午前中は、東中野のポレポレ座で「徐葆光が見た琉球」という記録映画を見てから、新宿歴博に向かった。
「徐葆光(じょ・ほうこう)は、18世紀の中国の官僚で、冊封副使として琉球を訪れた。そのこまやかな観察力で《中山伝信録》や《奉使琉球詩》などの第一級の歴史資料を残した。そこには政治、芸能、風俗など、当時の琉球を知るための多くのことが、生き生きと描かれている。本作品は、日中国交正常化40周年・沖縄本土復帰40周年記念として制作された。監督は一昨年公開されてヒットしたドキュ メンタリー映画『よみがえる琉球芸能 江戸上り』に本郷義明。王国の廃止や沖縄戦で失われた王朝芸能を、多くの史料を基に首里城において再現し、琉球の歴史、文化・芸能を中国人冊封使《徐葆光》の目を通した新しい視点から考察することで、当時の日本・琉球、中国の失われた交流交易の歴史を振り返り、今を見つめ直していく。」琉球・中国・日本の歴史的関係や伝統芸能に関して、知らなかったことが多く、とても勉強になった。また徐氏の研究家の鄔揚華(う・やんふぁ)さんらの研究による多くの新発見(徐氏の墓、生誕地などでの新資料の発見)や徐氏の記録からの琉球宮廷料理の再現、沖縄の伝統芸能(音楽と舞踊など)関係者らによる宮廷で行われた芸能の再現の努力など、多くの貴重な記録を見ることができた。
一方、林芙美子展は、特に、パリ旅行や、戦時中のマレー・インドネシアへの軍務旅行など、国内だけでなく、世界を転々とした芙美子の面目躍如という面白いテーマで、展示を一通り見た後、14時から朗読会や講演が行われた。最初は朗読グループによるパリ+南方旅行に関する芙美子の文章の朗読で、福岡の脚本家の方による構成のようで、なかなか印象的だった。次に神奈川近代文学館の斉藤やす子さんの講演。主としてパリ旅行直前までの生い立ちなどのエピソードと戦後の急死に至るまでエピソードを興味深くお話しいただいた。
展示などから見て、南方旅行は「戦争協力」という非難もあるところだが、軍の言う通りの旅行でなく、自分の考える旅行を企て、村に二か月泊まり込むなど興味深い内容だった。私自身もマレー半島やインドネシア各地を旅したことがあり、大変面白く、講演終了後、詳しい内容を知るべく、資料室で調べ物をした。当時の記録は主として現地の邦人新聞、手紙や日記の類が多く、全集などにもほとんど出ていないものが多い。南方での軍務関係の旅行に関しては、やはり市販の全集などにはほとんど出ていない。戦争協力との批判にさらされてきたからであろう。大半は手紙、現地邦人紙への寄稿、手帳などのメモなどを見ないと詳細は分からないようだ。その中で「林芙美子とボルネオ島―南方従軍と『浮雲』をめぐって」という望月雅彦氏の著書は大いに参考になった。この本は特に蘭領ボルネオ(インドネシア側)のバンジャルマシンなどでの滞在の様子を中心に書かれている。ジャワ島のスラバヤ(付近の村に2か月滞在)やスマトラ旅行などに関してもっと知りたいと思うが、手紙やメモなどを見ないとわからないようだ。なお、ヤシの実書房から出ているこの本は、古書で6千円くらいの値段がついているようだ。
写真1.本展示会ポスター
写真2.朗読グループ
写真3.車力通り手前の和菓子屋「大角玉屋」で購入したイチゴ豆大福
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