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日曜日の10時半前に自宅を出発、行田駅からレンタサイクルで向かう予定だったが、観光案内所に電話してみると、さすがに連休中でチャリは出払っている。そこで予定を変えて吹上駅からバスで産業道路バス停下車、1�劼�らい歩いてさきたま古墳群・史跡の博物館へ。昼食を食べにうどん屋に入ろうかと思ったが、行列ができているのでおにぎりだけで我慢し、博物館に直接向かう。企画展の「律令国家がやってきたー交通と流通から見た奈良期のさいたま」を見学、見学後しばらく休憩し、2時から始まる展示解説を待つ。展示の概要は、HPでは
（１）藤原京の土器、武蔵へ
古墳時代終末から奈良時代までの土器の変遷を都（みやこ）の土器文化の波及の視点から紹介します。
※主な展示資料：八幡大神南（はちまんだいじんみなみ）遺跡（本庄市）から出土した飛鳥時代の土器
（２）「税金」の徴収が始まった！
地方から徴税する体制ができたころの武蔵北部のようすを紹介します。
※主な展示資料 小敷田（こしきだ）遺跡（行田市）出土の「出挙（すいこ）」木簡（複製品）
熊野遺跡(深谷市)出土の硯（すずり）、帯金具（おびかなぐ）、土師器（はじき）、須恵器（すえき）
（３）古代の「輸送業者」たち
計量具や交通用具で当時の物流を管理していたムラのようすを紹介します。
※主な展示資料：宮町（みやまち）遺跡（坂戸市）出土の「棹秤（さおばかり）」、墨書（ぼくしょ）土器「路家（読みは不明）」
光山（こうざん）遺跡群（川越市）出土の馬具（轡（くつわ））
（４）陸運・水運に関連するムラ
陸運・水運の拠点になると考えられる遺跡を紹介します。
※主な展示資料：築道下（つきみちした）遺跡（行田市）出土の土師器、須恵器、硯
下田町（しもだまち）遺跡（熊谷市）出土の馬具（木製黒漆塗壺鐙（もくせいくろうるしぬりつぼあぶみ）複製品）
（５）「国境」に住む人々
常陸国（ひたちのくに）（現在の茨城県）や下総国（しもうさのくに）（現在の千葉県北部）など武蔵に隣接する地域の国々との境目のムラの物流の実態を紹介します。
※主な展示資料： 八木崎（やぎさき）遺跡（春日部市）出土の常陸産須恵器
解説は若手の学芸員の青笹基史氏。奈良期・律令時代のさいたまを主として土器から探るという地味なテーマと断ったうえ、そこから何がわかるのかをテーマとしたという。最初に飛鳥時代（古墳時代終末期）の胴長の甕（美里町村後遺跡＝7世紀前半）を見る。この土器は都で使われていた須恵器を模倣した土師器だったようだ。青笹氏は考古学を現代の科学捜査になぞらえる。出土する様々な土器などからその時代、社会の情報を読み取る作業ーー考古学は科学捜査でいう「プロファイリング」を最も得意とするという。たとえば土器に関しては全国で出土する各時代の土器が詳細に調査され、時代順に細かく相対年代が決められている。土器が出れば、その形、文様、作り方、場合によっては原料（土器の場合は胎土など）を見ればどの時代のどの時期のどこの土器かをほぼ正確に言い当てられるという。後から質問して、縄文土器など、時代や場所の特徴がかなり明瞭なものと比べて、土師器や須恵器は特徴がさほど大きく違わないことも多いのに、縄文土器などど同様に破片を見てもおおよそどの時期のどのような土器か見ただけでわかるものか、尋ねると専門家は見ただけでおおよそわかるという。その訓練はどのくらいの時間が必要なのか、学生や大学院などの時期に身につくのかと尋ねると、一生もの――生涯勉強を続けていくものだと答えられた。
次に藤原京や平城京の時代に入ると、宮廷で使われた土師器の食器に「暗文」という先端の丸井工具で磨きをかけた後を示す筋のある土器が多くなり、さいたまの同時代の遺跡からこうした「暗文」のある土師器がでるようになる（＝本庄市八幡大神南遺跡や深谷市熊野遺跡などの出土土器が手辞されている。
次に律令時代になってからの税制度を示す木簡「出挙（すいこ）」の解説。かつては大化の改新が律令制度導入の画期と言われていたが、これは後世の日本書紀などによる脚色で、実際は7世紀末、藤原京期以降に成立したものという。展示は行田市のはずれにある小敷田遺跡の7世紀末ころの建物群跡から出土した木棺に「出挙」の文字が出ているという。「出挙」とは、春の稲作付け前に植え付ける稲を役所から借りて、利子をつけて収穫後に返すという制度で、徴税制度の始まりを示す資料という。
さらに深谷市熊野遺跡などから古代の郡家（郡役所）の役人らが使ったと考えられる帯金具、棹秤の重りなどが出ており、官庁街をなしていたらしい。
次にこうした徴税などの仕事を行うに当たっての交通網の整備があるが、古代のハイウエイの一つの河川交通に関してはに関して、行田市築道下遺跡は、元荒川付近にあり、港町の館業務などを行っている形跡がある。はかりの一種であるコップ型土器や硯などが出土、古墳時代から中世まで継続する集落で、竪穴式建物７８９棟、掘っ建て柱建物２３８棟が見つかり、そのうち１８０棟は飛鳥・奈良時代のもの。東西10間もある細長い建物群は、河川交通などの物流に関連する倉庫群ではないかとみられる。また広域流通を示す各地の土器も出ている。群馬や常陸の須恵器窯製の須恵器や、当時の最先端の須恵器窯のあった湖西窯製須恵器などが出ている。硯は須恵器を転用したものが多いらしい。
またもう一つの高速交通の馬に関しては、奈良時代の井戸跡とみられる場所から（熊谷市下田町遺跡）黒漆塗りの壺鐙（つぼあぶみ）などの馬具が出土、下田町遺跡は荒川右岸の堤防工事において発見された古墳時代から中世にわたる集落遺跡で、漆塗りの壺鐙は当時、国司や郡司などの高級官僚などの上級役人が使ったもので、武蔵国大里郡の役人が郡の巡回に使っていたものか？壺鐙と共伴する土器は8世紀前半の須恵器だった。
交通網の整備に関しては、陸上の街道整備とならんで、東山道の利根川の渡渉地点にあたる熊谷市飯塚北遺跡から、竪穴住居が奈良時代43棟、平安時代280棟、掘っ建て柱建物では合計30棟検出、緑釉・灰釉陶器の優品が出土しており、あるいは平安時代の豪族の館か、渡渉点の通行の管理を行う役人の館か？
東武アーバンクライン線の八木崎駅付近にある県立春日部高校改築時に発見された「八木崎遺跡から、常陸や下総の遠隔地の須恵器が多数出ており、武蔵・下総と常陸の国境沿いの村と考えられる。あるいは下総国の一部だったかもしれないという。
土器から見る律令時代のさいたま、地味な土器から律令時代の地方の拠点集落の生活の様子の一部を垣間見ることができた。帰りは博物館前を通る3時過ぎのコミュニティバスで行田駅まで出ることができた。
写真1）企画展入り口―古墳時代終わりごろの胴長の甕が見える
写真2）行田市小敷田遺跡出土の「出挙（すいこ）」文字のある木簡
写真3）坂戸市宮町遺跡出土の棹秤
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