お隣の杉並区立郷土博物館で開催されている企画展「古代の環境 遺跡が語る暮らしと自然」の関連講座に二回目「縄文の暮しを掘る」を聴講しに、同博物館まで自転車を走らせる。前回はうっかり道を間違えて手間取ったが、今回はまっすぐ水道道路を進んで、井之頭通、方南通を渡って、博物館まで一直線。学芸員による12時半からの展示解説を聞き、1時には講演会の整理券を受け取って14時からの講演を待つ。講師は先日、明大博物館友の会主催の考古学講演会で「縄文の塩づくり」の話をされた明大教授の阿部芳郎氏。今日の話は主として貝塚から見る縄文社会の環境と暮しの変遷で、貝塚の詳細な科学調査などにより明らかにされた1万年以上にわたる長い縄文社会の変遷や貝塚の背景にある地域社会の特徴などを論じる興味深いものだった。とりわけ、東京湾の千葉側と東京・神奈川側の地域差の話は面白い。北区の中里貝塚は縄文海進の進んだころから、長期間にわたって貝塚を形成したが、その貝塚の内容を詳しくみると、浜貝塚という海沿いに形成された貝塚ではカキとハマグリの層が交互に出てくる。これは春から夏にかけてはハマグリを加工し、秋から冬はカキを加工して貝の加工品を物々交換などで遠くまで流通させていたらしいこと、ハマグリや柿は大きさが一定のもの以外は使わず、小さいものはとらずに資源管理+加工品品質確保を行っていたこと、また弥生時代に近づいていくと、貝を使った装飾品が特定の人のお墓らしい場所から大量に出るなど、社会の階層分化の始まりを告げるような兆候が出てくるのだそうだ。そのほかいろいろと興味深い発掘や科学調査による研究成果の話しなどがあった。
写真1)下高井戸遺跡
写真2)縄文早期の土器
写真3)縄文中期の土器
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