初北鎌尾根・槍ヶ岳は霧と雨。単独テント泊


- GPS
- --:--
- 距離
- 41.0km
- 登り
- 2,566m
- 下り
- 2,559m
コースタイム
23:50頃 新宿からさわやか信州号で上高地まで。
平日でかつ増便のためか、自分が乗車した便はスカスカ。お得に乗車。
■1日目 晴れのち曇り。夜には雨
5:30頃 上高地。以降、水俣乗越までは省略
11:20頃 水俣乗越
13:08頃 北鎌沢出合。
13:33頃 分岐。右俣へ。
15:51頃 北鎌のコル。テント泊
■2日目 雨と霧
4:30頃 起床。淡い期待を込めて、しばらく待機。
6:10頃 撤退へ。雨で濡れた岩場を2〜3分下るが、危険を感じて北鎌尾へ。
8:22頃 北鎌独標あたり 以降、霧と雨のため位置把握不明
13:28頃 「穂先は近い気を抜かず頑張れ」のレリーフ
14:10頃 迂回してなんとか突破した岩場の上(槍ヶ岳直前)
14:19頃 槍ヶ岳
20:00頃 徳沢園
■3日目 雨と霧のち、一時晴れ
4:30頃 起床。撤収準備
7:10頃 上高地
天候 | 1日目 晴れのち曇り。夜には雨 2日目 雨と霧 3日目 雨と霧のち、一時晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り 路線バス、電車など |
コース状況/ 危険箇所等 |
雨で濡れた岩場は滑る |
予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
感想
2013年の登山第19弾 霧と雨の北鎌尾根。
上高地、水俣乗越、北鎌のコル、北鎌尾根・槍ヶ岳、上高地 / 登山
歩行時間:2日強くらい
歩行距離:不明
○感想
初北鎌尾根挑戦時かつ単独で、身軽ではないテント装備などで、通行者も少ない平日で、
終日霧と雨だったら、
絶対に撤退しろ。
命があぶない。
いま流行の若者の悪ふざけ投稿と同レベルなのかもしれない。
後悔するのは、取り返しのつかない場面になってからこそだ。
孤独とともに自分を見つめ続け、悔いのない選択ができた、
北鎌のコルから進んだことは間違っていない、
視界ゼロの北鎌尾根・槍ヶ岳をほぼ制覇した
と思っていたのに、
その槍ヶ岳直前の岩場を突破できず、30分くらい雨にうたれ続け強風にもさらされる。
今思えば、初日の水俣乗越。
あの水俣乗越から天上沢の北鎌沢出合まで下りさえしなければ、
こんな状況に陥っていなかった。
○初日 晴れのち曇り。夜には雨
11:20頃 水俣乗越。大曲から水俣乗越までの登りが単純にしんどかった。
詳細は記載しないが、
道しるべに北鎌尾根に挑んで行方不明になった方の安否を尋ねる張り紙があった。
現時点の天候は晴れ。
しかしながら本日の天気予報は晴れのち雨。明日の天気は曇りのち雨。
自分も行方不明になるかもしれない。
正直迷ったのだが、水俣乗越からの眺めが素晴らしく、
行ってみて駄目だったら引き返せばいいや、という結論に。
晴天のため、見晴らし良好。天上沢に向かって下りつつ、
北鎌のコルの位置、北鎌尾根の地形を叩き込む。
途中、雪渓が残っていたものの、ザレぎみの沢を下るだけなので、特に難しい箇所はなし。
振り返って眺める北鎌尾根も感動的だった。
北鎌沢出合は、
晴天であること、北鎌のコルの位置を把握していたこともあり、問題なく見つかる。
これが雨・霧で北鎌のコルの見えない状況だったら、非常に厳しい。
踏ん切りがつかず判断に迷うことだろう。
沢入り口の左側上にケルンもあったが、いつまで有り続けるか分からないので、あてにしないこと。
分岐で右の、右俣へ。左俣へ行くと危険らしい。
コル手前で深く考え込まず、巻き道・枝沢を登ってしまう。
