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この時期、ササン朝ペルシャ周辺ではミトラ神、ギリシャのヘリオス神などの太陽神が存在し、それらの関係はよくわからないが、インドで生まれたブッダがそうした太陽神と一体化しているのがわかる作例だろう。日輪の輪に鋸歯文が一周し、そうした画像は後々も様々な形で現れ、弥勒仏や日本に伝来して以降も、仏像の頭部の「頭光（円光、放射光など）」や光背などに引き継がれているようだ。こうした鋸歯文が太陽の光をあらわしているとは、初めて知った。古墳時代などの日本列島では鋸歯文は「辟邪」の印とされていたようだが、これは中国で太陽神的なシンボルと中国の「辟邪」イメージが合体したものか？三角縁神獣鏡の三角文も同様だろうか？
またブッダと合体したスーリヤ神の下には4頭の馬があり、こうした画像は様々な形でガンダーラ周辺などで現れる。さらにバーミヤンの壁画像やガンダーラのミロク像などを見ても「交脚倚座」という遊牧民の王の座り方に由来するといわれる姿勢をとる。これはガンダーラ周辺を支配した遊牧民の「クシャーン人」の文化を反映しているのだろう。こうした仏像は6世紀の北魏あたりまで見られるようだが、その後中国風などに変わっていくようだ。
何といっても、今回の展示のハイライトは、破壊されたバーミヤンの壁画の復元描き起こし図だ。これまで取られた様々な写真画像と1960〜70年台に宮治昭氏による描き起こし図や京大や龍谷大学など様々な調査隊が残した測量図などを参照しながら、西大仏石窟壁画を復元、描き起こしたのは、京都市立芸術大学の正垣雅子氏で、壁画全体が描き起こされたのは世界でも初めてで、貴重な学術資料であるとともに、アフガニスタン復興につながることを関係者は期待しているようだ。
神の名のもとに人々は連帯するが、同時に神の名のもとに殺しあってきた。こうした人間界を太陽神はどのように受け止めるのだろうか？
（参考：三井記念美術館HP）
この展覧会は、「中央アジアに位置するバーミヤン遺跡の石窟に造営された、東西２体の大仏を原点とする「未来仏」である弥勒信仰の流れを、インド・ガンダーラの彫刻と日本の法隆寺など奈良の古寺をはじめ各所に伝わる仏像、仏画等の名品でたどります。なお2001年にイスラム原理主義組織・タリバンによって破壊された大仏の壁画を、調査時のスケッチと写真から作成した再現図を初公開します。」
とあり、
「展覧会の趣旨」
「バーミヤン遺跡は、アフガニスタンの中央部を東西に走るヒンドゥークシュ山脈の中にあります。この地域は、古くからユーラシア各地の文化が行き交う「文明の十字路」とも呼ばれています。渓谷の崖に多くの石窟が掘られ、その中に東西二体の大仏がそびえていました。大仏の周囲壁面には「太陽神」と「弥勒」の姿が描かれていました。
本展覧会は、東西二体の大仏を原点とする太陽神と弥勒の世界に迫り、特に「未来仏」である弥勒信仰の流れを、インド・ガンダーラの彫刻と日本の法隆寺など奈良の古寺をはじめ各所に伝わる仏像、仏画等の名品でたどります。
バーミヤンの大仏と壁画は、2001年3月にイスラム原理主義組織・タリバンによって破壊されてしまいましたが、破壊以前に行われた調査時のスケッチと写真によって、このたび壁画の描き起こし図が新たに完成しましたので、東京にて初公開いたします。
バーミヤン遺跡とは
バーミヤン遺跡は、アフガニスタンの首都・カーブルから西北西に約120km、標高2500mの高地にあります。約1.3kmにわたる崖には、東西に高さ38mの「東大仏」と高さ55mの「西大仏」がそびえ立ち、800近い石窟群が掘られていました。
また、バーミヤンの地は、6世紀頃から交通の要所となり、多様な人々や文化が行き交い独自の文化が生まれ、「文明の十字路」とも称されています。」
と、その趣旨を説明している。
インド前１―2世紀の粘土焼成のスーリヤ像は、中心に太陽神（スーリヤ）像、左右に女神像、下方に四頭の馬、下端にはヤクシャ像―しりもちをついて両手を広げ、頭部はスーリヤに置き換わっている。スーリヤの頭上の日輪の外縁に鋸歯模様がついているのが印象的、この日輪と鋸歯模様は他の作例でもたびたび出てくるが、紀元前1−2世紀にすでに出現している点を注目したい。」（以上、三井記念美術館HP)
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