓋遺跡（環濠掘削）と集団の移動が推定されている。土器以外に、勾玉などの玉作関連品、環濠ないには、竪穴住居、掘立柱建物、平地式建物、の可能性のある遺構や土坑などがある。遺物は土器以外には、玉作関係遺物、建築部材、鋤鍬の柄、槽、フイゴの羽口などがある。土器は北陸系が大半で、東北系、長野系がわずかにある程度。
今泉釜蓋遺跡：釜蓋遺跡の墓域で方形周溝墓17基、土坑墓、溝などが確認されている。
糸魚川の弥生時代の遺跡
1）後生山遺跡：糸魚川駅から0.9�卞酖譟�姫川下流右岸の河岸段丘上に立地。標高４2m、低地との比高差30m。1985年、北陸自動車道路工事用道路建設などにおいて弥生時代の遺構・遺物（竪穴住居跡・土坑・溝など）が糸魚川市教育委員会により発見された。方形と円形の手竪穴住居で3号住居は攪乱を受けていたが、ほぼ完形の弥生土器が18点出土、弥生時代後期中葉の基準資料となった（猫橋新式・法仏式）土器以外には玉作関連品、石器、石製品、刀子などがある。玉作を主とした高地性集落とされる。
今回の展示では遠距離交易の問題は十分展開できなかったが、鉄・碧玉製管玉・ヒスイ製勾玉・コメ・毛皮などが交易のカギを握る物資と推定されているようだ。この遠距離交易は、新潟地域を中継地点にする朝鮮半島・畿内・東北・北海道―そしてのちの時代には中国のガラス製品ーの交易の中継地点として、新潟県域の港は栄えたのではないかと思われる。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する