これまでもちょっとした巻き道があり、
最終的には右俣の本流に合流していたので、今回も大丈夫だろうと。
けれど、この巻き道・枝沢には、
途中で左に大きくトラバースする道もあり、そこで違和感を覚えた。
あやしい。とりあえず枝沢を2〜3分登ってみたが、コルから遠ざかっているとの判断にて、
トラバース地点まで戻り、左へ。
右俣の本流に合流する。
北鎌のコル直前は、ちょっとした岩場で、ドーパミンが出てきた。
やはり岩場は楽しい。
北鎌のコルにて、テント泊することにした。
夜行バス移動で、5時30分から歩き続けていたので、今日はもう疲れた。
夜から雨。
水俣乗越から北鎌のコルまで誰にも会わず。
ちなみに、右足ふとももをブヨに吸血される。
○二日目 雨と霧。
夜中の冷え込みは、やはり厳しかった。
寝袋がないと、夏場といえどもきつい。
ただ前回のツェルト泊の鋸岳とは異なり、今回はテント泊。
事前の天気予報が雨だったので、さすがにツェルト泊する勇気はなかった。
4:30頃 起床。予定の通りの雨なのだが、この日の予定をどうするのかで
非常に迷った。
あわよくば、雨が止まないかと6時まで待機してみたものの状況は好転せず。
普通に考えれば、引き返す。
ここまでの労力を考えて北鎌尾根へ強行突撃する、という選択もあったが、
初めて訪れる場所であり、無理はせず安全第一で引き返すことした。
ただ、昨日テンションがあがった岩場を数分ほど下リ始めたのだが、
雨で濡れたこの岩場の下りのほうが危険ではと考え直し、北鎌尾へ行くことにした。
戻るも地獄。進むも地獄ってわけか。
北鎌沢出合でテント泊してれば、確実に引き返していたと思う。
霧と雨のため、視界はほぼないが、足跡が明瞭なうちは
それを頼りに進む。
写真は、だいたい強風でガスが吹き飛んだ瞬間か、
視界がないけど記録用に撮った瞬間のもの。
直登・稜線ルートも、巻き道も、だいたい正しいものと思えるものを選べたのだが、
1〜2回ほど巻き道を進んでガレ場を直登するというパターンにも出くわした。
これなら最初から直登・稜線ルートに進んだほうが楽かもしれないが、
実際のところ視界不良なので、登ったところで
方向感覚もあやしい。したがって、コンパスでの方位確認が必要になる。
ピークだとしたら下りも存在するわけで、濡れた岩場が滑る可能性もある。
事前に情報を得ていた崩落が進んでいる箇所に遭遇。
ここで、北鎌独標に到達していることを理解した。
残置ロープもあったので、使わせていただく。
いつか通行困難になりそうだよな。
非常にせまい隙間もほふく前進ぎみに通過。ザックがぶつかりヒヤっとした。
引っかかって前に進めずパニックになったら、崖底一直線だろう。怖い。
通過後なので、コの字(通過前から見ると、逆コの字。)
その後、これまた視界不良で正確な位置は不明だけど、
一カ所で、道を見失う。
視界があれば、単純に槍ヶ岳を目指せばいいのだが、霧で何も見えない。
コンパスでの方位確認と、可能性を順番につぶしていく。
直登だと断崖絶壁なので駄目。右巻きも断崖絶壁。
残るは、左への下っていく巻き道。方位も外していないから、ここなのかー。
槍ヶ岳に向かって尾根沿いを登っていくのだから、
「下っていく」というのが、自分にはない選択。
けれども、ここしかないので、ここを進む。
正解だった。
その後は、雨で体を冷やさないよう、体温維持のためにほどほどに進む。
ほんやりと槍ヶ岳っぽいのが見えたと思って、
近づくと違っていて、ガッカリすることがしばしば。
視界のなさに、モチベーションが下がり続ける。
晴れていれば、これから登る尾根が見えて、
振り返れば、今まで登ってきた尾根が見えるというのにな。
ただ、悪いこと続きというわけでもなく、雷鳥にも遭遇。
