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写真��鉄滓、羽口、砥石など同遺跡出土品―大きいのは金床石
写真⓷築地塀、片庇廊周辺出土須恵器、須恵器転用硯など
展示替えなどで休館していた安土城考古博物館を久しぶりに訪問。古代国家と鉄という展示と講演のためだ。
新横浜始発の「のぞみ」で名古屋駅で「ひかり：に乗り換え、米原で東海道線各駅に乗り換え安土駅へ。安土駅ではいつものようにレンタサイクルを借り、博物館へ。開館したばかりの博物館に入館し、お目当ての特別展示を見るが、なんとガラスケース一つだけだった。館内の展示替えで企画展のスペースが亡くなったようだ。今日は一日じっくり見学しようと思ったが、見学はすぐ終わりそう。とりあえずガラスケースの青江遺跡の鉄滓 や鞴の羽口などの遺物を見る。いくつかスケッチとメモを書いて、常設展示も見学する。
青江遺跡は奈良時代、藤原仲麻呂が近江国の長官を兼ねていた時，国庁の南側に設置された築地塀のある片庇廊遺構において鍛冶に関連する鉄滓や砥石、鞴の羽口、金床石、鉄器破片が見つかったようだ。展示がガラス一ケースだけだったので、少し常設展示を見てから、10時から滋賀県文化財保護協会によるオンライン講演「弥生時代の青銅器」を聞いていた。博物館のカフェで食事をしながらさらに高久健二氏のＡＣＣのオンライン講座「古墳時代の対外交流」を聞きながら午後の講演時間まで待つことにした。
日本でいつごろから製鉄が始まったのかは諸説あるが、今のところ6世紀中ごろ以降と考える人が多い。弥生時代に始まったと主張する人もいるが、まだ明確な証拠はない。なぜ6世紀かというと、それまで倭国各地の人々は朝鮮半島にわたり、主として伽耶地域（特に金官伽耶）や新羅、馬韓、百済などから鉄素材を取り寄せ、日本列島に持ち込んで鉄器を製作してきた。製鉄技術は今でいう「国家機密」であり、たやすく得られる情報ではなかった。しかし6世紀に入ると新羅、百済は伽耶地域を領有しようと南下政策をとり、最終的に金官国は53２年に新羅に滅ぼされ、隣の大伽耶国も562年に新羅に併合され滅んだ。そうなると倭国は鉄素材の入手が困難になり、自国での鉄生産に取り組むことになったが、千度以上の高温を出す炉の開発には困難を伴った。韓半島の製鉄炉は高さ3mもある巨大な円筒形の炉で大きな鞴を使って効率よく鉄を生産することができたが、6世紀に現れた倭国の製鉄炉は箱型炉といって高さも1mほどしかなく、大量生産することができなかった。現在わかっている最古の倭国の製鉄炉は岡山県吉備地方の千引きカナクロ谷遺跡などで、初期は半島・大陸と同様の鉄鉱石を原料としたが、次第に砂鉄を原料にする倭国独特の製鉄法を確立していった。製鉄法が軌道になるまでは苦難の道だったようだ。
出雲など砂鉄から製鉄する地域が大半であるなか、近江では鉄鉱石による製鉄が軌道になるようだ。当初、高島地域などで鍛冶炉が多く見られ、製鉄炉が現れるが、そのプロセスはまだ未解明な点が多いようだ。近江の製鉄技術は韓半島の製鉄技術との共通性があり、その系譜をたどることが可能かもしれない。穴太遺跡、廃寺など多くの渡来系集団の痕跡が残されている。渡来人の中には鉱山技術者もいて、近江地域の鉄鉱石の鉱脈を調査したらしい。長浜市などに「鉄穴」遺跡が見られ、1983年、葛籠尾崎湖底遺跡から人頭大から小指大の鉄鉱石が43�埆佚據∧�析の結果、鉄鉱石は「焙焼鉄鉱で、高品位の流通品であった。
続日本紀の天平宝字6年2月条には、当時の権力者たちが、鉄鉱石原料供給地としての「鉄穴」を争って探した様子が記述されている。
午後の講演会では、弥生時代中期初頭からの倭国における鉄素材輸入の始まりから古代の青江遺跡やそれ以降の近江の製鉄の歩みを解説した。倭国の鉄、製鉄に関してはまだまだわかっていないことが多い。
参考：近江国庁（文化財オンライン）
昭和四十八年に指定した範囲では、国庁域西端が十分に把握されなかったが、昭和五十五年度の発掘調査により、西端の溝が確認され、さらに五棟の掘立柱建物の遺構も検出された。
当該部分の北と南は、切土により一段低くなっていて、遺構の残存状況が良くないと推定されるので、わずかに残された当該部分を追加指定し、名称を変更して保存を図るものである。
大津市瀬田地区に所在する近江国庁跡は外郭と築地で囲まれた内郭の二重構造からなり、内郭の政庁区からは瓦積基壇の正殿、後殿、脇殿が検出され、昭和４８年に史跡指定された。惣山遺跡は国庁跡の南東約５００ｍに位置する大型倉庫群で、国庁と一体となって機能した重要な施設であることから平成１０年に追加指定された。
青江遺跡は、国庁跡の南門跡からは、真南へ約３００ｍの地点、丘陵の平坦部に立地する。築地に囲まれた中に掘立柱から礎石建物へ建替えられた３時期の建物跡を検出した。このうち礎石建物は南北２間、東西７間以上で北辺に１間の廂が付く東西棟建物である。国庁の南正面に位置し、計画的な配置のもとに建てられたもので、国庁および惣山遺跡の建物と同じ飛雲文の瓦が使われていることから、国庁との深い関わりが考えられる。国司館の可能性も考えられ、平成１２年に追加指定されている。またその後の確認調査で、史跡指定地の西側で先に検出した建物の延長部分を、指定地北東側からは新たに築地跡を検出し、平成１７年に追加指定している。
その後の確認調査において、指定地南西約２００ｍの位置で、南北９間×東西２間の掘立柱建物を検出し、国庁と同じ飛雲文軒丸瓦、「天平勝宝」とヘラ書きした土器、そして文書行政に必要な硯などを出土した。建物の桁行規模は国庁関係で検出された建物の中では、政庁脇殿につぐものである。建物規模、出土遺物の種類から、今回検出した遺構は近江国庁を構成した官衙群の一つであり、重要な位置を占めていたものと考えられる。このことから青江遺跡には「国司館」的な施設ばかりではなく、官衙も多数存在していたと考えられ、国庁の成立や変遷を考える上において重要である。よって、今回発掘調査で確認された建物跡など追加指定し、保護の万全を図ろうとするものである。
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