2017年10月13日に特別史跡(=史跡の国宝)に指定された加曾利貝塚の春祭りで、貝塚のメインの会であるイボキサゴ料理など面白そうな企画満載のお祭りがあると聞いて出かけてみた。9時45分から都賀駅から加曾利までシャトルバスが出るが、私は9時過ぎに都賀駅ーモノレール桜木駅で下車し、貝塚まで歩く。早めに到着して先に会場の様子を見ながら博物館の前に来た貝塚の貝層展示室を見ると、数年前にここを訪れて見学したことを思い出す。イボキサゴやハマグリなどの貝層を見て、奥のほうに謎解きクイズラリーの紙が貼ってあった。博物館の新しい展示を見る。数年前に見た時は展示内容は立派だったが、1966年に開館した当時から変わらないやや古ぼけた展示内容だった。昨年特別史跡となって、展示内容を新しいパネル展示を入れて再編成途上にあるようだ。特に特別史跡の指定に当たっての新しい発掘調査で過去=昭和39年の発掘調査個所や住居跡を確認し、集落形成過程を解明しようとしている。またこれまで明らかになっていない晩期の集落の様子を探るべく現在発掘調査を継続し、研究途上にあるらしい。県教育委員会からこの特別史跡指定のために千葉市に移動した文化財担当の西野氏によれば、加曾利集落形成時期の層から東北や西日本など他地域との交流を示す土器が出ており、また集落形成前に人が暮らした形跡がないところから、この遺跡は他地域から移住してきた人々が作ったものだという。この辺りはまさに研究中のところだ。縄文時代も中期を過ぎてから、この辺りが住みやすい場所に代わってきたというのだろうか?縄文海進のピークを過ぎ、海岸線も地形も次第に変わっていくのだが、そのあたりの細かい点を研究者たちは詳細に調べ上げつつあるということか?房総半島は丸木舟出土量は全国1、多くの人々が船でやってきてはここに住み始めるということを繰り返していたのだろうか?また現在の千葉県にあたる地域は縄文海進の時代、現在の渡良瀬岳と鬼怒川の間の細い陸橋のような地形でわずかにつながった島のような陸地だったらしい。そんな大きな島にたどり着いた人々が縄文中期に入って大型の貝塚の村を作り始めたようだ。西野氏は船でやってきた人々が元の場所に帰らず住み着いたので、多数の丸木舟が残されたという説を話されたが、もともと島のような場所で多数の河川が流れ込む場所だから船による交通が列島の中でも最も盛んだったから、船が多く残されたのかもしれない。また展示では加曾利貝塚の発掘調査・研究の歴史を考古学史に残る明治20年代の発見にかかわる論争から明治40年の最初の発掘調査を含め100数十年の歴史を解説している。房総半島に開発の波が押し寄せ、破壊されていく多くの貝塚の全面発掘調査も進みつつ、加曾利貝塚を中心に保存運動と貝塚研究が絡み合う歴史の動き、そして国会での議論と国指定、そして今回の特別史跡してとその歴史がつづられている。加曾利貝塚ほど子飼で長時間真剣な議論が尽くされた遺跡はない。他の国指定史跡、特別史跡―例えばキトラ古墳や三内松山遺跡、吉野ケ里遺跡などは発掘当初からマスコミで大々的に報道され、その史跡・特別史跡指定は国会でも議論の余地がなかった。しかし100年前にさかのぼる発掘調査・研究の歴史を持つ加曾利貝塚は、そうした報道がなされることはなく、国会で議論になった。その議論のすべてが国会故に記録され、それも貴重な遺産だ。
さて、10時になり、春祭りが始まる。博物館を出て、縄文土器体験コーナー、火起こし・あんぎん編み・縄文弓矢などの体験コーナーを見て歩く。火おこしは午後にカソリンピック火起こし競争があるが、人だかりができて列があり、なかなか練習ができないまま、カソリンピック参加応募の署名をした。博物館前のメインステージでは10時半から魚の解体ショーが始まる。博物館学芸員が縄文人に扮して黒曜石(神津島恩馳島)や珪質頁岩(東北の石ーいずれも加曾利まで運ばれた)など当時の加曾利縄文人が使っていた石器で魚の解体と三枚おろしを実演、刃物の切れ味もすごいが、加曾利人が好んだクロダイの鋭い背びれで手を切ってしまわれたハプニングもあった。次のハープ演奏までの間、再び今度はクイズラリーに登録して、クイズの問題が掲示されているポイントー南北の貝層展示館、博物館内、土器体験コーナー近く、縄文かるたゲーム会場の旧大須賀邸、土器体験コーナー、船着き場跡などを回る。一周してステージに戻るとハープ演奏は終了し、子供たちにハープ体験をさせていた。土器抽選会の投票を行い、謎解きラリーの遂行、大半を回って、ステージに戻り、12時半ころ、西野氏のトークショーに参加、いくつかのなぞなぞの中で、貝塚のない県を当てる所で、山梨県は出たが、他の県は充てられていなかったので手を挙げて「奈良県」でカソリーヌの鉛筆をゲット、もう一つは山形県だが誰も当てられなかった。長野県に貝塚があり山形県にないのは不思議な感じだ。内陸部でも琵琶湖のある滋賀県は淡水性の貝塚があるようだ。長野県の貝塚も諏訪湖などのタニシとかの貝塚だろうか?トークショーも終わり、13時から土器抽選会、残念ながら当たらなかった。13時半から火起こしカソリンピック。25人が参加、経験が深くないと結構難しく、縦棒にひもをうまく巻き付けてひもが上に行かないように下向きにうまく引いて摩擦熱で火種を作り、着火用の繊維に移して風を送って火をおこすのだが、早い人は2分を切り、なんと63秒くらいで成功、私は練習できなかったのでひもをうまく引くことができず時間切れ、残念だった。2時を回り、私の予定も終了し、シャトルバスで都賀駅に戻る。予定では帰りに歴博に行く予定だったが、半日以上お祭りで会場を歩き回りつかれたので、すぐ帰宅することにした。歴博の「世界の目から見る古墳文化」の入場券をなくしてしまったので、まあいいかーーということで予定を終了。疲れました。
写真1)縄文石器で魚解体ショー
写真2)あんぎん編み体験
写真3)火起こしカソリンピック優勝者
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