飛び去ってしまう前に、写真も撮れた。
北鎌平かは不明だけど、開けた場所を12時21分頃に通過。
岩だらけになってきた。
さらに1時間強歩くと、槍ヶ岳っぽいのがぼんやりと見えたきたが、
まだ確信は持てない。結構な岩場を登らなければいけないようだ。
取り付きを探していたら、
「穂先は近い気を抜かず頑張れ」のレリーフを発見した。
ようやく、槍ヶ岳直前に来れたのだ。
そこの岩場を越え、自分が登れる岩場を登っていくと、やや開けたスペースがあった。
そこから、やや右側に進むと、
残置ロープ、その上にスリングっぽいのが残された岩場があった。
たしかに、足場から2m強の位置にしっかりとした大きなホールドがあり、
1.6〜1.8mあたりの位置にごくわずかのホールドがあるから、
大きなホールドかロープにつかまって、
腕力だけで、まず、ごくわずかのホールドのほうに足をのせて、
スリングっぽいのも掴んで、
もう片方の足を大きなホールドまで片足を持っていければ
理論上は登れる。
しかしながら、雨のせいで岩場で滑ってどうしようもない。
ごくわずかのホールドにさえ、足をのっけられなかった。
火事場の馬鹿力も、でてくる様子もない。
こんな岩場、登れないよ。
時間にすると30分くらい。回数だと5〜6回。
大きなホールドに足をのっけるために、挑んだ時間と回数だ。
大きなホールドかロープをつかんだ上空に伸ばした腕の裾口から
雨粒が注ぎこむ。
つめたい。レインジャケットの中のTシャツはびしゃびしゃ。
強風も影響して、体がひえていく。
よく考えればレインジャケットの袖口はマジックテープで絞れるのだが、
思考は停止していた。
晴れていれば、岩場が濡れてなくグリップも生まれて登れたのに。
テント装備ではなく軽装だったら、登れたのに。
ロープを持参していれば、空身で登ったあとにザックを引き上げることができたのに。
まだ死ぬわけではないが、
直線数百メートル先には、きっと暖かいだろう槍ヶ岳山荘。
ふがいない状況。天候。自分の判断、
後悔がつきない。
ただテント装備だから、ここで一泊して雨が止み、岩場が乾くのを待つか。
ここまで到達したけど、10何時間かけて歩んできた道を引き返すか。
選択肢はまだ残されていた。
そして、ある可能性にも気づくことになる。
残置ロープ、その上にスリングっぽいものがあるけれど、
ここ以外にも登れる場所があるのではないかと。
致命的に安直に思い込んでしまったのだ。
残置ロープがあるから、ここしかルートがない、のだと。
その場を離れ、可能性を探る。
そして、運命に出会った。大げさではなく、ここだ。
左側にまわり込んだ先に、その岩場が存在していた。
気がつくと一心不乱に、その岩場を登っていた。
今となって考えれば、登る前に写真を撮ればよかったと思うのだが、
状況を打破できたことが、とびきり嬉しかったのだ。
登り切ってから、下方面に向けての写真は残した。
そこから槍ヶ岳頂上はすぐだった。
社の真横も見えてきた。
長かった。達成感よりも、ただそれだけ。
雨と霧のせいで、何もない。何も見えない。何もなかった。
槍ヶ岳頂上からは、さらに風と雨が酷い。
槍ヶ岳山荘も近いことだし、さっさと下山しよう。
しかしながら、2段のハシゴを下った辺りで、家族連れがゆっくりと下っている。
パパッと下ってしまいたかったけど、
抜かそうとして、事故でも発生しても面倒なので、
風と雨の中、待機しながら、ゆっくり子どもが進むのを見守りながら、下った。
こんな暴風雨といってもいい状況で、登っでは駄目だろ、
とか、いろいろ考えたが、自分も人のことを言えない。
あの子たちが山を嫌いにならないでほしいなーとは思った。
槍ヶ岳山荘、14時45分頃到着。
