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2015年06月13日 18:46博物館、展示会、美術館など全体に公開

大英博物館展と大アマゾン展を見て、戦後考古学の父、杉原壮介の偉業をしのぶ

今月で終了する大英博物館展、一度は見ておかねばと、上野の東京都美術館に向かう。かつて七つの海を支配した大英帝国が世界中から収集したもののごくごく一部ではあるが、その中でも最高の宝物をみる。

 まずは大英博物館の最古の遺物「オルドヴァイ渓谷の石器だ。今から200万年前の礫石器(chopping tools)、120万年前のハンドアックス(握り斧)を見る。人類学者、リーキーがタンザニア北部のオルドヴァイ渓谷で発見した人類化石の横に落ちていた最古の石器ーーただの石のようにしか見えないが、専門家が、打面、打点、バルブ、スカール、フィッシャーなどの人為の痕跡を確認したのだろう。その後次々に発見される旧人の石器ーtoolsーの発端になった。1934年のことだった。120万年前のハンドアックスになると人工物であることは良く分かる。120万年前から次はいきなり1万4000年前のフランスのトナカイの角に掘られたマンモスーー実際の大英博物館ではその間に何時間も様々な場所、遺物を見学することになろうーー日本で見る展覧会の長所でもあり欠点だ。さらに日本の7千年前の縄文のポットーー19世紀に江戸の粋人が内側に金箔が張ってあり、お茶会の水差に使ったらしい。シーボルトの息子から当時の大英博物館のフランクス卿が購入したらしい。その後、6千年前の最古のギリシャ彫刻の女神像を見る。日本の土偶、石偶に似ているが大きな石像だ。

 いろいろ興味深いものが並んでいるが、今日のお目当ての一つ、ウル・スタンダードへと向かう。これは第二章「都市の誕生」の最大の目玉だ。創造していたよりも小ぶりの箱だった。台形の箱の上下左右に当時の都市国家の王様や戦士の暮らしや戦いの様子が描かれている。背景の青色はアフガニスタン地域から輸入したラピスラズリの青、赤はインド方面からきた石、張り付けられた貝はペルシャ湾の特別の光る貝殻、皆容易には入手できない貴重品で、ウルの繁栄ぶりを思わせる。王様が大きく描かれ、兵士の闘う姿や貢物を届ける人々の行列などが描かれている。
 この他、ビールの配給量を記録する粘土板(文字の誕生)、ノアより古い大洪水の記録、インダス文明の印章などどれも教科書に出てきそうな人類史を飾る記念碑的なものだ。千年後のクレオパトラも知っていたというエジプトの名君、ラムセス?世像―意外にも少年のような初々しい顔つきだ。

第三章ー「古代帝国」ではリディア王の金貨やアッシリアの戦士のレリーフなど、有名どころ、スーダンのクシュ王国のミイラ型の小型の石造も面白いが、何と言っても興味深いのは、オクサス川の土手で見つかったアケメネス朝ペルシャ時代のゾロアスター(教徒)の金像だ。2千500年前の像だが、一神教を最初に創設したゾロアスターとその後の信仰と宗教の歴史に思いをはせる。信仰と人類の精神生活の歴史を彩る遺物が続くーー2千年以上前のアメリカ先住民のパイプも実に面白いが、ローマで発掘されたミトラ神像に目を奪われる。ミトラす神が首をひねって殺した雄牛から流れる血を犬と蛇がなめているーー死と再生、復活の象徴らしいーー当時、オリエント世界を風靡したミトラす今日はキリスト教の発展にも大きな影響を与えたが、聖書ストーリーが優勢になり、滅んでしまう。西暦370年頃までのアラビア半島は、まだ一神教に制圧される前で、イエメンから出土したブロンズの右手首は土地の神様にささげられた本物の右手から鋳型を撮った生々しいブロンズ像だーー。

 さて、次にガンダーラの1800年位前の初期の仏陀像を見る。丁寧に作られ、物静かで穏やかなお顔だーー次の乳房が大きい千年前のターラ菩薩像は、長い長い仏像の東遷の歴史の一コマだ。中東オリエントでは最終的にイスラムの前で古い神々は消え去ったが、インドではバラモン教などからインドの古い神々のヒンドゥー教が生まれ、インド以東ではヒンドゥー教、ミトラ鏡、景教など様々な宗教や神々の影響を受けた仏像の中に西方、南方の古い神々が生き残って伝わっている。仏教はシルクロード他、様々なルートで東へ、南へ伝わっていく。敦煌の莫高窟から発見された旗に描かれた馬には仏教のしるし「卍」があり、青い背景に浮かび上がる白い馬は東山魁夷の絵画を思い起こさせる・1900年に中国の王道士の発見で、大谷隊を含め、各国から探検隊が出て、経典その他さまざまな遺物を発見してシルクロードにおける仏教の歩みが次第に明らかになっていったのだ。インドから海を渡った仏教はインドネシアにボロブドゥール遺跡などを残した。

 またカリフが指導する最初のイスラム帝国アッバース朝は中央アジアからスペイン南部まで支配し、中国と地中海を結ぶ交易で栄えた。バグダッドに近いサーマッラーから出土した壁画片にはハレムの酌婦が描かれており、初期イスラム文化では、まだ偶像は禁止されていない様子だ。

 この後、景徳鎮や柿右衛門などの名品もあるが、何と言っても印象的なのは、中南米やアフリカの土や石の像だ。とりわけ、西アフリカ、ナイジェリアのイフェ王国の石像には魅せられた。またオスマントルコの中国風のイズニク陶器も素晴らしかった。大英博物館の100の名品を見て人類の歩みを思次官は貴重だ。予定より少し早めに回ったので、科学博物館の大アマゾン展を覗いてみた。以前、古代オリエント博物館で見た山口吉彦アマゾン文化研究所長のコレクションもあったが、何と言ってもアマゾン川流域の魚や動植物の展示が素晴らしかった。新大陸のクモザルやエンペラータマリン、カピバラなどの新大陸で繁栄したげっ歯類もよいが、何と言ってもアリクイや大アルマジロ、特に大アルマジロの貴重映像がすばらしい。後ろ脚の歩き方が不思議な感じだーー。公式大PR使のさかなくんの釣ってきたピラニアその他の生きたアマゾンの魚や巨大アナコンダやカワイルカ、電気ウナギなどを見ながら、館を出て、次のお茶の水に向かう。卿の締めくくりは明治大学博物館による考古学講座、明大考古学の基礎を築いた杉原壮介氏と旧石器時代に関して、興味深い話を同大教授の安蒜氏から教わった。特に岩宿発見の後6年もかけて旧石器編年その他を注意深く検討し、欧米の名だたる研究者に報告書を送り、コメントを得たうえで岩宿の報告書を発表したこと、その後の旧石器論争で杉原氏や芹沢長介氏、山内清男氏らの日本の旧石器時代に関する位置づけ、その後の捏造事件とその後の経緯に関して、改めて振り返ることになった。

写真1。アマゾンのサルたち
写真2。オオアリクイ
写真3.アマゾンと日本でしか見つかっていない珍しい菌類(キノコ)
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