折立〜雲の平〜水晶岳〜鷲羽岳〜黒部五郎岳〜折立【富山県】、富山最奥部に黒部川の源流を訪ね…
- GPS
- 26:01
- 距離
- 50.7km
- 登り
- 4,019m
- 下り
- 4,006m
コースタイム
○9月29日(金)
折立 7:48 – 三角点 8:46/55 - 1907m 9:08 – 2011m 9:20 – 五光岩ベンチ 9:42/47 – 太郎平小屋 10:17/40
– 最初の沢 11:11/15 – 左俣の橋11:36 – 薬師沢小屋 12:20/昼/13:05 – 木道末端 14:38
– アラスカ庭園 15:05/08 – アルプス分岐 15:35/38 – 祖母岳 15:46/51 – アルプス分岐 15:56 – 雲ノ平山荘 16:05
(泊)雲ノ平山荘
○9月30日(土)
雲ノ平山荘 5:17 – スイス庭園 5:42 – 分岐 5:44/48 – 祖父岳分岐 6:15 – 祖父岳 6:35/48 – 途中休憩 7:05/朝/20
– 岩苔乗越 7:35/43 – ワリモ北分岐(荷物を置く) 7:50/52 – 水晶小屋 8:16/25 – 黒岳(水晶岳) 8:53/9:17
– 水晶小屋 9:39/53 – ワリモ北分岐 – 10:13/19 – ワリモ岳 10:34/38 – 鷲羽岳 11:02/19 – ワリモ岳 11:41
– ワリモ北分岐 11:54/昼/12:15 – 岩苔乗越 12:20/22 – 黒部川の最初の一滴 12:31 – 源流分岐 13:06/25
– 三俣山荘 13:53/14:08 – 三俣峠 14:42 – 三俣蓮華岳 14:51/15:05 – 黒部乗越 15:23 – 黒部五郎小屋 16:15
(泊)黒部五郎小屋
○10月1日(日)
黒部五郎小屋 5:20 – カール下 6:11/16 – 肩の分岐 6:35/36 – 黒部五郎岳 6:43/56 – 肩の分岐 7:03/06
– 中俣分岐 8:03/06 – 赤木岳 8:35 – 北俣岳 8:56/9:01 – 神岡新道分岐 9:07 – 小ピーク 9:21 – 地塘 9:48
– 太郎山 9:56/58 – 太郎平小屋 10:03/23 – 五光岩ベンチ 10:44 – 2011m 10:58 – 1907m 11:06
– 三角点 11:17/20 – 折立 12:06
●歩行時間
○9月29日 … 8:17
○9月30日 … 10:58
○10月1日 … 6:46
天候 | 晴れ、晴れ、薄曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
(実家) = (折立) – 雲ノ平 – 黒岳 – 鷲羽岳 – 黒部五郎岳 - (折立) = (実家) ●自動車でのアクセス ○折立 ・富山からあるいは立山インターから立山を目指し、富山県県道6号を千垣の「芳見橋」(点滅信号機)で右折し県道182号に入る。しばらく道なりに進んだ「小見」でさらに右折し亀谷温泉、有峰湖方面を目指す。延々案内に沿って進むと、一般車が入れる最奥に折立登山口がある。 ・有峰林道は夜間閉鎖なので、ゲートを朝6時から夜20時までの間に通過する必要がある。 ※平成20年度より、有峰林道のうち小見線は土砂崩れにより長期通行止め(2011年5月現在)となっており、折立にマイカーで入るには、同じ有峰林道だが「小口川線」に迂回する必要がある。こちらは道幅が狭いなど一般ユーザー向けには整備が不十分であるので、通行には注意を要する。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