食堂でココアを注文し、休憩させてもらった。
このココアのおかげもあり、やたら元気が出てきてしまった。
それとこの暴風雨でのテント泊もきついだろう。
下れるところまで行ってテント泊したほうが凍えなくて済む。
槍ヶ岳山荘、15時11分頃出発。
大曲あたりまでで4〜5人とすれ違う。
大曲から槍沢ロッヂまでの沢が非常に増水していた。
こんな時間に通行しようとしている自分も悪いのだが。
横尾山荘あたりで日没。
横尾山荘内が丸見えで、休憩室っぽいとこで、宿泊者たちがテレビを見ていた。
だいぶ、現実に戻ってきた。
そして、20:00頃 徳沢園に。
北鎌のコルから槍ヶ岳山頂過ぎまで誰にも会わず。
コメント
この記録に関連する登山ルート

北鎌尾根、お疲れ様でした。
私の初北鎌も散々でしたが、レコを読んでいて初北鎌の時を思い出して読んでいました。
>初挑戦&単独&テン泊装備で通行者も少ない日で霧と雨だったら撤退しろ
おっしゃる通りだと私も感じました。
ちなみに、
>この写真、天地左右不明です。
とあるのは、天狗の腰掛へ向かう途中の岩場ですので、右に90度回転で正しいです。
neu-toneさんこんにちわ&初めまして。
知らない土地・ルートで単独行動は精神的な面で大変な経験をされたのではないでしょうか?
しかも荒天で幾人もの遭難者を出している地だけに、その重圧は計り知れないモノとお察し申し上げます。
記録の画像や感想文より当時の状況が伝わって来ます。色々と反省されている点が有りますので、その気持ちを忘れず今後の山行に生かせれば宜しいのではないでしょうか。
山はリスクとの駆け引きも含まれていますので、やむなき荒天時の行動は有りと考えます。大変リスキーな行動でしたが、常にルートファイティング、進む方角のチェック、道間違いのリカバリーと比較的冷静な判断が功を奏したとお見受けました。
判断ミスや間違いが有るのが人間なので、「間違い」と「置かれた状況」を素直に受け止め、その後の行動を「どうするのか」ではないでしょうか。その点でneu-toneさんは適切な行動をされたと思います。
後は「北鎌のコルでの停滞」も一つの選択肢ではなかったか・・・と感じました。
好日の時の「北鎌尾根山行記録」楽しみにしています。
写真の向きのご指摘、ありがとうございました。前半部分だったので、記憶もすでにない状態でした。
技術をみがくとか、持参する道具を増やすとか、単純にダイエットをして身を軽くするとかして万全を期して、晴天時にまた再度登れなかった岩に挑みたいものです。
下山途中の家族…
本人です(^_^;)
子供達にとっては、かなり過酷なアタックでしたが、無事に帰ってこれたことに感謝しています。
子供達には、今回は特別だと…話しました。
また天気のいい日にチャレンジしたいと思ってます。
山行記録に書いてしまいまして、誠に申し訳ないです。
自分も槍ヶ岳直前の壁であたふたしてましたが、
お互いに無事に登頂・下山できまして、ありがとうございました!
neu-toneさん こんにちは
悪天の北鎌良く槍りましたね、おめでとう。
初挑戦でコルでテン泊、槍直下で難儀したものの14時頃穂先到着とはびっくりです。若さのお蔭ですねこれは。
お天気次第で天国と地獄の差がでますね北鎌は。Web情報などは役にたちませんね視界ゼロでは、何回行っても初山ですね。この切なさは単独ならではの体験ですね。
次回は晴天の稜線を独標通過で楽しんで下さい。
mamede様
書き込みありがとうございました。
ご返信遅くなりましたが、晴天時に再度挑みたいものですね!!
がんばります。
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