午前中、古代オリエント自由学校の「初心者のためのシュメル学入門(小林登志子氏)」の講義に出席。同女史の「シュメルー人類最古の文明」「シュメル神話の世界」「五千年前の日常ーシュメル人たちの物語」の三冊の参考テキストで、今回はシュメル神話を中心に話し、その後初期王朝について論じるという。今日はその前の導入的な話。しかし、話があちこちに広がり、ギリシャローマ史や中国紙などとの比較も出てきて、初学者にはなかなか理解するのが大変な講義だった。
小林先生は博学すぎて、話がどんどん飛んでいくーー。今日の導入では、王と道化、身代わり王、など、かなり高度な内容の話を、山口昌男の「道化の民俗学」やフレイザーの「金枝篇」など多くの著作・資料に触れながら、古代王権の本質を探究する。
「王権とは共同体(または国家)にふりかかる災厄や穢れを一身に引き受け、浄める文化的な仕組み」「王は共同体の追った罪、あるいは穢れを負わされるが、逆に霊的な存在に近づくーー」
「王権の持つ穢れを浄める仕組みが「王殺し」として知られる未開社会の習俗であり、フレイザーの金枝篇には膨大な例が蒐集されている」
「イシン第一王朝(ウル第三王朝)の第九代王、イルラ・イミッティは身代わり王に王位を任せている間に熱いスープにむせて死んでしまった。その結果、エンリル・バニが正式な王となったという。」
などなど様々な例を挙げ、フレイザーの金枝篇に出ているバビロニアの神官ベロッソスの「バビロニア誌」による王殺しと身代わり王の話をした。ベロッソスの著作はほとんど現存していないので、のちの歴史家の引用などから書かれているという。またローマとキリスト教の問題で、イエスが身代わり王の役割を演じていたという解釈を示した。とてもシュメル学入門と呼べる内容とは思えないが、長年シュメル学を講じていて、長年講義を聞いている受講生も少なくないようなので、こうした難解な講義になっているのだろうか?
「ウルのスタンダード」−ウルの王墓から発見された用途不明のモザイクの箱は発見者の命名で「ウルのスタンダード(旗章)」と呼ばれ、祭祀道具とも楽器の共鳴器具とも言われている。このスタンダードの上段には王が描かれ、その傍に特異な人物像が描かれている。戦争の場面の「小人=道化」、と饗宴の場面の「宦官」である。「道化とは王権の内奥に嵌め込まれた穢れを浄める仕組みであり、その起源をこのモザイクに見ることができる。道化は王の永続的な分身と言える」(小林登志子氏のレジュメより)
この講義は相当資料を読み込んで、メソポタミア諸都市の地図その他を頭に叩き込んでおかないと、ついていくのが大変なようだ。
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