●コース状況 ・コース自体に不明瞭な箇所はない。また、通行不能箇所もない(2006年時点) ・強いて言うならば、以下の2箇所プラスおまけ1箇所を挙げておく ○黒部五郎岳山頂からカールへの下降 ・黒部五郎小屋側から山頂に近づくと、カール壁を登り、山頂に向けては左(南西)に進むことになるのだが、壁上部でのルートは案内が見あたらない。適当に進むと足場が悪いだけに不安全。しっかりルートを見つけるべき ○黒部五郎岳から北ノ俣岳方面への下降 ・単にガレ場の下りなのだが、ガレた幅が広い。端に寄りすぎると、下部でルートを外れてしまうおそれ有り ○黒部川源流の碑 ・碑の場所が分からないと言って道に迷うことはないであろうが、念のため。黒部川源流側あるいは祖父岳側からこの地点に来ると、源流の碑が見あたらない。源流の碑は、川付近ではなく、川から三俣山荘側に上がったところに設置してある ●山小屋 ○雲ノ平山荘 ・泊まったことのある山小屋で唯一内部のことがはっきり思い出せない。それだけ、可不可無しのよい小屋であったということか ・食べ物のことも今ひとつ思い出せない ○黒部五郎小屋 ・寝場所と食事場所が一緒の小屋 ・ただし、2006年時点では改装工事中であり、内装を含め非常に良質な状態であった。 ・最終日ということもあってか、山小屋とは思えない大ご馳走。 <以下、コース中の小屋より> ○水晶小屋 ・小屋の最終日空けに立ち寄った。冬仕舞いの作業中だった。よもや、明くる年にヘリコプター事故で犠牲者が出るとは思わず…。 ○三俣小屋 ・著名な小屋だが、喫茶を見る限り確かに楽しそう。次には宿泊してみたい。 ●買う、食べる ・特に付近に店舗はない ・仮に有峰林道から折立に行く場合には、そもそもコンビニ自体が相当前まで遡らないとない。富山県県道6号線の岩峅寺の先、横江の手前に「アルペン村」がある。そこが実質上最後 ●温泉 ・いろいろあると思うが、グランドサンピア立山(粟巣野)が広くて快適。ただし、16時が最終 |
写真
感想
●プロローグ
百名山の深田久弥は、黒岳(水晶岳、本文では黒岳とする。)をして人工のものが一つも見えない場所と言った。それほどに山深い場所。しかも富山県。富山県に生まれた者として、その最奥地には行ってみたかった。
桃源郷雲ノ平と合わせて、富山県の辺境の地を一周することにした。
●折立〜雲ノ平小屋
前夜の最終サンダーバードで帰郷し、実家から出発。実家を6時に出て、途中買い物をしながら8時前には折立を出発できた。
長い登りといわれるが、見通しも利かない中、黙々と登ると早くも三角点。ここからは、薬師岳の大きな姿を意識しながらの登りとなる。途中ふと見ると、劔岳、立山からの山並みも見渡せることに気づいた。
途中から整備された道となり、木道も織り交ぜながら、スムーズに高度を上げていく。やがて、太郎平。目標時間よりもずいぶん早い。余計に休憩をとり、目指す黒岳を眼前に見ながら薬師沢へと下降していく。
何度か沢を渡るが、橋が架けられていることへの驚きよりは、それぞれの流れの水量に驚かされる。やがて、台地状から緩やかに降りていくと、川音が大きくなり薬師沢小屋。昼にする。
今日の昼はコンビニのおにぎり。訳あって持ち物簡略化をしたのだが、そのあおりでコンロがない。
薬師沢の橋を渡り、断崖をへつって行くと崖の登り口。ものすごい急登。地図を見るまでもなく等高線が混んでいる様が目に浮かぶ。しかも岩ごちているから足も疲れる。
やがて、台地の上に着いたことを知らせるように、勾配が緩み、そして木道が現れる。いよいよ雲ノ平である。
雲ノ平は、そこにいるとわかりにくいが、山岳地帯の中には珍しいきわめて広大な平原である。今こうやって進んでいっても、自然が次々と移ろうのだが、草地になると、その広がりが見えるようになる。
そんなひとつアラスカ庭園に到着。なぜアラスカなのかはわからない。
そこからはナナカマドなどに囲まれながら、緩やかな起伏を進み、分岐で右に折れると祖母岳。雲ノ平の展望台。単なる高層湿原でもなく、あるいは川に基づく緑地でもなく、尾根でもなく草原でもない。
その独特の光景を堪能して、分岐に戻り進むと、程なく雲ノ平山荘。本日はここまで。
雲ノ平山荘は、ここを愛してやまない方のためにある所でもある。中にはそんな方の印も残され、表に出れば、眼前の黒岳、背後の黒部五郎岳、そして周囲を取り囲む雲ノ平の平原と、美しい自然には事欠かない。
●雲ノ平山荘〜黒岳
昨晩は熟睡、今日は長距離なので、早出。雲ノ平の散策に十分な時間を割けないことが口惜しい。少しでもと思い、スイス庭園には立ち寄る。岩苔小谷を挟んだ向かい側にある黒岳が雄々しい。
