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写真��大川遺跡の恵山式土器と奥に擦文土器、右に魚形石製品
写真⓷唐堀遺跡の彫刻木柱
千葉県立中央博物館で発掘された日本列島展2024が開催されており、かつ今日は関連企画として関東の発掘調査報告会が同所であるので出かけてみた。1000円コンビニで弁当を買い、7時前に出発し、千葉駅に8時15分頃到着、バス停探しに迷って8時半過ぎのバスに乗り、開館前の博物館に9時前に到着、入口に並んで開館を待つ。バス停から博物館まで結構遠いので初めはシェアサイクルを考えたが、一日博物館にチャリを停めると４千円もかかるのでバスに切り替えた。残念ながら博物館周辺にはポートはない。入って65歳以上は無料、すぐ展示室に向かう。向かおうとしてその前にピリカ遺跡のガラスケースに気づき、まずそこを見る。大きな石核と大きな石刃の接合を示す展示。ピリカ遺跡は数年前、まだ北海道駆け出しだったころ、函館から噴火湾に向かってレンタカーで走った時に立ち寄った。その時は国史跡で重要な旧石器遺跡という理解以上のものはなかったが、今回の展示を見て改めてピリカ遺跡の意義を再認識した。この地域は石器に適した頁岩だけでなく、石器にも使うメノウやマンガン採掘場まであるようで鉱物資源の宝庫らしい。確か黒曜石も近くでとれるようだ。
ピリカ遺跡は昭和53年、美利河ダム建設のための土質調査時に発見され、函館博物館により旧石器時代の石器と判定され、その後北海道埋蔵文化財センターが発掘調査を行って大量の石器を出土、業者の協力で遺跡保護が決まっり、その後国指定史跡となった。北海道は火山灰層が薄く、石器時代の層位が不確かでる問題があり、美利河遺跡ではその層位関係が良好で2万5千年前の最寒冷期から1万5千年前頃の本州でいう縄文草創期初頭―北海道では細石刃期までの石器の編年確立に貢献したという。目を引くのは巨大な石刃が接合する石核と石刃を並べた展示で、これほど大きな石刃を製作するような大きな石核など見たことがなかった。また日本の旧石器時代としてはまれな石製装身具も出土し、重要文化財で展示はなかったが写真パネルで展示してあった。
展示室に入り、最初に「わがまちが誇る遺跡」シリーズでまず北海道余市の大川遺跡、縄文時代からアイヌ時代までのお墓の遺跡ー各時代の墓制と祭祀遺物を見ることのできるすごい遺跡で初めて見た。縄文晩期以降、様々な形態の土壙墓が確認され、墓を覆う土に余市側対岸の特別な砂質凝灰岩粒を使う特殊な「大川葬法」があるという。縄文晩期には糸魚川のヒスイも多く出土し、また亀ヶ岡文化の影響で北東北とのつながりも確認されている。
続縄文時代に入ると海洋資源利用が活発になり、恵山式土器など、鉄器の導入など本州の弥生文化、古墳文化との交流も活発で北海道土器時の文化が花開いた。恵山文化と次の後北文化が共伴する墓もあり、両文化の境界としての大川遺跡も注目される。副葬品としてサハリン産琥珀玉や本州の碧玉（佐渡や島根産の可能性）やガラス玉など、広域的な交流の広がりがみられる。特に魚形石製品は初めて見るもので、思わずスケッチした。
擦文時代になるとオホーツク文化や律令国家との交流も見られ、近くのフゴッペ洞窟などでも見られるような直刀や律令官人が身に着ける帯金具や墨書土器、列島に類例のない青銅製のペンダントは北方との交易の産物か？
12−3世紀以降、アイヌ文化期に入ると土器が消滅して鉄鍋など豊富な鉄製品、絹や木綿製品、ガラス製品、漆製品などが交易品として目立つようになり、15世紀になると本州からの倭人の進出が見られた。さらに近世に入ると松前藩が交易を独占し、アイヌ交易の自由が失われてアイヌ文化は危機の時代を迎えることになるが、そのした長期にわたる時代の変化を示唆する出土品を持つ大川遺跡のすごさを実感した。
