岩場の通過には、三点支持をするのが基本だと思うのだが、これが混乱の元になったりする。
「三点支持」と言った瞬間に、足をどこに置くかとか、手をどこに置くかとか考えてしまう。「三点支持」を理解できている人は、「三点支持の状態」を作れるが、分からない人は、手をどこに置こうか、足をどこに置こうかとか、考えてしまうものである。
要は、人間は一つのことしか考えられないから、三点に意識することなどできないのである。
岩場で初心者に向かって、「右手はこっち!左足はこっち!」と大声で、あれこれ指図する「バカ野郎」を見かけるが、どちら様なのだろうと思ってしまう。
「オレの言うことは正しいから、オレの言うことを聞け!」
日本では、従来からこんなバカな指導者が多かったように思う。相手に伝わるかどうかは、まったく考慮しない。集中力というものを学んでいなければ、人に教える資格などない。
本質的なことを言えば、まず、四点を決めて、そこから一つずつ、手足を動かせばいいのである。
以前、剱岳で見たパーティで初心者に向かって、「三点支持じゃなくて、四点支持だ!」と言っている人がいたが、これはうまい言い方だと思った。
「伝わらなければ、教えたことにはならない。」
指導者たる者、肝に銘じるべきであろう。