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最初に買ったのは、綿製のうぐいす色のものだ。ヤッケとは別に雨具としてビニール製の黄色のポンチョを持て行ったから、綿だからといって機能的にそれほど不自由に感じなかった。ヤッケは、「伝家の宝刀」扱いで、リュックの奥にしまわれている存在だったのである。
ところが、山スキーを始めるようになって、少し困ることになった。山スキーの初心者の悲しさ、頼りは専ら体力でスキーの技術が追い付かないので、よく転倒した。乾いた雪の場合はまだ良いが、湿った雪だとヤッケの表面に付着した雪が体温で溶けて次第次第に中のほうまでしみてくる。星空がきらめく夜明け前ヘッドライトをつけて妙高の麓の杉野沢を出発、笹ヶ峰から外輪山の三田原山に登って、麓の妙高高原国際スキー場のゲレンデに戻ってくる頃になると日は傾き、背中あたりがごわごわしてくるのがはっきりわかった。これには、さすがに参った。
そこで新調したのがナイロン製のヤッケである。大学2年の春に白馬岳に行く時に買った。紺色で、胸に大きなポケットがついていた。そのヤッケは、同じ年の秋、ドカ雪に見舞われた北アの裏銀座で失くした。ちょっと油断したのだろう、真砂岳を過ぎたあたりの稜線でスリップして転倒した際に、キスリングのサイドポケットからヤッケが飛ばされてしまったのだ。必死の思いで岩にしがみつきながら、ヤッケが風に舞いながら雪面を吸い込まれるように東沢谷を滑り落ちていく光景を見つめていた刹那が忘れられない。
これで、もう一回買い直したのが、同じくナイロン製の紺色のものだ。これは、かれこれ10年程使い込んだ。11月の薬師岳から笠ヶ岳への縦走や南アの塩見岳、正月の御嶽山や南ア聖岳、春の南ア甲斐駒が岳から地蔵岳縦走など青春の山とともにあった思い出の品なのだが、残念ながら遠い昔に処分してしまった。
今手元に残っているのは、ゴアッテックスのヤッケだ。昭和55年（1980年）の1月に山スキー用にローバー製のダブルブーツと胴体一体型のオーバーズボンを新調した時に併せて購入したものだ。
ゴアテックスは、今でこそ様々なアウトドア製品に使われているが、最初に「GORE-TEX ファブリクス」を用いたアウトドアの製品がプロデュースされたのは、昭和51年（1976年）のことだから、私が手に入れたのは、それからわずか数年後のことになる。多分、岳友のヤマレコkichichanからでも得た最新情報だったに違いない。外科手術用に開発されたものが転用されたと聞かされた記憶がある。
山ではめだった色彩がいいと若緑色の派手なものを買った。ロゴも今のものとは違って初期のものがついているから、もう十分レアものである。これは、国内の山登りばかりでなく、海外留学の時の旅行にも常に私とともにあったし、今なお私の日帰り用のリュックに「伝家の宝刀」として欠かせない品物である。
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写真��ゴアテックス製のヤッケ（越後駒が岳）
（参考）
「初めての山スキー 妙高・笹ヶ峰」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-170005
「天気図を書く、天気図を読む 撤退は悲しいね」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-171127
「谷川岳天神平 〜山スキーの道具を試すの巻〜」
https://www.yamareco.com/modules/diary/356744-detail-241333
「GORE-TEX?は何からできてるか知ってる？今さら聞けない素材のウラガワを潜入取材してきました」（「HYAKKEI」の記事より）
https://hyakkei.me/articles-675/
コメントありがとうございます。
確かに、アウターを「ヤッケ」というのは、登山愛好家の絶滅危惧種かもしれませんね。
ヤッケは、ドイツ語のジャケットが起源だとか。登山用語には、ピッケル、アイゼン、ザイル、ツエルト、ヒュッテ、モルゲンロードなどドイツ語起源の用語が今でも一般的に使われてるのに、ヤッケだけいつから冷遇されるようになったのでしょうか。不思議といえば不思議です。
そこでスキーをする為小学生の私を連れて蓼科方面に何度か行きました(つまりダシです)
昔の事なのでスキーの滑り止めは革紐、リフトもあるけどティーバーメイン利用、そして羽織る上着はヤッケでした
初心者なので一回転んだだけでびしゃびしゃでしたがゲレンデ(これもドイツ語だわ)のお休み処に入るとダルマストーブがガンガンに焚かれていてあっという間に乾かせました
ドイツ語は発音がカクカクしたイメージだからか今じゃクランポンとも言いますからね、最初何の事かわかりませんでした
ヤッケ、というと私個人のイメージは薄手のピラピラした上着です🧥
小学生の頃の刷り込みですかね😃
こんにちは。
ヤッケの思い出は、それぞれですね。
ところで、ヤッケのことをもう少し調べてみました。
デサントが1957年にラウスビージャケットと呼ばれた携帯用ウィンドブレーカーを売り出したそうです。それは、Rain,Wind,Snowをbreakするということから名づけられたらしく、折りたたんで袋の中にしまいこめるナイロン製のポータブルヤッケは当時画期的な商品でした。
これの系列の商品は、1980年代初めごろにもあったようで、我が家のアルバムを見ると、1984年4月にツェルマットからマッターホルンが間近に見えるストックホルン（標高3405m）に登山電車とロープーウェー（注：ロープウェーは今はない由）を乗り継いで行ったときに家内が着ていたエンジ色のヤッケがまさにそのタイプのものでした。
なつかしい思い出です。
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