わがまちの最後は藤岡市のモノづくりと主として古墳時代・縄文時代の遺物との関係の展示でこの地域の豊富な石材があり、山間地の三波川変成帯からは結晶片岩など、縄文時代の石棒や石剣の製作遺跡の原料を提供し、また丘陵部の新第三紀系の砂岩や凝灰岩も利用された。さらに北部の低地と台地には「藤岡粘土」が採れ、埴輪生産やさらに瓦生産の拠点となった。我が家の瓦も藤岡産のものだ。藤岡市の七興山古墳（同時期東日本最大）や中期の白石稲荷山と陪塚の十二天塚からも豊富な石製品が出土、特に十二天塚の滑石製合子珍しく、東日本では初めての出土という。さらに遺跡本郷窯跡では大規模な埴輪生産が展開され、そのほか神流川流域などでも埴輪が生産されて七興山など各地の古墳に供給された。その後も埴輪や瓦生産など、古墳時代から古代を通しての一大工業地帯として活動し続けたようだ。石材や瓦生産は今日でも続いている。
新発見遺跡では北海道の美々4遺跡の海獣を模したと思われる土製品、フクロウの顔を張り付けた土器、亀ヶ岡文化の影響を受けた香炉形土器や糸魚川のヒスイを含む様々な装身具が出土、縄文晩期のお墓―土壙墓や周堤墓などが発見された。これらは新千歳空港建設関連の道路建設などにより発見されたもので、周辺には多数の関連遺跡が存在している。群馬県八ッ場ダム関連工事で発見された東吾妻町の「唐掘り遺跡」は縄文晩期の生業と祭祀遺跡でトチやクルミを加工した水場遺構の石敷きの下からは彫刻された木柱が出土、彫刻された縄文時代の木製品として真脇遺跡などに次ぐ三例目という。また本場亀ヶ岡からやってきたとされる精巧な遮光器土偶の破片や耳飾り、石棒など、興味深い出土品が多々ある。特に耳飾りの文様には木柱に施された文様に似たU字形文様が施されていて実に興味深い。
縄文の最後はさいたま市の真福寺貝塚で史跡整備のための調査により、これまで多くは解明されていない環状盛土（集落）の土層の精密な調査により、こうした環状遺構の成立過程が判明してきた。土層は全体として層を積み重ねたのではなく時期により利用した場所が異なり、繰り返し様々な場所を利用しては埋めて千年間の末に今日見る環状遺構が残されたことが判明している。また現在は水場遺構に近い泥炭層の発掘調査や中央の空白地帯の調査が継続されており、さらなる遺跡の解明が期待される。今年の11月には現地見学会も予定され、調査報告書刊行や史跡整備事業の進展に期待が高まる。
弥生時代では茨城、常陸大宮市や福島県会津若松市の再葬墓出土土器の展示がある。会津若松の墓料遺跡からは縄文晩期の集落遺跡の跡に弥生時代の再葬墓が営まれたが、同時期の弥生集落が見つからず、関東や南東北では集落が見つからず再葬墓のみが見つかるという不思議な時代になっている。茨城県の常陸大宮市の宿尻遺跡も再葬墓で 壺形土器を環状に配置した特異な再葬墓で、中には人面付土器なども出ている。古墳時代では先日、橿原考古学研究所付属博物館で見た家形埴輪でも著名な赤堀茶臼山古墳の埴輪は昭和初めに帝室博物館の後藤守一が調査を行い、初めて家形埴輪などのセットが出土して著名だが、こうした帝室博物館（現東京国立博物館）が持つ同古墳の形象埴輪と近年前橋市が調査した同地区の釜ノ口古墳（赤堀茶臼山から南に3キロ）や赤堀村104号古墳などの出土品の一部が東博所蔵赤堀茶臼山の形象埴輪に接合することが判明した。赤堀茶臼山の鶏形埴輪の羽の欠損部分と釜ノ口遺跡出土の羽の破片が接合、また赤堀村104号古墳出土埴輪片も東博所蔵の人物埴輪などと接合、前橋市の文化財課が慎重に研究した結果、大きな成果を上げた。展示では東博所蔵品のレプリカと破片の接合関係を示す展示があり、大変面白かった。このほか、仙台市の古代寺院や瓦生産窯、平塚市の相模国庁推定地周辺の六ノ域遺跡出土の鏡や墨書、刻書土器など、また奈良市の菅原遺跡では行基ゆかりの多宝塔の可能性のある円形建物遺構が注目された。近世では栗橋宿関連遺跡群に関する展示があり、これら多くの関東の展示に関して、10時からの講演会で報告があった。午後一番では今回の列島展全体の見どころ解説もあり、また地域展として千葉県大多喜の台古墳群出土の鏡の展示もあり、講演会前、昼食後、講演終了後に見学し、一部をスケッチなど記録したが、見どころが多く時間が足りないのはやむを得なかった。台古墳群に関する講演会に再度参加する機会があれば、もう一度見学する機会があるかもしれない。
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