分岐に戻り、一路祖父岳を目指す。キャンプ場への道を見送り、時計回りにキャンプ場を巻くように高度を上げる。殆ど視界を遮る高さの植生がないので徐々に雲ノ平が見渡せるように。キャンプ場や昨晩の雲ノ平山荘の先に薬師岳の大きな姿もよく見える。
ふと気が付けば、黒部五郎岳も近づいてきており、その山を特徴づける大きなカールが口を開けている。
やや緩み、ケルンが無数にある祖父岳山頂に。
360度の展望である。
しかも、その視界の中には、百名山だけでも十座が収まっている。鷲羽、黒、立山、劔、薬師、白山、黒部五郎、笠、穂高、槍。これだけ手近に名山が展望できる場所もそうあるものではない。
この眺望。ありのままの自然。人工のものが殆ど目に入らない。
雲ノ平は天上の楽園というにふさわしい。
祖父岳からの眺望に感嘆しつつ、心残りのまま先へ。緩やかに下ったところで、朝ご飯。更に下り、植生のない一帯に。吊り尾根状になったところで、岩苔乗越。有名になった岩苔小谷と黒部源流に挟まれた鞍部。ここから尾根を渡りきるとワリモ北分岐。裏銀座主脈にようやく到着。
ワリモ岳から黒岳へと続く主脈の腹に張り付いたように、北ワリモ分岐の標識が立っている。その背後に荷物を置き、黒岳を往復することに。
身を軽くして、裏銀座主脈を北上。風化土の尾根。遮るものなく広がる視界の中には、常に薬師岳、黒岳や黒部五郎岳といったこの界隈の“主役”が見えている。
やがて、昨日来眺め続けてきた、遠いあこがれの山、黒岳が近づく。水晶小屋で小休止の後、いよいよ黒岳へ。
目標の山を見ながら最後の登り。黒っぽい岩だけでできた高みに出ると、狭い山頂。黒岳、通称水晶岳。ついにその頂上に到達。
双耳峰だが、三角点のある北峰の方が確かに低い。かつて、こちらの南峰が3000mあるのではないかと議論を呼んだが、標高が確認され、2986mとなった山。
深田久弥氏の言ったとおりで、人工のものは全く目に入らない(水晶小屋は除く)。山ばかりである。もっとも遠い山と言われる“赤牛岳”も今や目の前である。
更に、黒部湖の先には鹿島槍や白馬などの北部の山々も見えている。
昨日通り抜けた雲ノ平も、その茫洋さがよくわかる。黒部源流に周りを深くえぐられながら、これだけ広い台地が残ったことが不思議。
●黒岳〜鷲羽岳〜ワリモ北〜源流
黒岳からは来た道を戻る。途中の水晶小屋では年度の最終営業を終えて、後かたづけ中。その最中に割り込み、ペットボトルを売って頂く。さすがに最奥部だけあって値も高い。
――翌春、この小屋前でヘリコプターが墜落し、小屋の方が亡くなられるなど痛ましい事件が発生した。あのとき、片づけをしていた中に、その方もいらっしゃったのであろうかと思うと、事件と自分の距離が急に近づく――。
ワリモ北分岐をやり過ごし、続いて鷲羽の往復に。
黒部川の生まれる山。
まずはワリモへの登り。左右、緩急のある岩がちの斜面を行くと、岩を積み上げたようなワリモ岳。
鷲羽へ向けてジグザグの道が切って落としたような斜面の上を登っていくのが見える。背後には槍ヶ岳。
先ほど眺めた一本調子の一気の登りを尽きるまで進むと鷲羽。氷河に残された岩くずが、まばらに並ぶ山頂。南東側の眼下には火口湖のような鷲羽池。
振り返り黒岳を見ると、名の由来がよくわかる。岩くずの白や緑の中に、黒岳の黒と、水晶小屋付近の赤がひときわ目立っている。
西面には黒部川の源流部。谷を挟んで雲ノ平。ちょうど源流の碑のある登山道の交差部付近が見えているが、既に深い。
そして南東方は硫黄尾根の荒々しい姿の先に槍ヶ岳。穂高や常念も。南の尾根の先には三俣山荘、その先には三俣蓮華岳、背後には笠ヶ岳も見えている。
直進すればすぐの距離にある三俣山荘に背を向け、来た道を戻る。
今回、黒部川の最初の一滴を見てみたいと思っていた。
刻む谷、巨大なダム、広大な扇状地。荒々しい大河の最初の一滴はどんなものなんだろうか。
ワリモ北から久々にリュックを背負い、岩苔乗越へ下り、いよいよ源流地帯に。
どの川であっても、その沢筋に入った瞬間から、源流の流域であることに違いはないのだが、水が表に見え始めるのはずいぶん先である。黒部川も源流の碑は三俣山荘への分岐点付近にあるが、先ほど鷲羽から俯瞰した限りで見ても、おそらくそれよりは前から流れが確認できるであろう。
そう思いながらごつごつした岩の目立つ一帯を降りていく。
やがて耳を澄ますと、“水の生まれる音”。ゴボゴボ、と聞こえてくる。しかし姿が見えない。
ややあって、石と石の間から水が出てきているのを発見。か細い、たった一筋の流れ。まさに黒部川の最初の一滴。
発見の喜びを持ったまま、先へ。沢沿いを付かず離れず進むうちに、もはや黒部川は成人のようになりすまし、源流点付近へ。
源流の碑が見あたらない。と、諦めかけて三俣山荘への道を上がるとそこに碑があった。
●源流〜三俣山荘〜三俣蓮華岳〜黒部五郎小屋
碑から、ハイマツに囲まれた傾斜の緩やかな道を登っていくと、やがて鷲羽岳と三俣蓮華岳の鞍部に位置する広場に。左手に三俣山荘がある。
街中でちょっとくつろぐ喫茶店のように、山中にあって憩いの場となっている山荘である。診療所を置くなど、登山者にとっての欠かせない場所。立ち寄ってみたかった。
三俣蓮華岳を一望できる喫茶室でお茶。
しかし、あまりゆっくりすると、目的地に着かなくなるので、早々に出立。
三俣峠までは、見渡しの利く広い斜面を緩やかに登る。峠から山頂へは、短いが急激な登り。登り切ると、三県県境の標柱の立つ三俣蓮華岳山頂。
きのう今日の足跡が一望できる。そして振り返れば、穂高、槍といった北アルプスの中心街を見ることができる。次にはこちらから訪れてみたいものだ。
いよいよ最後の行程、黒部五郎小屋へ。
ここからの県境尾根は、比較的切れ落ち感が薄い。というか、純粋な尾根上よりはより緩やかな富山県側の斜面に張り付いているところが多く、なだらかに昇降を繰り返しながら高度を下げていく。やがて、深い灌木帯をくぐると黒部五郎小屋の前に顔を出した。
小屋は年の営業最終日。知ってか知らずか、宿泊者は多め。
夕食はご馳走。いつもそうなのかはわからないが、最終日であるからのような気がした。
●黒部五郎小屋〜黒部五郎岳〜折立
昨日と同じ時間ながら、本日はやや曇り気味なのか、ライト点灯で出発。黒部五郎岳のカールに向けて灌木帯を抜ける。やがて、三方を黒部五郎岳に囲まれた大きなカールの中に進入。氷河に隙間を抜き取られた、独特の岩組みの上を慎重に歩く。水流もあるようだ。
この景色、この雰囲気自体が独特であり、外見はややいびつだが、名山であると実感。
神秘感のあるカールに吸い込まれるように進み、やがて、その縁に取り付く。
ジグザグにカールの壁を登り、上縁に。山頂を目指して危なっかしい岩組みの縁上を進む。この先の進路との分岐点を過ぎ、やがて山頂。山頂から先には尾根伝いに小屋に続くルートもある。ただし、圏谷美を味わうには、尾根コースではない方がいいのかもしれない。
正面には雲ノ平、雲ノ平越しに黒岳がじっと座っている。
天候の崩れを予感させる風の強さ。長居はやめて、いよいよほんとの下山。
黒部五郎岳からの、岩くずの斜面の急下降を終えると、富山、岐阜県境の丘のような尾根筋をじっと歩き続ける。
ルートは常に前方に見えている。右手には雲ノ平。徐々に向きを変えていく
中俣岳を過ぎ、赤木岳を過ぎる。ここまで来ると、黒部五郎岳ではなく、黒岳も鷲羽岳ももはや遠くの山になってしまった。
北俣岳を過ぎると神岡新道の分岐。新しい道。県境道から直角に分かれていく。
ここからは、更になだらかになり、ありがちなハイキングコースのよう。ハイマツ帯の中を無造作なハイカーの踏み跡によって広げられてしまったようなコースをたどる。
有峰湖が見えるようになり、終焉が近いことを知らされる。
巨体薬師岳が近づき、太郎山山頂を越えると、太郎平小屋が眼下に見えてくる。やがて、行きのルートに合流。
なかなか見ることもない北アルプス最奥部の山々をじっくりと記憶に刻む。次またこの一帯に来ることはあるであろうか。
ここからは、いよいよ重たくなった空模様もにらんで、高速化。
振り返れば見えたはずの薬師岳もろくろく拝まず、一目散に退却。
折立登山口を過ぎ、ちょうど駐車場に到着したとき、本降りの雨。
夢の世界は、雨に包まれ記憶の中に封じ込められた。
いいねした人